本当は怒りたくない!! アンガーマネジメントでイライラ&怒りをコントロール

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「自分がこんなに怒りっぽいとは思わなかった…」「いつもイライラして、子どもに怒ってばかり…」と思っているママは案外多いのでは?

怒ってばかりの自分に「こんなわたしは母親失格…?」と落ち込んでしまうことも。

そんなママたちに知ってほしいのが「アンガーマネジメント」。怒りをコントロールして、自分を嫌いにならずに子どもと向き合う術を身につけましょう。

お話:篠 真希(アンガーマネジメントシニアファシリテーター)
イラスト:ユキミ

目次

「怒り」=「防衛感情」で、安心・安全を守るためのもの

朝、子どもがなかなか起きず、食事や着替えにも時間がかかって、「もう遅刻しそう!」となると、つい「早くしなさい!」「なんでちゃんとできないの!」と怒りが爆発! そして、イライラしたまま一日がスタート。

夕方お迎えに行っても「まだ遊ぶ!」と園から出るまで時間がかかったり、夕ごはんからお風呂、寝かしつけまで、時間がないのに言うことを聞いてくれなかったりすると、メラメラと怒りがこみ上げて、「いい加減にしなさい!」と大きな声が出てしまう…。

子どもを怒りたい、叱りたいと思って子育てをしている人はいないはず。でも、気がつくといつも怒っていたり、イライラしてばかり。子どもの寝顔を見ながら「ごめんね」「わたしって駄目だな」と、自己嫌悪に陥ってしまったりすることもあるでしょう。

じつは、そんな思いを抱えているママは大勢います。いつもニコニコ笑顔なママも、おっとりして大きな声を出したことなんてなさそうなママも、バリバリ仕事をこなして冷静沈着なママも、きっと家の中ではイライラしたり、感情的になって怒ってしまったりすることがあるはずです。

誰も、「家では怒ってばかりです」と言わないだけ。

外では抑えられる怒りも、身近で気を許した人だけの家という空間だと、抑え込むのが難しいのです。

そもそも「怒り」とは、人間に生まれつき備わっている感情で、危険なものや不快なものから遠ざかったり身を守ろうとしたりするサイン

「防衛感情」ともいわれ、自分の安心・安全が脅かされたときに自分を守るためにある必要なものです。

自分のことを“怒りっぽい”人と思わず、自分は「安心・安全を守る意識が高い!」と捉えると、前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。

注目の「アンガーマネジメント」は、怒りをコントロールする方法

とはいえ、怒りには強力なパワーがあります。

怒りが頂点に達すると、われを忘れて怒鳴ったり、相手を傷つけることを言ったり、自分でも怒りをコントロールできなくなったりしてしまいます。親子関係や、家庭での日々の生活にも影響を及ぼしてしまう恐れも。

そこで、怒りを抑えつけるのではなく、上手に付き合っていくための方法として知っていただきたいのが、「アンガーマネジメント」です。

アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれた心理トレーニングです。

具体的なノウハウをもとに、誰でもできる方法として世界中に広がり、日本でもビジネスや教育現場などで実践されています。

子育て中のママたちに、アンガーマネジメントを取り入れるためのポイントや、具体的な方法を紹介します。自分に合うものや取り入れやすいものから試してみてください。

子育て中のママにおすすめ! アンガーマネジメントのポイント

繰り返すことで怒りは大きくなるもの。「今」だけを見る!

子どもに何か注意をするとき、最初のうちは普通に注意できていても、それが何度も何度も繰り返されると、「またか…」と怒りのスイッチが入るきっかけになります。長い時間一緒にいるからこそ、「またか…」のいらだちは続きます。

今までの繰り返し(過去)を思ってがっかりしたり、これからもずっとそうなのかな…(未来)と不安に思ったりしてしまうのでしょう。

つまり、過去への不満と、未来への不安から、より怒りが膨らんできてしまうのです。

叱るときは、「今、何に対して怒っているのか」を冷静に判断して、子どもと向き合うようにできるといいですね。

期待値を下げてみる

子どもが自分の思うように動いてくれない、これくらいできてほしいのに…といったママの理想や願望(期待値)に届かないことも、イライラの要因。

イライラ&怒りの頻度を下げるためには、期待値を下げて、大目に見ることを増やしましょう。

例えば、片づけに関して。玩具や絵本などがそれぞれの収納場所にきれいに戻され、整理整頓できていることが理想です。

でも、期待値を下げて、床に物が転がっていなければOKとしてみてはいかがでしょう。ハードルを下げ、クリアする経験を重ねることは、子どもの自信にもつながり、ママの怒りが沸騰する回数も減っていきます。

子どもは100回言わないとわからないもの!

「何回言ったらわかるの!」「この前、教えたでしょう!」と、口に出したママも多いでしょう。こうした言葉を繰り返すたびに、また怒りは増していきます。

でも、「教えたからできるはず」「前にやったからわかっているはず」は、ママたちの言い分。子ども自身が理解できていたとは限りません。言われるがままだったり、そのときはできたけれど忘れてしまったという場合もあります。子どもによって理解度には差があり、その子によってできるタイミングは違います。

そこで、「子どもは100回言わないとわからないもの」と前提を変えてみます

それが、30回でできたなら「もうできたの! すごい!」とほめることもできるでしょう。親の受け止め方ひとつで、子どもの成長は大きく変わってきます。

ぐずる理由を考え、5分間だけ関わってみる

忙しいときに限って、駄々をこねたりぐずってしまったりすることがあります。大抵、朝出かける前やごはんの支度中など、ママの忙しい時間帯に多く見られるようです。

これは、ママの忙しそうなせかせかオーラを感じ、ママの気持ちが自分に向いていないことへの、子どもなりの不安や焦りの裏返しかもしれません。

そこで、忙しいときこそ手を止めて、5分でもいいので子どもと向き合う時間をとってみてください。数分でも話を聞いてあげることで、気が済む場合もあります。

「~~しなきゃ!」「~~であるべき」と思い込み過ぎない

まじめでがんばりやなママほど、「母親はこうあるべき」という理想を掲げ、「ごはんやおやつは手作りであるべき」と考えたり、子どもにも「○歳ならここまでできなくては」と発達のラインをひいてしまったりしがちです。

しかし、そうしたルールや課題を設定することで、結果的にできないことに苦しめられてしまうことにもあります。

理想をあげればきりがありませんが、「今でなくてもいいか」と大らかに捉えられると、イライラするケースも減ってくるでしょう。

怒りをコントロールするための3ステップ

その1 カッとしたときの衝動を抑える

深呼吸をする(呼吸リラクゼーション)

怒りを感じたとき、その思いのまま言葉を発する前に、腹式で深呼吸をします。

鼻から息を吸い、吸った倍くらいの時間をかけてゆっくりと口から息を吐き出します。呼吸に集中することで、怒りが鎮まりやすくなります。

落ち着く言葉を唱える(コーピングマントラ)

自分の気持ちが穏やかになるような言葉を考えておき、自分に言い聞かせます。例えば、「大丈夫だよ」でも、「たいしたことない」「気楽にいこう」「仕方ない」など。「ビビデバビデブー」など、語呂がいい言葉や、意味はないけれどハッピーになれる言葉などを、子どもと一緒に考えて、一緒に言ってもOK。

1点に意識を集中する(グラウンディング)

反射的に言葉を発しないために反応を遅らせる方法。目の前にある何か(ペンやスマホ、コップ、自分の手や爪などなんでも)に意識を集中し、それをじっくり観察します。「今」「この場」に集中することで、怒りを大きくする要因ともなる過去や未来についても考えないようにするのです。

一度、その場から離れる(タイムアウト)

怒りが激しく、その場にいると、余計にひどい言葉を言ってしまいそうなときは、一旦、その場を離れます。ただ、子どもから離れる際は、「トイレに行ってくるから」「顔を洗ってくるからね」などと、必ず戻ってくることを伝えて離れてください。何も言わないままだと、「ママは戻ってこないかも…」と子どもがパニックを起こしてしまうこともあります。

その2 怒りを客観的に見つめる

怒りに温度をつける

怒りをコントロールするのが難しいのは、それが目に見えないものだからです。そこで、怒りを数値化して基準を設けます。人生で最大の強い怒りを「10」とし、穏やかな状態を「0」として、この怒りは一体いくつなのか、を考えます。数値化し温度として捉えることで、冷静に把握することができます。

怒りを書き出す(アンガーログ)

怒りを感じたことを書き出すことで、自分の怒りに向き合うことができます。

いつ、どこで、どんなことがあったのか。そのとき思ったことや、自分がどのような態度をとったのかなどを、書き出します。怒りの温度も記録します。

書き出す作業と、それを客観的に見ることで、怒りに対応するときのヒントになります。

その3 心のコップがあふれないように

体を動かす(身体リラクゼーション)

怒りには、精神的なストレスだけでなく、身体的なダメージもあり、免疫力も低下します。ウォーキングやジョギング、水泳、ヨガなどの有酸素運動をすると、脳の血流もよくなって、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌され、ストレスが和らぎます。あまり激しい運動は、リラックス効果がないため、筋肉をほぐすストレッチだけでも。

いいことばかりを日記に書く(ハッピーログ)

うれしかったこと楽しかったことなど、些細なことでもいいので、ハッピーなことだけを日記に書きます。

怒りっぽくなっているときは、嫌なことばかりに目が向きがちですが、身の回りのよかったことに意識を向けることで、前向きになるきっかけになります。

ルーティンを変えてみる(ブレイクパターン)

普段の生活のなかでパターン化していることを、少しだけ変えてみる方法です。決まったパターンで動いていると、効率的で無駄がなく、安心ですが、子どもと一緒だと予定通りにいかないこともあります。そこで、パターンに執着せず、柔軟に対応できるように、意識的に変えてみましょう。

この記事の監修・執筆者

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会1期生、アンガーマネジメントシニアファシリテーター 篠 真希

大学卒業後、総合商社秘書室勤務。その後7年間の海外での子育て経験を経て、アンガーマネジメントを学ぶ。日本で初めて「母親のためのアンガーマネジメント入門講座」を開催。キッズ向けプログラムの開発、キッズインストラクター養成講座の立ち上げに携わり、全国各地で指導者を養成。著書に『子育てイライラ・怒りにもう振り回されない本』(すばる舎)、『イラストでわかる 怒らずのばす育て方』(池田書店)など多数。

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