夏休みの宿題で「読書感想文」に取り組む小学校低学年のお子さんを、保護者はどのようにサポートすればよいのか、筑波大学附属小学校教諭の青木伸生先生にうかがいました。前回は「読書感想文で身につく力」と「本の選び方とオススメの本」のお話でした。
2回目となる今回のテーマは「読書感想文を書くときの本の読み方」と「読書感想文の書き方」です。
お話/青木伸生先生(筑波大学附属小学校教諭) 文/こそだてまっぷ編集部
読書感想文を書くときの本の読み方とは?
読書感想文を書くための読書と、いつもの読書にはどんな違いがあるのでしょうか。
どんなところに気をつけて読み進めればよいかお聞きしました。
初めと終わりで「何が」「どう」変わっていくかを意識して読む
「読書感想文を書くために本を読むときは、物語の構造をつかみながら読むようにしましょう。
初めと終わりで、物語の何がどう違っているか、どんな変化があるかをとらえることが大切です。そして、いつ、どんなところに変化の節目やポイントがあったのか、きっかけを探しましょう。
保護者のかたは、『主人公が、最後は笑っているけれど、物語の始まりではどうだったかな?』『いつから変わったんだろう?』と、お子さんが変化ときっかけに目が向くような声がけをしてみてください」
付箋やメモを活用しながら読む
「前回の記事で、低学年のお子さん向けに絵本をオススメしました。長くない絵本であれば、何度か読むことを前提にしましょう。
1度目は楽しみながらざっと最後まで読みます。
2度目は変化やそのきっかけがあったところ、気になったところ、自分の心が動いたところに付箋を貼ったり、それが何ページだったかメモに書き出したりしながら読みます。
こうすることで、物語の構造を意識した読み方ができます。
また、付箋やメモは、感想文を書くときにも役立ちます」
書く前に“一番を選ぶためのメモ”をつくる
心が動いたことを、どんどんメモ
「いざ読書感想文を書こうとしても、原稿用紙を前に何から書き始めればよいのかわからず、手が止まってしまうこともあります。
原稿用紙に書く前に、付箋やページ数を書き出したものを参考にしながら、まず“一番を選ぶためのメモ”をつくります。
一番おもしろかったこと、一番すてきだと思った人物、一番心に残ったセリフ、一番すごいと思ったところ、一番おどろいた変化などを、『一番〇〇〇〇〇〇だったのは、〇〇〇〇〇〇です』というふうに、どんどんメモに書き出します」
主人公に関する感想を書き出す
「また、主人公に関する感想のメモもつくりましょう。
主人公が好きか嫌いか、その理由、主人公ががんばったこと、すごいと思ったことなどをメモします。
そして、同じ場面で自分ならどうするか重ね合わせて考えてみます。
自分ならここでくじけたかもしれない、自分が経験したことと似ているなど、主人公と自分の違うところ、同じところを探します。
保護者は『主人公が好きなんだね。それはどうしてかな?』『自分ならどうしていたと思う?』など、お子さんが理由まで掘り下げて考えられるような声がけをしましょう」
“一番を選ぶためのメモ”を使って書き出しを決める
スムーズに進む書き出しを選ぶ
「“一番を選ぶためのメモ”“主人公に関する感想のメモ”をつくったら、その中から、最も自分の心が動いたものを選び、どうして一番なのか、その理由を2つか3つ、書き出してみましょう。これが書き出しのヒントになります。
まずは、何が一番なのかを書き出しにします。
そして、それが一番である理由、自分ならどう考えるか、どんな行動をするかなどを足していきます。
たとえば、書き出しはこんなふうにします。
私が一番おどろいたのは、大なわとびに失敗して、最初は泣いていた主人公が、最後には笑顔になったことです。
どうして一番かというと、主人公は一度目になわに引っかかったときに泣いて、二度目に転んで跳べなかったときも泣きました。だから、三度目に引っかかったときも泣くだろうと思ったのに、主人公は笑ったからです。
最後に笑った理由は、周りの友だちがはげましてくれたこと、友だちも最初はうまくいかなかったと教えてくれたことで、またがんばろうと思えたからです。
そして、“主人公に関する感想のメモ”を参考に、自分ならどう考えるか、どんな行動を取るかといったことを足していきます。
もし私が三回続けて大なわとびを失敗したら、笑ってまたがんばれるか考えました。私は大なわとびは得意ですが、まだ自転車に乗れません。練習で転んで、嫌になってやめてしまうことを繰り返しています。主人公はやめてしまわずに、またがんばろうとするところがすごいと思いました。
そして最後に、本を読む前と後で自分がどのように変わったかを書いてまとめます。
最後のページで、主人公が大なわとびの列に並んで、もう一度がんばろうとする姿を読んで、私も自転車に乗る練習をまたやってみたいと思いました。私より先に自転車に乗れている友だちも、きっとたくさん練習したのだろうと思うことができました。
見直しには注意して
「読書感想文を原稿用紙に最後まで書き終えてから見直ししても、子どもはなかなか書き直す気にはなれません。苦手意識がさらに高まってしまうこともあるでしょう。
そこで、まずは書き出しにどの“一番を選ぶためのメモ”を選ぶか決めて、実際に書き出したところで、保護者に見せて相談するように促しましょう。
なぜそれが一番なのか、理由がいくつか挙げられなければ、別のものを選んだほうがよいかもしれません。
理由を1つ書いたら、また見せてもらいます。文章のつながりに無理はないか、理由をいくつか書く場合、その順番は適切かなどを見て、直す必要があればその場で直します。
このように、段階ごとに見直すとよいでしょう。もちろん、子どもが自分で見直すことが大切ですが、低学年のうちは保護者のかたがサポートすると、学年が進むにつれて、自分でしっかり取り組めるようになります」
自分の考えを整理して一番伝えたいことを決め、その理由と根拠を示し、表現する方法を工夫することは、意見文や論文などを書くときにも必要な力です。長い目で見て、読書感想文で培った力がその土台になることを知って、お子さんと読書感想文に取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事の監修・執筆者
あおき のぶお/1965年千葉県生まれ。筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長。
教育出版国語教科書編著者。主な著書に『10分で読める物語 1~6年生』(学研プラス)『必ず書ける あなうめ読書感想文』(学研プラス)『青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング』(明治図書出版)など多数。
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