【登校がゴールではない】不登校は「子どもが抱える問題」の解決が必要

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【登校がゴールではない】不登校は「子どもが抱える問題」の解決が必要

こんにちは、現役小学校教員の舟山由美子です。
登校しぶりのご相談は数々寄せられます。今回のお悩みのように、いろいろ手をつくしても先が見えないというケースでは、専門家に相談することも選択肢の1つになってきます。
相談文が大変長くなっていますが、どうぞご覧ください。

目次

Q.3か月近く親のつきそい登校が続き、先が見えません

はじめまして。
小学校1年生の女の子の母です。

娘は10月半ばから「学校に行きたくない」と登校しぶりを始めました。
4年生のお兄ちゃんがいることもあり、4月入学当初から元気に学校に通っていたので、突然のことにびっくりしました。

きっかけは、10月に入り学校も慣れてきたので自家用車登校からバスで自力登校させようと試みた際に(うちの学校は国立の学校で学区が関係なく、自家用車登校やバス登校の子がほとんどです)、朝早く学校に着きすぎて人が少なかったことによる不安からのようです。

でも思い返してみれば、それを試みてみる前からとぼとぼと昇降口まで歩いて登校していく娘の姿があったので、ほかに前から何かしらの原因があったのだと思います。しかし、友だちや先生に何か言われたなどの原因があるような訴えはしてこず、「学校は怖い。ママと離れたくない」が一番の強い訴えでした。

はじめのころは、私自身が小学校の教育補助員をしていることもあり、不登校の子のサポートもしていたので、自分の子も同じように泣いても学校に連れて行き、泣きわめいても学校の先生にお願いしてくるというスタンスでやっていました。そうしているうちに学校に行けるようになると思っていたので……。しかし、その毎朝の泣きわめきはいつまでたってもなくなることなく、約1カ月続きました。

朝は泣きわめいていても、1時間目が始まるころには活動に参加しはじめ、迎えに行けばニコニコしているのできっといつか普通になるだろうと思っていました。ところがしばらくすると、夜寝るときにも「眠れない、寝たくない、寝ない」と、激しく泣くようになってしまいました。毎日続く寝ぐずりに家族も精神的に参ってしまい、きっと寝ぐずりも登校渋りと関係してのことだろうと「そんなに行きたくないなら……」と、11月半ばは5日間ほど学校を休ませました。

このまま休ませて、本人の「行きたい」という言葉を待とうかと思いましたが、その頃娘から聞き出した「いや」の原因が、どうやら自分の思いが通らなかったことへの挫折感だったことや、娘の性格上きっと休みすぎてしまうと逆に気おくれをしたり、もっと自信をなくすのではないかと思い、意を決して学校へ連れていくことにしました。娘と約束した学校に行く条件は「ママも学校に一緒にいる」でした。仕事も辞めました。

それからは一緒につきそっての登校が始まりました。娘は私が本当に一緒にいるということがわかり、安心して登校できるようになりました。私は一緒に教室には入るけど、なるべくべったりしないように、娘が自分で動けるように少し離れたとことで見守るようにしました。

娘が「給食と掃除のときはママがいないほうがいい」と言うので(このときだけは周りの目が気になるようで)、そのときは保健室で待機するようにしました。つきそいが1週間過ぎたころから、調子が出てくる2限目あたりで私は保健室へ移動し、娘は教室で帰りまで過ごすことができるようになってきました。徐々に気持ちが安定してきたのか、夜の寝ぐずりもどんどんなくなっていきました。

2学期が終わるころまでに、だんだんと離れる時間を早くしていき、ついには教室に一緒に入らなくてもよくなりました。そのかわり、ママには保健室にいてほしいというので、私は一日じゅう保健室で過ごしました。そして私の帰る時間をお昼→4限→3限→2限→朝の会、と目標を上げながら実行していき、終業式を迎えました。冬休み明けてからは、一緒に登校して朝から離れることができました。

そして、今は「昇降口でバイバイしてママと離れる」を目標に登校しています。まだ目標は達成できず、『娘は教室へ、ママは保健室へ行って、いついつまでいてから帰る』にしています。本人とは次の日の目標を立てるようにしていて、娘も「明日は一人で学校に入っていく!行けるよ!」と言うのですが、学校に着くと不安になり、「やっぱり一緒に行って」となってしまいます。

今朝は、そんな風に「やっぱり」と気持ちが変わってしまったことに「なんでできないの?」と自分自身で悲しくなってしまったうえに、忘れ物をしたことに気づき、一気に落ち込み泣き出してしまいました。結局、私が教室に一緒についていき、朝の会の前まで見守ってから、保健室に行きました。離れたがらなかったのですが、「前に進まなきゃ! 頑張らなきゃ!」と、少し強く言い聞かせると、泣きながらも手を離してくれました。私が保健室に行った後は、調子よさそうに活動を始めたので帰りました。

娘は自信家なところもあり、思った通りにいかないとくじけてしまいます。また、登校しぶりが始まってからは、すぐ不安になってしまったり、気にしすぎたりするようになってしまいました。それでも学校に行って過ごすことで、だんだんと自信もついてきて、登校しぶりに伴って嫌がっていた習い事も以前のように楽しんでいけるようになってきました。

あとひと息、あせらず寄り添っていっていくべきなのはわかっているのですが、私もついついイライラしたり、がっかりしたりしてしまいます。今、上向きに見える状況も本当に上を向いているのか、このやり方で進んできたのが合っていたのか、劇的に改善されない状況にあせり、思い悩んでしまいます。

ご意見やアドバイスを頂けたらうれしいです。

ペンネーム かず

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A.利害関係のない「第三者」への相談の時期かもしれません

ご相談者は、日記のような記録をとっておられたのでしょうね。お子さんの登校しぶりの経緯と、親としてどう考えて、どう取り組んでみたのかが、よくわかる相談文でした。

教育補助員をされていたという経験を生かし、不登校のお子さんへの対処法も心得ておられます。登校しぶりの子の保護者としての付き添い方も、最近の学校の定石と言われるものであると感じました。

それでも、なかなか思ったような事態の改善が見られないのですね。お子さんの性格についても、お母さんとしてよく分析されていますが、相談者であるお母さん自身も、まじめで誠実な方なのだと思いました。日中はこうしてお子さんに付き添う生活をすると、お母さん自身の時間がどんどんなくなりますよね。そしてお子さんの一挙手一投足を見ているうち、心がヒリヒリとしてくるようになります。文面から、お母さん自身がとても疲れてしまったのだと感じました。

不登校・登校しぶりというのは、もう半世紀にもなる教育問題だそうです。そして当然ですが、一人ひとり、対処法が違います。以前は「登校刺激」といって、担任が迎えに行ったり、友だちに誘ってもらったりすることが大事だと言われていましたが、今は、一概にそうではないという考え方になりました。

簡単にいうと、とある子で改善が見られた方法が別の子には合わないこともある、ということです。それぞれ不登校になる背景が違うし、不登校になったきっかけ(友だちとのトラブルや、担任のことば…等)が必ずしも原因ではないし、不登校の子が、学校へ行けるようになることが「ゴール」ではない、という考え方です。

つまり、子どもが抱えている「なんらかの問題」が『不登校』という形になって表れているので、その「なんらかの問題」を解決するようにしましょう、という流れになってきたと思います。

そうした流れをふまえたうえでアドバイスするとしたら、このご相談者の場合、第三者機関へ相談されるのがよいのではないかと思います。

親  = 学校に行かせたい
学校 = 学校に来てもらいたい

と、親と学校の利害関係は一致しています。けれど、子どもだけは、

子ども= 学校に行きたくない

わけです。つまり子どもにとっての“味方”はいないことになります。

ですから、このお子さんの気持ちに寄り添ってくれて、話を聞いてくれる人が必要である思いました。

こうした場合、スクールカウンセラーや教育行政の相談員などもおられますが、児童精神科の医師などに相談されたほうがよいように思います。なぜかというと、夜寝るときに激しく泣いた……という記述があり、この点が心配だからです。精神療法をされる医師の中には、こうした「不登校」のケースに多く取り組んでおられる先生も多いようですよ。

お母さん自身の話もよく聞いていただけると、親としてどういう姿勢でいたらよいかという今後の指針が見えてくるかもしれません。

作家の故井上ひさしさんが娘さんによく言っていたという言葉を本で読み、とても印象に残りました。それは

「問題を悩みにすり替えない。問題は問題として解決する」

というものです。

私はそれ以来、「困ったな…」と思うことがあると、この言葉を思い出すようにしています。今回のご相談者なら、きっとこの言葉の意味がおわかりになると思いました。

お子さんの登校しぶりということを「悩み」にしないで、「問題」として立ち向かわれるとよいと思います。

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この記事の監修・執筆者

小学校教諭 舟山 由美子

ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。

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