【過去最多!不登校の子どもは全国約24万5000人】「学校に行きたくない」と言われたとき、保護者はどう対処する? [臨床心理士監修]

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文部科学省の調査によると不登校の児童生徒数が約24万5000人で過去最多。もし、子どもが「学校に行きたくない」と言ったらどうしたらよいのかを臨床心理士の南谷則子先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

「学校に行きたくない」と言われたら?

令和4年10月に発表された「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(文部科学省)によると、小学校で81,498 人、中学校で163,442 人 小中学校合計で244,940 人が不登校(※1)であることがわかりました。この数は過去最多で、さらに「隠れ不登校(※2)」「不登校傾向」などといわれる子どもを含めると数はさらに多いと考えられます。また低年齢化も懸念されています。

不登校は「ストレス対処行動」のひとつで、どんな子どもにも起こりえます。「うちの子は大丈夫」と思っていても、ある日突然学校に行けなくなるケースもあり、保護者は困惑します。

では、子どもが急に「学校に行きたくない」と言ったらどうしたらよいのでしょう。まず、子どもの表情を見て何か異変を感じたら、とりあえず「学校を休む」という選択は間違いではありません。このとき「どうしたの? 何かあった?」と理由を聞いてもかまいませんが、「なんで行かないの!?」などと子どもを問い詰めたり、責めたりするのは避けましょう。理由を聞いても、子ども自身はうまく説明できないことが多いです。

重要なのは、保護者が「どんなときもあなたの味方だよ」「学校よりもあなたが大事」という気持ちをしっかりと伝えることです。

※1:文部科学省の調査では「不登校児童生徒」とは 「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年度間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由、新型コロナウイルス感染回避による者を除いたもの」と定義しています。

※2:登校しても、保健室や図書室などで過ごし教室には行かない、または教室で過ごすが、授業に参加する時間が少ないなどを「隠れ不登校」といいます。

学校を休んだら、家でどう過ごす?

「おなかが痛いから、学校に行きたくない」と言われたら「じゃあ、今日1日は休もうか」と言って休ませてもかまいません。このとき「どうしよう!うちの子、このままじゃ不登校になっちゃう!? 」などとうろたえるのは禁物です。保護者の動揺は子どもに伝わります。難しいことですが、落ち着いて普段どおりの態度を心がけましょう。

学校を休ませた日は、家でリラックスして過ごすようにしましょう。心と身体をゆっくり休ませることが大切です。低学年の子どもの場合、ストレスを解消したりリラックスしたりするのに大人と同じようにはいきません。強い刺激を避けて、いっしょに絵本をながめる、お菓子を作るなど工夫をして、のんびりと過ごすとよいでしょう。

一日ゆったりと過ごしたことによって心が満たされ、次の日から元気に学校に行かれる場合もあります。

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欠席が続いたら、どうしたらよい?

学校を続けて休む場合は、担任の先生と連絡を取り合いましょう。このとき担任の先生に「学校で何かありましたか?」などと冷静に尋ねるとよいでしょう。もし、その後も欠席が数日から1週間以上続くようなら、あらためて学校、もしくはスクールカウンセラーなどと連携をとることも考えます。自治体が運営する地域の教育相談センターも相談先のひとつとしてオススメです。

重要なのは、保護者が「不登校は恥ずかしい」と感じて抱え込まないことです。その気持ちが子どもに伝わってしまうと解決しにくくなります。また、小学校に通い始めたばかりの子どもと思春期の青少年などでは、発達段階によって不登校支援の対応も大きく違ってきます。心理や教育の専門家の知見や経験を借りることが大切です。保護者だけでがんばらず、学校や行政など周囲の力を借りて協力体制をとって対応しましょう。

周囲のサポートで解決することもある

スクールカウンセラーが不登校を即座に解決してくれるとは限りませんが、対応を相談しているうちに、よいタイミングで有効な働きかけをすることができます。子どもにとって、「明日こそ学校に行こう」と考えても、また失敗したらと不安に感じると、なかなか次の一歩が踏み出せないものです。

たとえば、次のような事例があります。

小1の子どもと保護者、スクールカウンセラーがオンラインで面談をしている際に、「じゃあ、来週から学校に行く“実験”をしてみようか?」と働きかけたところ、その子が登校することを“実験”ととらえて行動に移し、“実験”が成功、つまり不登校が解消したというケースです。家庭内だけでなく、先生やスクールカウンセラーなど第三者からの声かけがきっかけで事態が好転することも多いのです。

子どもが学校を休み続けてしまっても、それを「恥だ」と思い込まないように、保護者は支えていきましょう。そして親子で行き詰まってしまわないためにも、家庭を“閉じた空間”にせずに、いろいろな人の力を借りて外部からの風を取り込んでいくことが大事です。

保護者が普段から心がけることは?

子どもの不登校を防ぐために、保護者は普段から何に気をつけたらよいのでしょうか。

1.子どもの生活リズムを整える子どもの生活リズムを崩さないことが重要です。就寝や起床の時間を守る、栄養バランスのとれた献立を考える、水分を十分にとるなど子どもの脳と身体に十分なケアを心がけましょう。夜ふかしによる寝坊や栄養不足による気力の欠如が不登校につながるケースも少なくありません。

2.自己肯定感を育む家族の一員として役割を持たせることも大切です。洗濯物をたたんだり、食卓に食器を並べたりするなど発達に合わせてできるお手伝いはオススメです。家事はもっとも身近な社会的な活動の一つです。家族のために責任を持って決められた家事をやり続けて、「いつもありがとう」「あなたのおかげで助かるよ」などと感謝されることで、自己肯定感を育むことができます。

3.子どもとの信頼関係を築く子どもがつらいと感じたときに、すぐに保護者に話せる信頼関係を築いておくことも大切です。たとえば、学校で友だちに何か嫌なことを言われた、先生とうまくいかないなどの問題を早めに保護者に相談できれば、問題が大きくなることを防げます。

そのためには、毎日5分間でもよいので子どもの話をしっかり聴く時間をとりましょう。このときに重要なのは、子どもを批判したり、すぐにアドバイスをしようとしたりしないこと。「今そういうふうに感じているんだね。そう考えているんだね」と子どもの気持ちをそのまま受け取りましょう。

4.子どもの人格を尊重するいちばん重要なのは、普段から子どもの人格を尊重し、子どものありのままを受け止めることです。そのためには、保護者がイライラをため込まずになるべく安定した気持ちで日常を過ごすことを心がけましょう。保護者が自分自身の不安やストレスとうまくつき合い、日々の生活から楽しみを見出すことが必要です。すぐにできる有効で簡単なストレス解消方法を見つけておきましょう。

登校しぶりが見られても、保護者が動揺する姿を見せないようにすることが大切です。周囲の力を借りてゆっくり子どもと向き合っていきましょう。何より「お父さんもお母さんもいつでもあなたの味方だよ」などと、安心できる場所があるということを伝えられるとよいですね。

この記事の監修・執筆者

臨床心理士・公認心理師 南谷 則子

公立学校でスクールカウンセラーをしながら、不登校の子どもを持つ保護者に対して、認知行動療法を利用した、ストレス低減グループプログラムの開発に取り組む。千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター特任研究員。小児発達学者(小児発達学博士)。子どもの行動に感情的に反応しないで子どものありのままを認める「マインドフルネス子育て」のワークを作成し、効果研究や普及にも努めている。

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