おもちゃを出しっぱなし。言ったことは右から左。イヤイヤ期でもないのに「イヤ!」と言って聞かない…。
優しい親でいたいけれど、そんな時はついつい、「いい加減にしなさい!」と怒鳴ってしまう方も多いのでは?
今回は、1日5分のチャレンジで親子の関係が変わる、PCITという心理療法の考え方を紹介します。
お話:加茂 登志子先生(PCIT-Japan、日本PCIT研修センター代表)
イラスト:ツムママ(https://www.instagram.com/tumutumuo/)
PCITとは?
PCITはParent Child Interaction Therapy(親子相互交流療法)の頭文字をとった心理療法のことで、アメリカで考案されました。
幼い子どものこころや行動の問題と、養育者の両方に対して働きかける、行動科学に基づいています。
特に2~7歳の子どもに有効なアプローチです。
本来はセラピストと一緒に段階を踏んで行う療法ですが、加茂先生に、家庭でも1日5分で取り組めて、親子の関係がより良くなる方法を教えていただきました。
PCITを1日5分で解決する方法
子どもは保護者の気を引こうと、良い行動も問題行動も起こします。
褒められることも叱られることも、子どもにとっては同じ「注目」。
「注目」されることによって、その行動はより強化されます(その行動が増えて定着します)。
褒められた行動も叱られた行動も、「注目された」という意味で増えていきます。
つまり、「子どもの良い行動に注目し、良くない行動には注目しない」ことが、問題行動を減らすことにつながるのです。
ここで紹介するのは、1日に5分だけ親子で行う、1対1の遊びの時間です。
「スペシャルタイム」と呼ばれ、子どもの良い行動に注目することで褒められるような行動を増やし、問題行動を減らすという意味合いがあります。
用意する物は、積み木やブロック、お絵描きやままごとの道具、粘土、車のおもちゃやお人形など“創造的”なおもちゃ。遊び方が決まっている物ではなく、やりとりが楽しめるおもちゃと考えると良いですね。
周囲に刺激が少ない、落ち着いた部屋で遊ぶのがおすすめ。
この5分間だけは、子どもの遊びに保護者がじっくりと付き合うのです。
Don’tスキルとDoスキル
この時に保護者が必要なスキルは、3つのDon’tスキル(避けること)と、5つのDoスキル(心がけるべきこと)です。
悪い例(Don’tスキル)
×命令
「○○しなさい」「次は△△しよう」
直接的な言い方も、提案も、命令です。この時間は子ども主体、子どもがリーダーです。
×質問
「これなあに?」「どうして□□したの?」
5分間だけは、子どものやることに口を挟みません。
×批判
「なんでそうするの?」「もっとこうした方が面白いよ」
子どもの行動を止める言葉はNGです。
思わず言ってしまいそうな言葉もあったのではないでしょうか?
でもここはグッと我慢。
そして、保護者はさらに5つのことを意識します。
Praise…ほめる
子どもの行動を、具体的に褒めます。
コツは、状況をそのまま言葉にすることです。
例)「すごいね!」→「積み木が高く積めてすごいね!」
「上手」→「絵が上手に描けたね」
Reflect…繰り返す
子どもの発言をそのまま繰り返します。
または、補足説明を入れます。
例)子「ママはお店屋さんね」→親「ママはお店屋さんなのね」
子「ワンワン」→親「茶色いワンワン、犬だね」
Imitate…まねをする
子どものまねをして、同じ遊びをします。
Description…行動の説明
子どもの行動を、子どもを主語にして説明します。スポーツの実況中継のようなイメージです。
例)子どもがブロックで作った飛行機を飛ばしている
親「○○くんは、ブロックで飛行機を作って…ブーン! 高く高く飛ばしています。どんどん飛ばしていきます」
Enjoy…楽しんで
子どもと一緒に遊ぶことを楽しみます。
険しい表情は、この5分間はお休みです。
これらの頭文字をとって「PRIDE」(Doスキル)と言います。
5分の間に、それぞれ10個ずつ出すことを目標とします。
スペシャルタイムの間は、保護者に見守られて、やりたいことを安心してできている、保護者とよい交流ができていると子ども自身が感じることが大事です。
無視のスキル
スペシャルタイムは「子どもの良い行動に注目する」と説明しました。
でも例えば子どもが積み木を口に入れたり、おもちゃを投げたりした場合は?
こういった「望ましくない行動」が出た時は、”無視のスキル”を使います。
その行動が終わるまで、見えないふり・聞こえないふりをするのです。困った顔で微笑む、などもなしです。
少し時間がかかる場合もありますが、ひたすら無視をします。
そして子どもがその行動をやめ、正しいおもちゃの扱い方をした瞬間に「おもちゃを丁寧に使ってくれてありがとう」「おもちゃで優しく遊べたね」と褒めるのです。
ただし、誤飲の可能性があったり、けがをしたりなど、子どもにとって危険な、あるいは物を壊す、親を激しく叩く、蹴るなどの破壊的な行動は、すぐに止めましょう。
PCITを解決する指示の出し方
スペシャルタイム以外での子どもへの指示出しには、効果的な命令のための8つのルールがあります。
その中でも特に大切なのは、必要な時に、ひとつだけ。これが鉄則です。
そして、「やめなさい」という否定的な言葉ではなく、「おもちゃをここに入れて」「座りなさい」などの肯定的な言葉で、具体的に”どうすれば良いのか”を指示します。
スペシャルタイムで親子の関係が強化されてくると、段々と指示をすんなり聞き入れるようになります。
1日5分がどうしてもとれない…でも大丈夫!
とは言え、忙しい日々のなか、毎日5分を確保するのが難しいこともあるでしょう。
その場合は、食事、お風呂、園の送り迎えなどの時間でも構いません。
Don’tスキルとDoスキルを意識して、子どもの話に耳を傾けてみてください。
保護者も続けるうちにスキルが身について、日常でも自然とふさわしい言葉が出るようになってきます。
子どもの問題行動を減らし、保護者の育児スキルも高めるPCITで、親子の時間をもっと豊かにしていきましょう!
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