乳幼児期のお子さんに人気のブロック遊び。
ブロック遊びは単に楽しいだけではなく、幼児期に遊ぶことで子どもの発達によい影響を与えるといわれています。
そこで、小児神経学、発達神経学が専門の榊原洋一先生(お茶の水女子大学 名誉教授)にブロック遊びで得られる効果について伺いました。
また、子どもの発達に合わせたブロックの遊び方と保護者の関わり方についてもご紹介します。
文/こそだてまっぷ編集部
ブロック遊びは子どもの能力を育む効果がある
幼児期にブロックやその他の方法でよく遊ぶことは、人間形成のベースを作るうえで大きな意味があります。榊原先生は遊びで身につく能力について、次のように語っています。
「子どもは、遊びを通して、たくさんのことを学んでいます。どうやったらできるのか、何をしたらもっと面白くなるのか、など。時には失敗してまた考えてやり直す、そんなことを繰り返して、思考力や集中力、探究心、やり抜く力、工夫する力といった実にさまざまな能力を育んでいます。
こういった能力は、「読み・書き・そろばん」といった学習だけでは学べない人間として生きていくために必要な力。もちろん、子どもにとっては学習も大切ですが、遊ぶことは、それ以上に大切だといえます」
遊びを通して得られるものは、ほかにもたくさんあります。
達成感を味わって自信を得たり、次の遊びのための原動力になったり、誰かと遊ぶことで協調性や共感性を育んだりと、さまざまな能力が育まれるのです。
ブロック遊びは、ゴールがないからすばらしい
しかし、遊びなら何でもよいわけではないようです。それでは、子どもにとってどのような遊びがよいのでしょうか?
「ここでいう『遊び』とは、子ども自身がやりたいと思い行動したこと、そして楽しいと思うことが重要です。
また、遊び方には自由度があり、ゴールや正解がないものがよいでしょう。決められたルールがあったり、完成したら終わりだったりというものだと、思考力や達成感は味わえるかもしれませんが、子どもらしい想像力や探究心がどんどんそがれてしまうのです。
その点、ブロック遊びは、「こうしなきゃいけない」というルールも、「これを作るべき!」という正解もゴールもありません。子どもが思いのままに自由に作れて、無限に楽しめるという点がすばらしいのです」
遊びが大事だからといって、何でもおもちゃを与えればよいということではないのだということが、榊原先生のお話から見えてきました。
まとめると、「遊び」のポイントは、次の2点です。
・子ども自身がやりたいと思ったもの、楽しめるもの
・自由度が高く、ゴールや正解がないもの
このポイントを踏まえると、好きなものを何でも作ってよく、子どもの想像力を存分に発揮できるブロック遊びはまさに理想的といえるでしょう。
お子さんがブロックに興味をもったら、見守って、好きなように遊ばせてあげましょう。
見本を見せて「これを作りなさい」などと必要以上に遊び方を誘導してしまわないようにするのが大切です。
発達に合ったブロックの遊び方
ブロック遊びは乳児期から長い期間遊べ、心身の発達に合わせてさまざまな遊び方ができるのも大きな利点です。
そこで、子どもの発達に合ったブロックの遊び方と、保護者の関わり方の例をご紹介します。
もちろんお子さんが自由に遊ぶことが大前提ですが、遊び方に迷った際には参考にしてみてくださいね。
1.5歳ごろ
体の発達
一人で立って歩き始める頃です。物を押したり、つまんだり、コップやスプーンを使えるようになります。
ブロックの遊び方
・ブロックをつかんで箱に入れる遊び
・ブロックをテーブルなどに並べる遊び
・ブロックを食べ物に見立てたおままごと遊び
保護者との遊び方
大人の言うことが少しわかるようになる頃なので、「〇〇ちゃん、あのブロックを取って」「このブロックを、箱に入れて」など遊びながら会話をし、上手にできたら褒めてあげましょう。
2歳ごろ
体の発達
歩く、走る、跳ぶ、蹴るなど基本的な運動行為ができるようになります。ひとりでごはんを食べられるようになるなど、手指も発達します。
ブロックの遊び方
・積み上げたブロックを崩す遊び
・だるま落としに見立てた遊び方
・ブロックを車や電車に見立て、ぬいぐるみを乗せるなどの乗り物遊び
保護者との遊び方
保護者のまねをしたがる頃です。この時期はブロックをほかのモノに見立てた“ごっご遊び”も喜びます。一方で、“一人遊び”をし始める頃なので、ひとりで熱中しているときは少し離れたところから見守りましょう。
3歳ごろ
体の発達
片足立ちやつま先歩きなど、バランス運動ができるようになります。お箸やハサミが使えるようになり、手先が一段と器用に。
ブロックの遊び方
手首をひねる動作が可能になる頃。伸び縮みできるようなパーツを含んだブロックを持っている場合は、自由にポーズが作れる作品にトライしてみましょう。
保護者との遊び方
“自分でやってみたい”という意欲が芽生え始めます。いっしょに作品を作る場合は、保護者が先回りしすぎないのがポイント。お子さんが自分で好きな物を作れる場合は、その意欲を尊重してあげましょう。
4歳ごろ
体の発達
色(赤・青・黄・緑)の区別や前後上下の理解、1~5くらいまでの数字を認識できるようになります。
ブロックの遊び方
工夫して遊ぶことが楽しい時期です。たっぷりのパーツで大作を作ってみましょう。
また、回転動作ができるブロックを持っている場合は、オリジナル作品にも挑戦してみて。
保護者との遊び方
ルールを決めて遊ぶことやお片付けができるようになる頃です。「使ったブロックはバラバラにしてから片付ける」「ブロックを独り占めしない」など、遊びながらルールを守る練習をしましょう。
5歳ごろ
体の発達
体力や筋力が発達し、弾んだボールをつかんだり、スキップができるようになったりします。また、手先もさらに器用になり、ハサミを使ったり、図形を描いたり、リボン結びができるようになります。
ブロックの遊び方
論理的に考えられる能力が伸びるときなので、もし新たなものを取り入れるとしたら、プログラミング機能がついたブロックがおすすめ。ブロックを回転させたり、光らせたり、自分が思い描いた通りに動かす楽しさを味わって。
保護者との遊び方
人と協力して遊べるようになるので、分担してひとつの物を作ることなども可能になります。自分で考えて判断できるようにもなるので、「ここどうする?」など、お子さんの意見を聞いてみるのもよいでしょう。
お子さんとのブロック遊びを保護者も楽しもう
お子さんの遊びを見守るだけではなく、いっしょに楽しむことができるのもブロック遊びのよいところです。
保護者もいっしょに遊び、「すごいね!」などと褒めてあげることが、お子さんの自己肯定感が育まれたり、遊びを通してコミュニケーション能力が養われたりすることにもつながります。
また、お子さんといっしょに遊ぶ際には保護者も楽しんでいることも大切です。保護者も楽しんでいる様子を見て、子どもは幸福感を得ることができるからです。
この時期のお子さんと遊べる限られた貴重な機会に、ぜひ、保護者の皆さんもお子さんといっしょに大いにブロック遊びを楽しんでみてくださいね。
この記事の監修・執筆者
1951年東京都生まれ。東京大学医学部卒業。お茶の水女子大学大学院教授、理事・副学長などを経て、現職。医学博士・小児科医。現在は、発達障害の臨床的研究、発達障害児の保育、子どもの生育環境とその発達への影響、国際医療協力を主な研究対象としている。専門は、小児神経学、発達神経学などで、「子どもの心と体の発達」に関する著書を数多く執筆し、それらは高い評価を受けている。『発達障害のある子のサポートブック』(学研)など著書多数
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