保育参観で、子どもが友だちの輪に入っていけずもじもじしていた、学校公開で、子どもが休み時間に一人でいた…。
そんな我が子を見て、もうすぐ小学校に入るのに友だちできるのかな? 学校の休み時間は一人でいることが多いみたい、と心配する声が聞かれます。
そこで幼児教育者である竹内エリカさんに、我が子のために親がしてあげられることなどをうかがいました。
監修:竹内エリカ(一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長) イラスト:ヤマハチ 文:こそだてまっぷ編集部
どうして人見知りをする子と、しない子がいるのでしょうか?
「生まれつき」であることが多いです
「認知過敏」といって、周りの情報をインプットするのが過剰なお子さんがいます。音や光、人の心など、いろいろなものを敏感に察してしまうのです。
お子さんが繊細だとその子の親も繊細だったりします。繊細な親は、普段から「うちの子大丈夫? 小学校に上がったら友だちできるかしら?」といった会話をするので、子どもは物事に取り組むときに慎重になり過ぎてしまうのです。 そういう親の考え方や育て方の影響もありますが、生まれつきの個性によるものが大きいです。
友だちの輪に入っていけない、ポツンと一人でいる我が子を見たら?
「一人でいることを“よし”としている」場合が多いので見守って
「人見知り」の子は、人と関わるのがイヤなのではなくて、人と仲良くなるのに時間がかかるのです。
園や学校の部屋の隅っこで一人でいる子は、大勢といっしょにいるのがあまり好きでなく、「あそこには入りたくない」と思っているかもしれません。でも、寂しいと思っているわけではなくて好きでそこにいる場合があります。
初めて会った人に対しては「この人誰? いい人かな? 悪い人かな?」と考えて少し距離を置いて観察していて、「大丈夫だ」と思ったら入っていくのです。
ですから、一人でいるからと、大人が「みんなといっしょに遊びなさい」と強制するのはNGです。みんなを観察しているときに、大人が「ほら、きちんと挨拶しなさい」「仲良くしなさい」と言って子どもを押し出してしまうと、子どもは不安でしかないですよね。子どもにとってみれば、自分のペースが守れないので余計不安になってしまうので、その子のペースを待ってあげてください。
また、親は、子どもがよその子とちがうと思わずに、「うちの子は自分のペースがあって時間がかかるんだ」と理解して、その時間をつくってあげましょう。もともと芯が強いタイプなので強い子に育ちます。
もし、「入りたいのに入れない」のであれば、「ちょっといっしょにやってみる?」などと声をかけて助けてあげてください。
「人見知り」の子どもにとってのメリット・デメリットは?
メリットは感覚が鋭く思いやりがあること、デメリットは慣れるまでに時間がかかること
〈メリット〉
感覚が鋭く芸術的才能があり、人の気持ちを察し、思いやりがあるやさしい子で、人に意地悪をしたり、傷つけたりすることはあまりありません。また、まじめにコツコツと人間関係を築いていくので、芯が強く、仲良くなってしまえば信頼を得られます。また、飽きっぽくなく、集中力もあります。
〈デメリット〉
繊細さを持つために、「行きたくない」と言って登園や登校ができなくなったり、しぶったりするのが多いのがこのタイプの子です。何事も新しい環境になると「人見知り」「場所見知り」をしてなじむまでに時間がかかるので、環境の変化や集団行動においては、親が心配になることはどうしても多いと思います。
もし登園・登校をしぶったら?
親がいっしょに登園・登校してOK
不安から登園や登校時に、「ママもいっしょに来て」と言ったりしますが、行けないのではなくて、「ママといっしょなら行ける」んです。園児だったら「早く迎えに来て」と言う子もいるでしょう。それは「1日は無理でも半日ならがんばれるから、半日は行きたい」と思って言っているだけ。どうしたら行けるか、本人なりにその方法を探っています。
小学生は「迎えに来て」と言うことは少なく、何か不安があって「いっしょに来て」と言うことはあっても、案外学校に行ってしまえば楽しく過ごして帰って来ることが多いので、見守ってあげてください。
もし、小学校に入学してから「いっしょに来て」と言われたら、「じゃあ3日間だけね」「あと1日ね」など、親がその期間を指定しましょう。このタイミングは意外と大事。子どもから「もう大丈夫」と言ってくれればいいですが、指定をしないと引き際がわからなくなってしまいます。「今日学校でこんなことがあった」と楽しそうに報告してくるようならもう安心。スパッと引いてしまいましょう。
夜になっても引きずって「行きたくないな」と言うときは、「いっしょに行こうか?」と言ってあげてください。
「人見知り」による登園・登校しぶりを改善するには?
前もって不安を減らせるようにしましょう
新しい環境が苦手な「人見知り」の子には、入園、入学前からその場所を見せてあげれば、「場所見知り」が減らせます。
入学前なら、「小学校をいっしょに見に行こう」と言って、通学路をいっしょに歩いて学校を実際に見に行くことをお勧めします。「こんなお友だちがいるんだね」「あんなランドセルをみんな持っているんだね」と散歩がてら話すだけでも、しぶりはかなり減ります。
入学していきなり「初めて友だちといっしょに行かなければならない」「知らない場所に行かなければならない」「知らない先生がいる」だと情報量が多過ぎてしまいます。でも事前に知っておけば場所見知りはしないし、行き方を知っていれば不安もありません。新しい友だち・新しい先生がいるという不安は残りますが、だいぶハードルは下がります。
せっかく友だちができたのにシュンとしていたら?
子どもの判断が大事、でも場合によっては親が介入を
親がよく心配するのは、せっかくできた仲のいい友だちが気の強い子だった場合です。おもちゃを取られたり、強いことばを言われたり、「もう仲間に入れない」と言われたりしたときに、言い返せなくてシュンとなっているときがあります。そんなときに親が「ちゃんと言い返しなさい」「はっきり言いなさい」と言っても、人見知りをする子はなかなか言えません。
もし本人が「こんなこと言われたからすごくイヤだった」「あのお友だち怖い」と家で言ったら、「怖かったのね」と一旦気持ちを受け入れてから、「お母さんから言ってあげようか」「先生に言ってもらう?」「お友だちにこうしてもらおうか?」など、親が助けてあげましょう。
本人が「いい、言わないで」と言った場合、「そんなことを言って相手を傷つけるくらいなら言わないほうがいい」と思っています。そのときは「わかった。ママは味方だから、何かあったら言ってね」とだけ伝え、見守ります。1か月くらい経つと気持ちが整理されて感情が整ったあとに話してくれたりします。そういう自分で越えられる見守り方も必要だと思います。
「人見知り」が原因で子どもが不調になったら?
子どもの話を聞き、「ダブルバインド」にならないように努めて
大人が「やりなさい」と言って強制すると、子どもはやれなくなってしまいます。
たとえば、「友だちと仲良くしなさい」と言われるけれど「今はできない」、「学校に行きたくない」と思っているのに、親に「学校に行きなさい」と怒られるなど、2つの思いにがんじがらめになってしまって身動きが取れなくなってしまうことを「ダブルバインド」といいます。
そういう状態になると、何も言えなくなってしまい、「おなかが痛い」「頭が痛い」など、子どもの体に不調が起こることもあります。そういうときは、子どもの声に耳を傾けてあげてください。
担任の先生には、子どもが人見知りをすることを伝えるべきですか?
伝えていいと思います
新学期は担任の先生も子どもたちのことがわからないので、個々の情報があるとすごく助かると思います。
小学校の入学時は、どうしても暴れん坊の子、落ち着かない子、騒がしい子に担任の目が行きがちなので、繊細でおとなしく目立たないタイプの子はなかなか印象に残りにくいものです。連絡帳でいいので、「小さいときから繊細なところがあって、なじむまでに時間がかかります。気づいたことがあったら教えてください」などと、伝えておくといいでしょう。
繊細な子は、クラスの子が叱られているだけで怖くなってしまったり、友だちどうしが言い合いの喧嘩をするのを聞いただけで怖くなったりしてしまうので、ケアが必要なことがあります。それを先生に知っておいてもらったほうがいいと思います。
「人見知り」は大人になったら直りますか?
きっと直るので気にし過ぎないで
子どものときは「人見知り」という形で出ますが、本来は人が好きなので、社会性がついてくると改善してくるでしょう。やさしい性格なので人気者になるかもしれません。ただし、繊細さは残り、「こんなこと言っていいのかな」などと、いろいろなことを気にします。でも、大人になると、それがやさしさになって表れるので、気にし過ぎないようにしましょう。
人見知りする子は、友だちの数は多くないかもしれませんが、深い付き合いができる子になるでしょう。友だちが同じようなタイプの子だったら、互いに気づかい合えるので最高ですね。
「人見知り」が直ってほしいと思っている保護者へ
よく保護者から、「自己肯定感を上げるためにはどうしたらいいですか?」と質問をされます。「自己肯定感が低いから上げたい」と思っている時点で、子どもがありのままでいいと思っていない、うちの子はダメだと思っているわけです。そういう考えを持つ家庭の子どもは自己肯定感が上がりません。
繊細で、なかなか新しいことにチャレンジできない慎重な子は、コツコツ陰で小さい努力を積み重ねることができる努力家です。親が「人見知り」を受け入れ、「それってすばらしいこと!」と伝えてあげたら、「そのままでいいんだ」と子どもの自信につながり、自己肯定感は上がるでしょう。
この記事の監修・執筆者
たけうち えりか/幼児教育者。一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長。2児の母。
お茶の水女子大学大学院修士課程修了。20年にわたり講演・作家業をメインに多動症・不登校の克服、giftedと呼ばれる子ども達の心のケアなど育児・教育の専門家として約2万人の親子と関わる。「男の子の一生を決める0〜6歳までの育て方」他著書多数。
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