コロナ禍による行動制限は徐々に緩和されてきてはいるものの、外で遊ぶ子どもたちの数はまだまだもとどおり、とはいかないようです。ここ数年続いている行動制限による運動不足が子どもたちの足に弊害をもたらしていると言われています。足育を提唱する健康専門家・山田宏大先生に、3回にわたって、コロナ禍がもたらした子どもの足問題についてお話をうかがいます。第1回は「偏平足(へんぺいそく)」です。 ※医学用語では「扁平足」と書きます。
監修/有限会社靴のやまごん 代表取締役 山田 宏大 イラスト/ヤマハチ 文/こそだてまっぷ編集部
みなさんに質問です。どちらが偏平足でしょう?
正解は、左です。
土踏まずが形成されていないのが「偏平足」
みなさんの足の裏には、土踏まずはありますか? 名前は聞いたことがあるものの、実際はよくわからない…という方も多いことでしょう。
土踏まずとは、足裏のくぼみ部分をさし、6歳頃(おおむね7歳になるまで)までに形成されます。その土踏まずが、うまく形成されなかった状態が「偏平足」です(写真の青い部分に土踏まずが形成されます)。
上の写真の赤い●を見てください。片足裏はカメラの三脚のように母指球、小指球、かかとの3点で体を支えています。ここでしっかり立つことで、足がしっかり上に伸び、骨盤や背骨もまっすぐ伸びて姿勢がまっすぐ保たれます。
土踏まずのない人は、この3点の土台が崩れ、内側に足が傾いてしまいます。その結果、ひざ、骨盤、股関節の位置がずれ、体のゆがみや猫背の原因となります。
首都圏とそれ以外では若干違いがありますが、6歳になっても土踏まずが形成されない子どもは、多い地域では2人に1人、少ない地域でも約3割いるというデータがあります。その上、コロナ禍の行動制限によって、より偏平足率が上がっているといわれています。
「偏平足」の足は疲れやすい
土踏まずの部分はアーチを描いており、歩いたり走ったりするときにこのアーチが足裏の伸縮を助け、全身の重みを受ける足の衝撃を吸収してくれる役割があります。
偏平足の子どもたちの足にはこのアーチがなく、衝撃をもろに受けてしまうため、たくさん歩くことができず、すぐ「疲れた~」となってしまいます。
生まれた時はまだ土踏まずはできておらず、3歳くらいになり自由に歩けるようになると足裏の脂肪が取れ、だんだん土踏まずが見えてきます。6歳ころ~7歳になるまでに土踏まずができているのが理想です。このころはまだ骨は完成しておらず、足の骨にも隙間があって軟骨で覆われています。平均して14歳くらいまで骨は成長し続け、大人の足へと成長します。しかし、まだ骨が柔らかいうちは、一度土踏まずができたお子さんでも、このコロナ禍による歩行量の減少によって、また元に戻ってしまう可能性があります。
子どもの偏平足度をチェック!
6歳になっても囲み内の項目に当てはまるものが多い場合は、整形外科で診てもらうといいでしょう。偏平足と診断されると、保険適用内で足型を取り、専用の中敷き(「足底板」といいます)をつくることが可能です。
「偏平足」の原因は歩行不足と合わない靴
【歩行不足】
幼少期に推奨される歩行距離は、年齢×1kmといわれており、2歳は2km、3歳は3km…6歳は6kmとなります。
現代の生活環境では、園への送り迎えは送迎バスや自家用車、自転車が主流となり、子どもが歩かないことが多くなりました。そこにコロナ禍による活動制限も加わってさらに歩くことが減り、偏平足のお子さんは増えています。
幼稚園や保育園で遊んでいるから大丈夫という親が多いのですが、園生活だけでは、歩行距離は足りません。
なお、年齢×1kmが理想ですが、難しい場合は毎日20分からの連続歩行でもかまいませんので、可能な範囲で行いましょう。
足の裏には、「足底筋」という筋肉があります。歩いたり走ったりするときに足指が動くことでこの足底筋が伸縮してそこから連結する筋肉が鍛えられていき、土踏まずができていきます。そのため、足指を使って歩いたり走ったりすることはとても大切なのです。
【合わない靴】
コロナ禍の行動制限により出かける機会が減ったことで、子どもの靴のサイズが小さくなっていることに気づかない親が増えています。小さい子どもは、靴がきつくなっても、上手に伝えることができないため、親が気づきにくい傾向があります。
逆に、どうせすぐ大きくなるからと、大きめの靴をはかせるのもNG。靴の中で足がスライドして、足指を使わずにすり足をしている状態になってしまいます。
出かけたときに「抱っこ」と頻繁に言ったり、夜泣きをしたりする場合は要注意です。
偏平足になったときの、土踏まず形成に大事なポイント4つ
①靴を正しく選び、履く
②中敷き(足底板)は3年間入れ続ける
③外をたくさん歩く
④靴の交換は定期的に!
①靴を正しく選び、履く
適正サイズであることはもちろん、「足が固定でき、足指をしっかり動かせる靴」を選びましょう。足を固定するためにも、面ファスナーが2本ある靴がベターです。
また、中敷きが取り外せれば、病院で作成された足底板を入れることができます。
一方、ぐにゃりと曲がる支えの弱い靴やパンプスのようなおしゃれな靴、かかとのない靴は、足を支えてくれないので土踏まず形成には向きません。
靴をはくときは、立ったままつま先を持ち上げてかかとを床にトントンとつき、かかとと中敷きのかかとを合わせます。そして、面ファスナーをギュッと締め、しっかり足が固定されればOKです(座って履いても、きちんと固定されれば大丈夫です)。
②中敷き(足底板)は3年間入れ続ける
6歳過ぎから入れる中敷き(足底板)は、できれば内履き・外履きの両方を用意し、3年間入れ続けてください。約2年で土踏まずは形成され、もう1年は戻らないように慣らします。なお、6歳未満に入れる場合は外履きだけでもかまいません。
靴を選ぶ際は、子どもの足裏を中敷きの上に足指をしっかり伸ばした状態で中敷きのかかとに子どものかかとを合わせます。
3歳以降だと、つま先1~1.2cm余裕を持たせましょう。ママの小指の幅がぴったりなので、中敷きの先に指を当てて目安にしても。足先の余裕が5mmを切ったら買い替えのサインです。
また、足幅が広い子どもの場合は、「EEE」「3E」と書かれた幅広の靴を選ぶといいでしょう。
③外をたくさん歩く
子どもが歩行不足なら、ママもパパも同じはず。親も足に合った靴をはいて、子どもといっしょにたくさん外を歩きましょう。
④靴の交換は定期的に!
子どもは足の成長が著しいもの。2歳までは、3カ月に1回、3歳以降は半年に1回、サイズを測って靴を買い替えましょう。1年に1回程度だと靴がきつくなって足の指が使いにくり、その結果偏平足や足指の変形につながってしまうおそれがあります。
足指をほぐして筋力を鍛える、偏平足改善法
おうちで気軽にできる偏平足改善法トレーニングをご紹介します。
足指を動かす「足指グーチョキパージャンケン」
足指を使ってジャンケンしてみましょう。足指を動かすことで、足裏の筋力も鍛えられます。
足の柔軟性を上げる、「足指上下トレーニング」
足裏を反って伸ばしたり曲げたりすることで、土踏まずを形成させる足の指が動かしやすくなります。
①お子さんの足の指をつかみ、足裏に向かって反らし、甲を伸ばす
②足の甲に向かって反り、足裏を伸ばす。①と②を1秒ごとに繰り返す
5分程度行いましょう。
足裏に向かって反らし、足の甲を伸ばす
上へ反って、足裏を伸ばす
3歳くらいまでは、足指をつかんで行います。4~5歳くらいになれば、足指の間に指を入れて行いましょう。5歳くらいなれば自分でできるので、ママやパパといっしょに行いましょう。
偏平足の改善率はわずか30%といわれています。子どもたちが、きちんと土踏まずを形成できるよう、①~④の4つのポイントを実行し、サイズの合った靴でたくさん体を動かすようにしましょう。
靴選びに自信がない方は、中敷きと、足に合う靴を選んでくれるシューフィッターさんのいるお店へ!
次回は「巻き爪」です。
この記事の監修・執筆者
上級シューフィッター、シニアシューフィッター、幼児子どもシューフィッター、足爪補正士、ノルディックウォーキング指導員、カイロプラクティック整体など数々の資格を有する。これまでに3万人以上の足を見て、全国で年間50回を超える足育の講演活動を行い、子どもや高齢者に向けた足育を啓蒙している。
好きな言葉は【満足】。満足した体をつくるためにも、満足した子育てのためにも、全身を支える「足を満たす」ことで、元気な子どもたちに世の中をつくっていってほしいと願っている。
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