【 “塾弁”は食中毒対策を入念に!】安全なお弁当作りのポイントとは?[専門家監修]

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【 “塾弁”は食中毒対策を入念に!】安全なお弁当作りのポイントとは?[専門家監修]

中学受験のための通塾とともに、“塾弁(塾で食べるお弁当)”作りが始まるご家庭も多いのではないでしょうか。お子さんは、ホッとひと息つける塾弁の時間を楽しみにしていることでしょう。
ただ、作ってから時間を置いて食べるお弁当には、食中毒の心配がつきものです。特に、朝作って夜に食べる塾弁は食べるまでの時間が長くなり、食中毒の危険性も高まるので、しっかりした対策が必要です。

今回は、「健康」をテーマにした料理教室や食育を推進するNPO「食育暮楽部(くらぶ)」を運営し、栄養士として保育園で勤務した経験もある森野恵子先生に、安全な塾弁作りのポイントについてうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

食中毒を知って対策しよう

年間を通じて発生する食中毒

食中毒は、食べ物や飲み物についた、食中毒を起こすもとになる細菌やウイルス、有毒な物質を摂取することで、下痢や腹痛、嘔吐や発熱などを発症する病気です。
「気候が涼しい時期は食中毒の心配はない」と考える人がいるかもしれませんが、それは間違いです。食中毒は年間を通じて発生します。特に気温が高い6月〜9月ごろには、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌、サルモネラ菌などの細菌が育ちやすいので、細菌による食中毒を起こす人が増えますが、冬の寒い時期にもノロウイルスによる食中毒が流行することがあります。
食中毒を起こす細菌やウイルスは、特別なものばかりではありません。細菌やウイルスは水や土の中、ヒトの皮膚の表面や腸の中にも存在しているので、調理をする時に食品についてしまい、すぐに食べず、保存することで増えて、食中毒を引き起こすことがあります。

お弁当の食中毒を防ぐ「つけない・増やさない・やっつける」

食中毒を防ぐために心がけてほしいのが、原因となる細菌やウイルスを「つけない・増やさない・やっつける」ことです。塾弁作りだけではなく、普段の調理から気をつけるようにしましょう。

つけない

手にはさまざまな細菌やウイルスがついています。調理する前に、しっかり手を洗ってから調理しましょう。手や指に傷がある場合は、使い捨ての調理用手袋を使います。
また、包丁やまな板や菜箸は、洗浄・消毒をしてから使いましょう。調理台やシンクも、汚れをしっかり取って、キッチン用のアルコールスプレーなどを使って除菌すると安心です。そして、お弁当におかずを詰めるときは、手でじかに入れずに菜箸などを使ってください。
それから、お弁当箱は洗ってよく乾かした清潔なものを用意します。おかずを盛りつけるカップは、お弁当を作ってから食べるまでの時間が長くなる場合は、繰り返し使えるシリコン製のものより、使い捨てのものをオススメします。

手洗い

増やさない

食中毒にならないためには、水分に気をつけることが大切です。水分が多いと、細菌やウイルスが増えやすくなるので、お弁当に入れるおかずの汁気はよく切るようにしましょう。煮物や和え物の水分も、できるだけしぼって詰めます。また、おかずの仕切りには、水分が出やすいレタスなどの生野菜ではなく、使い捨てのプラスチックのバランを使いましょう。
ごはんやおかずを温かいまま詰めると、蒸気がこもって水分になり、これも細菌やウイルスが増える原因になります。必ず冷ましてから詰めるようにしましょう。
また、細菌の多くは高温多湿な環境で増えてしまいますが、10℃以下では増え方がゆっくりになります。食べ物についた細菌を増やさないよう、低温で保存することが必要です。朝作った塾弁を、お子さんが塾へ持っていく場合、必ず冷蔵庫で保管するようにしましょう。そして、塾弁を持ち出す時は、保冷剤をお弁当箱の側に入れるなどして、温度が上がりにくくなる工夫をしましょう。

作ったお弁当は冷蔵庫で保存

やっつける

多くの細菌やウイルスは熱に弱く、加熱することで死滅します。肉や魚だけではなく、卵や野菜もしっかり中心部まで加熱しましょう。例えば、サルモネラ菌は中心温度が75℃以上で60秒以上、ノロウイルスは中心温度が85〜90℃で90秒以上加熱すると死滅します。
また、お弁当に入れる卵焼きやゆで卵などの卵料理は半熟ではなく、固くなるまで加熱し、火を通さなくても食べられるちくわやハムなども、できるだけ加熱すると安心です。
そして、包丁やまな板などの調理器具は、洗った後に熱湯をかけたり、キッチン用のアルコールスプレーなどを使ったりしてしっかり除菌しましょう。

包丁・まな板を消毒

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朝作る塾弁におすすめの工夫

持ち出す前に再加熱

冷蔵庫で保存しても、食品についた細菌はゆっくりと増殖します。
お子さんが学校から一度帰宅してから通塾するときは、冷蔵庫で保存したお弁当箱を、電子レンジで再加熱してから持っていくようにすると安心です。
ふたをしたまま電子レンジで加熱できるお弁当箱を使えば、冷蔵庫から取り出してそのまま加熱し、細菌やウイルスを死滅させることができます。
ふたを加熱できないお弁当箱を使う場合は、できたお弁当にラップをして保存し、電子レンジで再加熱した後、その上からふたをして持っていくようにしましょう。
ミニトマトや果物など、加熱しないものは別の容器に入れてください。
電子レンジでお弁当の中心部までしっかり再加熱する目安は、600 Wで2分半ですが、使用するお弁当箱や電子レンジによって異なります。お子さんがお弁当を再加熱する場合は、あらかじめおうちの方が確認しておいてください。

ごはんは炊きたてを保温ジャーに

冷蔵庫で保存したごはんは、ごはんに含まれるでんぷんが水分を失い、粘りがなくなってかたくなりがちです。また、チャーハンや混ぜご飯は、具材から出た水分で細菌が増えやすくなるので、夜に食べる塾弁には向きません。
そこでオススメしたいのが、お子さんの帰宅時間に合わせて炊飯器でごはんを炊き、保温ジャーに入れて持っていく方法です。これなら、塾で温かいごはんを食べることができます。お子さんも、ごはんを保温ジャーに入れるだけなら負担になりませんね。

炊きたてのごはん

塾弁は間食と考える

お子さんの中学受験のサポートは、塾弁作りに限らず、スケジュール管理や送り迎え、体調管理などさまざまなものがあり、6年生の受験当日まで続きます。無理せず、効率よくお子さんを支えるのも大切なことです。
塾弁作りがおうちの方の負担になりすぎないよう、塾弁は間食と考えて、おにぎりやサンドウィッチなど、簡単に作れるものを用意してもよいのではないでしょうか。そして、塾からの帰宅後に、野菜をたっぷり入れたスープやお味噌汁をとるようにして、栄養バランスを整えるのもオススメです。
また、忙しいときには、お子さんがコンビニなどで気に入ったものを買ったり、塾弁の時間までに、おうちの方がお弁当を届けたりする日があってもよいと、おおらかにとらえましょう。

受験生はストレスのせいで免疫力が低下することもあるので、家族で同じ食品を食べて、ほかの家族はなんともないのに、受験生だけが食中毒を発症するということもあります。今回お聞きした安全な塾弁作りのポイントを参考に、しっかり対策してみてください。

この記事の監修・執筆者

フードコーディネーター、栄養士 森野 恵子

「健康」をテーマに、料理とテーブルコーディネートの教室を行う。企業主催の親子クッキングや、住宅展示でのテーブルコーディネート、セミナー講師、TV番組の撮影、飲食店やホテルでのフードコーディネート、メニュープランニング、雑誌・広告での撮影(料理作成・フードスタイリング)、盛りつけ指導など”食”に関わるものをさまざまな角度からコーディネート。
平成16年からは、暮らしを楽しみながら食育を推進する団体「食育暮楽部(くらぶ)」を設立し、地域でできる食育に取り組み中。

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