少子化の影響で「ひとりっ子」は年々増加傾向にあり、最近では5組に1組がひとりっ子家庭と言われます。女性の社会進出によって「戦略的な子育て」を望む家庭も増えている中、ひとりっ子の心理的傾向と子育ての注意点について、『兄弟姉妹の心理学』著者でカウンセラーの根本裕幸さんに伺いました。
取材・文/FUTAKO企画
子ども時代の家庭での役割は引き継がれる
対人関係の傾向というものは、大人になってからも残っていることがあります。
もちろん、思春期以降の人間関係の影響も受けますが、人が幼い頃に家庭内で体験したことは、その後の人生の土台となるものです。
例えば、「しっかり者の兄姉は、学級委員や学校行事でのリーダー役を務めることが多く、その後の仕事や家庭でもリーダー役に」「皆にかわいがられてきた末っ子はクラスの人気者で、職場でも場の空気を和ませるムードメーカーに」……そんなふうに、子ども時代の家庭での役割が、学校や社会の中でも引き継がれることは多いものです。
では、上も下もいない、ひとりっ子はどうでしょうか。
「うちはひとりっ子で、人づき合いがちょっと苦手かも」と言われる保護者の方は少なくありません。兄弟姉妹との「横の関係」の経験が少ないまま育ったひとりっ子は、大人になってからも横のつながりをうまく作れずに浮いてしまったり、孤立感を覚えたりすることがあります。
そんなひとりっ子の子育てでは、どんなことに注意するとよいか見ていきたいと思います。
ひとりっ子のメリットとデメリットって?

ひとりっ子のメリット
「選択の自由度が高い」ひとりっ子
まずは、ひとりっ子のメリットとデメリットについて考えてみましょう。
ひとりっ子のメリットといえば第一に、きょうだいがいる場合と比べると、やはり親の側に経済的・時間的な余裕が生まれやすいということです。
生活面での支出の他、習い事や塾・学費など子育てに相当な費用がかる中、子どもの数が多いと、やはり取捨選択をしなければいけないことも出てきます。そのような「何かを選択する」ときに、ひとりっ子は本人の特性や意向に沿った選択をしやすいという利点があります。
他にきょうだいがいると、どうしても習い事やスポーツ関係の選択肢は親にとって都合のいいものになりがちですが、 ひとりっ子の場合は、比較的本人の希望をかなえやすい環境と言えるでしょう。
「マイペースで取り組める
また、自分のやりたいこと、興味があることに対して自分のペースで取り組める時間が多く、集中しやすいというメリットもあると思います。
例えば、電車や新幹線を夢中で眺めたり、公園でずっと同じ遊びをしていたり……。保護者の方も、子ども1人ならば、ある程度は本人のペースにつき合って見守ったり、要望を聞いたりすることができるでしょう。
他にも、ブロック遊びや工作など、試行錯誤しながら好きなことにじっくり取り組む経験を得やすいのも、ひとりっ子のメリットと言えると思います。
自己肯定感を育てやすい
さらに、ひとりっ子のメリットとして、兄弟間の競争がなく親の愛を一身に受けられるため、「自己肯定感を育てやすい」という面もあると思います。
小学校に行くということは、同じ学年の子と共に社会の中で生きていくということ。自分だけが守られた存在でいることは難しい状況で、時には、友だちにいやなことを言われたり、競争で負けてくやしい思いをしたりすることもあるでしょう。学校でいやな目にあって帰宅しても、家の中が競争のない安全な場所だったら、さほど大きな傷にならずに済みます。
共働き世帯が増え、親の側に時間的な制約がある中、子どもの日々の様子を観察したり話を聞いたりするのは簡単なことではありません。
家庭環境にもよっても違いますが、ひとりっ子は親からの適切な声かけや細やかなサポートが得やすいと言えるでしょう。
思春期に入るまでの時期、親の影響力というのはとても大きいものなので、「目が行き届く環境で自己肯定感を育てやすい」というのもまた、ひとりっ子のメリットと言えるかもしれません。
ひとりっ子のデメリット
「横の関係」で苦手意識を持ちやすい
ここまで、ひとりっ子のメリットを挙げてきましたが、デメリットについても考えてみましょう。
ひとりっ子は、大人と子どもという「上下の関係」のやりとりが多く、子ども同士の「横の関係」の経験が不足しがちです。そうしたことから、「横の関係のコミュニケーションに苦手意識を持ってしまいがち」ということが、デメリットの一つとして挙げられると思います。
例えばきょうだい間のやり取りがあれば、相手が傷つく可能性があっても遠慮なく自分の主張をしてけんかになり、そこから学ぶことも多いわけです。「今のはやりすぎたな」とか、「ここまで言ったら泣かせてしまうんだな」などと、同世代の相手との距離感や加減を知る経験をすることができます。
一方で、親子など上下の関係の中では対等なコミュニケーションにならず、子ども同士のようなけんかにもなりにくいので、失敗から学ぶ機会も少なくなってしまいます。
そして、常に大人に守られた環境にいると、友だちとのコミュニケーションにおいて気遣いができなかったり、わがままだと言われたり、いじめの対象になったりすることもあるのです。
ちなみに、きょうだいがいても5歳以上年の差があると、こうした「横の関係の経験不足」によるコミュニケーションへの苦手意識を感じやすくなる傾向があります。
「疎外感」を持ちやすい
もう一つ、これもよく聞く話ですが、 一般的に「大人2人と子ども1人」という関係性で育っているので、「疎外感が生まれやすい」ということがあります。
「大人の話に自分は入っていけない、話に入れてもらえない」という疎外感を持って育っている子は、意外と多いものです。親が直接的に「子どもはあっちに行ってなさい」と言う場合もあれば、「両親が話しているところに自分は入っていけない」と感じて、 そこで生まれる疎外感もあります。
そういった疎外感というものが、例えば学校や社会に出た後も、「人の輪の中に入っていけない」傾向として現れやすいことも考えられます。
親が「過保護」「過干渉」になりがち
また、ひとりっ子の親が「過保護」「過干渉」になりやすいという点も注意が必要です。
「過保護」とは、学校の準備や身支度など、子どもが自分でできることを親が手伝いすぎたり、甘やかしたりすること。その結果、子どもの自立心や問題解決能力が育たないことになってしまいます。
さらに、何かを決めるときに、本人の意思を否定して親の理想を押しつけすぎるなど「過干渉」によって、子どもの自己判断能力が奪われ、先にメリットとして挙げていた自己肯定感を削いでしまう可能性もあります。
もちろん、他にきょうだいがいる親が過保護・過干渉になることもありますが、ひとりっ子の場合、対象が分散せず一人に集中してしまいやすいために、その傾向が強くなってしまいがちなのです。
過度な親の期待でプレッシャーも
さらに、「親が期待をかけすぎてしまう」ということも気をつけないといけません。運動にしても勉強にしても、とにかくひとりっ子にかけられる親からの期待には絶大なものがあります。
そうなると、「ちゃんと育ってほしい」「こういう進路を取ってほしい」などと、 親側のコンプレックス解消の道具として、しつけが厳しくなったり、勉強面での口出しがヒートアップしたりすることがあるのです。
そうしたプレッシャーを受けた結果、子どもが心理的負担を感じたり、成長して親子関係が悪くなる可能性もあります。
ひとりっ子に限ったことではありませんが、子ども自身の主体性を大事にするのが、 やはり重要なことだと思います。
ひとりっ子の親のベストな行動とは
親が子どもの話をよく聞く

では、ひとりっ子の子育てで、どんなことに気をつけるとよいでしょうか。
まず大事なのは、親が子どもの話をよく聞いてあげることです。
「何が好きか」とか「自分はどうしたいか」といったことを日常的に会話して、把握することが大切です。
小学校の高学年ぐらいになると、「塾に行くか、行かないか」「中学受験をするか、しないか」といったことも話題になると思います。
ひとりっ子の親は人一倍子どもの将来の進路について真剣に考え、子どももまた、親の期待に応えたいという思いがあります。 思春期に入ると、親よりも同年代の友だちからの影響が大きくなりますから、その前の小学校高学年の頃までの親子のコミュニケーションがとても大事になってきます。
何かを決める際、親の意図を説明するだけではなく、子ども側の気持ちもしっかり聞いてあげることが大切です。思春期前の時期に、「ちゃんと話を聞いてもらえた」という思いが子どもにあると、決めたことへの納得感が得られるのです。
子ども扱いしすぎない
親子のコミュニケーションはとても大事ですが、注意すべきなのは、我が子が小学生であっても、「子ども扱いしすぎないほうがいい」ということです。
例えば先輩と後輩、上司と部下のように、 大人に対して話をするような意識でいるとよいでしょう。
小学校入学前後くらいになると、発する言葉としては未熟であっても、感じることは大人と遜色ないことが多いものです。
「うちの両親はあまり仲良くないな」とか、「お父さんの仕事がやばいみたいだな」とか、「 お母さんがいろいろと我慢しているな」とか、 そういうことはむしろ大人より敏感に気づいていたりします。子どもは、言葉よりもむしろノンバーバル(非言語)での親の態度や空気で理解することのほうが多いかもしれません。
子ども扱いしてしまうことによって、子どもが疎外感を感じることにもつながります。 ですから、子どもが疎外感を感じないように、両親が話している内容を子どもにわかるように伝えるとか、両親の会話に子どもも参加させるようにするとよいと思います。
「子どもだから何もわかってない」とか、「子どもだから何もできない」などと思い込まず、一人の人間として尊重し、意識することが大切です。
コミュニケーション能力向上のためにできること

ひとりっ子に不足しがちなコミュニケーション能力の向上のためには、外部のコミュニティの力を借りることも大切です。
幼稚園や保育園といった集団はそのベースになりますし、習い事もいいのですが、できるだけ子どもが中心のコミュニティに参加させてあげるとよいと思います。
例えばサッカーや野球といった団体競技のスポーツ。
それから、地域にもよりますが近所の同年代の子との遊び、親戚が顔を合わせたときに同年代のいとこと遊ぶなど、親がつきっきりではない状態で、いろんな子どもとふれ合う環境があるとよいと思います。 イベントとして「1回遊んで終わり」ではなく、また次に会えるような継続的な関係性が大事ですね。
ひとりっ子は、「子ども同士で遊ぶ」機会が少なくなりがちなので、そうしたコミュニティでふれ合う機会をできるだけ小さい頃から意識的に持つとよいでしょう。 そして、時には親が兄弟姉妹のように、子どもとおやつを分け合ったり、競争してみたり、そうしたことを子どもとの関わりの中では意識してやっていくということも大切だと思います。
この記事の監修・執筆者
1997年より神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事。2000年、プロカウンセラーとしてデビュー。以来、述べ15000本以上のカウンセリングをこなす。2001年、カウンセリングサービス設立に寄与。以来、14年間企画・運営に従事。2003年から年間100本以上の講座やセミナーをこなす。2015年3月独立。フリーのカウンセラー/講師/作家として活動を始める。
ベストセラーになった「敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法」(あさ出版)、『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』(大和書房)、『いつも自分のせいにする罪悪感がすーっと消えてなくなる本』(ディスカバー21)、『兄弟姉妹の心理学』(WAVE出版)など、著書多数。
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