小さい子にわかりやすいことばで、季節のトピックにおこたえするシリーズ。
今回はハロウィン特別編! ハロウィンのかざりの定番・顔のあるかぼちゃの由来です。
「ジャック・オ・ランタン」といって、ランタン(てさげのあかり)を持った、ジャックという人のおはなしがもとになっています。
ちょっぴりドキドキするジャックのおはなし、おうちハロウィンで読み聞かせてもいいかも!
ジャックのおはなし(アイルランドの民話より)
むかし、あるところにジャックという男がいました。
ジャックはとっても悪いやつで、平気でうそをついて、たくさんの人をだましていました。
1.お酒がのみたい
ある夜、ジャックがお店でお酒を飲んでいると、目の前に悪魔が現れました。
「ジャック、お前のような悪いやつは、地獄へ連れて行くぞ!」
ジャックはちょっと考えてから悪魔にこう言いました。
「地獄に行く前に、あと1杯だけ、お酒をのませてくださいな。」
ジャックはお金を持っていなかったので、悪魔がコインに変身して、それでお金を払うことにしました。
悪魔がコインに変身すると、ジャックはすばやく自分のお財布に放りこみます。
お財布には、銀の十字架が入っていたので、悪魔は動けなくなってしまいました。
「おうい!助けてくれよう」
「ふん、助けてほしかったら、これから10年は、魂をとりにこないと約束しろ!」
こうしてジャックは、悪魔を追い返したのです。
2.りんごが食べたい
それから10年後の夜、道を歩いているとまた悪魔が現れました。
「10年たったぞ。今度こそ地獄へ連れて行く!」
ジャックはそばにあるりんごの木をさして言いました。
「わかりました。では最後にこの木の上のほうにある、あのおいしそうなりんごを食べたいのですが…木にのぼって、取ってきていただけませんか。」
悪魔が木にのぼると、ジャックは木の幹に、ナイフで十字架をほってしまいました。
木からおりられなくなって、こまった悪魔に
「ふん、助けてほしかったら、これからずっと、おれの魂をとらないと、約束しろ!」
悪魔は約束をして、地獄へ帰っていきました。
3.死んだ後は…
それから年をとって、ジャックはなくなりました。
魂になったジャックは、最初は天国へ向かったのですが、生きている間に悪いことをたくさんしてきたので中へ入れてもらえません。
しかたなく、地獄までやってきました。
地獄にはあのときの悪魔がいました。
「おれを地獄に入れてくれないか。」
「ふん、永遠にお前の魂はとらない、と約束をしたじゃないか。地獄の中には入れないぞ。」
「そんな…おれはどこに行けばいいんだ?」
「もときた道を戻れ。」
振り返ると、道はまっくらで、強い風がふいています。
「まっくらでどうしたらいいかわからない…せめてあかりをもらえないだろうか」
悪魔は地獄の火のひとかけらをジャックにくれました。
風で火が消えないように、ジャックはそばに落ちていた大きなかぶをくりぬいて、もらった火をいれました。
そのあかりをもって、ジャックはずっと、天国と地獄の間をさまよっているのです。(おしまい)
かぼちゃじゃなくて……かぶ?
もともとのハロウィンでは、かぶでランタンを作っていたそうです。
今のハロウィンの楽しみ方は、アメリカで広まったもの。アイルランドからアメリカにハロウィンが伝わってきたとき、アメリカではかぶが作られていませんでした。そのかわりに、かぼちゃでランタンを作るようになったといわれています。
なぜランタンをかざるの?
ハロウィンの夜にはわるさをするわるいものと、ご先祖の霊などよいものがいっしょにやってくるとされています。明かりは、わるいものは追い払って、よいものには道案内をしてくれるそうです。
参考文献:マリオン・ポール 著『マイ・ヴィンテージ・ハロウィン』(グラフィック社)/宮北惠子・平林美都子 著『イギリス祭事カレンダー 歴史の今を歩く』(彩流社)/マドレーヌ・P・コズマン 著『ヨーロッパの祝祭と年中行事』(原書房)/アンソニー・F・アヴェニ 著『ヨーロッパ祝祭日の謎を解く』(創元社)/リサ・モートン 著『ハロウィーンの文化誌』(原書房)/鶴岡真弓 著『ケルト 再生の思想』(ちくま新書)/チャールズ・カイトリー 著『イギリス祭事・民俗事典』(大修館書店)
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