近年は進学・就職などでも「自主性」「主体性」が重視されていますが、親が干渉しすぎると子どもは「指示待ち」になり、人格形成にも大きな影響があると言われます。「失敗しないように」と子どもの行動を先回りしたり、口出しをしすぎたりすることで、子ども自身が考えて行動する力が育たなくなってしまうのです。子どもを「指示待ちっ子」にしないための親の習慣について、養護教諭として25年の勤務経験を持つ、「ハートマッスルトレーニングジム」代表理事の桑原朱美さんにお話を伺いました。
取材・文/FUTAKO企画
親が干渉しすぎると子どもはどうなる?
先生は「ばんそうこう」じゃない
私はかつて小中学校の養護教諭(保健室の先生)として、多くの子どもたちにかかわってきましたが、「先生、ばんそうこう!」と言って保健室にやってくる子たちに、こう返事をしていました。
「先生は『ばんそうこう』という名前ではありません。ばんそうこうがどうしたの?」すると、子どもたちは「あ、ばんそうこうがほしいです」と言い直すことができます。
もちろん、こちらは大人ですから、「どこかに傷ができて、ばんそうこうがほしくてやって来たのだろうな」ということはわかります。察して対応することは簡単ですが、それが当たり前になると、子どもは単語だけでものを伝えたり、「態度や表情だけで相手に自分の要求を察してもらおうとするパターン」が身についてしまったりします。
「自分の考えが伝わるように話すこと」は、自主性を育てるための第一歩だと思っています。
私は25年間にわたる保健室でのやりとりの中で、「必要なことは言葉で伝えさせる」ことを徹底してきました。
「自分で決められない」子どもたち

小学校低学年では「(授業中に)トイレに行きたい」「(給食で)スプーンがない」と自分で言えない子も少なくありませんが、中学生になっても自分の言いたいことを言えない子もいます。保健室に来たものの発熱がないので「もう少し教室でがんばる? それとも少し休む?」と聞いても、どうしたいか自分で決められない……そんな子どもの姿は気になります。
「指示待ちっ子」になる要因の一つとして、子どもに干渉しすぎる親の存在があります。幼児期はどうしても親が子どもをサポートしなければいけない場面が多いのですが、小学生になると、自分のことは自分で決めて行動する必要が出てきます。
本来、徐々に子どもの手を離していくべき時期に、親がいつまでも自分の管理下に置こうとする「過干渉」な状態にあると、子どもの自主性や自立心が育たず、親の顔色ばかり見て「自分で決められない」子になってしまいます。
「過干渉」になる保護者の方の行動パターンとしては、次のようなものがあります。
・「まずトイレに行ってきて」「明日の持ち物の準備は、ママがやっておくから」などと、常に先回りして声をかけることが多い
・子どもの宿題の内容がわからないと、LINEで他の親に聞きまくる
・子どもの言葉をうのみにして他人の意見に耳を傾けない
・時間をかけずに効率優先で結果を出そうとする
・自分の価値観・やり方を変えない(新しい情報に更新しない)
・子どもが失敗しないよう、新しいことになかなかチャレンジさせない
・服や持ち物など子どもが選んだものに「それは違う」「なんかおかしい」と口を出す
・子どもの行動の結果に対して「それは間違っている」「だから言ったじゃない」などと、ダメ出しをする
・子どもの話を最後まで聞かず、途中でさえぎってしまう
……いかがでしょうか。ご自身の行動を振り返ってみて一つでも当てはまるようでしたら、注意が必要です。
そして、「過干渉」は子どもの行動に影響が出るようになります。
・困ったときに自分から他人にSOSを出せない
・何か問題があっても、親に言うと大事になるため言わない
・自分の意思で物事を決められない
・友だちとの関係がうまくいかない
・いつも親の顔色を見て行動する
・家では「いい子」だが学校では無茶をする
子どものころはもちろん、社会に出てからも、だれかの力を借りなければならない出来事がたくさん出てくるはずです。自分の判断で「助けて」と言えるのはとても大事なこと。親がいつも先回りしてしまうと、まわりの人に助けを求める経験ができないまま成長してしまうかもしれません。また、人と良好な関係を築けるのも、自分で意思決定ができてこそだと思います。
過干渉な親のために、家では従順な「いい子(親にとって都合のいい子)」を演じ、学校では「先生の言うことを聞かない」「乱暴なことをする」といった、ある意味バランスを取るような行動に出てしまうこともあるのです。
干渉しすぎず子どもの主体性を育む親の習慣10
では、どうすれば親が干渉しすぎないで、子どもが自分で考えて主体的に行動できるようになるのでしょうか。日常生活で簡単に実践できる習慣について紹介します。
➀「親の不安」と「子どもの不安」を切り離して考える
親心として、お子さんが失敗して傷つかないか不安になってしまう気持ちは理解できます。が、親が「失敗しないように」と思うあまり、いつも先回りをして目の前の障害物を取り除いてしまっていては、子どもが自分で試行錯誤して成長する機会を阻害してしまうことになりかねません。
親がサポートするのは、子どもから「助けて」「手伝って」というSOSが発信されてからでも遅くはないと思います。それまでは、親自身の不安をぐっと抑えて見守ることに徹することです。
②「自主性」と「積極性」の違いを理解して認める
「自主性」とは、指示される前にやるべきことを自分で見つけて行動できるということ。物事に対して進んで関わろうとする「積極性」と似ていますが、「自分が!」と人の前に出なくても、自分のやるべきことができる子はいます。
大人の目には「積極的な子」がよく見えがちですが、目立たなくてもクラスの係や役割などを「自主的にできた」「自分なりに考えて工夫した」ときを見逃さず、「がんばったね」と認めてあげるとよいと思います。そのがんばりに気づくためには、子どもの話にきちんと耳を傾け、しっかり観察することが大切です。
「子どものことをよく見て、がんばりを認める」のは、やはり一番そばにいる親だからできること。そうして認められたことで生まれる自信は、また別のことに挑戦する意欲につながります。
③「小さな決定権」を与える
「なんでも親の言う通りにやってきた」という子は、自分の意思で何かを決めるのが苦手なことがあります。「自分なりに考えて決める」試行錯誤の経験は、子どもを成長させます。日常のささいなことで構いません。「学校にどの服を着ていくか」「家に帰ってからすることの順番」など、日常の「小さな決定権」を子どもに与えてみましょう。
洋服や持ち物の選択など、多少おかしいと思うことがあっても決して親の価値観を押しつけず、自分で決めさせることが大事です。後から子ども自身が「やっぱりこれじゃなかった」と感じるような失敗もまた、「次はどうするか」自分で考えるきっかけになると思います。
④家事の一部を任せてみる
子どもに家事をさせることも「主体性」を養うきっかけとなります。主体性とは、自分の意志や判断に基づいて物事の本質を理解し、目的を持って行動する力のこと。「自主性」と似ていますが、すでに決められていることに率先して取り組む「自主性」に対して、自分で課題を見つけて実行内容を決めるのが「主体性」です。
料理の手伝いでも、洗濯物を畳むのでも構いません。「まずは親がやってみせる」→「一緒に楽しく作業する」→「できたことを認める」という流れで、慣れてきたら「ママ(パパ)は今度別の作業をするから、皮むきはお願いね」などと、子どもに任せてみます。ちょっとした作業でも「大人に頼りにされる」「任せられる」のは子どもにとってうれしいことです。やり終えたら出来、不出来にかかわらず「助かったよ」とがんばりを認めましょう。
こうした成功体験の積み重ねが、「次もきっとできる」という自信や意欲につながります。
⑤「子どもの友だち関係」に介入しすぎない
「○○ちゃん、休み時間一人でいることが多いみたい」などと人づてに聞いたり、授業参観などで一人で過ごす姿を見たりすると、心配される保護者の方も少なくありません。しかし、「友だちがいなくてさびしい思いをしている」のは、親の勝手な思い込みという場合もあります。
一人の世界が好きな子もいますし、休み時間に自分だけの時間ができてほっとする子もいます。その子の気質によることもあるので、お子さんが困っていると言ってきたわけではないのなら、あせらずに見守っていていいと思います。
⑥子どもの話を整理する
学校で何かトラブルがあったとき、子どもに話を聞くこともあるでしょう。その際の子どもの話というのは、「自分に都合のいいことだけ言っている」ケースが意外と多いものです。本人としては嘘を言っているつもりがなくても、トラブルの原因となる大事な情報が抜けていることもあるのです。さらに、友だちとのトラブルで、事実に対する「解釈」がマイナス志向になりすぎている、ということもよくあります。
そうしたこともふまえて、子どもの話を聞くときは、口をはさまず「傾聴」する姿勢が大事です。「それは違う」などとジャッジしたり、親の価値観を押しつけたりするのはNG。そのうえで、「事実」と「感情」、そして「これからできること」に分け、紙やホワイトボードなどに書いて整理してみるとよいと思います。
小学校低学年ぐらいだと理路整然と説明できる子が多くないので、ていねいに話を聞くことが必要ですが、大人が話を整理して「見える化」することで、気づけることもあるはずです。
そして、子どもに聞いた話を学校に伝える際は、「何を求めるか」「ゴールをどこにするか」を、自分の頭の中でもう一度整理してから話すようにします。問題になったことを俯瞰して見ることで、感情的にならずによい解決策に近づけるでしょう。学校の先生は保護者とともに協力して子どもを育てるパートナーです。「相手の子にも話を聞いてほしい」「クラスで話し合ってほしい」などと、求めることを具体的にしておくとよいと思います。
⑦子どもの「~したつもり」に注意
子ども同士の物の貸し借りなどのトラブルの際、子どもが「(自分としては」~したつもり」という言葉を口にすることが少なくありません。「ちょっと借りたら壊れてしまった。自分としてはあやまったつもり」など、この「~したつもり」は相手に伝わっていないことが意外と多いので、要注意です。
事実関係を整理するために根気よく子どもの話を聞き出すとともに、想定外のことが起きていたのであれば、「次に同じことがあったら○○する」と、親子で話し合ってルールを明確にしておくことで、今後のトラブルを回避することができます。
➇信じるのは「子どもの言葉」ではなく、「失敗しても立ち上がる力」
何かトラブルがあって話が食い違ったとき、「子どもの言うことを信じます!」という保護者の方がいらっしゃいます。一見素晴らしいことのように思えるのですが、先に述べたように、子どもの話は「自分に都合のいいこと」でできていることがよくあります。人生経験も少なく、間違うことも多いでしょう。
私は、保護者の方には「子どもの言葉を信じる」よりも、「失敗したり、人に迷惑をかけたりすることがあっても、それを学びとして成長できる」という子どもの可能性を信じていただきたいと思っています。「失敗しても立ち直る力を持っている」と信じてあげることで、子どもは失敗をチャンスに変換して成長できるのではないでしょうか。
⑨「反省会」ではなく「作戦会議」をする
子どもが何か失敗したときに、保護者の方は「反省しなさい!」とつい言ってしまいがちではないかと思います。反省の態度が見えないと、長いお説教タイムになることもあるでしょう。しかし、私は小中学生向けの講演などで「反省は『あ、しまった!』と思った一瞬で終わっていいよ」と言っています。
「長い反省会」の代わりにしてほしいのは、次に同じ失敗をしないための「未来のための作戦会議」です。「作戦会議をしよう!」と言うと、子どもは楽しい雰囲気を感じて「何それ?」と乗り気になります。「どうにもならない」過去を反省するよりも、「この後どうするか」という未来を前向きに考えるのが本当の反省だと私は思います。
「次に同じ状況になったときにどんな行動を取ったらよいか」と否定せずに聞いて、お子さんの言葉を引き出してみましょう。
⑩「登校渋り」は無理に原因を聞き出そうとしない
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、まずは親があせらずに生活環境を整えることが大事です。「朝決まった時間に起きる」「家族でしっかり朝ごはんを食べる」「夜は早く寝かせる」など、基本的な生活を見直しましょう。
そして、「なぜ行きたくないの?」と無理に原因を聞き出そうとしないこと。「登校渋り」では、子ども自身にも理由がわからない場合が結構あります。何度も原因を聞かれて「何か言わなければ」と全然違うことを口にしてしまうこともあるのです。
また、「学校に行くこと自体が目的ではない」と理解しておくことも大切です。
親としては「いざ行ってみたら気分が変わって、なんとかなるのではないか」という期待もあるのだと思いますが、無理やり学校に行かせたとしても、本人としては「行っちゃえば大丈夫」ではありません。
心の準備ができていないのに登校することで、余計に事態をこじらせてしまう可能性もあります。あくまで「子どもが幸せに過ごせること」を第一の目的にしていただきたいと思います。
子どもの内面を理解するためには、「体のどこが一番苦しいか」「何につまずいているか」を聞き出すことが重要。できるだけ言語化できるとよいでしょう。
言葉で難しい場合は「顔の形と吹き出しを描いた紙」を子どもに渡して、顔の輪郭の中に表情を、吹き出しにはセリフを描き足してもらう、という方法もあります。絵だと子どもが取り組みやすくなることが多いようです。
「今の自分の顔」「本当はこうありたい理想の自分の顔(客観視)」の2パターンについて、表情とセリフをそれぞれ子どもに描き足してもらいます。「どうしたら、理想の顔になれるのか」と具体的な行動を子どもが考えるきっかけにできると思います。
最後に~「指示待ちっ子」にしないために
子どもにとっては「親そのものが環境」です。子どもは親の言うことより、親のすることをまねるもの。親自身が人生を楽しんでいる姿を見せることで、子どもも「生きることは楽しい」と感じて主体的に生きられるようになります。だからこそ、保護者の方は「子どもの世話をすること」を自分の存在意義にしないでいただきたいと思います。
そして、親としての「自己開示」も大事です。「かっこいい親」でなくていいのです。泥くさくても苦手なことがたくさんあってもOK。親が「マイナスな面も自分の一部」としてさらけ出すことで、子どもは失敗を恐れず、試行錯誤しながら自分の力で歩いていけるようになるでしょう。
「生きることは楽しい」ということを、まず保護者の方が実践してお子さんに伝えてほしいと思います。
この記事の監修・執筆者
児童生徒への講演、養護教諭・管理職研修、企業研修など多方面で活動。
著書・専門誌記事多数、テレビ出演多数。
「子どもたちの生きる力を引き出すために、大人が変わる。」
その想いで、現場に根ざした実践的な支援を続けている。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪