【新種発見】図鑑の制作中に見つかった「ガッケンホソカワゲラ」とは?

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【新種発見】図鑑の制作中に見つかった「ガッケンホソカワゲラ」とは?

子どものころ、ワクワクしながら図鑑を開いた記憶、ありませんか?
図鑑から広がる世界に心を奪われ、時間を忘れて読みふけっていた、そんな思い出がある方も少なくないと思います。その上、「新種発見」と聞けば、ドキドキワクワク!『学研の図鑑LIVEシリーズ』新刊制作中に、なんと新種の昆虫が発見されました。その名も「ガッケンホソカワゲラ」。新種発見の裏側をご紹介します。

文/マムズラボ

目次

新種発見!「ガッケンホソカワゲラ」ってどんな虫?

1970年創刊の『学研の図鑑シリーズ』。その中の昆虫図鑑の新刊制作中に、新種が発見されました。
図鑑制作のため、採集した昆虫のカワゲラの中に2個体、これまでに見たことがなく、論文や図鑑にも載っていないものが見つかったのです。

ガッケンホソカワゲラ

その虫は、カワゲラ目ホソカワゲラ科の一種。本州の川辺に分布する6~8ミリメートルの昆虫で、幼虫期は川底の深い砂の間で過ごします。見つかったのは成虫のみなので、想定も含まれますが、幼虫は河川の砂底のさらに下の深いところで有機物を食べていると思われます。

春になると、成虫となり地上に出てきます。口は退化していて何も食べません。正確な寿命はわかりませんが、成虫は数日から一週間くらいで死ぬと思われ、交尾をして一生を終えるものと考えられます。

カワゲラの仲間は、川の上流で水のきれいな所や、山間部に多く分布しています。ガッケンホソカワゲラが含まれるハルホソカワゲラ属は、北東アジアと北米地域に分布し、特に北東アジアに集中しています。ガッケンホソカワゲラは、近畿地方の北部一帯に分布しているものと思われます。

この虫は、学研にちなんで「ガッケンホソカワゲラ」と名づけられ、『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』に掲載されることになりました。

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ガッケンホソカワゲラを発見したのは、大阪府にある箕面公園昆虫館館長の中峰空さん。2020年の冬頃から、カワゲラ目の幼虫と成虫の採集や写真撮影を依頼されていた中峰さんは、2021年の春先にこの新種を見つけたそうです。

発見場所は鞍馬川(京都市)。樹木の生い茂った上流域、日差しがさし込むような明るく開けた場所だったそうです。
京都市内にある中峰さんの自宅から、図鑑に掲載するための昆虫を採集に行った際に、石の上で発見しました。カワゲラは小さな昆虫なので、違いがわかりにくいそうですが、採集したカワゲラを見た中峰さんは新種ではないかと思ったそうです。

採集したカワゲラが新種ではないか、と中峰さんが思ったポイントは、交尾器(生殖器官)の違いでした。昆虫は種を交尾器の違いで調べることが多く、今回のカワゲラはオスの交尾器、腹端の形態が特徴的でした。腹端にある肛上板が細長く、今まで知られていたものとは異なっていたのです。

昆虫の新種はどのように認められる?

昆虫の新種はどのように認められる?

新種の記載の手順は、発見した昆虫が既に知られている仲間の種とどう違うのか、論文にまとめます。それを査読(専門家が論文内容を査定すること)してくれる媒体に投稿して、妥当であると判断されれば、新種の記載論文が公表されます。

通常は、紙の出版物として発行され確定されますが、今はオンラインの記載システムもあります。
今回の新種「ガッケンホソカワゲラ」は、発見者である中峰さんが論文を執筆、投稿、受理といった手順を経て、新種として公表されることになりました。

命名の理由は?

中峰さんによると、図鑑制作に携わった人たちで話し合い、命名したそうです。
命名の理由は、昆虫研究に関わっている同世代の人たちには、学研の図鑑を見て育った人が多かったからだそうです。また、カワゲラとガッケンは「カ」や「ケ」が重なり、語感が合うようにも思い、ガッケンを冠した名前をつけたということです。

図鑑の楽しさを伝えたい

『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』

『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』で掲載されている写真は、全種生きている虫をそれぞれの特徴がよくわかる角度から撮影しています。乾燥した標本の写真が掲載されることが一般的ですが、生き生きとした虫をきれいな写真で見ることができる図鑑です。そこに、今回発見されたガッケンホソカワゲラも掲載されることになったのです。

学研図鑑担当者から、保護者の皆さんへメッセージ

『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』の制作に携わった学研の編集者から、保護者の皆さんへメッセージが届いています。

『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』の見どころは?

「学習図鑑」としては初めて、すべて生きた昆虫を掲載しているところです。掲載したのは約2,800種ですが、実際には7,000種以上の写真を撮影しており、その中からえりすぐりの昆虫が掲載されました。

生きた昆虫だから、普段目にする姿と同じなので、図鑑をめくるとすぐに名前がわかるという特長があります。カブトムシやチョウ、トンボなど人気の昆虫はもちろん充実していますが、ガやハエ、カメムシなど死んだ標本ではその美しさが伝わりにくかった、嫌われものの昆虫たちにもぜひ注目していただきたいです。

図鑑は子どもにどんな影響を与えると思いますか?

大げさな言い方かもしれませんが、世界観が変わります。

どんなお子さんにも強い好奇心があり、これから未知の世界を冒険する上で、図鑑は学習のためのいわば「地図」となります。私たちが提供するテーマは、「昆虫」「恐竜」「植物」などの区切られたテーマですが、それぞれの分野には体系的な広がりがあり、世界をあまねく覆い尽くしています。つまり各図鑑は、そのテーマごとの「世界地図」ともいえ、子どもたちの「ものの見方」を育みます。

図鑑に載っている知識自体は大人になって意味をなさないかもしれませんが、図鑑をもとに探究した体験の記憶はかけがえのない宝物になります。お子さんがこれから成長して知らないことを調べるときにも、図鑑体験の有無が鍵になるでしょう。『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』はそのような子どもたちの体験を後押しするために設計されています。

生き生きとした虫たちを図鑑で見ることで、探求することの楽しさや、ロマンを子どもたちに感じとってもらえるのではないでしょうか。
子どもだけではなく、大人も新たな発見があるかもしれません。ぜひ、親子そろって図鑑を楽しんでみてください。

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