「こうさく」切り離し加工のひみつ―みんなが知らない幼児ワークの世界【第3回 使いやすさとコスト】

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「みんなが知らない幼児ワークの世界」。入社4年目の編集部Fが、幼児向けの本制作にあたって、「なるほどそこまで考えられているのか…!」と感じた事例の一部をご紹介して参ります。

目次

第3回 使いやすさとコスト

今回は、「そこまで考えられているのか…!」と感じたことではなく、私が担当した「学研の幼児ワーク こうさく」の制作裏話です。
「学研の幼児ワーク こうさく」には、実は全ページに、切り離しのためのミシン目が入っています。これを入れた経緯についてのご紹介です。

(左)学研の幼児ワーク 3~4歳 こうさく
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(右)学研の幼児ワーク 4~6歳 こうさく
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全ページにミシン目入り

使いにくそうにしている子を見て

編集部Fは「こうさく」の制作担当になり、やる気がみなぎっておりました。(編集部Fは折り紙や工作が大好き!)
よりよいものにという思いから、「こうさく」についての情報収集を開始。
あるとき、前のシリーズ「学研の頭脳開発 きりえこうさく」で遊んでいる子の動画を発見しました。
「遊んでくれて、嬉しいな」と思ってみていましたが、
その子はページを本から切り離さずに、本の状態のまま、ページ1枚を持ってはさみを入れていたのです。

なんとも重くて持ちづらそう、切りづらそう……。
それに、重さに負けて本を落としてしまいそうで、危ないですね!

本来ワークは、1枚ずつ切り離して使うことができるようにつくられています。
最初のページから順に取り組むことを想定して制作しているので、特に1ページ目から順にペリペリとはがすことができます。

ただこの動画を見ていると、「こうさく」は、はじめから順にというより(難易度順のページ構成ではありますが)、途中のページからやる子も多いかもしれないと気がつきました。
(例えば、乗り物が好きな子だったら新幹線をつくるページから、何かで遊びたい子だったら、わなげをつくるページから、など)

今までの本でも、途中のページを選んで切り離すことは可能ですが、力加減を間違えると破れてしまうことも。
工作部分が破れてしまったら、がっかりです。

工作というテーマの本だけに、より「簡単に」切り離せる、そして切り離せることがより「わかりやすく」したいと考えました。

印刷所・製作部に相談 ~原価の問題

ページがはぎとりやすいものといえば、メモ帳!
メモ帳と同じような本にできるか、印刷所の営業さんをつかまえて聞いてみました。
印刷所「メモ帳のつくり方だと、機械ではなく、人が手作業する必要があるので、高いですよ。」
原価が高くなることを心配してくれるとは、ありがたいことです。

印刷・製本の原価にお金がかかると、本の価格を上げないとやっていけません。
でも本の価格は上げたくない…。

なんとか安くできる方法がないか、今度は社内の製作部(印刷・製本・紙のプロ集団!)に相談してみました。
製作部「メモ帳のようなつくりだと、
『使用していないページもとれやすくなってしまう』

『売り場でページがばらばらになって商品価値がなくなってしまう』などの問題があります。
ひもでくくって売ったり、ビニールで中が見られないようにしなければいけなくなりますね。」

それは悩ましい……。自分がワークを買う立場だったら、売り場でどんな中身かを確認してから買いたいです。
すると提案が。

製作部「制約がいろいろあるかもしれませんが、『ミシン目を入れる』という方法が使えるかもしれません。
○○印刷なら通常の印刷フローに一工程加えるだけでできるので、高額すぎることにはならないかと。」

さっそく、印刷所に相談してみました。
印刷所「可能ですよ。
ただし、機械の都合でノド(本のとじ目)から5ミリ以上離れた箇所にしか、ミシン目は入れられません。」

そうなると、メモ帳のようにページ全体を切り離すのではなく、5ミリ残して切り離すことになります。
5ミリ残して切り離すとなると……

↓最初のページデザイン(上側の白い点線がミシン目の入る位置)

「切れちゃう!!(焦)」

ノドから5ミリの間に、文字・パターン・ページ番号などが入っていたのです。
さあ、どうしましょう…。
実はこのとき、もうすぐ印刷所にデータを預けて印刷の準備をしてもらおう、としていた段階でした。
ページの構成も固まっており、全ページこのデザインで仕上がっている状態です…!

今回は、ミシン目を入れる夢はあきらめようか…とも思いました。
でも、やっぱり、「使いやすいワーク」を届けたい!
悩みに悩んで決めました。

思い切って…デザインを変える!

元のページデザインを変更する……5ミリあけるだけとはいえ、出来上がっているバランスを崩すことになりかねません。
おそるおそるページのデザイナーに連絡をとります。

「すみません! 時間がないのですが、ページのデザインについて、修正のお願いです。
ミシン目を入れることになったので、5ミリ内には何もいれず、ただしタイトルスペース(茶色い部分)は大きくせずに、残ったスペースで要素をすべてまとめてもらえますか…!
(つまり、いい感じでギュッと下につめてください!!)←心の声

デザイナー「わかりました」

無茶なお願いをしてしまったかな…、などと悩んでいるうちにすぐ、見やすく整理された完璧な修正デザインをお送りいただきました…!
まるで魔法をかけてもらったみたい…!?

↓現在のページデザイン 点線の部分にミシン目をいれました。
 (いい感じでギュッとなってる!!)

こうして、いろんなかたのアイディアと尽力によって、どこからでも切り離ししやすい、ミシン目を入れることができました。

発売後、「ミシン目があって使いやすい」という声をお寄せいただけました。
嬉しかったです。あきらめないでよかったです。

さて、今回は使いやすさを追及した制作事例をご紹介しました。
次回は、幼児ワークに使用している「紙」のひみつをお伝えします。

紙には4つの特徴が!――みんなが知らない幼児ワークの世界【第4回 紙の種類】

学研の幼児ワーク 3~4歳 こうさく

学研の幼児ワーク 4~6歳 こうさく

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