【グレーゾーンと発達障害の違い】“境界知能”とは?そして子どもへの声掛けで気をつけたいこと[小児科専門医監修]

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【グレーゾーンと発達障害の違い】“境界知能”とは?そして子どもへの声掛けで気をつけたいこと[小児科専門医監修]

日常生活において「家ではできるのに、学校ではできない」「小さい頃に比べてなにかとトラブルが増えてきた」など、なんとなく子どもの成長に違和感がある場合、それはお子さん自身が発達段階の中で、なにか困りごとを抱えているのかもしれません。

ここでは発達障害のある、もしくはグレーゾーンと思われるお子さんを持つ保護者から多くの相談を受けている小児科医の森博子先生に、とくに“グレーゾーン” のことを中心におうかがいしました。

また、我が子が発達障害もしくはグレーゾーン?と疑ったときや、専門的な支援が必要になった場合、何をすればよいか、子どもにどう接すればよいかのアドバイスもいただきました。

取材・文/こそだてまっぷ編集部

目次

グレーゾーン(境界知能)とは?

まず、グレーゾーンという言葉はあくまで“通称”で医学的に正式な診断名ではありません。

子どもの場合、発達障害の診断の手立てのひとつとして、ウィスク※1などで知能検査を行い、IQを調べます。
その結果から、IQ70未満の方を「知的障害」と診断します。
IQ71以上85未満のお子さんは、いっけん問題なく社会生活をおくれているように見えますが、「学習内容が理解できない」「他人の言葉を誤解して受け止めてしまう」「友だちづくりが苦手」「運動や手先の細かい作業が苦手」など“他の子と足並みをそろえて生活すること”にかなりの難しさを感じてしまいます。

このようなお子さんたちを通称「グレーゾーン(境界知能)」と呼んでいます。

※1:ウィスク/ウェクスラー式知能検査のこと。最新版にWISC-Ⅴ(ウィスク5)があるが、現在日本ではWISC-Ⅳ(ウィスク4)を用いる場合が主流。5歳0か月~16歳11か月の児童や生徒の知能を測定する臨床検査の呼称であり、この検査では知的能力や記憶・処理能力をはかることができるため、発達障害の診断やサポートに活用されている。世界各地でも使用されている。

発達障害との違いは?

一方、発達障害の診断基準に至る症状・状態ではなくても、【注意欠陥多動性障害/ADHD】【自閉スペクトラム症/ASD】【学習障害/LD】などの特性が少なからずみられ、その影響で日常生活の一部で困難が生じている状態のことを発達障害「グレーゾーン」と呼んでいます。

発達障害について、詳しくはこちらの記事へ↓
≪関連記事≫【我が子の発達に特性アリ⁉】3年生になって気づく発達障害の特徴と対応策「心がけたいことは?」[小児科専門医監修]

特性の凹凸に個人差はありますが、生活の一部に“特性による困りごと”がみられるのが特徴です。
例えば、同じことでも「家ではできるのに、外だとできない」「○○○の傾向があるけれど強くはない」など、場所や状況によってムラが出ることが多いようです。

発達障害の診断が出る場合は、場所や状況を問わず、特性そのものによって困りごとが発生しています。これに対し、グレーゾーンはムラがある状態です。本人は同じように頑張っているにもかかわらず「できないのはサボっているだけ」とみられがちなのも、グレーゾーンならではの現象で、大変さでもあります。

グレーゾーンの子どもにとっての壁とは

低学年のあいだは学校生活にも慣れてくると、すべてはこなせなくても状況によってはできるので、保護者も子ども自身も「なんだかんだ、やればできる」という感覚で、過ごしてきたケースが多いことでしょう。

しかし中学年になると、学校生活では集団活動が増えます。係活動、クラブ活動、委員会などです。また、学習面でも難度が上がります。

低学年のうちは“そこまで発達のことが気になるほどでもないし、普通に過ごせてきた”といった場合でも、中学年以降、子ども同士のコミュニケーションが必要な場が増えたときにうまくいかなくなったり、学習面でも特定の何かに苦手意識をもつようになったりと、違和感を少しずつ、または強く感じ始めるでしょう。

そうなった場合、どう対応していけばよいのでしょうか。

グレーゾーンだと疑ったり認識したりしたときの対処法と相談先

「うちの子グレーゾーンだ」と疑ったり認識したりしたとしても、大切なことは我が子がどんな子か、常にしっかりと観察することです。そして「うちの子は何が得意で何が苦手」「何が好き・嫌い」というようなことを具体的に観察して、性格や傾向を知ること。そのうえで抱える困難に対し「どうすれば子ども本人が過ごしやすく、日々の負担を減らせるか」を考え、具体的な方法を探ることが大切です。

また、発達障害の診断が出ないグレーゾーンでも、必要な手続きをすれば、子どもの発達に合う専門的な支援を受けることができます。

【相談先の例】
①学校の担任の先生

グレーゾーンであることを伝え、学習課題やクラスでの困りごとなどを共有しておくとスムーズ。

②支援コーディネーター
担任の先生と連携し、場合によっては通級指導教室や特別支援学級へ通うことなどの相談窓口にもなってくれる。主に各学校に1名配置されている場合が多い。※自治体によって形態はさまざま

③スクールカウンセラー
月に数回など、定期的に学校を巡回している教育委員会主導のカウンセラー。学校の先生に相談しにくいことなどがある場合も活用できる。

④療育・福祉施設
就学児が療育を受けられる主な場「放課後等デイサービス」。発達専門医や資格保持者から、放課後の時間を使って定期的に子どもに合った支援を受けることができる。療育手帳を持っていなくても「受給者証(福祉サービスを利用するための証明証)」を取得すれば、サービスを受けることができる。

⑤医療機関
発達専門医のいる小児科や、児童精神科など。知能検査を行っているところもあり、より専門的な相談ができる場合もある。

グレーゾーンを含め、発達に凹凸のある子どもは、1日を過ごす中でその子の発達を理解して接してくれる環境にどれだけいられるかがとても大切です。保護者からすると「そうでもない」ように見えても、じつはお子さん自身はとても困っているかもしれません。まずは相談しやすいところに足を運んでみてください。

グレーゾーンの子へおすすめしたい「通級指導教室」

特性にあった支援を求めるなら、学校に設置されている通級指導教室がおすすめのひとつです。通級指導教室とは、通常の学級に在籍している子どもが通常の授業では習得が難しく、特性によってなんらかの困難がある場合に、通常の学級に在籍したままその特性に応じた特別の指導を受けることができる場所です。

地域によって各学校に設置されている場合や、近隣にある指定の学校に通う場合もあり、形態はさまざまです。発達障害の特性のある子ども以外にも、弱視、難聴、言語障害など、さまざまな子が通っています。また、知的障害のある子ども、特別支援学級に所属している子どもは対象外とされています。

【通級指導教室に通うメリット】
●専門知識のある先生が対応してくれる
●少人数または個別で、子どもの特性に配慮した授業を組んでもらえる
●担任の先生と連携をとり、子どもの状況を共有してもらえる
●保護者も必要な相談やアドバイスを受けられる

子どもの特性に寄り添った対応を重ねることで、子どもの成長はもちろん、子どもの周囲にいる大人たちも、その子どもとの向き合い方を知ることができるでしょう。

通級指導教室に通う際、まずは担任の先生や支援コーディネーターへの相談が必要になりますが、自治体によっては何らかの診断がついていないと通えない場合もあるので、まずは学校へ相談をしてみてください。

支援を受けるとき、子どもへの声掛けで気をつけておきたいこと

我が子に合った支援を探して選び、受けるところまでたどり着くことだけでも、とても大変な道のりかと思います。学校では通級指導教室や特別支援学級、療育・福祉面では放課後等デイサービスなどが該当しますが、こういった専門機関へ関わるとき、お子さんに対しての声掛けで、ぜひ気をつけておきたいことがあります。

【NGな声掛け】
×「あなたの苦手を克服するために通級指導教室にいくんだよ」
×「あなたは他の子と違うから、できるようになるために放課後デイへ行くよ」

とは、絶対に言わないであげてください。
特に1つ目は、いっけん普通の声掛けのように感じますが “苦手を克服するために”という伝え方は、子どもにとって「自分にはできないことがいっぱいあるから、直さなきゃいけない」と、ネガティブに捉えられてしまい「苦手なことをたくさん練習しなきゃいけないんだ…」と、ますます行きたくなくなってしまいます。

ではどのように伝えればよいでしょう。

【OKな声掛け】
○「あなたの良いところをもっと伸ばすために○○○へ通うんだよ」
○「通級指導教室は少人数でしっかり見てもらえるから、安心して取り組めると思うよ」

というように、“良いところをもっと伸ばせて安心できる”場所であることを、きちんと伝えましょう。

大切なことは、どんな支援を受けるとしても、保護者が我が子の長所に目を向けること。「これができないから○○する」ではなく「ここができているから、もっと伸ばしてあげる」という視点を持ち、サポートしてあげてください。


ここまでグレーゾーンについてと、そう認識したときの対応や声掛けの仕方についてお伝えしました。何かお子さんに当てはまることがある場合は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修・執筆者

小児科専門医/親子の未来を創る発達診断『ママカルテ』主宰 森 博子

小児科医として23年間でのべ17000組の親子と出会ってきた経験と、自身の発達障害の子どもの育児経験から、親子のコミュニケーションの重要性を痛感。「発達科学コミュニケーション」トレーナーとして活動。現在は「親子の未来を創る発達診断『ママカルテ』」を研究・開発し「診断名」にこだわらない親子の関わりについて親子をサポートしている。https://desc-lab.com/morinakahiroko/

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