【幼児教育の専門家監修】これってもしかして、登園拒否? 保護者の対応と園での対応

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「行きたくない!」
園に行き始めて少し経ってから、子どもが毎朝大泣きする、行きたくないと主張することがあります。
「どうしたらいいのかな?」
気になる登園拒否・登園しぶりの理由や、保護者ができる対応を、元幼稚園教諭で、東京家政大学 講師の前田和代先生にうかがいました。
園では、どのような対応をしているかも紹介します。

監修/東京家政大学 家政学部 児童学科 前田和代

目次

1 泣く・動かない・脱走! 登園拒否・登園しぶりの行動

子どもたちの登園拒否・登園しぶりでは、一番わかりやすい「泣く」のほか、「動かない」「脱走」などの姿が見られることもあります。

泣く

泣くのはわかりやすい表現で、子どもなりにちゃんと意思表示できていると言えます。

  • 家でシクシク泣いて「行きたくない」と言う
  • ひっくり返ってイヤイヤと抵抗する
  • バス停で待っているときは大丈夫だったのに、園バスが見えると大泣きする
  • 園に到着した途端に涙がとまらない

このように朝起きてから、園に到着するまでに、子どもにとってスイッチが入るポイントがいくつもあります。

てこでも動かない

泣きはしないけれど、動かなくなるパターンもあります。

  • 園服に着替えようとしない
  • 園のカバンを持たない
  • 手を引いても歩こうとしない

など、態度で表現します。

「行こうよ」と手を引いても、どこにそんな力があるのかと驚くくらい足を踏ん張る子もいます。

脱走!

登園中に走って逃げようとする子も。

しっかり手をつなぐなどして、とにかく事故に遭うことのないよう、道路への飛び出しに注意することが何より大切です。

子どもたちは、まだ自分の感情(気持ち)を言葉でうまく伝えられないこともあり、なんだか嫌だという感覚を態度や表情などで示すことが多く、そのどれもが、子どもの自己表現の手段です。

上記のような態度を示したら、お子さんは「いやだ!」という意思表示ができているんだ、と、まずはポジティブにとらえてください。

では、なぜ登園拒否・登園しぶりが起こるか、理由を考えてみましょう。

2 登園拒否・登園しぶりの理由

新しい環境への不安

とくに大きく環境が変化する4・5月の新年度の時期は、不安を抱きやすいです。

また、園児の人数が多い大規模園では、圧倒されてしまうということもあります。

「知らない場所・人への不安」が強い場合は、時間とともに慣れてくることが多いです。

保護者が焦らず、じっくりとつき合うことが大切。3章で詳しく紹介しますが、大人が時間的な余裕をもつことで心の余裕にもつながり、じっくりと対応することができます。

家庭への不安

自分が園に行っている間、家庭ではどうなっているの? と不安に思うときに、こういった姿が見られることがあります。

例えば、まだ園に通わない年下のきょうだいがいる家庭であれば、「お母さん(お父さん)ときょうだいは一緒にいるのに、どうして自分だけ離れなくてはいけないの?」と、子どもなりに腑に落ちない気持ちを抱いていることがあります。

思いあたる可能性がある場合は、子どもが園にいる間、家庭ではどう過ごしているかを伝えたり、休日に2人だけで出かけるなど、その子だけに時間をとったりするといったフォローができるとよいですね。

2歳児から、プレ幼稚園に通う子も増えています。
プレ幼稚園では、慣らし保育のように、じょじょに母子分離の保育の形式をとっている園が多く、同じように登園拒否・登園しぶりの姿が見られることがあります。
この場合は、「今まで一緒にいたのに、どうして離れ離れになるの?」という不安から起こると考えられます。

体調不良

子どもの体調が悪いときにも、登園拒否・登園しぶりの姿が見られることがあります。

疲れからくる体調不良や、気を張っていることによる精神的な体調不良も考えられます。

とくに新年度は、がんばって園に通い続けて2~3週間経ったころ、ドッと疲れが出て体調を崩す子がいます。

また、園に通うリズムができてきたと思ったら、5月にゴールデンウイークがあり、生活リズムが乱れたり、家族と過ごす時間が長かったことで、また気持ちを一から立て直すことになったりもします。

その他、入園して急にたくさんの人と過ごすことによって、免疫力でカバーできず、風邪をもらいやすくなっている場合も。

少しずつ体力がついてきたり、園での緊張がほぐれてきたりすると、自然となくなることが多いです。

いつも通りに見えても、新しい環境に足を踏み入れることは、大人でも疲れることです。

しばらくの間は、休日もゆったりと過ごせるような予定にしたり、ゴールデンウイークなどの大型連休に、大きく生活リズムを崩したりしないように過ごしましょう。

園と合わない

遊び中心の園、一斉活動中心の園など、園の教育方針や保育内容は様々です。

また、園の教育方針や保育内容に伴った保育者の関わり方も様々です。

そのため、それらの内容が合わない、保育者からの関わりに子どもがうまく対応できないということがあります。

普段の子どもの遊び方や性格と、園の一日の様子を重ね合わせてみて、子どもにとって無理がなさそうかを観察しましょう。

園の教育方針の変更は難しいものなので、入園前に確認しておきたいところですが、子どもが保育内容についての対応が困難な場合は、担任や主任の先生に相談してみましょう。

活動内容によって参加の仕方などを対応してもらえることがあります。

友だちができたり、環境が慣れることで変わってくることもありますし、それまでにできる対策や援助を一緒に考えるつもりで、先生に相談するとよいでしょう。

登園拒否・登園しぶりをしやすい子っているの?

多いパターンとしては、

  • 集団生活に慣れていない
  • 日中、ほとんど保護者と家庭で過ごしてきた

などが挙げられますが、家庭内での子どもの性格や姿からだけでは、一概には言えません。

人見知りのない子が落ち着かなくなるケースもあります。

たとえば……

  • お姉ちゃんの登園についてきて、園にすっかり慣れていたはずの妹ちゃん。
    ところが、いざ自分が入園すると、なぜか毎日大泣きで「行きたくなーい!」
    あんなに、お姉ちゃんと一緒に幼稚園行くのが楽しみだねと言っていたのに!?
  • 年中組に進級したTくん。年子の弟くんが泣いて登園する日が続くなか、一生懸命、付き添ってお世話してくれていました。
    そんなTくんが、2学期になってから、突然自分が行きたくないと毎日大泣きするように。
    保護者は、1学期は弟くん、2学期はお兄ちゃんの登園しぶりを経験することになりました。

新入園児や新学期に多いと思われがちですが、慣れてきてから状況がのみ込めて「嫌だ」という気持ちを表現できるようになったり、段々と「なんだか不安」という思いが出てきたりすることもあります。

反対に、心配していた子が意外に平気だった、ということも多々あります。

3 家庭では「一緒に乗り越えよう」という気持ちで

家庭でできる対応としてポイントになるのは、

  • 子どもにプレッシャーを与えない
  • プラスの言葉がけ
  • 時間的・精神的な余裕をもつ

ことです。

子どもにプレッシャーを与えない

子どもの不安や心配な気持ちに共感することは大切なのですが、登園拒否・登園しぶりに対して、保護者が不安な表情を見せてしまうことは避けたいもの。

子どもは、自分のせいで保護者が困っていることを敏感に察知します。

「あなたは不安なのね」「あなたは心配な気持ちなんだね」と、子どもの思いには寄り添いつつ、子どもと保護者の感情は別のもの、と切りわけて考えるとよいでしょう。

また、「今日こそは泣かないで行きなさい」「泣くのはお母さん・お父さんが恥ずかしい」などの言葉は、子どもにとって大きなプレッシャーになります。

「今日泣かなかったら、○○を買ってあげるから」といった約束などで一時的に解決するよりも、根本的な解決を目指しましょう。

プラスの言葉がけ

子どもの思いに共感しながら、指示や、一時的な解決を避けるためには、プラスの言葉がけがおすすめです。

子どもを送り出すときには、「楽しんでいってらっしゃーい!」と、元気に見送りましょう。

「お母さん・お父さんも、○○ちゃんが幼稚園に行っている間に元気にお仕事してくるね!」「お掃除して、お買い物してくるね!」と、お互いにがんばろう!という姿勢でかかわることで、子どもも安心して登園できるようになるでしょう。

登園準備をかたくなに拒否する子どももいますが、そんなときにも、ひたすらプラスの言葉がけです。

「幼稚園の服、○○ちゃんが着たらかっこいいね!」「似合うね」と、着てみたくなりそうな声かけを。

「(○○ちゃんが着ないのなら)お母さんが着てみようかな?」「(無理!と返ってきたら)でもこうしたら着られるかな…」など、ここはしぶとくいきましょう!

「どう、お母さんも似合うでしょう?」に「ダメ! 私の!」という言葉が出たら、すかさず「じゃあ着てみる?」と、続けてみてください。

ただしこれには、保護者の余裕が必要です。後述の「時間的・精神的な余裕」がある日や、休日に試す経験を重ねていきましょう。

登園するときには、「お母さん・お父さんも幼稚園の先生に会いたいな。だから一緒に行こう!」「幼稚園の○○で遊ぶの楽しそうね。やってみたいね」「今日の給食に○○が出るんだって! おいしそうね」など、園へ行くことが楽しみになるような、安心できる言葉をかけてみてください。

時間的・精神的な余裕をもつ

上記のようなやりとりをするためには、時間の余裕が必要です。

とくに子どもが園に慣れるまでは、

  • 休日に出かける予定を減らし、親子ともに睡眠時間を平日より多めに確保する
  • 「理想の家事」から手を抜き、「今日は○○をやらなかった!」と、できなかった、ではなく、あえてやらないことを意識する(できたら自分を褒めましょう)
  • 実家や義実家、ファミリーサポートなどの、頼める人や制度を活用する(実際にはお願いしなくても、フォローをお願いできる人がいることを確認しておくだけでも安心感が違います)

など、時間を確保することを意識していきましょう。

時間的な余裕は気持ちの余裕にもつながります。

ほかにも、

  • 出勤前に、好きなコーヒーショップに寄る
  • お昼にデザートをつける
  • 木曜日は家事をせずに家で○時間寝る!

など、可能な範囲で、保護者がウキウキして楽しみになるような、プチご褒美や予定を組み込んでみてください。

4 園では一人ひとり丁寧に対応する

子どもの登園拒否・登園しぶりが出ると、保護者も心配になったり、不安な気持ちを抱いたりすると思いますが、園でしっかり対応していきますので、どうか安心してくださいね。

園では、登園拒否・登園しぶりの姿が見られる子どもたち一人ひとりに合わせて、丁寧に寄り添うことを一番大切にしています。

「嫌だ」「悲しい」という思いを否定せずに受け入れながら、だっこしたり、朝の身支度を一緒に進めたりして気持ちを切り替えられるようにし、園で飼育している動物を見に行ったりします。

基本は担任が対応しますが、あえて上のクラスの子どもたちにフォローをお願いしたり、担任でない方がよいと判断したときに、クラスを担当していないフリーの保育者や、場合によっては園長など、別の保育者が対応する場合も。

ただ、どのようなときでも担任だけではなく、情報を共有しながら、園全体として連携しています。

また、バスの時間が決まっているバス通園以外の場合は、早めに登園することをおすすめします。

早く登園すると、他の子どもとかかわる時間や遊ぶ時間が確保できて、その分、早く園に慣れることができます。

先生側もじっくりと対応できるので、登園後の子どもの様子を伝えるなど、家庭との連携もとりやすくなります。

5 前田先生からのメッセージ

お子さんの登園拒否・登園しぶりだけに限らず、保育者として、「子どもを信じること」「保育者と連携すること」をお伝えしたいです。

登園拒否・登園しぶりの姿が見られたら、まずは原因を考えてみましょう。

それが、ただただ、新しい環境への不安なのであれば、心配しなくても大丈夫です!

子どもの力ってすごいのです。

その子なりのペースはありますが、必ず園に慣れて、お友だちを作って……と、成長していきます。

他のお子さんと比べることはせずに、お子さんのペースを見守ってください。

そして、保育者と情報交換すると安心できることが多いです。

私たち保育者も、お子さんが楽しく園に通えるように、普段のお子さんの様子や家庭での過ごし方などを教えていただけると、対策を考えやすくなります。

また、お子さんだけではなく、保護者の皆さんにも安心していただきたいと思っています。

迷惑かな? 聞いていいのかな? といった気遣いは必要ありません。

ぜひ積極的に、園での様子などを聞いてみてくださいね。

家庭でのかかわりのヒントももらえますよ。

この記事の監修・執筆者

元幼稚園教諭 前田 和代

東京家政大学児童学部児童学科准教授。専門は幼児教育学、保育学。特に子どもの遊びや保育環境に関心があり、保育者だったときから子どもの遊びのおもしろさ、そこで育つ力のすごさを実感している。

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