今年もいよいよ暑い夏がやってきました! 夏は水遊びにベストなシーズンですが、水嫌いのお子さんをもつ保護者にとっては、「水遊びでお友だちが盛り上がっているのに、うちの子だけ参加できない」と、ちょっと憂うつなシーズンでもあります。
水嫌いを克服させようと無理矢理プールに入れたりすると、お子さんの水嫌いをかえってこじらせてしまうことも。でも、小学校ではプールの授業があるため、「入学までに水嫌いを克服させないと!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、水泳インストラクターとして多くの子どもたちの水泳指導にあたられている長岡小夜子さんに、水嫌いを克服するコツをうかがいました。
お話:長岡 小夜子
イラスト:みさきゆい
どうして「水嫌い」になってしまうの?
そもそも、なぜ水嫌いになる子どもがいるのでしょうか? さまざまな原因が考えられますが、その1つは水の扱いを特別なものにしてしまっているせいです。
まわりを海に囲まれた日本では、子どもに「水は危ない」と教える傾向にあります。そのため、子どもは小さいころから「水は危険」「近づいてはいけないものだ」と考えがちで、水に恐怖心を抱きやすくなるのです。
水に対する恐怖心は、水の危険から子どもを守るためには大切なことです。しかし必要以上に恐怖心を抱いてしまうと、水嫌いになってしまいます。たとえば、子どもの顔に水がかかってしまったときに、まわりの大人が「まぁ大変!」「どうしよう!」といった態度をとることで、子どもは「水が顔にかかるのはいけないことなのだ」と考えてしまい、水を嫌がるようになります。
そこで、子どもへの接し方を少しだけ変えてみることをおすすめします。 たとえ子どもの顔に水がかかったとしても、「水がかかったけど楽しいね」「サッと拭えば気持ちいいね」と、楽しみや喜びを感じられる言葉がけをして、子どもが自然と水に親しめるようにしましょう。
今日からチャレンジ! お風呂で水慣れトレーニング
水嫌いを克服するためのファーストステップとして、お風呂場でちょっとした水慣れトレーニングをしてみましょう。
頭からお湯かけトレーニング
用意するもの:桶などのお湯をすくえる容器、(タオル)
①子どもに「これからお湯を頭からかけるね」などと声がけする。
②桶や小さなバケツなどで、頭からお湯を少しだけ(コップ1杯分ほど)かける
③濡れた子どもの顔を、すぐに保護者の手かタオルで拭う。
このトレーニングでは、子どもを水に慣れさせるのはもちろんですが、「水に濡れたら顔を拭う」というクセをつけることができます。顔が濡れるのはだれにとっても不快なものですが、手かタオルでサッと拭うことでスッキリします。その気持ちよさを覚えることで、「水に濡れても大丈夫」と思えるようになるのです。
ただし、濡れるのを嫌がる子どもに対しては、シャワーなどで連続してお湯をかけるのはNGです。水への恐怖が大きくなりますので、最初はあくまで少量の水で慣れるようにします。
またこういったトレーニングでは、「今日は○回やろうね」と、取り組む回数をあらかじめ決めておき、その回数を必ず守るようにします。たとえうまくいかなかったとしても、回数を増やすといった無理は禁物です。
お子さんに無理のない回数から始めて、ゆっくりと回数を増やしていくのが水慣れの大切なコツです。そしてできたことに対しては、「すごいね!」とたくさん褒めてあげてください。
水への恐怖心が和らいだら、「顔を水につける」に挑戦!
「頭からお湯かけトレーニング」で慣れてきたら、まずは、口を「うー」にして顔を水(お湯)につけ、ブクブクをはく練習をし、その後、鼻から息をはく練習をします。
水(お湯)の中で鼻から息をはく練習をする前に、保護者といっしょに鼻から息をはいてみるのもよいでしょう。
ブクブクトレーニング
①保護者が手に水(お湯)をすくう。
②子どもに①の水(お湯)へと顔をつけさせる。
③鼻からブクブクと息をはくようにする。
①での水(お湯)の量は、ほんの少しでOK。慣れないうちは、まずは鼻から息をはき出しながら水(お湯)に顔をつけ、息を出し切る前に、顔を上げましょう。
手のひらの水(お湯)に慣れたら、ちょっとだけステップアップ。今度は洗面器に水を入れ、顔をつけて鼻から息をはき出し、顔を上げて口から息を吸う練習してみましょう。初めは「ん-!」と言って、鼻から息をはき、顔をあげて「パッ」と言って口の周りの水を飛ばしてから息をはいて吸います。保護者が横で「ん-ーパッ」と声かけすると感覚がつかみやすいでしょう。
こちらのトレーニングでも、「今日は〇回しようね」と最初にやるべき回数を伝え、その回数だけを行いましょう。そして、「ブクブク上手だったよ」「今日は長くできたね!」などと、できたことへの褒め言葉も忘れずに!
いよいよプールデビュー! 注意点は?
おうちでのトレーニングで水に慣れてきたら、いよいよプールデビュー! そんなときに気をつけたいのは、「お風呂とプールは別物」ということです。
お風呂でできたことが、プールでできるとは限りません。プールはお風呂と比べて水温も冷たく、その冷たさにびっくりしてしまうことも少なくありません。
まずは足からゆっくりプールに入り、水温に慣れるようにします。慣れた頃合いを見計らい、大人の手で水をすくって、お風呂でやった「ブクブクトレーニング」をしてみましょう。または、水面をバシャバシャ叩いて、水のかけあいっこをするのもおすすめです。顔についた水は、手で拭うように伝えましょう。
ここまで問題なくできるようであれば、プールの水に顔を直接つけていきます。怖さを感じないほっぺやおでこなどからつけ始め、いちばん恐怖を感じる鼻や目をつけられるように慣れさせていきましょう。
プールに顔がつけられて、だいぶ水に慣れてきたようであれば、いよいよ水に慣れる練習の最終段階である「縦潜り遊び」にチャレンジしてみても。
子どもの足がつく程度のプールに入ります。まずはお風呂で行った「水の中では、息は鼻からはく」「顔が濡れたら拭う」という動作を何度か繰り返しましょう。慣れたら、体をかがめるなどして縦方向に潜らせ、鼻から長く息をはき、顔を上げて「パッ」と言って口から息を吸う動作をやってみましょう。上手にできたら十分に褒め、子どもの自信につながるようにしましょう。
子どもといっしょにプールで遊ぶ場合には、くれぐれも目を離さないようにしましょう。たとえ10センチほどの水深でも、子どもは溺れると言われています。どんなに浅いプールでも、アームリング(腕につける浮き輪)をつけるなどして、十分に気をつけることが大切です。
水に慣れてしまえば、どんなお子さんにとっても、水遊びは夏の楽しみのひとつになります。ご紹介したトレーニングで水嫌いを克服して、安全な水遊びを楽しんでくださいね!
この記事の監修・執筆者
ながおか さよこ/野村不動産ライフ&スポーツ株式会社、事業推進部スクール事業課長、こどもみらいプロジェクト担当
18歳から水泳のインストラクターを始め20歳の時にメガロスに就職。水泳インストラクターを経て2017年に本社へ移動。以降当社の自社スクールであるミライクの立ち上げ、当社のスイミング・テニス等全キッズ・成人スクールを管理する部署にて勤務。同様に地域とつながる『こどもみらいプロジェクト』を立ち上げ昨年グッドデザイン賞を受賞。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪