せっかく親子でお出かけするなら、楽しく過ごしたいですね。でも、初めての場所で戸惑うことや、電車や店内で子どもがぐずったりはしゃいで騒いでしまったり…予想外のことが起きて楽しいお出かけにならないことも。
今回は、キッズマナーインストラクターの赤名麻由子さんに、お子さん連れのお出かけ準備を、心構えやマナーの面から教えていただきました。小さいお子さんでもわかりやすい、「子どもマナー」の教え方も必見です。
お話:赤名 麻由子
お出かけ前にすること!
お出かけの予定を子どもに説明する
まずはお出かけをする前、子どもにその日の予定をきちんと説明する、ということをしてあげてください。
たとえば、「今日はパパ、ママ、みんなで○○をしに◎◎へ行くよ。電車(バス)を使って行こうね。おうちの近くの△駅から□駅という所まで行くの。電車で駅4つ分の所にあるよ」という感じです。
詳細がわからなくても、子どもなりに心の準備ができます。お出かけは子どもにとって、興奮する出来事です。頭の中で「こういうことが今日は起きるんだな」と思えると、親が伝える言葉も耳に入りやすくなります。
交通機関や施設(レストランなど)の情報を調べる
子どもと一緒のお出かけで初めて利用する駅では、エレベーターの場所や、乗り換え方法、トイレの有無など、ある程度調べておくと当日の流れが把握できます。その場で、スマホで調べることもできますが、子どもと一緒の時には子どもに集中してあげるためにも、事前の確認がおすすめです。
平日であれば、朝・夕の通勤・通学ラッシュの時間は避けるとよいでしょう。ラッシュ時だと、子どもがぐずった時に電車を一度降りる、バギーから子どもを降ろして抱っこする、といった対応がしにくくなります。
目的地の施設についても事前に確認できることはしておきましょう。特に、食事をする場所は大事です。行きたいと思っていたお店に行ってみたら、“小さな子どもには対応していなかった”“子どもが食べられるメニューがなかった”ということも。ホームページやSNSなどで、お店の情報を事前に調べておくと安心です。わからない時は、お店に直接電話して、以下の点などを確認すると確実です。
<お店に確認したこと>
- ○歳の子どもと伺いたいが、入店できるか?
- 避けた方がよい時間帯は?
- 子ども用のメニューや椅子などは?
- 離乳食などの持ち込みが可能?(できない場合は、取り分けできるようなメニューがあるかどうかなど)
使用する目的が明確な場合は、事前にその点も伝えてみましょう。以前、「お宮参りのため、お祝いの会食で伺いたいと思います」と伝えたときには、「お子様用の簡易ベッドや椅子を事前に用意できますよ」と、言ってもらったことがあります。
交通機関でのマナー
電車やバスの中では、「うさぎになる!」
電車やバスの中で子どもがぐずったり騒いだりすると、周りの目が気になり、困ってしまうことがありますね。
わたしが子どもたちにキッズマナーを教える際は、「交通機関の中では【うさぎ】になるよ」と伝えています。
<う=動かない> <さ=騒がない> <ぎ=行儀よく>
「どうして、うさぎにならなければいけないのか?」についても、一緒に考えておきましょう。車内には「自分たちだけではなく、通勤やお買い物に行くために利用している人たちもいるね」。そして、「お年寄りやお腹の大きな人もいるね。だから、優先シートがあるんだよ」と、車内の環境にも気づかせてあげましょう。
バスのように直接運転手さんと顔を合わせる場合は、「お願いします」と「ありがとうございました」を言葉にして伝えられるといいですね。親が見本となり、挨拶をする姿を見せましょう。
配慮には、「すみません」よりも、「ありがとう」を!
子どもを連れていると、席を空けてくれたり、バギーのスペースを確保してくれたりと、気づかってくれる方がいますね。そうした時、「すみません」「申し訳ありません」と伝えていませんか?
「すいません」は謝罪の言葉です。譲ってくれた方には、お詫びをするのではなく、御礼の気持ちを伝える「ありがとうございます」や、「助かりました」という言葉を使いましょう。受け取る相手もうれしいのではないでしょうか。
子どもを飽きさせない工夫
電車やバスの中で子どもを飽きさせないように、お気に入りの絵本や人形などを持っていくのもいいですね。音や光が出るおもちゃは公共交通機関では避けましょう。子どもの年齢に合わせた手遊びやしりとり、また「次の駅で赤い服を着た人が乗ってくるかどうか?」といった、その場でできるクイズなどもおすすめです。声や身振りが大きくならないよう、周りにも配慮しましょう。
安全のため、つかまる・手をつなぐ!
混んでいて座れない時、一人で立っていられるお子さんであれば、手すりにつかまらせたり、親と手をつないだりしますね。でも、子どもがしっかり手をつないでくれないこともあります。安全のためにもしっかり手をつないでおきたいところ。
わたしが試したのは、丸めたティッシュペーパーを子どもとつないだ手の中に入れて、「降りる駅まで落とさないように手をつないでいるゲーム」や、柔らかい素材で伸縮性のあるシュシュを子どもとつないだ手の上から手首に通し「つかまっちゃったゲーム」など。遊びながら手をつないでいられる方法です。徒歩で歩く際にもおすすめなので、試してみてください。
どうしても無理なら、一旦降りて、切り替えを!
事前の準備もしたり、いろいろな方法を試したけれど、子どもがぐずったり泣き出したりしてしまったとき、どうすれいいのか…。予定もあるし、少しくらいならあやして乗り切りたいところですが、大泣きして泣き止まない時には、一度降りることをおすすめします。
周りの乗客の迷惑になってはいけないとか、子どもの泣き声を快く思わない方もいるといった、周りへの配慮も一つの理由ではありますが、それよりも大事なことは、子どもが大泣きして泣き止まないということは、子どもが快適な状態ではない、ということです。
電車に酔ってしまったのかもしれませんし、知らない大人がたくさんいたり、止まらない電車に不安を覚えたりしている状態なのかもしれません。
一度降りて、水分補給をしたり、外の風に触れたり、椅子に座って落ち着いたり、様子を見てあげましょう。
不快な思いが続いて、“電車に乗るのは嫌なこと”となってしまわないようにしたいですよね。いずれにしても、子どもには笑顔で話しかけたり、「大丈夫だよ」と、安心できる笑顔を見せてあげてください。
ショッピングモールやデパートなど店内でのマナー
まずは、館内の案内図を見て、トイレや休憩場所、インフォメーションの場所などを確認しておきましょう。子どもが迷子になってしまったときなど、いざというとき速やかに行動できます。
次に、お店を回る前に少しだけ子どもと向き合い、目的と注意することを確認しておきましょう。
<目的>
今日は、何をするために来たのか?
例:誕生日プレゼントを買いに来た、楽しむために来た…など
<注意すること(4つのお約束)>
1.走らない(人にぶつかったり、転んだりすると危ないから)
2.大きな声を出さない(静かにお買い物をしたい人がいるから)
3.ベタベタさわらない(お店の物はみんなの物だから。壊したり、汚したり、勝手に持ったりしてはだめ)
4.迷子になったらお店の人に言う
もし迷子になった場合に備えて注意しておくことは、「パパやママの姿が見えないと思ったら、慌てて一人で探そうと動き回らないでね」ということと、店員さんの服装を確認しておいて、近くにいる店員さんに「パパとママがいなくなったから、探してください」と伝えること。そして、迷子センターなどで名前を聞かれたら「はっきりとお名前を言うんだよ」ということ。
そして最後に、「一番大事なのは、パパとママから離れないようにすることだよ」と伝えましょう。
お出かけするたび、事前に4つの確認を伝えましょう。子どもが覚えられるようになったら、「じゃあ、今日は何をしに来たの?」「ママとのお約束、4つはなに?」と、クイズのようにして、子どもが答えられるようになるまで繰り返すようにしましょう。
レストランなど飲食店でのマナー
「店内で走り回らない」「大きな声を出さない」「注文の時や、料理を運んでくれた時、食べ終わった時の挨拶」は、ぜひ子どもに伝えたいことです。
大切なのは「どうしてそうするのか」を子どもが理解し、納得して、行動に移せるか、ということです。
「~はダメ」「~はいけない」ばかりを伝える食事では、たとえ正しいことを伝えていたとしても、子どもにとって、楽しくない食事の時間になってしまいます。
伝えるのであれば、以下のような言葉がおすすめ。
<飲食店で子どもに伝えるなら>
●お料理を運ぶ人にぶつからないよう、端を歩けたらステキ!
●お食事をしている人のおいしい料理に、ホコリが入らないよう、そっと歩けたらかっこいい!
●楽しくお話するけれど、他の人のお話のじゃまにならないような声で話せたらいいね!
●お料理を運んでくれた人に、「ありがとうございます」って言えたら、きっとうれしいと思うな
ダメダメばかり言わずに、こうしたら相手が喜ぶことを具体的に伝えると、子どもも理解しやすいでしょう。
図書館や病院など、静かに過ごしたい公共の場でのマナー
図書館や病院などは、声のボリュームや態度に気をつけなければいけない場所です。
ここでも大切なのは、どういった方たちがその施設を利用するのかを、一緒に考えてみること。図書館には、勉強をしている人がいたり、本を読んだり探したりしている人もいます。病院には、具合の悪い人がいますね。そういったことを子どもと考えてから、「だからこうする!」と、子どもが納得できなければ、行動は変わりません。
図書館や病院などは、特にひそひそと小さな声で話さなければいけないことが多いです。子どもは、まだ声の大きさを調整することに慣れていません。どれくらいのボリュームで話せばいいのか、おうちで練習してみるとよいでしょう。
出先での、感染症対策について
手洗い、うがい、マスクは、しっかり気をつけてしたいところですが、小さな子どもは、マスクを嫌がったり、触ってほしくない所をベタベタ触ってしまったりすることもあります。感染症への予防策として気をつけたい点をいくつかピックアップします。
【マスク】マスクを嫌がるお子さんには、使い捨ての不織布マスクに子どもの好きなマークを小さく描いたり、シールを選んで貼ったりして、子ども好みにカスタマイズをしてみてはいかですか。
【手洗い】出先でも、こまめに手洗いをするために、子どものお気に入りのタオルと、香りのよい携帯用の紙石けんや、旅行用のミニボトルに液体ソープを詰め替えた物を持って行くのがおすすめ。
【消毒液】消毒液は、建物や店の入り口に置いてあることが多いですね。大人用の高さで、子どもには届かない場合も多いです。こちらも携帯用の消毒ジェルなどを持ち歩き、こまめに消毒できるようにしましょう。ただ、大人用の消毒薬の場合、親が消毒液をプッシュしたとき、液がそばにいる子どもにかかったりすることも。十分に気をつけてあげてください。
【うがい】外でうがいをするのは難しいのですが、今はシリコン製の折り畳みのコップなどもあるので、そういった物を活用しても。折り紙を折って作るコップも、1回のうがいならOK。折り紙は電車の中やレストランの待ち時間などでも重宝するので、バッグの中に数枚入れておくといいですよ。
マナーとは、“思いやりの心を形に表すこと”です。子どもたちの優しい気持ちを大切に育てながら、必要なマナーを伝えていきましょう。
貴重な子どもとのお出かけの時間です。楽しい思い出をたくさん作りたいですね。
この記事の監修・執筆者
日本マナーOJTインストラクター協会(JAMOI)認定
シニアマナーOJTインストラクター/キッズマナーインストラクター
前職では、企業博物館のご案内、受付を担当。講師になってからは、企業の接遇・マナー研修、保育園・幼稚園でのマナー教室を開催。個人のスキルアップ、魅力アップのためのソーシャルマナー講座を随時開校している。二児の母。
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