発達障害のある人が見ている世界【個性とは「ちがっていること」】

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私たちは日々、「ふつう」という言葉を当たり前のように使っています。
でも、この言葉は、ときに人を苦しめてしまうことがあります。

世界にはたくさんの人がいて、一人一人に「個性」があります。
その多様さは優劣ではなく「ちがい」です。

でも現実には、「ふつう」に合わせることが正しいと思われ、「ちがい」が否定されてしまうことがあります。

おとなが一人一人の「個性」を大切に向き合ってくれたら、それだけで子どもたちは安心して自分を出せます。

さまざまな個性がもっと認められていけば、誰にとっても生きやすく、個性を生かして活躍できる社会につながるのではないでしょうか。

※『「個性」ってなんだ? 発達障害について知る本』(Gakken)より、内容を一部抜粋して紹介しています。

目次

「個性」ってなに?

小学生の男の子

みなさんは、「個性」と聞いたとき、どんなことを思い浮かべますか?
たとえば、見た目が特徴的なことを「個性」といったり、不思議な発言やふるまいをする有名人のことを「個性的」といったりすると思います。

見た目や体、能力や性格など…「個性」にもさまざまなものがありますよね。

「発達障害」も、その「個性」の一つだと考えることができます。
発達障害とは、生まれつき脳のはたらき方に少しちがいがあるために、考え方や感じ方、行動の仕方に特性がある状態のことです。

たとえば、音や光にとても敏感だったり、人との会話が少し苦手だったり、忘れ物が多かったりします。

発達障害は目に見えにくくわかりにくい

こうしたちがいは、「がまんが足りない」や「わがまま」だから起こるのではありません。
脳の特性によって情報の受け取り方や整理の仕方がちがうから起こることであり、その人にとっては「自然な感じ方・考え方」なのです。

ただ、そのちがいのせいで、まわりとのコミュニケーションがうまくいかず、困ることもあります。
たとえば、友だちとの会話がかみ合わずトラブルになったり、音が気になって授業に集中できなかったり…。
発達障害のある人たちは、どうしていいかわからず「自分はダメだ」と思ってしまうこともあります。

でもそれは「悪いこと」ではなく、「ちがいがある」というだけのことなのです。

発達障害は非常に誤解されやすい障害の一つ

たとえば、LD(学習障害)のある人は、頑張って文字を書いても字形がくずれやすいことから「ふざけて書いている」などと誤解を受けがちです。

ASD(自閉スペクトラム症)のある人は感覚が過敏であることから、食べられない食べ物が多いことがありますが、それを「わがまま」だと捉えられてしまうことがあります。

また、ADHD(注意欠如・多動症)のある人は集中を継続することが難しいことから、「話を聞いていない」などと叱られる機会が多くなってしまうことがあります。

しかし、どの状態も本人のせいではなく、障害の特性によるものです。叱ったり、注意をしたりして治るものではありません。

また、障害に対する理解がないと、それらの行動特性に対して「甘やかされている」「親や先生の教育の仕方が悪い」など、障害のある本人の周囲にいる人に対する誤解にまで広がることがあります。

誤解をされることは、本人にとっても、周囲にいる人たちにとっても大きなストレスになります。また、誤解をされることで自己肯定感が低下(「自分はダメな子なんだ」と認識したり、自信を失ったりすること)したり、学校などの社会に出ることが難しくなったりしてしまいます。

みなさんも友だちと接している中で「あれ?」と思うことがあったときには、「もしかしたら本人のせいでなく、何か困っていることがあってこのような行動をしているのかもしれない」
「この人にはどんな特性があって、どうしてこのような行動をとってしまうのだろう」
と考えてみるのはいかがでしょうか。

発達障害のある人が見ている世界

みなさんが普段生活をしている学校や社会は、感覚が過敏な発達障害のある人たちにとって、刺激でいっぱいの環境です。

刺激には、さまざまなものがあります。話し声や物音などの「聴覚刺激」、光や人の動きなどの「視覚刺激」、人や物にぶつかったり、接したりするときに感じる「圧感覚」、体の傾きを感じる「平衡感覚」など、ほかにもたくさんあります。

感覚が過敏で、多くの感覚を受けると疲れてしまう発達障害のある人たちにとって、学校や社会というのは非常に疲れる場所なのです。

発達障害のある人たちに配慮したさまざまなアイテム

発達障害のある人たちが困っていることに対応し、日常生活を送りやすくするために、さまざまなアイテムが開発されています。

たとえば、感覚の過敏さを抑えるアイテムや、逆に感覚の鈍さで満たされにくい感覚を満たすようなアイテムもあります。
これらのアイテムは、視力が悪い人が眼鏡をかけていたり、耳が悪い人が補聴器を使っていたりするのと同じように使われます。

『アイテム1』イヤーマフ

聴覚が過敏で、音が普通の人よりうるさく聞こえる人向けに、音が柔らかく聞こえるようにするためのアイテムです。
音を遮断する素材が使われており、これをつけると周囲の音量が抑えられて、聞くべき音に集中しやすくなります。

『アイテム2』にぎにぎボール

筋肉を動かしていたい感覚がある人向けのアイテムです。低反発で柔らかく、ぎゅっとにぎると腕の筋肉を動かす感覚が満たされます。
筋肉を動かすことで、気持ちを落ち着けたり、いらいらした気持ちを抑えたりする効果があります。

『アイテム3』着圧ベスト

からだを動かしたり、傾けたりする感覚が鈍くて、動いていたい人が使うことで落ち着くことができるアイテムです。
ずっしりと重い素材でできており、体が浮いてしまう感覚や、ふわふわと落ち着かない感覚がある、主に ADHD(注意欠如・多動症)のある人が使うことがあります。

『アイテム4』ムービングクッション

座面がななめになっていることに加えて、空気量を調整できます。自然と骨盤が立ち、個々に合わせた心地よい姿勢をサポートするグッズです。
イスに座り続けることが難しく、左右に揺れたり動いたりしてしまう ADHD のある人が使うと、落ち着いた感覚を得ることができます。
授業中に立ち歩いたり姿勢がくずれたりしてしまう人の対策にも使うことができます。

誰もが暮らしやすい社会へ

得意や苦手、困りごとは人それぞれちがいますが、すべてに共通しているのは「まわりの理解と支えがあれば生きやすくなる」ということです。

みなさんのまわりにも、発達障害のある人がいるかもしれません。
あるいは、これを読んでいるあなた自身がそうかもしれません。
でも、誰にでも得意なことと苦手なことがありますよね。
それは当たり前のことで、大切なのはそのちがいをお互いに知り、支え合うことです。
そうすれば、誰もが自分らしくいられる社会に近づきます。

発達障害のある人たちはどんなことに困り、どんな工夫をしているのか、そして、もし近くにそのような行動をする友だちがいたら、
「あの子にはあの子の感じ方があるんだ」と思い出してください。
それだけで、誰かの心がふっと軽くなるかもしれません。

個性とは「ちがっていること」。
ちがいがあるからこそ世界はおもしろく、みんなが手を取り合って生きていけます。

発達障害のない人たちが多くを占める社会で、発達障害のある人は、日々社会を理解しようとしたり、社会に適応しようとしたりして頑張っています。
ぜひ発達障害のない人も、理解しようとしてみてください。
お互いに理解し合い、協力しながら活躍できる、よりよい社会を目指していきましょう。

「個性」ってなんだ? 発達障害について知る本

砂川 芽吹(監修) 定価 5,390円 (税込)

■マンガ・図解で読みたくなる!
各章の導入部はカラーマンガ。きれいな絵柄で誰もが読みたくなります。ストーリーは学校や街中での事例がもとになっていて、自分に身近なできごととして考えやすい内容です。図解ページは、イラスト満載でわかりやすさを追求したレイアウト。眺めるうちに新しい価値観に触れることができ、はじめて学ぶ人にもおすすめです。

■発達障害の特徴について理解が深まる!
発達障害(ADHD(注意欠如/多動症)・ASD(自閉スペクトラム症)・LD(学習障害))をメインテーマに、ぞれぞれにどのような特徴があって、どのようにコミュニケーションをとるとお互いが幸せになれるのかを詳しく丁寧に解説しています。

■「発達障害」に関わる人々のインタビューを多数収録!
障害がある人や協力者として活動している人など、様々な角度から「発達障害」に向き合っている人のインタビューを多数収録しています。各章の終わりにあるロングインタビューでは、それぞれの背景や思いをより具体的に知ることができます。

■「共生社会」や「合理的配慮」を学ぶきかっけに!
「発達障害」は 35人学級であれば3人ほどの割合でおり、今後も増えていく傾向にあります。これからの社会で必要とされる“多様性”、そして、学校の先生やこどもたちに知っておいてほしい「合理的配慮」についてもくわしく説明しています。

この記事の監修・執筆者

お茶の水女子大学 准教授 砂川 芽吹

発達障害のある子ども・人の心理的支援について、特に自閉スペクトラムのある女性を中心に研究している。『「個性」ってなんだ? 発達障害について知る本』(Gakken)が発売中。

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