小学校に毎日持って行かなければならないもののひとつに「連絡帳」があります。保育園からの保護者の方にとっては、おなじみの存在だと思いますが、小学校の連絡帳は、保育園のそれとは使い方が違うことをご存知でしょうか?
現役小学校教諭の舟山由美子さんに伺いました。
小学校の連絡帳は、子どもが「書き手」
保育園の場合、連絡帳の書き手は保護者ですが、小学校での連絡帳は、書き手は基本的には子どもです。子どもが自分のために時間割や宿題内容、提出物などを「備忘録(=メモ)」の形で書くものです。ときにはその連絡帳に、保護者からの連絡や、担任からの連絡が入り込みます。
入学してすぐ、連絡帳に保育園のときと同じように、いろいろと書き込んでこられる親御さんがいらっしゃいますが、担任のほうは簡単な返答しかできない場合も多いです。
というのも、子どもたちが登校してから下校まで、担任はずっと授業時間で子どもたちと向き合っているので、たくさんの連絡帳にすべて詳細な返答をしている時間がないのです。とくに最初の1週間は、午前中で授業が終わり、下校の際も(前回書いたように)ほぼ1時間かかります。もし込み入った内容の連絡帳が来たら、いったん連絡帳には「後ほどお電話します」などと書いておき、放課後電話でお話しすることが多いというのが実情です。
保護者が書くときは、子どもの目に触れることを意識して
連絡帳のやりとりについて、担任の立場で気をつけているのは、子どもと教師、保護者の三者共有の使用になるため、子どもが保護者への文章を読む、という点です。1年生は漢字が読めないのでは、と思うかもしれませんが、字面から発する雰囲気で、たとえばお母さんと担任が険悪な文章でやり取りしているのは、子どもにもすぐにわかってしまいます。ですから私が1年生の担任だったときは、子どもの目にふれさせたくない内容のときは、封書にして返事を渡したり、「あとで電話します」などとお返事するようにしていました。
ときどき「子どもが隣の席の子にいじわるをされている」、「子どもがこんなひどい目にあっている…」など、その思いを伝えようと、ときには2ページにわたって書いてきてくださる方もいらっしゃいます。でも、そのページは連絡帳にずっと残りますし、子どもがそれを毎日学校に持っていくのです。連絡帳は1~2年間使うことも多いので、過去に書かれたことも子どもは読むことになります。
以前にこんなことがありました。ある年に新しく受け持ったクラスの子が、帰りのしたくの合間の時間に、なにかを熱心に読んでいました。何かと思ったら、前の学年での連絡帳を見ていたのです。しかも、あとで分かったのですが、お母さんと前の担任とのちょっと険(けん)のあるやりとりでした。やはり、こうした状況は避けたいものです。
このようなことから、連絡帳での保護者と担任とのやりとりは、節度と誠意のある内容にしたいと思っています。子どもに読まれたくない内容は書かないということはもちろんですが、お互いに「おはようございます」「いつもお世話になっております」「こちらこそいつもありがとうございます」など、ちょっとした気遣いの言葉から始めるのが理想的です。それを子どもが見て、連絡帳ではこういうやり取りをするのだな、と学ぶのです。
連絡帳の書き方を教える時間がある
ところで、入学直後で「うちの子はまだ字が書けないのに、連絡帳なんて書けない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、入学当初は、新1年生の学年だよりは1週間ごとに配布されており、時間割・学習内容・提出物など、必要事項が書いてあるので安心してください。
授業が始まると、国語の時間の延長で、少しずつ連絡帳に書く練習も行っていきます。
まずは「こくご」「さんすう」の文字を連絡帳に書いたり、算数で数字の練習をします。ちなみに「持ち物」は、丸囲みの「も」、「宿題」は、丸囲みの「し」、「学校からの配布プリントの枚数」を書くときは、丸囲みの「ぷ」などと表す学校が多いと思います。
これらをマスターしたら、「4がつ12にち」「も たいいくぎ」「し おんどく」「ぷ 5まい」などと連絡帳に書けるようにしていきます。担任によっては、保護者の方が連絡帳を見たことを確認するために、認め印やサインを下欄にしてもらう場合もあります。
1年生の最初の連絡帳は、その子にとっても保護者にとっても、印象に残る1冊になります。後から見返して、よい思い出が蘇るようなものになるようにしたいですね。
この記事の監修・執筆者
ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪