【給食で分かる家庭の様子】“生きること”につながる大事なしつけとは

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こんにちは、現役小学校教諭の舟山由美子です。

食欲の秋ということで、今回のテーマは給食です。給食といえば、毎日の学校生活で、多くの子どもが楽しみにしている時間。誰もが給食には、さまざまな思い出を持っていることでしょう。

私たち保護者世代と比較して、今の子どもたちが食べている給食はどのように変わってきているのでしょう?

目次

時代によって変化してきた食器や献立

給食というと、世間的には「アルマイトの食器にビンの牛乳」というイメージが現在でも強い傾向があるようですが、私がこれまで勤務してきた東京都の公立小学校では、だいぶ以前から、給食の食器は瀬戸物に変わっています。

保護者の方々の中にも、自分のときにはすでに瀬戸物だったという方もいらっしゃるかもしれませんね。牛乳の容器は、紙パックが主流です。大人数のクラスだと、ビンよりも軽くて持ち運びやすいという利点があります。

毎月学校から配られる献立表をご覧になるとわかりますが、給食の献立も時代とともに変化してきました。

献立の内容は学校によって様々ですが、本校の給食室の場合は、化学調味料を使わない、出汁をとる……、ハンバーグやコロッケも最初から作る、たれやソースも作るそうです(できあいのものやパックの物を使いがちな我が家とは全く逆です)。これは時代性というよりも、「食育」のためという側面が大きいのだと思います。

最近では「地産地消」(その地で生産されたものをその地で消費すること)ということで、東京都の場合は、八丈島のトビウオ・大島のアシタバ、を使うなど、都内の特産品を意識した献立が出ることもあります。皆さんの地域でも同じように、郷土色豊かな献立が作られているのではないでしょうか。

さて、その「食育」という言葉も、平成17年に食育基本法が施行されたことをきっかけに学校現場に浸透してきたものです。これによって、「栄養教諭」が配置された学校もあります

栄養教諭とは「教師」の資格に加えて「栄養士」の資格が必要な職分で、その栄養教諭が中心となって、食育を研究テーマに据え、学校ぐるみ、場合によっては地域ぐるみで取り組んでいるところもあります。

実は学校には、毎年「研究テーマ」というものがあり、それぞれの学校でテーマを設定し、年間の授業や行事に取り入れるなどして、学校全体で取り組みます。「食育」がテーマになった場合、担任たちも授業の一環としてかかわることになるのです。

「食べ終わるまで昼休みなし」は本当?

給食という話題になると、「都市伝説」のようによく聞かれるのが、以前は食べ終わるまで昼休みなしということもあったなどという話です。保護者の方々の中にも、そういう経験をされた方もいらっしゃるでしょう。

これについては、教師それぞれの考えによるところが大きいので、昔はそうしたクラスが多かったなどと一概には言えないのが正直なところです。「食べる力」についても個人差があり、「食」に関しての価値観も人それぞれですから。

私自身のやりかたは、アレルギーがない食材については、「嫌いでもひとくちは食べようね」と言っています。理由は、まず作っていただいた物・出された物に対する感謝の気持ちをもつことと、味覚は小さい頃に体験しておくことが大事だと思うからです。

我がクラスでは「いただきます」のあと、自分の「食べる力」に合わせて量を減らし、決められた時間内に食べられる分だけにします

最初に量を減らすとおかわりはできません。低学年のうちは、よく「目で食べる」と言われるように、自分の「食べる力」がわからないまま、食べられる量だと思いこんで食べ始め、最後はやっぱり無理……という感じになってめそめそすることもあります。でも、何度か経験を積むうちに、徐々に自分でわかってくるようです。

ちなみに、量を減らすとき、まるで汚い物をよけるかのようにしている場面を見かけることがあります。シイタケやニンジンが嫌いなのはわかるとしても、それらをはじくように横に出すのです。そんなときは、「せめてすくって、そっともどしてください」と伝えます。「食材に失礼です」とも言います

ただし、好き嫌いの問題ではなく、見たことも食べたこともない物は手をつけられないことも多いようです。私が印象に残っているのは、「衣かつぎ(サトイモを皮ごとゆでたもの)」が出たときの子どもたちの反応です。これまでの人生で見たこともなかったのでしょう。「どうやって食べるの?」と聞かれたので食べて見せました。果物ではまるごと1個「びわ」が出たときも似たような反応でした。

ほかにも、ブリの照り焼きなど、和食の献立やピクルスなど酸っぱいものが献立に出ると、残さい(食べ残し)が多い傾向があるようです。いろいろなものを食べられるようになるには、経験も大切だということですね。

食べることは、生きること。家庭の役割も重要

日ごろ、給食の様子を見ていると、「食べる」ということに対する家庭での様子が見えてくるような気がします。例えば、箸使い・食器の持ち方・食べる姿勢です。

これらは、食事の基本的なマナーであって、学校ではなく「家庭」で培われるものです。食器を持たないで食べる子やひじをついて食べる子、きちんと座れない子なども、教室の中でとても目についてしまいます。

なんでもきちんと食べている子に尋ねると、嫌いでも食べるように家庭でしつけられています。食べ終えた食器を見ても、片付け方を見ても、給食当番で配膳している様子を見ても、「家庭」での様子がうかがえます。

子どもたちの「孤食化」「個食化」などが言われていますが、食べることは栄養を摂取するだけでなく、自分で生活していく力、つまり「生きること」につながる大事なしつけなのだと改めて思わされます。

食が豊かになった分、生きる力を育てる部分が置き去りにされてしまっているようにも見えます。「食育」という考えがうたわれて久しいですが、きっかけはこうした背景が顕在化したからでしょう。家庭でも、ぜひこれらの食についてのマナーを、子どもにしっかり伝えていってほしいと思います。

この記事の監修・執筆者

小学校教諭 舟山 由美子

ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。

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