災害時子どもがひとりでいたら、どうする?~家族で考える防災~後編【専門家監修】

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毎年9月1日は「防災の日」。
防災は事前の準備が最も大切です。お子さんがいる家庭では、防災の知識や日頃の備えが、いざというときにお子さんを守ることにつながります。
特に小学生は、一人で行動することも多くなります。防災の日をきっかけに、家族で改めて防災について話し合ってみませんか?

防災システム研究所所長の山村武彦先生に、近年高まっている災害のリスクや最新の防災の知識などについて伺います。今回はその2回目。前回は、保護者のかたに知っておいてほしい防災の備えについて紹介しました。今回はお子さんが、自分の身を守るためのお話です。

お話/山村武彦(防災システム研究所所長) 文/こそだてまっぷ編集部

目次

登下校時の防災をしっかりと!

危険な場所を事前にチェック

小学生は、集団登下校する場合もあれば、自分だけで登下校する場合もあります。家にいれば家の安全対策、学校では学校の安全対策がありますが、登下校時に限らず、習い事や公園に遊びに行くなど、一人で行動するときの安全は、自分で確保しなくてはいけません。
保護者のかたといっしょに、通学路などを歩いて、危険箇所を確認しましょう。

地震が来たら倒れるかもしれない自販機、ブロック塀、落ちてくるかもしれない屋根瓦や看板など、リスクのある場所をチェックします。大雨のときに浸水しやすい道や崩れそうな斜面なども確認しましょう。そして、いざというときは危険な場所から離れる方法も話し合います。

家へ帰るか学校へ戻るか迷わないために

登下校時、出かけているときなど、家に戻るか、学校や習い事の場所に戻るか迷ってしまうこともあるでしょう。

川や崖、橋や通行量の多い道路など、それぞれの場所の特徴を考えながら、安全に戻れるルートを考えて、実際にいっしょに歩き、ここまでなら学校に戻る、ここまで来ていたら家に帰るなど決めておきます。

できれば、学校と家の中間くらいに、助けを求めたり、駆け込めたりする場所をつくっておくと安心です。商店街のお店や知り合いの人の家など、短い時間で安全に移動できる場所を確保しておくといいですね。

前編はこちら≫災害が起きる前に備えよう!~家族で考える防災~前編【専門家監修】

一人でいるときの行動をシミュレートしておこう

地震が起きたら

学校にいるときは、訓練どおりに机の下に身を隠し、机の足をしっかり持って揺れに備えます。ガラスの近くにいたらすぐに離れる、倒れそうなものから離れる、といったことが大切です。グラウンドにいたら、グラウンドの真ん中でしゃがみ、揺れが収まるのを待ちましょう。

通学路など屋外にいるときは、原則として建物から離れます。建物の近くにいると、割れたガラスや落下物で怪我をする危険があります。ただし、建物に囲まれているなど、離れられない場所なら、頑丈で安全そうな建物の中に入れてもらいましょう。ランドセルやかばんを頭に乗せて、落下物から頭や首筋を守りながら移動します。

家にいるときは、緊急地震速報が鳴った時や地震の揺れを感じたら、直ちに安全な場所に移動します。一般的には玄関です。ドアを開けて、避難路を確保しましょう。大揺れになってしまうと動けなくなってしまいますから、小さな揺れを感じたり、緊急地震速報を聞いたりしたら、すぐに安全な場所に移動するくせをつけておくことが大切です。

もし、自宅が木造の古い建物であれば、1階にいたら靴を履いて外へ脱出します。2階にいたら、1階がつぶれる危険性があるので、慌てて1階に降りないほうが安全です。

自宅の状況によって、安全な場所は異なります。家族でどこが安全か、どの部屋にいたらどこへ移動するのか、そこにとどまるのかなど、しっかり話し合ってください。

普段から、玄関までの通り道にガラスや倒れそうなものは置かず、家具や電気製品を固定するなどの備えをしておきましょう。

大雨が降ったら

ハザードマップ(災害時に危険と思われる箇所や避難場所などを地図にまとめたもの)で自宅が浸水1m以上になる危険性がある区域だとわかっている場合、浸水してから避難するのは難しいので、大雨が降りだしたら、非常持ち出し袋を確認するなど避難の準備をすることが大事です。
大雨・洪水警報や線状降水帯予測情報が出されたら、なるだけ早めに、できれば日が暮れる前に避難します。

お子さんが一人のときは、どこに避難すればいいかわからないと困ります。家庭ごとにリスクが違いますから、どの段階でどこに避難するのか話し合いましょう。
自宅より安全な親戚や知り合いの家、避難所など、住んでいる地域に合わせた避難先を考えて、できれば家族で歩いておきます。

ゲリラ豪雨と呼ばれるような短期的な集中豪雨は、1時間も経たずに通り過ぎる可能性が高いです。外にいるときは、地下に行ったり、地下鉄を利用したりするのは避けて、地上の安全そうなビルの2階以上に避難しましょう。

助け合える人になろう

「互近助(ごきんじょ)」のすすめ

いつも通っている通学路であれば、商店のかたや、地域に住んでいるかたと「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」など、元気に挨拶を交わしましょう。いざというとき、助けを求めやすくなります。

私は、近くにいる人と、互いに助け合う「互近助(ごきんじょ)」という考え方を提案しています。50年以上にわたって世界中で発生する災害の現地調査を行ってきたなかで、多くの場所で「互近助」の精神で地域の人たちが助け合い、困難を乗り越える姿を見てきました。この「互近助」を、小さいころから意識してほしいと思います。

災害だけではありません。事故や不審者への対応も同じで、近くにいる人に助けを求められるようになることは大切です。そしてもし、登下校中に災害などに遭い、自分よりも年少の子どもが困っていたら、守ってあげる、助けてあげるという心構えももってほしいのです。

2回にわたって、災害のリスクや防災についての最新情報をご紹介しました。
お子さんにとって、防災の知識は命を守る一生もののスキルになります。ぜひ家族で防災について知り、しっかり取り組んでください。

この記事の監修・執筆者

防災システム研究所所長 山村武彦

1964年、新潟地震でのボランティア活動を契機に、防災・危機管理のシンクタンク「防災システム研究所」を設立。以来50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を実施。報道番組での解説や講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組み、多くの企業や自治体のアドバイザーを歴任。著書は『台風防災の新常識』(戎光祥出版)、『災害に強いまちづくりは互近助の力』(ぎょうせい)など多数。また、『一生つかえる!おまもりルールえほんぼうさい』(Gakken)を監修している。

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