子どもにきつく叱ってしまい、後で反省するという保護者の方は多いのではないでしょうか。
「叱る」のではなく「諭す」という考え方で伝えれば、少し穏やかなやり取りになるかもしれません。
伝え方のコツを教育評論家の親野智可等先生に伺いました。
家族旅行中に両親そろって一緒に子どもを叱る
ある駅の待合室で見た光景です。
たぶん家族旅行なのだと思うのですが、お父さん、お母さん、小学校中学年らしき男の子(兄)、低学年らしき女の子(妹)、の一家4人がひと休みしていました。
しばらくして、お父さんがお兄ちゃんを叱り始めました。
叱っている理由は、「食べ途中の何かを小袋に入れずに、そのままリュックに入れたので何かが汚れた…」というようなことでした。
お父さんはかなりの剣幕でした。
お母さんはそのとき切符を買いに行って席を外していましたが、戻ってきたかと思うと、お父さんと同じように叱り始めました。
お父さんとお母さんの両方から叱られて、子どもはうつむいたまま固まっていました。二人とも立ったまま激しい口調で叱っていました。
楽しいはずの旅行なのに、本当に子どもがかわいそうです。そんなに叱るほどのことなのかと大いに疑問でした。
2つのステップで「叱るより諭す」が可能になる
こういう叱り方をすると子どもは自分を守るために心理的なバリアを張ってしまい、話の中身がまったく理解できなくなってしまいます。
そうならないためには、次の2つのステップが大切です。
ステップ1
まず、大人がしゃがんで、子どもと同じ目の高さになる
ステップ2
その上で、静かで穏やかな話し方で、「これこれこうだから、これはやめよう。これからは○○するといいよ」という感じで、子どもの心に届くように諭す
この2つのステップで、感情的に「叱る」必要がなくなり、「諭す」が可能になるのです。
何度でも粘り強くステップ1と2を繰り返して諭す
この2つのステップを守れば、子どもも話の中身を理解することができます。
子どもがしっかり納得できるように話してあげれば、子どもも「本当にそうだ。これからはそうしよう」と思うことができ、それが実行につながります。
その納得度が高ければ実行率も高まります。
でも、そのときはわかっても、しばらくすると元の木阿弥で、また同じことをしてしまうこともよくあります。
それが子どもというものであり、そもそも、子どもとはそういう存在なのです。
ですから、そういうときも、その都度同じように、何度でも粘り強くステップ1と2を繰り返して諭すことが大事です。
子どもには逃げ場が必要。両親そろって一緒に叱るのはNG
それと、このケースの場合もう一つ気になったのが、お父さんとお母さんがそろって一緒に叱っていることです。
これでは子どもはたまりません。
逃げ場というものがまったくなく、ひたすら追い詰められてしまいます。
絶望的な気持ちになって、「自分は大切にされていない。もうどうなってもいい」と感じてしまう可能性すらあります。
ですから、こういうときは、どちらか一方が逃げ場になってあげる必要があるのです。
例えば、 先ほどのケースなら、叱っていたお父さんがトイレに行ったときなどに、お母さんが子どもの話を共感的に聞いたり慰めたりしてあげことが必要です。
頭を撫でてあげたり抱きしめてあげたりするのもいいでしょう。
そして、「お父さんはあなたのことを思って言っているんだよ」と伝えてあげましょう。
ステップ1と2に心がければ、損な憎まれ役をする必要もない
ここまで読んで、「でも、それだといつも私の方が叱り役になって損をする」と思う人もいるでしょう。
多くの家庭の場合、お母さんが叱ってお父さんが慰めるということが多いと思います。
ですから、お母さんたちの中には、「自分だけ憎まれ役で、お父さんはいつもいい役ばかり。いいとこ取りは許せない」と思う人も多いでしょう。
でも、これは子どもにとっては必要なことなのです。
決して、両親そろって一緒に叱るなどということは、ないようにしてほしいと思います。
それに、そもそも感情的に叱るのをやめて、先に上げたステップ1と2に心がければ、損な憎まれ役をする必要もないのです。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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