園や学校の視力検査の後、「受診勧告のお知らせ」の用紙をもらって帰ってきたわが子――。保護者の気づかない間に子どもの目が悪くなっていた、もうこの子は一生メガネなの? 親の視力が悪いから遺伝で申し訳ない…。そんなふうに考えてしまった方も多いかもしれません。今回は、子どもの視力が悪いとわかったときの、保護者が知っておきたいこと、気になる今後の視力、子どもの視力矯正などについて、小児眼科医の山本央子先生にお話をうかがいました。
視力検査は子どもに慣れた小児眼科医にかかるのが安心
園や学校での視力検査をきっかけに子どもの視力低下に気づいた、という保護者の方が多いのではないでしょうか。日常生活でも、テレビにものすごく近づいて画面を見たり、本を読むときにしかめっつらをしていたりする場合は見えづらくなっている可能性があります。子ども自身が「目が悪くなったみたい」と自ら発信することはないので、子どもの視力が気になったら気軽に小児眼科医に相談することをオススメします。
園や学校の視力検査で再検査が必要と判断されたときは「受診勧告のお知らせ」の紙をもらってくるはずです。そこではA、B、C、Dの4段階で判定されています。
●小学校の視力検査 4段階評価●
A判定 1.0以上
B判定 0.9~0.7
C判定 0.6~0.3
D判定 0.3未満
A以外の判定が出た子どもに「受診勧告のお知らせ」が渡されます。ただし、わたしのクリニックに来る患者さんのうち、7割の子は問題ありません。残りの3割の子がメガネなどの矯正が必要となります。集団での視力検査の精度はある意味“それなり”ですので、「要・再検査」の用紙をもらっただけでナーバスになる必要はありません。詳しい検査を受けてみよう、視力以外に問題はないかな、くらいの軽い気持ちで小児眼科をたずねてみてください。
小児眼科では、子どもの年齢に合わせた検査方法を用意しています。子どもが楽しく遊んでいるうちに、正確な視力を測ることができるので、怖いことも叱られこともありません。大人向けの眼科では、子どもに不慣れな医師が担当する場合もあるので、お子さんの視力が気になるときは、小児眼科にかかったほうがよいでしょう。また、受診したクリニックの診断結果に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンとして小児眼科に相談してみてください。
子どもの目が見えづらいときは、視力が低下している以外にも次のような原因がある場合も。
・まつげが眼球に当たっている
・アレルギーで涙が増えている
・眼球の位置がずれている(斜視)
・目のこすりすぎで眼球が傷ついている など
こういった理由で一時的に見えづらい場合も。疾患があった場合は、治療をすればすぐに見えるようになることもあります。大人であれば違和感に気づけることも、子どもはただ「見えづらい」と思ってしまうこともあるので、何が原因かをしっかり診断してもらいましょう。
成長期の子どもは視力が回復する可能性もある!
小学校の教室の大きさから換算すると、両目で0.7の視力があれば、教室のいちばん後ろの席から黒板が見える程度なので、すぐにメガネで矯正しなくても問題ない場合があります。
両目で0.3以下の場合はいちばん前の席でも黒板の文字が見えないと判断され、メガネなどの矯正が必要です。
幼い子どもにメガネなんて…と不安に思われる気持ちもわかります。実際、成長するにしたがって近眼は進むことが多いでしょう。ただし、成長期の子どもは、視力が回復するパターンもあります。視力悪化の進行をできるだけ遅くするためにも、正しく矯正することが大切です。視力を正しく矯正することで、集中力も高まります。
おもな子どもの視力矯正は3種類
1.メガネ
両目の視力が0.3以下の場合、メガネでの矯正が必要です。眼科で正しく視力を測ったうえで処方箋が発行され、それをもとにメガネ店でメガネを作ります。子ども用メガネを扱っているお店がオススメです。
授業中だけメガネをかけたい、サッカーをするときは外したい、といったご希望も医師に相談してください。生活スタイルや希望に合った方法をご提案します。
メガネを作ったら、もう一度小児眼科で診察を受け、メガネが合っているか、矯正視力が正常か判断してもらいましょう。また、半年に一度の診察もぜひ受けてください。
※低学年の間はコンタクトレンズのケアが難しいため、オススメしていません。
2.目薬 (※保険適用・自由診療)
目薬で視力を回復させることはできませんが、子どもがもつ自身の調節力に働きかけ、まだ使いきれていない能力を引き出すことは期待できます。子どもの目が本来もっている能力をいま3割しか出せてないとすると、目薬をさすことで7割以上出せるようにする、というイメージです。寝る前にさすだけで、副作用もほとんどありません。
3.オルソケラトロジー (※自由診療)
特殊形状のコンタクトレンズを就寝中に装着することで、視力を回復させる方法です。子どもは黒目が柔軟なので効果が出やすく、保護者の方がケアできるのであれば有効です。低年齢で視力が悪くなりすぎないうちに始めることで、将来的な近眼抑制につながります。
コロナ禍で増えた子どもの近眼
コロナ禍の自粛生活で、視力が悪くなった子どもがとても増えています。実際、わたしのクリニックでも、この2年で子どもの視力相談はかなり増加しました。室内で過ごすことが多くなり、タブレット学習で近い距離で同じ画面をじっと見つづけること、また遠くを見ないことでピントを合わせる機能がさぼってしまうことが大きな原因です。
●デジタル画面を見るときの心得●
・姿勢を正し、画面と目は30センチ以上離す
・30分画面を見たら目を休め、20秒以上遠くを見る
・わかりやすい文字色を使って、目を使いすぎない工夫を
・画面を拡大したり、読み上げ機能をうまく使おう
・屋外で体を動かし、健康的に過ごそう
子どもの視力悪化は、授業に集中できず、活動を狭め、やる気にも影響してしまいます。保護者の方がポジティブに視力矯正に向き合い、元気な毎日を過ごせるようにサポートしてあげてください。
次回は、子どもメガネ専門店の方に、メガネのフィッティングのポイント、いま流行りのデザインなどについてうかがいます。
この記事の監修・執筆者
日本眼科学会認定の眼科専門医。一般眼科のほか小児眼科も専門。患者さんの立場にたった親しみやすい診療を行っている。
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