【専門家監修】子どもの「主体性」と「協調性」をどう育てるとよい?

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「子ども主体」ということばがよく聞かれるようになり、子育てにおいても、主体的に行動できるように育てる大切さが注目されています。しかし一方で、共同生活のなかでは自分の思いを隠して、その場をうまく切り抜ける力も必要……⁉ そこで保護者として、この二つをどのように育てたらよいのか専門家に聞きました。

お話/小山朝子先生(和洋女子大学こども発達学科准教授)

目次

「子ども主体」はなぜ大切なの?

子育ては、我が子のよりよい成長を願いながら保護者が愛情をもって関わる日々の積み重ね。その「我が子のよりよい成長」というのは、具体的にどのような成長をいうのか? ということが、心配になる保護者のかたも多いことでしょう。

これからの世界は、AIが生活をより便利にしていくでしょう。そのなかで、人間がより豊かに人間らしく生きることの大切さが問われる社会となります。つまり、現代の子どもはAIとの共存が必須。AIがさまざまな業務を担うようになるからこそ、一人ひとりが得意とする能力を伸ばし、互いに個性を認め合うことが重要となるのです。

近年、このような社会のなかで、人が生涯、より豊かに生きる力として、乳幼児期に「社会情動的スキル」(非認知的能力)を育てる大切さが明らかになってきました。これは、学力などのようにいわゆる数値にあらわすことができる能力と違い、自尊心や自己コントロール、忍耐力、試行錯誤する力といったものがあげられます。

このような能力を育むためには、子どもの育ちに寄り添う大人が「子ども主体」の考え方をもつことが大切です。これは、子どもが思うままに好きなようにすることとはまったく異なります。

「子ども主体」は、「自分でやりたいことを見つけて、やりたいことができるような方法を自ら考えて達成していくこと」です。やりたいことをするには、さまざまな失敗や困難が起こり、悲しかったり、困ってしまったり、つらく感じたりすることがあるかもしれません。それでも、“やっぱりあきらめない!”と前向きな気持ちで、試行錯誤しながらやりたいことを達成していくことなのです。

この経験には、子ども自身が、行動していること、感じていること、考えていることの主人公は自分なんだと認識することが大切。この認識こそが、「社会情動的スキル」(非認知的能力)であり、これを身に付けるプロセスが今の子どもたちにより必要とされている経験です。さらに、そのなかでやりたいことを達成する経験は、さらなる自己肯定感を育んでいくのです。

子どもは出生してしばらくは、どうしても自分で生命保持ができない故に、愛情ある大人に世話をしてもらいながら生活をします。その愛情ある大人の受容的・応答的な温かいやりとりのなかで、この世に生まれてきたことを肯定される経験を積み重ねていきます。1歳を過ぎ、自分のことが少しずつできるようになると、“イヤ!”“自分で”などと伝えてくることもありますが、その行為そのものも含め丸ごと受け止められていくことで、おおむね3歳ごろに自己を獲得していくのです。その経験の積み重ねを経ることによって、子どもは自分自身の人生の主人公として生きる基盤を身につけていくでしょう。つまり、出生から約3年間は「子ども主体」の大切な基盤づくりともいえるかもしれません。

3歳未満児は自己を獲得していく時期でまだまだ発達がなされていく過程にあります。だから、自分を中心に物事を考えて当たり前ですし、それを丸ごと大人が肯定的にとらえることで、自己の獲得となるわけです。

「子ども主体」と「わがまま」は全然違うもの

このように考えると、一見、「子ども主体」を「わがまま」ととらえてしまうかもしれませんが、そうではありません。

自己を獲得した子ども(おおむね3歳)は、友だちにも思いがあることを知ったり、自分との気持ちのすり合わせを経験したりしながら、友だちにも「自己」があることを認識していきます。

「わがまま」は、その認識がありながらも、「あくまでも自分が好きなように行動したり物事を考えたりする」という姿なのではないでしょうか。

「協調性」と「自分を抑えて人に足並みをそろえること」とは違う

保護者のかたのなかには「子ども主体」の大切さは、なんとなく理解するけれど、実際に子どもが生きていくうえでは「協調性」のほうが大事なのではないか? と考えるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

「協調性」とは「自分と異なる環境や立場にいる人、異なる考えや意見をもっている人たちと協力しながら物事を進めていくことができる能力」です。自分もこれをやりたいから、いっしょに取り組む。そのなかで友だちと意見がぶつかり合っていざこざがあったとしても、互いに自分たちの考えをすり合わせながら“自分たちで納得して決める”プロセスを経て互いに協力し合うことです。これは、“自分が我慢をして物事を進める”“自分の思いを伝えずに従う”“周りの人に合わせる”こととはまったく異なります。つまり、「協調性」というのは、「子ども主体」でいるからこそ、育まれていく能力なのです。

保護者にとっていちばん大切なのは、保護者・大人こそが「子どもの応援団」になることです。それは、我が子の味方というよりは、“どの子も応援する大人”という意味であり、子ども一人ひとりの「自分自身が決めた選択」を尊重し、意味づけて伝えていくことが大切だと思うのです。

たとえば子どもどうしのもやもやした出来事があれば、さまざまな切り口で「それってどういうこと?」「ほかには?」など常に肯定的なやりとりを大切にしながら、子どもどうしで気持ちを気持ちよく出せるようにしていきましょう。うまくいかなかったときには、次につながるアドバイスをいくつかの選択肢のひとつとして提案することもよいでしょう。残念な結果のときには、「そういうときもある! でも、次はどうする?」という前向きな気持ちをもてるように関わりましょう。そうすることが、子どもの次の笑顔につながるのではないかと思います。

では、具体的なケースをあげて、どのように対応するとよいかを考えてみましょう。

【事例1】習い事をすぐに「やめたい」と言い出した子どもへの対応は?

サッカーを習いたいと言って習い始めた我が子。でもほかの子のようにうまくできなくてすぐに「やめたい」と言い出しました。子どもの意思で始めたものだから、子どもの意見どおりにやめさせてあげるのが「子ども主体」?

子どもが自分で考え、出した答えを伝えて初めて「子ども主体」

子どもの意見をただ尊重するのではなく、なぜ、やめたいのか、その理由や今の気持ちを大人がよく傾聴することが大切です。どうしてそのような思いに至ったのか、それは自分が決めたことと、ちゃんと理解しているか、しっかりと聴きましょう。「物事をやめる=あきらめる」ではありません。その際には、否定的なことばは避け、肯定的なことばを使って、子どもが話しやすい雰囲気をつくることも重要です。聴いている大人が納得できないときには、「私は~と思うけど、あなたはどう思う?」と正しいか間違っているかを決めつけずに、ひとつの思いとしてIメッセージで話しましょう。そして、子ども自身がきちんと自分で考えて決定したという気持ちをもてることが大切です。

 つまり、子どもの意見どおりにやめさせるのが「子ども主体」ではなく、大人が肯定的に傾聴するなかで、子ども自身がしっかり考えたプロセスと、その結果をきちんと伝えられる、あるいはそのつもりで大人に手伝ってもらいながら一生懸命話してわかってもらおうとすることが「子ども主体」なのです。

【事例2】自分の意見を言わない我が子にはどう対応したらよい?

友だち親子と買い物に行きました。我が子の欲しい物と友だちの欲しい物が同じで、1つしかありません。友だちは「これじゃなきゃいや!」と主張し、我が子はだまってしまいました。このままでは友だちの意思が尊重されてしまいます。こんなとき保護者としてどうすればよい?

「欲しい」と言わないのも子どもが選択したこと

2人が欲しい物が1つしかないときに、“譲るべき?…でも欲しい”という揺れる思いを経験したことがある人は少なくないでしょう。“どうしても欲しい!”“欲しいけど言えない”という気持ちは、どちらも事実なのです。ただし、今回のように育つ環境が異なれば、その思いの表現方法も異なります。保護者としては、親心が揺れてとても迷う部分があるかもしれませんが、「○ちゃんはそう言ってるけどどうする?」とさりげなく子どもの気持ちを確認することはしてもよいと思います。しかし、その後は子どもの決定に委ねてみましょう。本当は自分も欲しいけど遠慮した、あるいは欲しいと言えなかったということも「自分で決めたこと」の経験です。後で「あのとき、やっぱり欲しいと言えばよかった」などという話が子どもから出たときには、その気持ちを肯定的に受け止め、「どちらにしてもまずは気持ちは伝えてみるといいね」「今度は相談するのもいいね」「ほかのお店をひと回りさがすこともできたね」など、さまざまなカードを出して次につなげていけるようにしたいものです。

【事例3】自分の意見をしっかり言う我が子に「協調性」は育っているの?

友だち数人と遊んでいるときも「○○しようよ」と提案するリーダー格の我が子。ほかのママには「積極性があっていいわね」と言われるけれど、ほかの子がやりたいことに合わせてあげなくてよいもの?

大人が名脇役となって、「協調性」を学ぶ場をつくろう

積極性があり、よく提案してくれる子は、きっと友だちによかれと思って提案しています。その気持ちや行動力については、大いに認めたいすばらしい力です。一方で、その提案に「それは嫌だ」「~したほうがよい」など意見する子どももいるかもしれません。それは、提案している子どもと意見を言う子どもが「考えをすり合わせようとする力」をもっている、つまり「子ども主体」の姿のひとつといえるでしょう。

この状況でいちばん気持ちを読み取る必要があるのは、イエスでもなくノーでもなくだまっている子どもです。どうして何も言わずにいるのかを大人が読み取ることが大切です。本当にどちらでもよいのか、本当は迷っているのか、それともこの提案をあまり理解できていないのか、子どもどうしの力関係が生じているのか。保護者としても迷うことでしょう。

そんな状況のときには、「その提案で伝えたいことはわかったよ。でも、いろいろな考えがあるから、お友だちがどう思っているか聞いてみるといいかもね」と提案した我が子の気持ちも肯定的にとらえながら、ほかの子どもが意見を言えるチャンスをつくることも大切。あるいは、「ここがよくわからないので教えてくれる?」「すてきな考えだね。ほかにもこういう方法もあるかと思うけど、どうしてそういう方法なの?」と前向きに質問するのもよいかもしれません。大人は、常に名脇役となって、どの子も発言できる環境づくりをしていくと、「協調性」を学ぶ場となるでしょう。

この記事の監修・執筆者

和洋女子大学こども発達学科准教授 小山朝子

公立保育園で約20年間の保育経験ののち、帝京平成大学講師を経て現職。専門は保育学と乳児保育。保育雑誌での連載にも定評がある。

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