小学校に入学したばかりの子どもにとって、意外と大変なのが、イスにじっと座って授業を聞くこと。入学前に短時間でも、家庭で「イスに座る」ことを習慣づけておくだけでも、子どもは慣れない小学校生活を、少しスムーズに始められるかもしれません。
「座る練習」って、どうしたらいいの? そもそも「練習」する必要があるの? という疑問も含めて、キッズコーチングのスペシャリストである竹内エリカ先生にお話を伺いました。
竹内先生によると、「簡単な習慣づけで、どの子も座れるようになる」とのこと。記事後半では、子どもの集中力を伸ばす方法も紹介します。
お話/竹内エリカ先生(日本キッズコーチング協会理事長)
好奇心旺盛な子どもほど、じっと座っているのが苦手なもの
長年、就学前のお子さんを大勢見てきましたが、「座っている」のが苦手な子はたくさんいます。座ってもいろんなことが気になってしまうタイプ、つまり好奇心旺盛な子です。このようなタイプの子は、じっと集中するという習慣が、自然には身につきにくいもの。
けれども、クラスのみんなが座っている時に1人だけ座れていないと、怒られる回数も増え、自己肯定感が下がってしまう可能性も。就学前に親子で一緒に、「座る」ための簡単な習慣づけに取り組む必要があります。そうすれば入学後に授業での集中力が続きますし、帰宅後も宿題をするために自然と机に向かえるようになります。
集中させる秘けつは「手指を使う」作業にあり!
もちろん、ただ「座らせる」ことは難しいので、まずは「座って遊ぶこと」から始めましょう。特に手指を使う遊びがおすすめ。きちんと座って、指先を使うような作業をしていると、基本的に「立ち歩きたい」という衝動はずいぶん抑えられます。遊びから入って、徐々に習慣づけをしていくのがポイントです。
遊びは、「本人がやりたいこと」や「興味を持つこと」が第一。お絵かきや折り紙、粘土、パズル、工作など、何でもよいです。鉛筆で書く作業も適しているので、本人が嫌がらなければ、ドリルや迷路などにチャレンジしたり、文字や数字を書く練習をしたりしてもOK。お勉強をする習慣も身につけられて、一石二鳥です。
ただし、ミニカーやお人形遊びなどの「ごっこ遊び」は、なるべく避けること。想像力を伸ばすという意味ではよい遊び方ですが、どうしても体が動いてしまい、じっと座っていることが難しくなります。手指を使って、思考力も鍛えられるような遊びを選ばせましょう。
「手指を使う」オススメの遊び方
・お絵かき
・折り紙
・粘土
・パズル
・工作
・ドリルやワーク
・文字の練習
・迷路 など
まずは親子で一緒に リビングで練習スタート!
「座る」環境ですが、ダイニングテーブルや自分の学習机など、本人が落ち着く場所ならどこでもOK。ただしイスはできれば背もたれがあり、姿勢よく座れるものを選びましょう。姿勢が悪くならないように、照明を使うなど明るさも確保して。また、遊びや勉強に使うもの以外、机の上には何も置かないこと。集中力がそがれます。
自分の部屋など集中できる場所があればよいですが、ない場合はもちろん、他の家族がいるリビングなどでもOK。最初から子ども1人で座らせると、一気にハードルが上がるので、できればおうちの方が一緒に座ってあげましょう。
「座る」環境づくりのポイント
・本人が落ち着く場所で
・イスは姿勢よく座れるものを
・照明などで明るさを確保
・机の上に置くのは、使用するものだけ
まずは「2分」座れればOK!
「座れる時間」の長さは、お子さんによってそれぞれ異なります。まずは、お子さんがどのくらいの時間を集中できているか考えてみましょう。タイミングを見計らって、実際に計測してみてもいいでしょう。「10分以上集中できている」という子は、最初から10分座ることにチャレンジ。けれども「5分も持たない」という子でしたら、最初は2分からでもかまいません。子どもは基本的に、強制されることが嫌いです。「座る練習」は、子ども自身の協力がなければ続きません。お子さんの個性に合わせて、少しずつ「座る」時間を伸ばしていきましょう。
それでも「集中が続かない…」というお子さんには、ゲーム要素を取り入れるのがオススメ! 用意するものは、キッチンタイマー。目標時間にアラームを設定して、作業をスタートします。アラームが鳴ったらお子さんが自分自身で止めるようにして。親は見守りながら、「できたね!」「がんばったね!」と、しっかりほめてあげましょう。
スマートフォンのアラームでもよいですが、お子さんが自分で操作できることがポイント。親が時間を管理すると、子どもは途端にやる気をなくしてしまうものです。
さらに集中力を上げるには…?
慣れて来たら、さらに集中力を上げるトレーニングにチャレンジ! 「作業10分」→「休憩10分」を1セットとして、繰り返し行います。作業時間内はしっかり集中させ、休憩時間は何をしてもOK。ただし、この年齢なら2セットできれば十分。3セット以上できるなら、とても優秀です。ポイントは、お子さんが嫌がらないタイミングでやめること。親がついやらせすぎてしまうと、子どものほうが嫌になってしまい、習慣化しません。
集中力を上げるトレーニング
作業10分→休憩10分=1セット ×2~4回
入学3か月前を目安に習慣づけを
「授業中にイスに座る」ことは、「ごはんを食べるときにイスに座る」ことと同じで、習慣化することで、ほとんどの子ができるようになります。ですので、家庭での「座る」練習も、毎日の流れの中で、同じような時間帯に行うことがオススメ。おやつや夕食のあとなど、子どもの気持ちに比較的余裕がある時間帯を、それぞれの家庭で選びましょう。
始める時期は、余裕を持って始めたい場合は、入学3か月前からが目安。それが難しい場合は、2週間ほどあれば、ある程度の習慣は身につくので安心してください。
また、「座る」ことに限らず、お子さんの集中力を続かせるためには、「できた!」という感覚を身につけさせることが一番の近道。最初は「2分できた!」からでもよいので、小さい「できた!」を積み重ねて、たくさんほめてあげましょう。そうすることで、お子さんのモチベーションが上がり、自然と「座る」習慣が身についていくはずです。
シチュエーション別 集中力を伸ばす対策方法
「いっしょにやろう」と言われたら?
だいたい座っていられない子は、親と一緒にやりたがることが多いんです。その場合は、おうちの方も同じ作業に熱心に取り組む様子を見せて。「ママも折り紙やってみるね」「こんなのができたよ!」など、お子さんが「自分もやってみたい」と思える環境を作ってあげましょう。
別の遊びに誘われたら?
例えば、ごっこ遊びが大好きなお子さんからお人形遊びに誘われたら、別のアプローチを考えてみましょう。お気に入りのお人形やぬいぐるみを連れてきて、「ねこちゃんとくまちゃんとお勉強する遊びをしよう」など、目先を変えた遊び方を提案してみて。その時間だけでも「座る」ことに集中する方向に誘導してみましょう。
「飽きた」「やりたくない」と言われたら?
もしかしたら、していた作業自体に興味が湧かないのかも。例えば、ひらがなを書く練習であれば、あえて難しい「あ」の文字から順番に始めなくてもいいんです。「“く”と“し”の違いは何かな?」など、単純なつくりの文字から始めて、お子さんの興味を引いてみて。それでもやりたがらない場合は、タイミングが少し違ったのかもしれません。まずは、お子さんがその時に遊びたいものでしっかり遊ばせてから、別の時間に仕切り直すのもアリですよ。
この記事の監修・執筆者
たけうち えりか/幼児教育者。一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長。2児の母。
お茶の水女子大学大学院修士課程修了。20年にわたり講演・作家業をメインに多動症・不登校の克服、giftedと呼ばれる子ども達の心のケアなど育児・教育の専門家として約2万人の親子と関わる。「男の子の一生を決める0〜6歳までの育て方」他著書多数。
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