ここ数年、地震に台風、洪水と、毎年必ずどこかの地域で災害が起こっています。そんなとき、ふと「災害のとき、わが家は大丈夫なのかな?」と考えたりしませんか?
とくに小さなお子さんがいると、子どもの安全を守る方法や、子どもと過ごす避難生活について考えなくてはいけないとは思いながらも、なかなか実行に移せない方も多いのでは?
そのうえ避難経路を確認したり、災害用バッグを用意したり…とやるべきことを考えるほど、「面倒だな」とつい後回しにしがち。
そこで今回は、『子連れ防災BOOK』を制作した冨川万美さんに子連れ防災のキホンについて詳しくお話をお伺いしました。
お話:NPO法人ママプラグ アクティブ防災事業代表 冨川 万美
イラスト:セキ サトコ
子連れ防災の今すぐできる3つのこと
被災中は子どもの命を守りながらも、できるだけ普段に近い生活を送ることが大切です。
なぜなら、災害でこれまでどおりの生活が送れなくなっても、子どもには現状を理解することが難しく、「何が起きたんだろう」「これからどうなるんだろう」といった戸惑いを口に出せずにストレスを抱え込んでしまうから。
そこで、災害時に安全・安心な避難ができるように、次の3つの基本を確認しておきましょう。
① 家の中の“安全な場所”をチェック!
家の中の安全な場所とは?
- 頭上から物が落ちてこない
- たんすや本棚などが倒れてこない
- ガラスが割れて飛び散らない
家の中の“危険な場所”の確認も必要ですが、数えきれないほどたくさんあります。
だからこそ、まずは「ここは安全!」というセーフティゾーンを1か所でも見つけましょう。
多くの家庭では、廊下や玄関口、寝室などが安全であることが多いです。
事前に安全な場所を見つけておき、家族全員で「家で地震が起こったら、ここに集合!」と確認しておくと、慌てずに行動しやすくなります。
② 電気・ガス・水道が止まることを考える
子連れ防災を考えるうえでベースとなるのは、
「災害時に電気やガス、水道などのライフラインが使えなくなったらどうすべきか」
です。お子さんといっしょに考えてみるのもよいですね。
おすすめなのは、ライフラインを使わない生活を体験してみることです。
「今日は2時間だけ電気を使わずにいよう」
などと提案して、実際にどのような生活ができるか、ライフラインの代わりとして必要なものはなにかを確認しましょう。
必要なものの例
■懐中電灯
⇒ご家庭には懐中電灯がいくつ必要かも考えましょう。
⇒持ち歩きやすい小型タイプ、広く照らせるランタンタイプなど、場面によって使い分けができるようにいくつかの種類を用意しておくのも◎。
■カセットコンロ、ガスボンベ など
「電気がつかないとき、夜、トイレに行きたくなったらどうしようか?」
「お風呂に入れなくなったらどうする?」
など、クイズ形式で考えてもいいですね。
③ 普段食べているものを切らさない!
被災中、子どもがいつもと変わらない生活を送るためには、食べ物がとても重要な役割を果たします。
長期保存ができる非常食はとても便利なものですが、普段食べ慣れていないものでもあるため、子どもが食べるのを拒否したり、「いつものごはんが食べたい」と訴えたりすることも少なくありません。
そこで、子どもの好きな食べ物や食べ慣れているものを、普段から切らさずに用意しておきましょう。
レトルト食品や缶詰、おせんべいなどのお菓子は、賞味期限の長いものが多く、備蓄にも向いています。
また、おむつやトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどの日用品を多めに備蓄することも、災害への備えの一つです。
2泊くらいの旅行バッグ+αで避難バッグを考える!
子連れだと、「子どものために、あれもこれも入れなくちゃ!」と考えてしまいますが、あまりに詰め込みすぎると、子どもをだっこしながらでは持てなかった…なんてことにもなりかねません。
そこで、2泊3日くらいを目安にした旅行バッグをイメージして避難バッグを考えましょう。
バッグ自体は、子どもをだっこして避難することを考えてリュックサックがベスト。
これまでの旅行で必要だった物を思い出しながら荷造りをしてみましょう。
荷造りが終わったら、非常時だからこそ必要なグッズを検討します。
旅行バッグに+αするアイテム
□タオル
□ヘッドライト
□クッキーなどの食料
□スリッパ
□敷マット(防災用マットでもレジャーシートでもOK)
□水(500ml単位で数本持つとよいでしょう)
□携帯用トイレ
□雨具(レインコート)
□ポリ袋
□トランプなどのおもちゃ
□小さくたためるダウンジャケット
□冷却ジェル
□使い捨てカイロ など
なるべく一人に一つのバッグを準備しましょう。
まずは一つ目のバッグからトライ!
【赤ちゃん連れはママバッグ+α】
赤ちゃんとの普段のお出かけに持ち歩いているママバッグは、外出時に必要な物がそろっている最強の非常用持ち出し袋。
だからこそ、普段から使った分はこまめに補充しておきましょう。
ママバッグに入りきらないものは、非常時だけに持ち出す「補助袋」として巾着袋などにまとめておき、常にママバッグの近くに置いておくとよいでしょう。
家族で話し合っておきたいこと
災害は、いつ・どこで起こるかわかりません。家族がそれぞれ職場や外出先、幼稚園・保育園などで被災したときには、お互いの安否がわからずにパニックになってしまうこともあります。
そこで、「いざというときにはどのような行動をとるべきか」「どのように連絡をとるべきか」といった家族のルールを決め、共有するようにしましょう。
① 連絡手段は複数持っておこう
災害時には電話はつながりにくくなりますが、SNSは比較的つながりやすいです。
FacebookやTwitterなどのSNSのアカウントをいくつか用意して家族で共有し、いざというときに安否の確認がとれるようにしておきましょう。
② 災害伝言ダイヤル(171)を体験利用しておこう
電話やインターネット回線が通じないときには、災害伝言ダイヤル(171)を活用しましょう。
公衆電話から無料でつながり、30秒のメッセージを残すことができます。
毎月1日・15日には体験利用ができますので、公衆電話のかけ方を含め、お子さんといっしょに利用方法を確認しておきましょう。
③ 幼稚園・保育園の災害時の対応を確認しよう
災害時には、離れた職場にいる保護者が子どもをお迎えに行けないこともあります。
そんなとき、幼稚園・保育園などではどのような対応をするのかを確認しておきましょう。
保護者が迎えに来られない場合、幼稚園・保育園では、事前に提出してもらった緊急連絡先に連絡し、保護者の代わりに迎えにきてもらうことが多いです。
しかし、その緊急連絡先を遠方に住む祖父母にしていると、連絡をしたとしても迎えにいけない…ということも。
そのため、近所の知り合いやママ友などにお願いして、確実に迎えに行ける人を緊急連絡先にしておく必要があります。地域の人たちとつながりをもっておくことも、防災の大切なポイントです。
もし災害がおきたら…子どもの守り方
子どもを守るには「大人が無事」であることが大事
- 家で地震などの災害が発生したときには、あわてて外に飛び出したりはせず、安全な場所に移動することが基本です。
- 家の中で、頭上から物が落ちてこない場所や、ガラスが割れて飛び散っていない場所などに移動しましょう。
- もし、何らかの理由で安全な場所への移動ができない場合には、体を丸める「だんごむしのポーズ」をとり、身を守るようにします。
しっかり確認したい、「だんごむしのポーズ」
「両手で頭を抱え、頭をおへそに近づけるようにして背中を丸めます。
この際、クッションやぬいぐるみなどで頭を守ると、より安全です。」
お子さんが自分一人でも身を守れるように教えることも、子連れ防災。
部屋ごとに災害時のシミュレーションをしたり、日頃から「だんごむしのポーズ」を親子で練習したりしておきましょう。
自分でだんごむしのポーズをとれない赤ちゃんには、保護者が覆いかぶさりましょう。子どもの頭を保護者のおなかで包むようにして、手でおしりを抱えます。
外出時に被災したら?
外出先で地震が起こったときには、頭上から物が落ちてきたり、倒れてきたりする物がある場所から移動して、身をかがめて頭を守ることが基本です。
お子さんと外出したときには、災害時のシミュレーションをしてみましょう。
「あの場所は地震で看板が落ちそうだね」
「ガラスの近くは通らないでおこうね」
と危険な場所を確認し、安全な場所を見つけておくとよいでしょう。
冨川先生からのメッセージ
小さなお子さんを抱えている保護者のみなさんは、子育てで大変な時期を過ごされていることでしょう。
そんな時に「災害への備えを!」と言われても、「時間がない」「なにから始めればいいの?」と戸惑ってしまいますよね。
「やらなければ!」と思いながらもなかなかできず、モヤモヤしたままだったり…。
まずは、簡単なこと・できることから始めてみましょう。例えば、お子さんの好きなお菓子を備蓄しておいたり、外出先で「どこに避難口があるかな?」と確認したりすることも、備えの一つです。
また、普段から床に物を置かないようにしておくことも、災害時にはけがを減らす大切な備えになります。
たとえひとつひとつが小さなことでも、積み重ねれば大きな備えになります。
お子さんの安全を守るためにも、コツコツとできる範囲の備えをしていきましょうね。
この記事の監修・執筆者
自ら考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、全国で防災講座を展開する他、女性のキャリアを豊かにする「キャリア事業」などを中心に活動。企画した書籍に『被災ママ812人が作った子連れ防災手帖』などがある。
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