【うどんやごはんは胃に残りやすい?】たんぱく質不足の原因にもなる「腸漏れ」とは

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たんぱく質は体の材料になる大事な栄養素ですが、なんと日本人の約8割以上はたんぱく質が不足しているそうです。その最大の原因は? また、どうすればたんぱく質不足を解消できるのでしょうか?
内視鏡専門医の平島徹朗先生と秋山祖久先生の著書「たんぱく質と腸の新常識」(Gakken)から、一部内容を抜粋・再編集してご紹介します。

目次

日本人の8割以上はたんぱく質不足!

人間の体はとても複雑な仕組みを持っているうえに、 年齢、 性別、 そして生活習慣によっても状況は変わります。しかし、これまで約10万人の患者さんを診てきて、共通する点もわかってきました。

私たちのクリニックを訪れる患者さんは、頑固な便秘など、明確な症状がある人もいますが、緊急を要する痛みやつらさはないものの、 “なんとなく不調”という人がとても多いと感じます。そして、不調の原因を探るために採血をして詳しく検査をすると、8割以上の人がたんぱく質不足なのです。
さらに、内視鏡検査を行うと、腸に未消化の食べ物がベッタリと張りついていたり、 腸の中が真っ黒になっていたりすることも珍しくありません。

暴飲暴食をしているわけでもない、不規則な食生活を送っているわけでもない。むしろ健康を意識して、太らないように気をつけて、体にいいという情報を見聞きしたらそれを実践しているような人でも、多くが腸に問題を抱え、そのせいでたんぱく質を吸収できていない。そんな状況がわかってきたのです。

たんぱく質は、人体を構成している約60兆個の細胞の材料となる重要な栄養素。それなのに、 これほど多くの人が不足しているとは大問題です。

たんぱく質が不足すると、体の機能が低下し“幸せホルモン”も不足する

ホルモン(神経伝達物質) 、 消化吸収を促す酵素、 免疫機能を支える抗体など、 さまざまな分泌物はたんぱく質を材料につくられています。

たんぱく質不足が続くと、消化吸収力の低下、 代謝の低下、神経伝達機能の低下、免疫力の低下など、 体のさまざまな機能が低下し、不調が起こりやすくなります。

また、やる気が出ない、気分が落ち込む、イライラする……そんな心の不調の原因のひとつと考えられるのがセロトニンという脳内の神経伝達物質の不足です。セロトニンは、 “幸せホルモン”とも呼ばれ、心身をリラックスさせたり、意欲を増したりする働きがあります。

セロトニン不足は、自律神経や体内リズムの乱れなどによって起こりますが、そもそも、セロトニンの材料となるたんぱく質が不足していると産生量が低下し、意欲が低下したり、イライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。

たんぱく質は、心の健康にも欠かせないものなのです。

たんぱく質不足の裏に潜む“腸漏れ”問題

「たんぱく質を摂っているつもりが摂れていない」

この大問題を起こしている最大の原因は腸にあります。腸は栄養を吸収する場所です。しかし、皆さんの腸はちゃんと吸収できているでしょうか?

実は、不要なものが腸から漏れ出して吸収され、そのぶん摂ったはずの栄養素が正しく吸収されていないケースが珍しくありません。それが、リーキーガット症候群、通称「腸漏れ」です。

正常な場合、小腸では粘膜層から消化酵素が分泌され、胃や十二指腸で消化された栄養
をさらに分解し、吸収していきます。しかし、腸粘膜の細胞に炎症が起こると、腸粘膜の細胞と細胞の間にすき間ができてしまいます。

腸粘膜にすき間ができて腸漏れを起こすと、本来ブロックするはずの不要なものを取り込んでしまい、その影響で肝心の栄養素の吸収がおろそかになってしまうのです。これが、腸漏れで栄養不足になる理由です。

つまり、腸漏れが起こると、口から栄養を十分に摂っていたとしても体内ではそれを吸収できておらず、栄養不足を招くのです。

では、腸漏れはどうして起こるのか? まずは考えられる原因を知り、腸内環境を整えて腸漏れを防ぐことを第一に考えていきましょう。

腸漏れが起こる2大原因

① たんぱく質不足
細胞の材料が不足し、腸粘膜の細胞のターンオーバーがスムーズに行えなくなる
② 腸内環境の悪化 
腸内の悪玉菌が増加し、腸粘膜を傷つける

腸内環境を悪化させる原因

・ストレス
・睡眠不足、睡眠の質の低下
・小麦粉食品(グルテン)の摂りすぎ
・乳製品(カゼイン)の摂りすぎ
・ビタミンD不足
・糖質の摂りすぎ、高血糖の常態化
・お酒の飲みすぎ
・加工食品に含まれる合成添加物の摂りすぎ
・白砂糖の摂りすぎ
・人工甘味料の摂りすぎ

腸漏れの最大の原因は“未消化の炭水化物”

腸漏れの原因のひとつに「糖質の摂りすぎ、高血糖の常態化」がありますが、実は高血糖だけではなく、未消化の炭水化物も胃や腸に負担をかけ、腸漏れの引き金になっているのです。

ごはんや麵は、決して消化が悪い食べ物ではありませんが、実は胃の中に残りやすいのです。一方、肉などのたんぱく源となる食べ物が残っていることは、まずほとんどありません。

一般的に、消化にかかる時間が早いのは、炭水化物(糖質+食物繊維) 、たんぱく質、
脂質の順だといわれていますが、実際は違っているのです。

私たちが内視鏡検査で見てきた限り、食べ物が胃から小腸へと移動するのにかかる時間は、うどんが5~6時間、米・パンは早くて4時間ですが、いずれも遅い場合は8時間以上かかっています。
胃からは炭水化物を消化する酵素が出ないので、当然といえば当然です。一方、肉や魚などのたんぱく質は消化が悪いイメージがありますが、胃からも消化酵素が出るので、実は消化が早いのです。

未消化の炭水化物が胃内に長時間留まるせいで、消化・吸収が終わらず疲弊し、ダメージが積み重なります。こうしたことも腸漏れの引き金になるのです。

炭水化物よりたんぱく質ファースト!

炭水化物の摂り方について、大事な結論をお伝えしておきます。

炭水化物より、たんぱく質のほうが大事。だから、たんぱく質ファーストが正解!

ではいったい、糖質(炭水化物から消化吸収されない食物繊維を除いたもの)はどれくらい摂ればいいのでしょう?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020年版」では、糖質の最低必
要量は、1日あたり約100g。茶碗1杯150gのごはんの糖質量は53・4gですから、1日に茶碗2杯のごはんで最低量が満たされるということになります。

これを最低量として覚えておけば、極端に不足することはありませんし、摂りすぎることもありません。あとは、それぞれの活動量に合わせて調整してみてください。

茶碗2杯ではお腹が減って集中力が低下するなら、茶碗1杯分をプラスしてみて、体の調子がどうなるかを試してみましょう。調子がよくなったら、それが自分にとってのごはんの適量ということです。

とにかく、我慢のしすぎは禁物です。節制ばかりではストレスが溜まって体に悪い。食べることも楽しいほうが元気が出るというものです。

この記事の監修・執筆者

平島徹朗・秋山祖久

平島徹朗(ひらしま・てつろう)
1973年神奈川県生まれ、大分県育ち。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本抗加齢学会専門医。国立佐賀大学医学部卒業後、大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部などの勤務を経て、「たまプラーザ南口胃腸内科クリニック」「福岡天神内視鏡クリニック」を開設し、院長、理事長を務める。「薬の服用は最小限に、食事と生活習慣の改善が最優先」をモットーに横浜と福岡で診療を行っている。趣味はトライアスロン、筋トレ、ランニング、YouTube撮影。豆柴犬をこよなく愛す。

秋山祖久(あきやま・もとひさ)
1975年佐賀県生まれ。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。中学生のころ、急性虫垂炎で入院したときの主治医のやさしさに感動し、医師を志す。長崎大学医学部卒業後、長崎大学消化器内科に入局。多くの総合病院勤務を経て、『福岡天神内視鏡クリニック』院長に就任。年間4000例以上の内視鏡検査を行っている。ビタミンDを愛し、ビタミンDの大切さを熱心に語ることから「ビタミンD先生」と呼ばれている。趣味はトライアスロン、読書、スポーツ鑑賞。早歩き通勤が日課。

たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)が発売中。

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