「過保護な子育て、何が危険?」親子の適切な距離感を保つ5つのヒント【専門家監修】

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「過保護な子育て、何が危険?」親子の適切な距離感を保つ5つのヒント【専門家監修】

お子さんが小学校に入りたての頃は、学校の準備を手伝ったり、やり方を教えたり、何かとサポートが必要なことも多いと思います。でも、しばらくして自分でできるようになっていても、保護者の方が必要以上に関わりすぎていることはないでしょうか。「よかれと思って」手や口を出してしまうことで、せっかくのお子さんの成長の機会を失う場合があります。どうすれば親子の適切な関係を築けるのか、家庭教育協会「子育ち親育ち」代表の田宮由美さんに伺いました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次


過保護とはどんな状態か

まず、子育てにおける「過保護」とはどういう状態のことなのか見てみましょう。
過保護というのは、「必要以上に保護している状態」のこと。

「子どもが不快に思ったり、困難を感じていたりすると思われる状況を見ると、つい親が先回りして回避しようとしてしまう」
「子どもが自分で考えている途中で、さっとアドバイスをしたり横から口を出してしまったりする」

……このような経験はないでしょうか。
「保護するのに適切な年齢を過ぎているのに、過剰に手を出してしまう」ことを、過保護と言います。乳幼児期の保護は必要ですが、子どもが成長してだんだんと自立していくべき時期に、「よかれと思って」つい手や口を出しすぎてしまう過保護な保護者の方は少なくありません。

少子化の今、「子どもがけがをしないように」「トラブルに巻き込まれないように」と心配される保護者の方が多くなっています。子どもが少ないことで、親が必要以上に子どもに目を向けすぎてしまうのでしょう。

「過保護に育てられた子」のリスクとは

依頼心・依存心が強い一方で、他人には頼れない

それでは、過保護に育てられた子には、どのような傾向やリスクがあるのでしょうか。

過保護に育った子というのは、依頼心・依存心が強くなる傾向があります。日常的に親が手助けをしているため、親が不在の集団生活に不適応となりやすく、なじめないような子も多くなります。親がいつも先にアドバイスをしてしまうので、自分で考えることが苦手になり、自立をしにくくなる傾向があるのです。

また、親への依頼心・依存心が強くなる一方で、意外に「人に頼れない」ようになってしまうという面も見られます。

親がいつも先に手を出してしまっているので、他人に頼んだり、友だちに任せたりという機会が少なくなり、「頼り方」「お願いの仕方」を学ぶ場を失ってしまうからだと考えられます。

社会に出ると、人に頼んだり、仕事で任せたりしなければいけない場面が数多く出てくると思いますが、必要な場面で他人に頼れず、一人で抱え込んでしまう危険性があります。

過保護というのは、子どもが頼る前に親がやってしまうこと。子どものほうから頼ってきたら手を貸していいのですが、「頼ってくる前に親が先に手を出してしまう」こと自体が問題なのです。

「責任転嫁」するようになる

また、過保護に育てられた子どもの傾向として、「だれかに責任転嫁をしがち」だということも挙げられます。親がいつも先回りしてしまうので、何かうまくいかないことがあると、「お母さんが言ってくれなかったから、こんなになってしまった……」などと、責任を転嫁してしまうのです。

経験によって学ぶことはとても多いもの。何かトラブルがあったときに、自分たちでなんとか折り合いをつける経験も大事なことです。しかし、例えば子ども同士で遊んでいてちょっとしたいざこざがあったとき、親がすぐさま介入してしまうと、子どもたちが話し合って解決していくという場を失うことになりかねません。

「転ばぬ先の杖」として親が安全策をとることは、必ずしも間違ったことではありません。ただ、失敗をしないように、けがをしないようにと親が先回りしすぎると、子どもの成長の機会を奪ってしまう可能性もあるのです。

いつのまにか過保護に?~保護者の行動をチェック!

では、子どもに対するどんな行動が「過保護」に該当するのでしょうか。次に挙げる中で当てはまるものがないか確認してみましょう。1つでも当てはまるようであれば、過保護な子育てをしてしまっている可能性があります。

【学校関係】

□親が毎朝起こしていて、子どもが一人で起きられない

□洋服や身につけるものをほとんど親が選んでいる

□子どもが、学校の持ち物準備を一人できるようになっても、いつまでも親が手伝う。

□子どもが忘れ物をしたとき、学校に届けることがよくある

□宿題や課題で子どもがつまっていると、すぐに手伝ってしまう

【友人関係】

□友だちと遊んでいて、ちょっとしたいざこざがあると即座に介入する

□友だち関係で悩んでいるとき、先回りして解決策を与えようとする

□学校や友人関係で何か問題があると、親がすぐに先生に連絡をする


□学校で困りごとがないか気になって、毎日子どもに聞いてしまう

【家庭生活】

□着替えや食事の際、子どもが自分でできることでもつい手伝ってしまう

□出かける準備を子どもにさせず、親が全部してしまう

□子どもが、習い事に飽きて、違う習い事をしたいと言うと、すぐに新しい習い事をさせる。

□おこづかいが足りなくなったらすぐ与える

□おやつやおもちゃ・ゲームなど「ほしい」と言われるとすぐ買い与える

解説

【学校関係】
小学校入学当初は親が面倒を見て、やり方を教える必要があります。
しかし、入学してしばらくたって子どもが自分でできるにもかかわらず、ずっと親が準備を手伝うのは過保護と言えます。

洋服や持ち物選びについても、多少コーディネートがあっていなくても本人の意志を尊重して見守ることが大切です。

忘れ物に関しても、多少の失敗は学校生活につきもの。一度失敗を経験することで「次は気をつけよう」と自分で意識できるようになるもの。先生や友だちに重大な迷惑をかけてしまうこと以外であればそっと見守っておきましょう。

【友人関係】
子ども同士の争いやトラブルをできるだけ回避したい親心は理解できますが、何かあるとすぐに親が駆けつけて介入するのは考えものです。

子どものほうから「どうしたらいい?」と相談される前に、親が先回りして行動してしまうと、子どもが自分で考えて解決する機会を奪うことになるからです。

また、毎日のように「学校は大丈夫?」「何か困っていることはない?」などと聞いて心配しすぎると、「そんなに心配するようなことが、学校では起こるんだ」と、逆に子どもの不安をあおってしまうことになりかねません。

【家庭生活】
一見体調はよさそうなのに、子どもが「おなかが痛いから今日は習い事を休みたい」などと言うことがあります。また「もう、この習い事は嫌、違う習い事をしたい」と言うこともあるでしょう。

そのような場合、まずは理由をしっかり聴き、そのうえで、気持ちの背景にあるものを探ってみることが大事です。

保護者の方は「見学にだけでも行ってみよう」「参加できそうなら参加しよう」と声をかけつつ、例えば、お友だちとの関係に問題がある場合はクラスを変更してみる、内容が難しくついていけないようなら家でも練習してみるなど、理由に合った対応をしていきましょう。

「ほどよい距離感」を保つための親の行動5

これまでに述べたように、子どもが自立するためのプロセスとして、乳幼児期にお世話をして保護するのは必要なことです。ただし、適切な年齢を過ぎてもずっと保護してしまうと「過保護」になってしまいます。

保護者の方はこの「保護している状態がいつごろ必要なくなるか」というのを見きわめて、適切な距離感を保つことが大切です。次に、親がどのように見きわめて、どんな言葉かけをしたらよいかを見ていきましょう。

1.「手伝って」と言ってくるまで見守る

見きわめ方の一つとして、子どもが自分から「手伝って」と意思表示をしたり、何らかのSOSを発信してきたりしたら、それは親の手助けが必要な時。しっかり耳を傾けて手伝ってあげましょう。一般的には「子どもから発信があった時」というのを、サポートのきっかけにするとよいと思います。

逆に言うと、それまでは多少危なっかしくてもじっとがまん。手や口を出したくても最後まで見守りましょう。

ただ、もう自分でできるようになっているのに、子どもから「手伝って」と言ってくることもあります。その場合、心に何らかの不安を抱えている可能性があります。

例えば弟や妹ができたとき、今まで自分を愛して大事にしてくれていたお父さんお母さんが、弟や妹にばかり目が向いていると感じてしまうことがあります。
「自分のことをきらいになったんじゃないか」「どうでもいいと思っているんじゃないか」と不安に思うがゆえに、父母の愛情を確かめたいという思いが「手伝って」という言葉になることもあるでしょう。

見きわめというところでは、環境が変わった時など、子どもに何か変化がないか表情や言動から感じ取れるように、日頃からコミュニケーションをしっかり取っておきたいですね。

2.失敗しても最後までさせてみる

子どもはたいてい、「できるようになったことは自分でしたがる」もの。自分でしようとしていることは、「たとえ失敗しても、させてみる」ことが大切です。

その際の具体的なポイントとしては、

・子どもの様子を最後まで見てみる

・子どもの話を最後まで聞いてみる

その中で何か困っている様子があったとしても、もしかしたら自力で解決できるかもしれません。

そこで失敗しても、「助けて」の意思表示があれば、「大丈夫だよ」と励ましつつ、失敗をカバーする方法を教えてあげればいいのです。

3.「一人でがんばった」行動を認める

また、子どもが一人でがんばった時は、どのような結果であっても認めることが大事です。

例えば、自分でペットボトルの飲み物をコップに注ごうとして、こぼしてしまうこともあるでしょう。

その際、「ほら見なさい。だからお母さんがやってあげるって言ったじゃないの」などと言いがちですが、そこをぐっとがまんします。

「一人でがんばってやろうとしたんだね」「今度はうまくいくよ」などと声かけをして、がんばった行動そのものは認めてあげてほしいと思います。

4.「自分で考えさせる」言葉かけをする

親は子どもの行動を予測して、「このままでは失敗するだろうな」と先まわりして手や口を出してしまいますが、どうしても心配な時は「自分で考えさせるような言葉かけ」をするとよいでしょう。

例えば、「夜遅くまで起きていて、明日の朝の遅刻が心配」という場面では、「早く寝なさい!」ではなくて「明日の朝起きられるかな? 大丈夫?」と、子どもが自分で考えられるような言葉かけをします。

他にも、「まだ宿題をやってないけど間に合う?」「明日の準備をしていないけど、慌ててやって、忘れ物しない?」などと、自分の行動を見直すきっかけとなる言葉をかけるようにしましょう。

頭ごなしに子どもの行動を指示するのではなく、子どもが自分で考えて行動を変えられるように促すことが大切です。自分で考えたことであれば、親に指示されるよりもスムーズに行動に移しやすいのです。

5.親が定期的に自分の行動を振り返る

そして、親子が適切な関係を築くために、親自身が子どもとの関わりを定期的に振り返ってみることも大切です。

振り返りのポイントとしては

・子どもの成長の機会を奪っていないか

・失敗してそれを学びとする機会を奪っていないか

・本当は子どもが自分だけでできることに手を出してないか 

という点を確認してみるといいと思います。

過保護な親御さんは、子どもを愛するがゆえに、手や口を出しすぎてしまいます。ネグレクトなどとは違うのですが、「子どものため」と思ってしていることが、実は子どもの自立を阻む結果につながっているのです。

また、手を出さないでおこうと思っていても、気がついたらつい手助けをしていたということもあると思います。

そういう時は、「お母さん、勝手に手伝っちゃったね。自分でできたのに、ごめんね」と、間違ったことを認める姿勢も大切です。「自分が正しい」という思い込みが強すぎると、子どもへの愛情のかけ方が間違った方向に突き進んでしまうことがあります。
「しまった」と思ったら謝る姿勢を子どもに見せたほうがよいのです。

振り返りの時間は、「毎日ベッドに入って眠る前の時間」でも、「月初めの週末」でも構いません。

「過保護な子育て」は多くの場合、保護者の方が無意識にやってしまっていることが多いものです。この記事を目にとめて、「自分は過保護じゃないかな?」と思われた人ならきっと大丈夫。ちょっと意識するだけでも、「過保護な子育て」のリスクは軽減されるはずです。

この記事の監修・執筆者

家庭教育協会「子育ち親育ち」代表 田宮 由美

小学校教諭・幼稚園教諭・保育士の資格を保有。幼稚園、小学校に勤務。幼児教室を地元で展開。また小児病棟への慰問や、子どもの悩み聴く公的ボランティアなど多方面から多くの親や子どもに関わる。その後「家庭教育協会 子育ち親育ち」を開設。

現在は、執筆、講演、メデイア取材、教育機関研修などを中心に活動をしている。テレビ、ラジオにも出演。執筆記事は、Yahoo!ニュースやLINEニュースにも取り上げられ、深い共感を得ている。子どもの自尊感情について研究した論文は2本が国立国会図書館に貯蔵。著書『比べない子育て』(1万年堂出版)は翻訳され台湾でも出版。他『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(KADOKAWA出版)がある。

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