【小学校教諭監修】[教えて!読書感想文①]身につく力とオススメの3冊

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もうすぐ夏休みですね。

夏休みの宿題の中で、お子さんが頭を悩ませるものの1つが「読書感想文」ではないでしょうか。特に低学年のお子さんは、保護者のお手伝いが必要なことも多いかもしれません。

「読書感想文」に取り組むお子さんに、どんなサポートが適しているのか、筑波大学附属小学校教諭の青木伸生先生にうかがいました。2回にわたってご紹介します。

1回目となる今回のテーマは「読書感想文で身につく力」と「本の選び方とオススメの本」です。お子さんをサポートするための参考にしてみてくださいね。

お話/青木伸生先生(筑波大学附属小学校教諭) 文/こそだてまっぷ編集部

目次

読書感想文で身につく力とは?

本とのつながりが深まり、成長記録にもなる

夏休みに『読書感想文』が宿題として出される目的の1つが、読書を促すことです。
読書感想文を書くためには、じっくり本を読む必要があります。普段より時間がかけられる夏休みに、本にゆっくり向き合う機会をつくるねらいがあります。

そして、『読書感想文』では、子どもが本を読みながらハラハラドキドキしたこと、悲しくなったこと、おもしろかったこと、疑問に思ったことなど、感動した心の動きを表現しますね。単に本を読んだだけでは残らない、その時々の子どもの見方や考え方が記録されます。

つまり『読書感想文』は、読書記録だけではなく、成長記録にもなるのです。
子どもも『読書感想文』を読み返すことで、自分自身の成長を実感することができるでしょう」

「読む力」と「書く力」を培う

小学校の国語の授業では、6年間の積み重ねで、『文章を読んで構造やあらすじを把握し、さらに詳しく読んで内容を深く理解し、文章に対して自分なりの考えをもってそれを表現する力を身につけること』を目標としています。

読書感想文に取り組むことで、子どもにはより深く『読む力』と、心動かされたことを中心に自分の考えたことやその理由を『書く力』が養われますが、その力は、小学校の国語で身につけたい力とつながります」

どんな本を選べばよい?

子どもが興味をもつことが最優先

低学年の子どもは、まずはおもしろいと感じる絵本を選ぶとよいでしょう。
絵本は簡単そうに見えても、テーマや内容が深いものがたくさんあります。

読書感想文のために選ぶとなると、本が苦手だったり、興味がなかったりする子どもは、それだけで“やらされている”という気持ちでいっぱいになってしまいます。
まずは子どもが興味をもつことを優先させて、絵本を選びましょう。

いっしょに書店に行って、子どもの第一印象で選ぶのもいいですね。タイトルがおもしろいものや表紙の絵が印象的なものを手に取ってみてください。

また、名作とされる絵本には、読みやすいのに物語の奥が深い、構造が優れている、テーマが興味深いなど、長く読み続けられているだけの理由があります。そういうものの中から選ぶのもよいでしょう。

それから、必ずしも新しい本を探す必要はありません。
これまで読んだ絵本の中から、気に入っているものを選ぶのもよい方法です」

“3”に注目!繰り返し構造の物語

「読書感想文の書きやすさという点では、物語の構造やあらすじがつかみやすい絵本を選ぶとよいでしょう。

構造やあらすじがつかめると、どこで変化が起きたか、変化が起きたきっかけは何かなどが見えてきます。そこをポイントとして、さらに物語を読みこめば、物語の主題が見えてきたり、登場人物の気持ちが伝わったりと、より深く物語を味わうことができます。

小学校の国語では、『繰り返し構造の物語』と『起承転結のある物語』を扱います。その2つが組み合わさっているものもあります。
中でもオススメなのが、『繰り返し構造の物語』です。

『繰り返し構造の物語』は、お話を繰り返しながら進み、最初と最後で大きな変化があります。

わかりやすい例としては、『三びきのこぶた』です。
こぶたが家をつくるお話が3回繰り返されますが、素材がわら・木・れんがと変わります。素材が変わったことで最初と最後で大きな変化があります。

“3”に注目すると、繰り返し構造の本が見つかります。『三まいのおふだ』や『三びきのやぎのがらがらどん』など、3つのお話がどう繰り返されて、どんな変化が現れるか、比較して読んでみると、物語の構造をつかむ力がつきます

オススメの「繰り返し構造」の絵本3冊

青木先生に、楽しく読めて構造やあらすじがつかみやすい「繰り返し構造」の絵本を選んでもらいました。

『はらぺこあおむし』

偕成社 エリック・カール 作/もり ひさし 訳

日曜日の朝に生まれたちっぽけなあおむしが、月曜日、火曜日…といろいろな食べ物を食べる繰り返し構造の物語です。最初と最後の変化がはっきりしていて、構造がつかみやすいです。絵も美しくて、引きつけられます」

『てぶくろ ウクライナ民話』

福音館書店 エウゲーニー・M・ラチョフ 絵 / うちだ りさこ 訳

おじいさんが森の中に落とした片方の手袋に、ネズミをはじめ、次々と動物が住みつきます。最後には大きなクマまでやってきて…という繰り返し構造です。そこにおじいさんが手袋を探しに戻ってきます。さて、どうなるでしょう」

『せんたくかあちゃん』

福音館書店 さとう わきこ 作・絵

「ナンセンスなおもしろさが味わえます。洗濯が大好きなかあちゃんは、洗濯板で家中のものを洗います。子どもや猫や犬まで洗濯されて干されています。最後には雷さままで洗いますが、その次の日には… 楽しみながら読めて、最後にはびっくりします」

今回は、読書感想文を書くための「本の選び方」をご紹介しました。
次回は、内容をより深く理解するための「本の読み方」と、自分の考えをもち、それを表現するための「読書感想文の書き方」についてお話しします。

この記事の監修・執筆者

筑波大学附属小学校教諭 青木伸生

あおき のぶお/1965年千葉県生まれ。筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長。

教育出版国語教科書編著者。主な著書に『10分で読める物語 1~6年生』(学研プラス)『必ず書ける あなうめ読書感想文』(学研プラス)『青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング』(明治図書出版)など多数。

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