【管理栄養士が教える】子どもが食べやすくなる! 野菜の調理方法

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お子さんは、好き嫌いや偏食はありますか?
子どもは味覚が敏感なため、大人よりも好き嫌いが多くなりがち。
そこで、管理栄養士の牧野直子先生に、とくに苦手という声が多い「野菜」をメインに、子どもが食べやすくなるような調理方法を教えていただきました。

お話/牧野直子(管理栄養士)

目次

子どもの好き嫌いや偏食は、本能的なものと経験不足が主な理由

子どもが初めて食べ物を口にするのは、離乳食のときです。

それまでは、母乳やミルクだけを飲んで育ってきました。

母乳やミルクは、うっすらと甘さや塩味があり、うま味もあるため、食べ物を口にするときにも、これらの味は、比較的受け入れやすいです。

しかし、苦みや酸味は

  • 母乳やミルクで味わったことがなく、経験不足
  • 自然界では「毒」「傷んでいる」と判断される味

このため、初めは受け入れがたい味なのです。

離乳食での好き嫌いは、子どもの好みというよりも、上記2点の理由によるところが大きく、実は3歳ごろまでは、どこの家庭でもおおよそ、好き嫌いや遊び食べがある傾向があります。

子どもの自我としての好き嫌いが出てくるのは3歳ごろです。

このころになると、子ども自身の味の好みが出てきたり、経験を味覚と結びつけて記憶することができるようになってきたりするためです。

「食べなさい」と押しつけてしまうと、嫌な体験として記憶されるため、できるだけ笑顔で接する余裕をもつと、今食べなかったとしても、のちのち食べる機会が訪れたときに、抵抗が少なくなる可能性があります。

基本的に、好き嫌いは遺伝ではなく「食べたことがない」という経験によるものが大きいです。

保護者の嫌いなものは食べさせない(食卓に上がらない)ことが多いために、苦手になってしまっている場合があるので、「知っている食べ物」「見たことのある食事」という食の経験をたくさんさせることが、好き嫌いをなくすためには大切です。

子どもが野菜を食べやすくなる調理方法8つ

子どもの好き嫌いによく挙げられる「野菜」が、食べやすくなる調理方法や工夫を8つご紹介します。

繊維を断つように切る

野菜の繊維を断ち切ることで、ゆでるなどの調理の工程で苦みが溶け出て抜けたり、かむときの食感が軟らかく仕上がったりするため、かなり食べやすくなります。

ポイント

●ピーマン、タマネギは横に切ると繊維を断ち切ることができます。
●根菜は、縦に短冊切りをするよりも、横にいちょう切りにしたほうが、繊維を切ることができるので、軟らかくなりやすいです。

一度ゆでてから調理する

苦みや臭み、青臭さは本能的に毒と判断してしまうので、苦手に感じる子が多いです。

苦みやアクを取り除くのには、ゆでるのがオススメです。

ゆでることによって流失するビタミンもありますが、苦みがかなり抜けることと、軟らかくなるため、まだかむ力が弱い子どもには食べやすさがアップします。

ポイント

野菜炒めなど、大人向けには、野菜をカットしてそのまま炒めるメニューも、一度ゆでてから炒めることによって、軟らかく食べやすくなります。

うま味のある食材と組み合わせる

ハム、ベーコン、かつお節、しらす干しなど、うま味成分の強い食材と組み合わせることで、味わいが深くなります。

ポイント

うま味のある食材は、とくにおひたしにしたり炒めたりする組み合わせがオススメです。

ごく少量から組み合わせる

初めての食べ物や、苦みの強い野菜などは、ほかの食材を多めにし、ごく少量を混ぜることから。

少量でも食べられると、「食べたことがある食べ物」「これは自分が食べられるものなんだ」と認識できます。

お子さんの様子を見ながら、同じメニューで徐々に苦みの強い野菜の比率を上げるとよいですよ。

ポイント

たとえば、甘みの強いコーンが好きであれば、ほとんどがコーンの「ピーマンとコーンの炒め物」にしてみるところからチャレンジ!

細かく刻む

まずは子どもの目に触れないような混ぜ方もひとつの方法です。

食べた直後に「入っていたのよ」と言うよりは、何度か食べられるようになってから、種明かしをするとよいでしょう。

ポイント

玉ねぎやネギをみじん切りにしてハンバーグや肉だんごに混ぜ込むのは定番。
ピーマン、にんじんをフードプロセッサーにかけて、ミートローフなどにするのもオススメです。

揚げる・炒める

油のうま味は、苦みをコーティングする作用をもっています。

とくに揚げると食感も変わるため、すんなりと食べられる子もいるようです。

ポイント

ナスの天ぷらやピーマンのフライなら食べられるという声も聞きます。

煮物に出汁を効かせるなど香りづけを

出汁もうま味のひとつ。出汁やしょう油の味は、案外好きな子が多いです。

出汁を効かせて軟らかくゆでてから、甘辛く味つけをするのもオススメの調理方法です。

ポイント

ほかに、ごまやごま油で香りづけすることで、食べやすくなる効果もあります。

小さめカット×軟らかめ調理

大人よりも口が小さく、かむ力も弱い子どもにとって、大人と同じ調理方法では、食べることに疲れてしまいます。

軟らかく調理することから始めてみてください。

食べられるようになってきたら、軟らかめ×大きめへとステップアップしてください。

もしそれで食べづらそうにしていたら、小さく切ったり軟らかくしたりと、離乳食と同じように、前の段階に戻すと食べられることもありますよ。

食材別オススメ下処理&調理方法

●ナス
皮が苦手という子が多いため、皮にも栄養はありますが、まずはむいてもよいでしょう。
薄切りにして炒めて、ミートソースとチーズをのせるメニューは、クセが少なく食べやすいのでオススメです。

●トマト
苦手に感じる場合は、タネと皮を取りましょう。
子どもにとってはやや酸味を感じることもある野菜です。トマトソースにすると酸味が飛んで食べられる子もいますよ。

子どもが肉類を食べやすくなる調理方法

肉類は加熱すると硬くなりやすいので、魚よりも食べづらい場合があります。

とくに3歳ごろまではひき肉が食べやすいので、積極的に活用を。

肉単体よりも、パン粉やつなぎを入れて、ハンバーグや肉だんごにすると、より食べやすいです(そこに細かく刻んだ野菜を混ぜてもよいですね)。

3歳ごろからは、厚みの少ない薄切り肉も食べられるようになるでしょう。

こちらも、まずはそのままではなく、薄切り肉を細めに切って片栗粉や小麦粉をつけ、焼いてから少し煮るなどして、とろみをつけると口当たりが軟らかくなります。

炒め煮や、汁けがあるようなメニューが食べやすいですよ。

また、肉も野菜と同様に、繊維を断ち切るようにカットすることによって、さらに食べやすくなります。

細切りやそぎ切りがオススメです。

繊維はいわゆる「筋(すじ)」のこと。わかりやすいのは鶏肉のささみです。

この筋を断ち切るような向きでカットしたり、たたいて繊維を壊したりすると、軟らかく仕上がります。

子どもの好き嫌いに対して、保護者はどう関わる?

最後に、お子さんの好き嫌いに対して、保護者はどのように向き合うのがよいのでしょうか。

無理強いしない

まずは、子どもが嫌だという思いに共感することが大切です。

どんなところが嫌なのかを聞いてみれば、「味」や「におい」、「色」「舌触り」など、その子なりの表現で答えが返ってくるかもしれません。

もしかすると、調理方法で対処できるかもしれませんね。

そして、子どもが教えてくれたら「苦いのが嫌なんだね」などと共感する言葉をかけましょう。

子どもが食べなくても、食卓には出し続けて、家族が「おいしいね」と食べる姿を見せましょう。

また、保護者が調理している最中に、「味見してみる?」と言うのも効果的。

大人扱いやお手伝いのようで、子どもも喜びますよ。

ひと口でも食べられたら思いきり褒める!

食の経験として、「ひと口だけ」と約束したのであれば、そのひと口を食べることができたら、お子さんを存分に褒めましょう。

そして、かんたんに食べられたな、と思ったとしても、欲張って「じゃあ、もうひと口!」は絶対に避けてください。

保護者が約束を破ることになり、子どもからの信頼を失ってしまいます。

このときは、約束したひと口で必ずおしまいにしてください。

好きなキャラクターに応援してもらう

お子さんの好きなテレビのキャラクターやぬいぐるみはなんですか?

時には、大好きなキャラクターのパワーを借りてみましょう。そのキャラクターに声を寄せて「がんばって!」と、応援してみてください。

食べることは楽しいことと伝える

子どもは保護者の表情や声をよく見ています。

食べないことを怒られたり、がっかりされたりしたと感じると、食べること自体が楽しくなくなってしまう場合があります。

食べることと心はつながっているので、食事の時間が苦痛になると、親子ともにしんどくなってしまいますよね。

できるだけ保護者もつらくならないように、ゆったりと構えられるのがベストです。

栄養を一食で補おうとしなくても、1日単位や、2~3日単位でバランスが取れればOKです。



お子さんに、健康にすくすく育ってほしいと願う親心からこそ、食べてほしいなと思うこともあるでしょう。

すぐには食べられなくても、今回紹介したアイデアを親子ともに無理のない範囲で試しつつ、「楽しい」と思えるような時間を共有して、食の経験を重ねていけるとよいですね。

この記事の監修・執筆者

管理栄養士 牧野 直子

まきの なおこ/管理栄養士。料理研究家。ダイエットコーディネーター。女子栄養大学在学中より、栄養指導や教育活動に携わり、保健センターや小児科での栄養相談、食生活についてのアドバイスにも定評がある。作りやすく、おいしくて元気になる料理が好評。雑誌、新聞、テレビ、料理教室や健康セミナーなどで幅広く活躍中。「スタジオ食(くう)」主宰。

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