![【世界が注目する日本の教育】小学校の「特別活動」について知ろう[教育評論家監修]](https://kosodatemap.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/2025/05/pixta_123730764_M_6mMa.jpg)
今、日本の学校教育が世界から注目されていることをご存知でしょうか。実際に日本の教育活動を参考にし、実践しているという国もあると報告されています。中でも絶賛されている活動のうちのひとつが「特別活動」です。教科以外の活動を通して、社会性や人間性が身につくと考えられているからです。
日本では昔から行われてきた教育ですが、この「特別活動」は具体的にどのような活動なのかご存知でしょうか? そして今は実際にどんなことが教育現場で行われているのでしょう。
ここでは教育評論家の親野智可等先生に、現在の小学校教育における「特別活動」についておうかがいました。
取材・文/細川麻衣子
「特別活動」ってなに?
学校生活は学習教科(国語・算数など)以外にも、さまざまな科目や活動で構成されています。そのうち小学校では❝学級活動、児童会活動、クラブ活動、学校行”の4つにかかる時間(授業時数)を「特別活動」と位置付けています。
「特別活動」の目的は、それぞれ構成の異なる集団での活動を通して子どもたちが成長することと、今後社会の一員として生きていくために必要な力を育むため、と考えられています。
そのためには❝人間関係形成・社会参画・自己実現”の3つの力を育むことが大切なポイントとされています。
●人間関係形成/お互いに違いを認め合い共に生きる力
●社会参画/所属する集団や社会を他者と協力し、よりよくする力
●自己実現/なりたい自分に向けて努力する力
また、指導要領では『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実』※1として、下記のように示しています。
●子どもひとりひとりの特性や学習進度、学習到達度等に応じた指導方法・教材や学習時間などを柔軟に対応し進めていくこと=❝個別最適な学び”
●さまざまな集団活動に自主的・実践的に取り組むことで、お互いのよさに気づいたり可能性を発見・発揮するようになること=❝協働的な学び”
上記のふたつが充実することで、子ども自身が新しい時代に求められる資質や能力を個々に伸ばすことができ、多様な人々と協働しながら豊かな人生を切り開くことができる、という考え方も示されています。「特別活動」にも、この考え方が反映されているといえるでしょう。
※1:文部科学省/指導要領『個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実』資料
「特別活動」は1年間で約35時数
「特別活動」は小学校から中学校まで一貫して、年間約35時数※2となっています。
※2:学校教育法施行規則に定める標準授業時数のこと。小学校の1単位時間は45分。中学校の1単位時間は50分。(参考URL:文部科学省 小学校・標準授業時数について)
「国語」や「算数」などの学習教科は学年によって時数の増減がありますが、「特別活動」は一貫して同じ時数です。学年問わず同じ時数を割いている活動とは、いったいどのような活動でしょうか。
≪関連記事≫【小4の算数】学習目標と内容、そして家庭でできるサポートについて[教育評論家監修]
「特別活動」とはさまざまな集団活動のこと
学校はひとつの「社会」でさまざまな集団から構成されています。冒頭にもお話しした通り、「特別活動」にあたるものは①学級活動、②児童会活動、③クラブ活動、④学校行事、主にこの4つを指します。
①学級活動
学級は日々の生活をともにする学校生活のなかで最も身近な集団。これは人生の生活基盤「家族」や、将来的には「職場」といった生活につながる集団活動において、お互いを理解し協力できる力をつけられるように、学校生活では学級活動を基盤に実践していく。
≪学校での活動例≫
朝の会、帰りの会、日直、掃除、係活動など
②児童会活動
全校児童集会などすべての児童で行う活動から、役割ごとに分けられた委員会活動を含む、学年を越えた異年齢集団での活動。高学年の児童がリーダーシップを発揮しながら、よりよい学校づくりのため協力して問題解決を行っていく。卒業後は、地域社会の自治的な活動につながる。
≪学校での活動例≫
児童会(児童の活動運営組織)、委員会(放送委員、飼育委員…)、など
③クラブ活動
主に4年生以上の児童で構成される異年齢集団で行う活動。みんなで楽しむことができる活動を、児童らが主体的に決定し自ら計画・運営を行う。卒業後は、地域や社会におけるサークル活動や同好会などにつながる。
≪学校での活動例≫
文化・体育・ボランティアにかかる活動など
④学校行事
学校全体で取り組む活動のこと。基本的には学校側が主催であるものの、児童が積極的に参加・協力することによって充実する教育活動。また、地域の催し物など学校外の行事とつながりのある活動内容もある。
≪学校での活動例≫
儀式的行事(入学式、卒業式など)、文化的行事(運動会、文化祭など)、健康安全行事、遠足・集団的宿泊行事など
【学級活動】クラスみんなが楽しくなる❝係活動❞
学級生活を、より楽しくするために子どもたちが自発的に話し合って活動するのが係活動です。現在は、保護者世代が子どもの頃には無かったようなユニークな係も⁉ 係活動の例をご紹介します。
(厳密に線引きはされていませんが、当番活動とされる学級運営上必要とされる活動も、ここでは係活動のひとつとして含みます)

・プリント係/学級宛に届けられた配布物を配る
・掲示係/学級内の掲示物を考え創作する
・給食係/給食室から食事を運んだり配膳したりする
・黒板係/授業の前後、黒板をきれいにする
・整列係/移動時などで整列するときに指揮をとる
・生き物係/学級で飼っているめだかなどの生き物を育てる
(上記のように学級活動に、必要なものから……)
・あいさつ係/大きな声であいさつをしたり号令をかけたりする
・表彰係/学級でお祝いすべきことがあったときに表彰する
・換気係/空気の入れ替えのため窓の開閉を管理する
・誕生日係/クラス全員の誕生日を把握して当日に歌を歌う
・おりがみ係/作品を作って掲示したりプレゼントしたりする
・クイズ係/クイズを考えて学級内で出題する
・じゃんけん係/みんなでじゃんけんをするときに仕切る
・お笑い係/お笑いネタを考えて発表する
・映え写真係/ギガ端末のカメラ機能を使って写真を撮る
・落とし物さがし係/クラスメイトの落とし物や無くし物をいっしょに探す
・図書よみもの係/おすすめの本や話を紹介する
・ほめる係/善い行いをした子のことを周知してほめる
・なんでも係/困っていることを解決したり、誰かの頼みごとをいっしょに行う
…など
このようにあると学級活動が円滑に運び、より楽しくなるという係を学級内で話し合い、小人数の集団で活動します。これらの多くは、子どもたちの発案によって運営されているようです。
【児童会活動】学校活動を子どもたちの手で行う❝委員会❞
学校生活をより良くするため、学級や学年をこえて活動するのが委員会です。多くの学校では高学年のみで構成されることが多いようです。委員会の種類は基本的に以下のようなもので構成され運営されています。
(学校により規模や所属人数などはさまざま。また、以下のすべてが存在するわけではありません)

・児童運営委員会/児童会全体の活動を計画・運営する。各委員会代表児童の会議の運営など。(学校によって呼称は、代表委員会、運営委員会、などさまざまです)
・美化委員会/校内を清掃したり、美化活動を推進するなど
・保健委員会/健康に関すること、保健の広報活動、けがの手当の手伝いなど
・図書委員会/図書の貸し出し、図書室の整理、本棚の整理など
・体育委員会/朝や休み時間の運動の計画、運動会の準備など
・飼育委員会/飼育動物の世話、飼育環境の整備など
・栽培委員会/校庭や花壇の整備、植栽など
・放送委員会/校内放送の準備、給食放送、音楽放送など
・給食委員会/給食の準備、片付け、食育の推進など
・環境委員会/掲示物の作成、清掃活動、環境美化活動など
・新聞(情報)委員会/児童会新聞の発行、記事作成など
このように、学校運営に欠かせない活動を子どもたち自身が担い、進めていきます。保護者が小学生時代から実践されてきているので、馴染みを感じた方も多いのではないでしょうか。
【クラブ活動】子どもならではのユニークなクラブも⁉
クラブ活動は主に4年生以上の学年になると始まります。主に文化系と体育系のものに分けられ、授業では学べない分野を楽しく学ぶ機会を得られたり、チーム競技のルールなどを楽しく遊びながら学ぶことなどができます。

≪文化系≫ ※/以降は説明の必要なものにのみつけています
・英会話クラブ(イングリッシュクラブ)
・科学クラブ(サイエンスクラブ)
・書道クラブ
・料理クラブ
・手芸クラブ
・美術クラブ(アートクラブ、工作クラブなど)
・マンガイラストクラブ
・吹奏楽クラブ/音楽の授業ではあまり使わない楽器を使っての演奏などを実践
・インターネットクラブ/ネット環境でできるあらゆることを実践
・演劇クラブ/俳優になりきって劇や舞台を企画・構成・演出
・プログラミングクラブ/ギガ端末などを使用してプログラミングを実践
・黒板アートクラブ/描きたいものを決めて黒板アートを実践
など
≪体育系≫
・バスケットボールクラブ
・バドミントンクラブ
・サッカークラブ
・ドッジボールクラブ
・一輪車クラブ
・ダンスクラブ
・おにごっこクラブ
・かけっこクラブ/どうしたら速く走れるかを研究
など
≪上記以外のジャンル・その他≫
・ボランティアクラブ/募金活動などを募る
・フォトクラブ/映え写真のとり方を研究
・釣りクラブ/釣り・魚について研究
・電車クラブ/鉄道について研究
・お祭りクラブ/お祭りを行うことを目標に計画など
・推し活クラブ/アイドルの推し活を楽しむ
など
学級や学年を越え、同じ興味を持った子ども同士で仲良くなって盛り上がることで、自然とコミュニケーションも増え、より充実した学校生活を送ることができそうですね。
いかがでしたか? 現在の学校教育における「特別活動」についてお伝えしました。さまざまな集団活動を通して、個人的にも集団的にも、学校生活を楽しみながら成長も期待できそうですね。
ただ、特別活動にはメリットもある反面で、過度の同調圧力を生み出し、子どもたちに精神的な負担を強いているという批判もあります。お子さんとの会話の中で特別活動を話題にしてみて、子どもがどのように関わっているのか? どのような思いでいるのか?などにも注意を向けてみるといいですね。
この記事の監修・執筆者

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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