【小児科医監修】知っておきたい! がんばり屋さんに多い、子どもの五月病

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【小児科医監修】知っておきたい! がんばり屋さんに多い、子どもの五月病

新年度が始まり慣れてきたころに感じる、なんだか体がだるい、仕事がはかどらない……などの「五月病」の症状。
これは、大人だけのものと思っていませんか?
実は、就学前の子どもも五月病になることがあります。
まだ言葉でうまく伝えられないお子さんは、保護者が気づいて対応する必要があります。
今回は、お子さんが五月病かも? と思ったときの家庭での対応や、五月病にならないための過ごし方を、けいこ豊洲こどもクリニックの塚田佳子先生にお伺いしました。

お話/けいこ豊洲こどもクリニック 院長 塚田佳子

目次

1 「五月病」は病名ではなく状態

立派な病気のように感じてしまいますが、実は医学的な病名ではないため、病院を受診しても「五月病です」と診断されることはありません。

「五月病」とは、病気ではなく症状や状態のことを言います。

新年度から少し経ち、ようやく慣れてきたころにあらわれる症状で、おもにゴールデンウイークなど長めの休みのあとの、以下のような状態をさします。

  • なんとなく体調がよくない
  • 会社や学校に行きたくない
  • 憂鬱な気分になる
  • 食欲がない
  • 寝つきや寝起きが悪い

2 子どもの五月病の原因と症状

しんどそうな子ども

学生や大人がかかるイメージのある五月病ですが、就学前の子どもにも見られ、とくにがんばり屋さんに多い症状とも言えます。

原因は4月に、新しい環境にがんばって適応しようとした反動が考えられます。

大人は経験上、「連休明けは憂鬱……」と感じても、対処する方法をもっている方が多いと思いますが、まだ経験が少ない子どもにとって、上手に気持ちを切り替えるのは難しいこと。

連休中と同じく、おうちの方といっしょにいたい、毎日遊んでいたい、と思うことはごく普通です。

幼い子は、まだうまく言葉にできないことも多いため、連休明けなどにおうちの方が「あれ? いつもと様子が違うかも……」と思ったら、以下のような症状や姿が見られないか注意しましょう。

  • 朝にぐずったり、起きられなくなったりする
  • 登園すると泣き出して、おうちの方にしがみつく
  • なんとなく無気力で表情が乏しい
  • いつもよりも食欲がない
  • 寝つきが悪い

これらは5月に限らず、ほかの連休明けや夏休み明けにも起きやすい症状です。

では、このような様子を目にした場合、家庭ではどのように対応すればよいのでしょうか。

3 家庭での対応

子どもを励ます両親

まず、家庭でできる対応として最も大切なことは、どんな時も親があわてたり動揺したりといった姿を子どもに見せないことです。お子さんにプレッシャーが伝わらないようにしましょう。

具体的な対策としては

  • 休みの間も保育園・幼稚園の話題を出す
  • 前向きな言葉がけを行う
  • 園にはできるだけ休まず通う

ことを提案します。

休みの間も保育園・幼稚園の話題を出す

まず、休みの間も、保育園や幼稚園の話題を出すことをおすすめします。

「あと何日で保育園・幼稚園に行けるね。楽しみだね!」

「この遊びは〇〇先生が好きだよね」

「▲▲ちゃんは、なにをしているだろうね?」

など、日常生活の中でも、保育園や幼稚園に意識が向くことで、お休み明けに突然環境が変わるような衝撃を緩和したり、「あと○日で保育園・幼稚園の日」と、見通しをもって過ごすことができます。

前向きな言葉がけを行う

休み明けには、園生活を前向きに捉えられるような言葉を、具体的に伝えましょう。

「●●先生やお友だちが待っているよ、会いに行ってみる?」

「今日の給食はなにかな? 確かめてみよう」

「金曜までがんばったらママ・パパと遊べるね。(カレンダーを見て)数えてみようか」

などと、年齢や理解に合わせてお子さんがわかりやすいように、前向きな言葉や、がんばる期限や目安などを伝えてあげてください。

逆に避けたいのが、否定的な言葉がけです。

「ママ・パパは仕事だから困るよ」

「連休にたくさん遊んだでしょ」

「みんな行っているんだから」

など、事実であっても、状況を否定的に捉えるような言葉はグッと飲み込んで。

園にはできるだけ休まず通う

保育園・幼稚園は、できるだけ休まず、短時間でも行くようにしたいですね。

一度休んでしまうと、なかなか行けなくなり、回復までに時間を要するケースが多いのです。

可能であれば、休み明けの登園は短時間にできるとよいでしょう。

「11時になったらお迎えに行くね。時計の長い針がここまで来たらママ・パパと会えるよ」などと、具体的に、どのくらいがんばればよいのか、お子さんがイメージできるよう説明しましょう。

上記のような対応によって、自宅でも、

  • 保育園や幼稚園での出来事を話す
  • お友だちの話をする
  • 登園しぶりがなくなる
  • 食欲が戻る

などのサインが出てきたら、回復の兆しと言えるでしょう。

4 五月病にならないための環境づくり

規則正しい生活

連休中も普段の生活リズムで過ごす

連休中に心がけたいのが、生活リズムを崩さずに過ごすこと。

できるだけ、保育園・幼稚園がある日と同じような起床時間、食事時間、就寝時間をキープしましょう。

ただこれは、大人1人だけでがんばるのは至難の業。

帰省やお出かけなどもあることでしょう。

周りの大人を巻き込んで、いっしょにリズムを整えられるとよいですね。

普段の園でのがんばりをおうちでも認める

歌や工作、体操など、普段の園生活でお子さんががんばっていることに、連休中は家庭でも取り組み、ほめてあげましょう。

おうちでも遊びの一環として取り組んだり、発表ごっこなどで披露したりする場を設けてみるのはどうでしょうか。

子どものがんばりをほめることで自己肯定感が高まりますし、お休み明けに保育園・幼稚園に行って、もっとがんばってみようという気持ちもふくらみます。

おうちの方にとっても、入園前や前回の取り組みから、お子さんの成長をじっくりと見る機会になりますよ。

5 塚田先生からのメッセージ

五月病は、とくに真面目ながんばり屋さんに多く見られる症状ですが、これは4月からの環境変化に適応しようとがんばってきた証拠でもあります。

保育園や幼稚園に通うお子さんでしたら、ゴールデンウイーク明けの登園はできるだけ短時間にし、帰宅したら「よくがんばってきたね、えらいよ」とたくさんほめてあげましょう。

そしてお休みの日は、意識してお子さんのそばにいるようにしてください。

大好きなおうちの方に寄り添ってもらい、ほめてもらうことが、なによりの治療になります。

こうした経験の積み重ねによって、今後どう対処すればよいのかを知っていく、お子さんの学びの機会でもあります。

がんばっているお子さんたちの歩みを、寛容に、ゆっくりと見守って支えていきたいですね。

この記事の監修・執筆者

けいこ豊洲こどもクリニック院長 塚田佳子

https://keiko-kodomo.com/

年子男児を育てるママ小児科医。正確な医学的知識を基に自分の育児から得た経験を強みとして、両親の悩みに日々向き合っている。小児科専門医、こどもの心の相談医。

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