「文字通りに受け取る」ことの危うさとは?SNS時代こそ必要な「真の読解力」の育て方【国語教育専門家監修】

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「文字通りに受け取る」ことの危うさとは?SNS時代こそ必要な「真の読解力」の育て方【国語教育専門家監修】

当たり前のように現代の子どもたちを取り巻くSNSやAI。そんな情報過多の時代に必要になってくる「読解力」とは、どのような力なのでしょうか。子どもの読解力を高めるために、家庭でできる取り組みについて、国語教育の専門家である伊藤氏貴先生にお話をうかがいました。

こそだてまっぷ編集部

目次

文章を読んで理解する情報処理能力は読解力の一部

近年の大学入学共通テストでは、国語に限らず、全教科で問題文の長文化・増量化が話題になっています。こうした傾向の変化から、受験生には、制限時間内に大量の問題文を読み解く「読解力」が必要といわれています。ここでいう読解力とは「文章を読んでスピーディーに情報を処理する能力」のことです。

しかしながら、読解力とは、本来は情報処理能力だけを言うのでありません。むしろ、これからの時代、情報処理はAIの仕事になります。AIは、人間よりはるかに速く正確に情報処理をしてくれます。人間にも、大量の文章を速く読み解く読解力があるに越したことはありません。しかし、ここでは、そうした「読解力」よりもっと重要になってくる読解力について説明します。

書かれていないことを読み取る能力の大切さ

では、これから本当に必要になってくる読解力とは何でしょうか。読解力には、次の2つの能力が含まれています。

●文章に書かれたことを正確に読み取る力(いわゆる情報処理能力)

●文章に明確に書かれていないことを読み取る力

特に、「行間を読む」とも言われる、2つ目の「書かれていないことをどれだけ読み取れるか」という力は非常に重要です。書き手の意図を推察する力とも言える読解力は、他者を理解するために欠かせない力だからです。

なぜ、言外のことをとらえる読解力が必要なのか?

社会で生きていくためには、考え方の異なる人と共存していかなければなりません。時には価値観や考え方の異なる相手の言い分を聞いて、たとえ共感はできなくても、相手がなぜそう主張しているのかを理解するのは、他者と共存するために必要です。

さらに、言葉として発せられていなくても、相手の心の中にある思いを察知できる力は、良好な人間関係を築く上で大切になってきます。

このように、文章に明確に書かれていないことをとらえる「読解力」は、対人関係において相手が意図することをくみ取る力に通じるのです。

SNS時代こそ必要になってくる、行間を読む力

SNSの普及によって、子どもたちの世代がweb上で言葉をやりとりする機会が増えました。ただ、短い言葉をスピーディーにやりとりするSNSは、受信した際に瞬時に反応する傾向があるため、相手がそのテキストを書いた裏で、本当はどんなことを考えているのかをおもんばかる時間の余裕がありません。SNSのやりとりだけでは、相手の気持ちを推測する訓練が十分にできない可能性があるのです。

たとえば、メールやSNS上のやりとりなどで「○○って、よくない?」というテキストを「○○は良い」という意味で、反語的な表現(疑問の形で、反対の意味を伝えること)にして書く場合があります。ところが、受け取った側に「良くない=悪い」と誤って受け止められてしまった経験がおありの方もいらっしゃるのではないかと思います。このような場合、人間関係のトラブルにも発展しかねません。

相手の表情が見える対面コミュニケーションなら、イントネーションや前後の文脈などから、このような行き違いを避けられる場合もあるでしょう。つまり、テキストでやりとりするSNS全盛時代だからこそ、行間から相手の真意をくみ取る読解力は、これまで以上に重要になってくるのです。

SNSでは自分と違う考えの人に出会いにくい

SNSは、利用者の好みに合った情報が表示されるアルゴリズムが作用しているため、自分と同じ意見の人同士が集まりがちです。

「文字を読む」という行動には、本来「自分とは違う考えを知る」という大切な目的があります。ところが、自分と考えが近い人が集まるSNSを見ているだけでは、異なる考えの人に出会いにくくなるというわけです。

SNS時代こそ、テキストから行間を読み解く読解力が必要なのに、SNSを利用したコミュニケーションでは、そうした読解力を育むのが難しいのが実情なのです。

行間をとらえる読解力は他のあらゆる教科の土台になる

「うちの子は算数の文章題が苦手です」と悩む保護者の方がいらっしゃいます。しかし、実際は、算数そのものが苦手というより、問題文の意味を正しく理解できない「読解力不足」が原因で、算数の問題が解けないことも多いのです。算数に限らず、読解力を含む国語力は、あらゆる教科の土台となる重要なものだということがおわかりいただけると思います。お子さんの学力向上のためにも、まず、読解力を高める取り組みから始めてみてはいかがでしょう。

家庭で子どもの読解力を高めるには読み聞かせを

幼児や低学年のお子さんの読解力を育むには、読み聞かせが有効です。読み聞かせをする際のポイントを紹介します。ぜひ、実践してみてください。

1.同じ作品を繰り返し読む

同じ作品を、お子さんが先を覚えて言えるようになるくらいまで何回も繰り返し読みましょう。繰り返すことで、「こうなったら、次はこうなる」という展開への理解が定着します。ある一定の展開パターンが頭に入っていると、「こういう場面では、人はこう考えたり行動したりするものだ」などと、登場人物の気持ちを推察しやすくなります。

2.途中で問いかけをしてみよう

読み聞かせをしながら、たとえば「このうさぎさんは、このとき、どういう気持ちで行動したのかな?」などと問いかけてみましょう。登場人物が、そのとき、どうしてそういう行動を取ったのか、お子さん自身が意識的に考える時間をもつことで「深めていく読み方」を身につけることができるようになります。

3.複数の登場人物の会話の部分をお子さんと分けて読む

物語の会話の部分を、お芝居の「台本」のセリフを読むように、登場人物になったつもりでお子さんに気持ちを込めて読んでもらいましょう。たとえば、最初は主人公の役をやってもらい、慣れてきたら保護者の方と役を交代してみるとよいでしょう。さまざまな登場人物に感情移入をして読むことが、他者の気持ちになって考える訓練になります。

一人で本が読めるようなってからの保護者の関わり方

お子さんが成長して、一人で本を読めるようになったら、保護者の方はどう関わっていったらよいのでしょうか。お子さんによっては、本を読んでいるように見えても、実は文字を追っているでだけで、きちんと“読めていない”場合があります。ですから、時には保護者の方が本当に読めていているかを確認してみることをおすすめします。そのためには、保護者の方も同じ本を読んで、本の内容についてお子さんと感想を話し合うとよいでしょう。「私は、あの場面が好きだけど、あなたはどう?」などと意見を交換しましょう。

読んだ本について、他人と感想を交わすことは、自分の思考をまとめて言語化する練習になります。また、自分が気づかなかった視点に気づけるのも読書の醍醐味の一つです。読書が好きになるきっかけにもなります。

読書が苦手なら、マンガを選んでもOK

読書が好きなお子さんであれば、自分の読みたい本を選べますが、苦手なお子さんに本を読もうという気を起こさせるのは難しく、どんな本を与えたらよいのか悩むのではないでしょうか。そんなときは、挿絵の多い本から選ぶとよいでしょう。そうして、お子さんの成長に合わせて、段階的に文字が多い作品へとレベルアップしていきましょう。

日本には質の高いマンガ作品も多いので、お子さんの手が伸びるようなら、最初はマンガで構いません。相手の気持ちになって考える力は、マンガの登場人物のセリフだけでなく、表情などを見ることでも養えます。文字を読むのが苦手なお子さんは、マンガを読書の入り口にしてみてはいかがでしょうか。

ただし、マンガを選ぶ際には、何でもよいということではなく、できれば偉人や古典作品をマンガ化したものなど、お子さんの読解力を育てる読み物として良質なものを選ぶようにしましょう。

保護者自身が子ども時代に読んだ本から選んでみては?

保護者の方が、お子さんの本を選ぶ際は、古典といわれている作品や、昔から多くの人が読んできたようなロングセラー作品から選ぶと安心です。また、自分自身が子ども時代に夢中になって読んだ本を選ぶのもおすすめ。

「あなたと同じ年くらいのときに、この本を読んでね……」と自分の体験を話してあげると、読書が苦手なお子さんでも興味をもちやすくなります。

AI時代だからこそ必要な人間の能力

私たちはすでにAI時代に生きています。AIは情報処理能力には長けていますが、言葉で表現しきれない他者の感情や意図を読み取ることはできません。

たとえば、お子さんが外から帰ってきて「今日は、暑い」と言ったら、保護者の方は、冷たい飲み物やタオルを差し出してあげたりするのではないでしょうか。それは「暑い」という言葉には「のどが渇いた」「汗をかいた」などの意味が込められているからです。しかし、今のところAIには物理的にそのような配慮はできないでしょう。

人間の言葉には、その裏に感情や意図があります。AI時代だからこそ、相手の気持ちをおもんばかることができる人間の能力に価値があるのではないでしょうか。

読解力というと、国語教科に限定したスキルの一つだと考えがちです。しかし、実は、他教科の学力を伸ばすスキルのみならず、相手の気持ちを理解するために必要な“生きる力”として欠かせない力でもあります。お子さんが、AIもSNSも上手に活用しつつ、周囲の人たちと上手にコミュケーションをとって生きていけるように、行間をとらえる読解力をじっくりと育ててあげたいですね。

この記事の監修・執筆者

明治大学教授 伊藤氏貴

文芸評論家。麻布中学校・高等学校卒業後、早稲田大学第一文学部を経て日本大学院藝術学研究科修了。博士(藝術学)。2002年「他者の在処」で群像新人文学賞(評論部門)受賞。主な著書に『国語読解力「奇跡のドリル」小学校1・2年』(小学館)など。

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