入園式が終わり、新生活がスタート。これでひとまず安心と思いきや、入園前とは違う困り事があれこれ発覚! よくある困り事の解決方法を、幼児教育ジャーナリストとして活躍する西東桂子さんにアドバイスいただきました。
お話/西東桂子(元育児情報月刊誌編集長、幼児教育ジャーナリスト)
イラスト/ナシエ
よくある困り事1)生活のリズムがなかなか整わない!
Q 園に通い出すまで、起床時間や食事の時間、お風呂の時間、昼寝の時間、就寝時間といった生活のリズムは、子どもの機嫌や、私の家事の区切りなどに合わせていたので、まちまちでした。だから、子どもが新しい生活習慣になかなか慣れなくて…。朝は全然起きられず、朝食時もうつらうつらしていることが多いです。どうしたら改善できますか?
A 毎朝同じ時刻に起こすようにしましょう
早起きができるようにと、子どもを早く寝かせようとしても、遅くまで起きているのが習慣になっている場合は、なかなかうまくいきません。
生活リズムを整えるには、何時に就寝しようとも、毎朝決まった時刻に起こすことから始めましょう。窓のカーテンをあけ、朝日を浴びさせることでリズムがさらに整いやすくなることがわかっています。
早起きの習慣がつくまでは、園がお休みの日もほぼ同じ時刻に起こすようにしましょう。
夕寝は最小限に
保育園にはお昼寝の時間がありますが、早く起きることで睡眠時間が不足した幼稚園児は帰宅後に眠くなりがちです。夕食を前倒しにできるよう、準備しておくといいですね。
夕寝をさせる場合は、30分程度で起こすようにしましょう。
よくある困り事2)苦手な食べ物が多く、給食を残す
Q うちの子は苦手な食べ物が多くて困ってます。ピーマン、トマト、豆類…。保育園に入園したときに懸念はしていましたが、やはり給食を残してしまうようです。
給食のメニューは決まっているので、食べてくれないと園生活がヘロヘロになるのではと、心配しています。
A 3食のトータルで栄養バランスを考えればOK
何でも食べてくれたらうれしいものですが、家で食べられないものを園で食べるのは難しいですよね。
幼児期にいくつか食べない食材があっても、栄養的には他の食材で補えていることが多いのであまり神経質にならないでください。園でお友だちが食べている姿に触発されて、食べられるようになるケースもありますよ。
どうしても苦手なものが食べられず、園の食事を期待するほど食べていなかったとしても、幼児の場合はすぐに栄養不足に直結することはありません。3食の合計の食事量で考えれば問題ないので、必要以上に心配しすぎないようにしましょう。保育園ではおやつが出ますし、幼稚園児なら帰宅後に小さなおむすびを食べさせてもよいでしょう。
園の食育活動にも期待しましょう
園では、園庭や園所有の畑で野菜を育てているところも多くあります。もし、そういった活動をしている園に通っているお子さんでしたら、自分で育てた野菜を初めて口にして、偏食を乗り越えることも期待できます。
また、家庭(ベランダ)菜園に親子で挑戦してもいいかもしれませんね。様々な食体験の中で、幼児期に苦手だったものも大人になったら平気で食べられるようになることが多いです。
よくある困り事3)一人での着替えが心もとない
Q 今まで娘の着替えについつい手を貸していた私。園では運動の時間があるので、なんとか一人でもスムーズに着替えられるようにしたいと、朝はなるべく手伝わないようにしています。でも、ボタンがなかなかはめられずにもたもたしたり、靴下のかかと部分がつま先にきたりするので、見ているほうがイライラ。園からはなにも言われませんが、一人遅れているのではと心配です。
A 園は想定内。大きくかまえてくれています
各園では年齢、月齢、家庭環境など様々な子どもを受け入れています。
入園当初、着替えに時間がかかっても、一人で着替えられなくても心配ご無用です。これから少しずつ上達していきます。
とはいえ、子どもの成長発達は園と家庭が両輪で支えていくものです。ですから、着替えの練習は園に完全にお任せではなく、園と家庭の両方の場面で繰り返しチャレンジし、「できた!」という達成感を積み上げていきましょう。
朝の着替えは時間の余裕をもって、今より早めにスタート。それでも時間がなくなってきたら親が手伝ってかまいませんが、「明日は二つ目のボタンまでできるかな?」などと、焦らずに待っていることが伝わる声かけをしましょう。
よくある困り事4)完全にオムツが外れないまま入園してしまった
Q 4月から幼稚園の年少組に入園しました。トイレトレーニングは周りの子と同じペースで進めていましたが、夜はまだおねしょをするので紙パンツだし、日中でも時々トイレに間に合わないことがあります。園ではマメにトイレを促してくれており、今のところ失敗はないのですが、毎日ヒヤヒヤしています。
A トイレトレーニングは協力し合い、着替えを預ければ安心
0~2歳で保育園に入園した場合は、2歳代からオムツが外れる子が多いですが、3歳の幼稚園入園児の場合はクラスで何人かはまだオムツがとれていないのが現状です。
オムツ外しは園任せにするのではなく、園でも家庭でもトレーニングを重ねていきましょう。園でトイレトレーニングを始めたのに、お迎えに行った途端に子どもにオムツをつけてしまう親がいます。しかしながら、トレーニングのタイミングは園と家庭とで合わせないと効果が上がりません。
保育園も幼稚園も定期的に子どもに声をかけ、全員でトイレに行く時間を設けていますから、自分で言えなくても心配いりません。入園時にすでにオムツが外れていたとしても、おもらしをすることがあるのがこの時期の子どもです。先生は慣れたもので、手早く着替えさせてくれ、叱ったりしません。着替えを何組か預けておくと安心です。
よくある困り事5)ぐずって園に行きたがらない
Q 引っ越したタイミングで保育園を転園し、4月から新しい保育園に通い始めました。新しい園に変わったとたん、子どもが「行きたくない」と言ってぐずるように。会社勤めの私は、遅刻はもちろん、休暇も気楽に取れるわけではないので、正直つらいです。
A 子どもの気持ちに寄り添い気長に待って
両親が共働きで子どもが保育園に入園した場合、子どもがぐずるたびに親が仕事を休むわけにはいきません。
入園当初は、子どもは新しい生活にまだ慣れていないのですから、ぐずって当たり前と割り切り、親自身は毎朝明るく元気に園に連れて行きましょう。そして、「夕方お迎えに来るからね」と明るく言って、すっきりと園を後にしましょう。
園で別れるときも子どもは泣いているかもしれませんが、一日中泣いているなんてことはありません。泣かない時間が日に日に長くなっていくものです。
子どもの気持ちを園に伝えておきましょう
月齢が高ければ園に行きたくないことを言葉で主張するでしょうが、それでも、「園まで歩きながら、どうしてそう思うのかよく聞かせてほしいな」と連れ出してください。「そうなんだね」と話を聞いてあげ、園に着いたら担任の先生に引き渡します。
子どもの言っていたことを先生にこっそり伝えておくと、上手にフォローしてもらえるはずです。担任にとって入園当初は特に、どんな情報でもありがたいのです。
よくある困り事6)友だちができない
Q 3歳児クラスに入園して少し経つのに、子どもの口から特定の友だちの名前が出ません。まだ友だちができていないようです。おとなしい性格なので、自分から話しかけられないでいるみたい。小学校もほとんど同じ顔ぶれで入学になるので、仲のいい友だちができるか心配です。
A 発達段階があるので焦らずに見守って
園生活の目的の一つに挙げられる、友だちづくり。心配なのはよくわかります。
発達段階としては、友だちと遊ぶ「集団遊び」の前に「一人遊び」があります。一人遊びが充足してから、集団遊びに移行していくのです。
クラス全員で集団遊びを楽しめるようになるのは、だいたい3歳児クラス(年少組)の後半から終わり頃です。ですから、まだ、一人遊びに熱中している時期なのかもしれません。
一人遊びが充足するタイミングは一人ひとり異なりますが、その子が「あっち側(集団遊びをしている仲間たち)も面白そうだなぁ」と感じ始めたタイミングを逃さずに、担任は集団遊びに誘っていきます。これが集団生活のいいところです。あまり心配せず、見守りましょう。
意外と聞けないお悩み事1)園での様子がわからない
Q 園での子どもの様子がいまいちわからないのですが、どうやったら知ることができますか?
A 担任の先生と情報交換を
0~2歳での入園ではそもそもまだうまく話せませんし、3歳児でも年齢的に周りに関心が向いていないため記憶に残らず、園の様子を話さないのはよくあることです。しつこく聞き出そうとして度が過ぎることがないようにしましょう。
わが子の園生活については、担任の先生に聞くのが一番です。家庭での様子も伝えて情報交換をしましょう。園児の受け入れで慌ただしい登園時間を避けて、降園時か連絡帳(またはお手紙)を利用するようにします。
意外と聞けない相談事2)感染症が心配
Q 水ぼうそうや風疹など、園に通い始めるといろいろな感染症にかかると聞きます。とても心配です。
A あまり神経質にならず、予防接種はきちんと受けて
残念ながら集団生活をしていれば、感染症に一切かからないようにすることは不可能に近いといえます。〝通る道〟だと思って、あまり神経質にならなくてもよいのではないでしょうか。
ただし予防接種を受けることで防げる、重病化しやすい感染症については、決められた接種時期を逃さず接種を受けて子どもの命を守りましょう。
集団生活でかかりやすい感染症としては、突発性発疹、普通のかぜ、インフルエンザ、おたふくかぜ、りんご病、ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱などが挙げられます。春先から初夏にかけて流行するのが、りんご病(おおむね2歳以上)とヘルパンギーナ(おおむね5歳以下)です。
コロナ禍ということもあり、園では保育者や職員のマスクの着用はもちろん、普段からたびたびの手洗い、おもちゃ・園庭の遊具・机・椅子・扉などの消毒や清掃など、できる対策を一生懸命やっています。園を信じ、自らも感染症対策を講じていきましょう。
どうしても困ったときは一人で抱えこまずに相談を!
今まで一緒にいて守っていたお子さんが手を離れ、幼稚園や保育園という集団に入ったわけですから、心配なのは当然のことです。
わが子のこと以外の園自体のルールや約束事、子育て全般については、手が空いていそうな主任の先生、フリーの先生、園長先生に聞いても大丈夫。直接話すことが難しいときは、連絡帳を上手に利用して相談しましょう。
わが子と同性の上の子をもつお母さんを頼るのもおすすめです。
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