【温泉のひみつ】温泉はなぜ体に良い?基礎知識から入浴方法まで〈子どもと読みたい科学のおはなし〉

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日本は世界一の温泉大国と言われています。「ゆっくり温泉に入ってリラックスしたい!」と温泉旅行に出かけるご家庭も多いのではないでしょうか。「健康に良い」というイメージの温泉ですが、どんな効果があるのか、そもそも温泉とはどのようなものなのか、今回は、知っているようで知らない温泉のひみつを紹介します。

目次

日本の温泉地は2857か所

日本は世界有数の温泉大国

温泉は日本各地にあり、宿泊施設のある温泉地の数は2857か所、温泉が湧き出る源泉の数は2万7920か所(環境省「令和5年度温泉利用状況」より)にもなります。世界の温泉分布を見ても、日本にはたくさんの温泉があることがわかります。温泉地の数が1番多い都道府県は北海道で230か所です。2番目は長野県で193か所、3番目は新潟県の137か所です。

世界の温泉分布
世界の温泉分布(神奈川県 温泉地学研究所ホームページより)
https://www.onken.odawara.kanagawa.jp/hotspring/onsen_kouza/20200512-01.html

火山があるところに温泉あり

日本に温泉が多いのは、日本が火山帯に位置していることが関係しています。ほとんどの温泉は火山の近くにあり、火山の地下深くにはマグマがたまっています。マグマとは、地下の岩石(マントル)が高温と高圧によって溶けたもので、約800〜1200℃もの温度になります。そのマグマの熱やガスにより温められた地下水が地面に湧いて温泉になるのです。

火山に関係した温泉を「火山性温泉」と言います。代表的な火山性温泉には、ニセコ温泉(北海道)、酸ヶ湯〈すかゆ〉温泉(青森県)、玉川温泉(秋田県)、那須温泉(栃木県)、箱根温泉(神奈川県)、別府温泉(大分県)、雲仙温泉(長崎県)などが挙げられます。

大分県の別府温泉

地中にしみこんだ雨水や海水が地熱で温められた温泉など、火山活動とは関係ない温泉は「非火山性温泉」と呼ばれます。有馬温泉(兵庫県)や松之山温泉(新潟県)が代表的です。

有馬温泉の御所泉源

天然温泉と人工温泉の違いは?

日本の温泉は、「温泉法」という法律で定義されています。温泉法は昭和23年に制定されました。地中から湧き出た時の温度が25℃以上あれば温泉と定義され、25℃未満であっても、定められた成分が規定量以上含まれていれば温泉とされています。つまり、条件によっては、温かいお湯だけではなく、冷たい湧水や水蒸気、ガスも温泉になります。

地中から自然に湧き出たものが温泉法で定められた温泉で、天然温泉とも呼ばれます。水道水や地下水に人の手で温泉の成分を加えた温泉は、人工温泉などの名称をつけて区別します。

温泉が体に良い理由は?

お湯に入ることで得られる効果

温泉に入ることで、まず体に浮力・水圧がかかります。水中で浮力によって体が軽くなり、筋肉の緊張がほぐれます。そして、体に水圧がかかることで、マッサージのような効果が得られます。さらに、ぬるめのお湯に入れば、休息やリラックスをするときにはたらく副交感神経が優位になり、熱めのお湯に入れば心身が活動的になる交感神経が優位になります。

湯の温度や入浴時間など、適切に利用すれば体が温まることで血行が良くなり、疲労が回復して免疫力も向上すると言われています。これらの効果は、自宅での入浴でも実感できるものですが、温泉地を訪れ、その土地の自然や食文化などを楽しみながらの入浴は、心身ともによりリフレッシュする機会となるでしょう。

温泉の成分による効果とは

では、温泉ならではの効果といえばなんでしょうか。それは、その成分によるものです。温泉には、マグマから出るガスや温水の成分や、周囲の岩石の成分が溶けこんでいます。そして、その成分には、遊離炭酸(二酸化炭素)や水素イオン、ラドン(気体の放射性物質)など、健康に効果があるとされるものがあります。温泉の中でも、環境省による一定の基準を満たした温泉は「療養泉」と呼ばれ、健康に良い効果があると認められています。

温泉施設に「温泉分析書」が記されているのを見たことがあるでしょう。療養泉と認められた温泉は、表1の10種類の「泉質」に分類されます。泉質を知れば、どんな効果を得たいかを考えながら、温泉を選ぶことができます。

10種類の泉質

上から5つの療養泉(単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉)は、肌にやさしく刺激が少ないので、子どもやお年寄りも安心して入れます。下の5つの療養泉(含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉)は、肌への刺激が強く、特有の匂いもあるので、注意が必要です。

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温泉の上手な入り方

入浴の準備

お子さんといっしょに温泉に入る時にはどんなことに気をつければよいでしょうか。まず、温泉に入る前に水分補給を。汗をかいて、体内の水分が足りなくなると、脱水症状をおこすこともあります。コップ1〜2杯の水や麦茶を飲みましょう。そして、トイレはすませておくと安心です。

温泉に入る前にかけ湯を

温泉に入る前には、体の汚れを落とすため、体を徐々に温めるために、しっかりかけ湯をします。洗面器を使っても、シャワーでも、始めは手や足にお湯をかけ、だんだん体の中心にかけます。

入浴時間の目安は10分まで

入浴に適したお湯の温度は38〜40℃です。温泉では調整できないこともありますが、熱い湯に入る場合は、のぼせないように注意が必要です。

入浴時間は10分までが入浴時間の目安ですが、額にうっすら汗をかいたら早めに上がりましょう。

体や頭を洗い、温泉から出るときは、洗面器やシャワーでさっとお湯を流し、上がり湯をします。温泉の成分が流れないように、上がり湯をしない場合もありますが、初めて訪れる温泉では、成分が肌に強い場合もあるので、お子さんは上がり湯をしたほうが安心です。

入浴後の注意

温泉から出たら、すぐに体を拭いて髪を乾かして服などを着て、湯冷めしないようにしましょう。そして、体内の水分を補うため、再度水分をとります。温泉の成分や温度により体に負担がかかることもあるため、何度も入浴するのは避けることをおすすめします。体調を見ながら、1日に2回ほどにしておくとよいでしょう。

また、飲用できる温泉もあり、健康効果が期待できますが、温泉によって決められた年齢や量、飲み方を守って利用することが必要です。

今回は、日本の温泉の特徴や泉質、温泉の健康効果について紹介しました。寒くなるこれからの季節、温泉に訪れるときには、ぜひお子さんといっしょに読んで、参考にしてください。

この記事の監修・執筆者

編集部員 こそだてまっぷ編集部

未就学から中学生までの子を持つママ編集者を中心に、子どもの学びや育ちに関する様々な情報を日々発信しています!

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