【気持ちを言葉で表現できない】今子どもたちに必要な「感情教育」とは/モンテッソーリ教育×ハーバード式

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文部科学省の調査によると、全国の小中学校と高校で2023年度に確認された子どもの暴力行為は計10万8987件、前年度比14.2%増の過去最大となりました。

机を投げる、教員を蹴るなど、暴れる子どもの数が増えているのです。
現場の教員たちは、最近の子どもたちが、「気持ちを言葉で表現できていない」と感じているそうです。

自分でもわけがわからず苦しんでいる子どもたちに私たち大人は何ができるのか。
それがこれからお話しする「感情教育」です。

『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの心が見える本』(Gakken)では、40年以上幼児教育に関わってきた幼児教育の専門家が、親子が毎日を笑顔で過ごせるためのヒントをお伝えします。

●伊藤美佳(いとう・みか)
輝きベビーアカデミー代表。40年以上幼児教育に関わってきた幼児教育専門家。
幼稚園を運営していた頃、独自の教育手法が話題となり入園者が殺到、またたく間に人気園に。そこから、幼児教育を40年以上研究し続け、子どもの発育・発達には保護者の接し方や幼少期の教育が重要になることを深く認識。モンテッソーリ教育とハーバード大教授の理論をベースにした独自の教育手法をもとに、生まれながらに持っている才能を誰でも開花させる「輝きベビーメソッド」を開発。これまで3万組以上の親子に関わり、育児革命を起こし続けている。

※こちらの記事では『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの心が見える本』(Gakken)から、一部内容を抜粋して掲載しています。

目次

子どもが安心して「感情を表せる」家庭に

小学校では感想文が苦手な子が多いといいます。これも、気持ちを言葉にするのが苦手だからではないでしょうか。

感じたことを話す、感じたことを書くためには、まず自分が「感じている」ことを認識していなければなりません。

実はそれって、難しいことではありません。私たち人間は感情を持った生き物です。大人も子どもも、いろいろな感情を持ち、何か出来事に対して感じることを止められません。感情は自由なのです。

ただ、その感情を表すことを許されなかったり、「表してはいけないのではないか」と思わされて抑えつけてしまったり、表したら否定されてしまったりといった経験を重ねると、いつしか「感じていない」ようにふるまうようになります。

また、子どもの場合は、湧いてくる感情がどんなものなのか、言語化することができません。だからこそ、まずは家庭が、子どもが安心して感情を出せる場所であることが重要です。

「何を言っても大丈夫」「嫌な気持ち(ネガティブな感情)を出してもいいんだ」と、受け止めてもらえること。

もちろん、親からすれば、すべて肯定できるような感情ばかりではなかったとしても、いったん受け止めてあげることが大切なのです。

そして、泣いていたら、「悲しかったね」「くやしかったね」「さびしかったね」、などと言語化してあげること。

そんな経験を積み重ねるうちに、子どもは「この感情は『くやしい』ってことなんだ」「こういうときは『悲しかった』って言うんだな」と、少しずつ理解していきます。

なぜ?  ほめたらOK…じゃない?

「ほめる子育て」の影響で、ネガティブな感情を受け止めてもらえていない子が多いと感じています。

感情にはネガティブなものもあります。ポジティブな感情がよくて、ネガティブな感情が悪いというわけではありません。むしろ、ネガティブな感情も出せることは、とても重要なポイントです。

先日、あるママから「子どもに対してイライラや怒りがおさまらない」というご相談がありました。そのママは小さい頃にとてもいい子で、よくほめられていました。それによってかえってわがままが言えなくなり、ネガティブな感情を出すことを抑えていたのです。

もちろん、子どもをほめることが悪いわけではありません。でも子どもをほめることによって、ママ・パパにほめられたい一心で、ネガティブな感情を抑えていい子でいようとしているとしたら……? 問題ですよね。

いい子でいなければ、ほめてもらえない。いい子でいなければ、愛されない。そんなふうに子どもに思わせてしまうのは、とても残酷なこと。

「いい子じゃなくてもいい」ママ・パパは、声を大にして、子どもにこう伝えてあげてほしいのです。口にするのは躊躇してしまうかもしれませんが、この言葉の意味は、「あなたは、いい子じゃなくても愛される存在なんだよ」「いい子でも悪い子でも、どっちでも大好きだよ」と伝えることです。

大人だって、悪い感情を抱きますよね。子どもも同じです。誰かにいじわるしたくなったり、じゃましたくなったり、嫉妬したりもします。いじわるな心を持っちゃダメ!なんて言われたら、子どもはどうすればいいのでしょうか。

でもママ・パパはよく「そんな意地悪をしちゃダメ!」って言いますよね。自分のことは棚に上げて(笑)。

感情は、湧き出てしまうもの。いじわるな感情も、嫉妬も憎しみも、その感情を持つこと自体、悪いことではないのに、ママ・パパ自身もどこかでそれを認められないのかもしれません。

「ふわふわ言葉」と「チクチク言葉」を使い分けよう

私が幼稚園勤務をしていた時代によくやっていのが、「ふわふわ言葉」と「チクチク言葉」の使い分けです。

ふわふわ言葉は、相手のことを思いやり、元気になるような言葉。チクチク言葉は、相手の心が痛くなり、傷ついてしまうような言葉です。

幼稚園では、「どんな言葉が〝ふわふわ〞かな?」「どんな言葉が〝チクチク〞かな?」などと子どもといっしょに言葉の選び方を考えたりしていました。

感情を言語化するときに、ふわふわ言葉とチクチク言葉を子どもといっしょに考える作業をすると、子ども自身の言葉選びにも役立ちます。

そして、どちらの言葉を相手に伝えたとき、あるいは自分が言われたとき、どんな気持ちになるか想像することもできるようになります。

ふわふわ言葉とチクチク言葉に関してはいろいろな本が出ているので、参考にして
みてもいいでしょう。

ここでは『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』(齋藤孝・監修/日本図書センター)の例をあげておきます。

ふわふわ言葉: ありがとう よかったね 大丈夫 すごい 元気出して 大好き

チクチク言葉: 早くして 大嫌い なんでできないの そんなのダメ じゃま 気をつけてよ

そのときの「生の感情」に紐づいた言葉を使えるよう、子どもたちといっしょに「言語化する力」を身につけるようにしたいですね。

日々のコミュニケーションで「言葉の深掘り」を

「最悪」と言うのは簡単ですが、本当はもっと深い気持ちがあるはずです。

たとえば、「今日は家に帰ってドーナツを食べようと思っていたけど、昨日全部食べちゃったことを思い出して、がっかりした」などというように。「最悪」という一言で片づけてしまうのは、もったいないですよ。

これは、今の若者がなんでも「やばい」の一言で片づけてしまうのと似ています。今、自分は何を伝えたいのかわからない、モヤモヤした思いを伝えられない若者が増えているのです。感情を言語化しないまま大きくなり、言葉のバリエーションが圧倒的に少ないのでしょう。

本当はもっともっと繊細な感情があるはずです。それを伝えられるようになったら、親子のコミュニケーションは豊かになります。これはもう、日々の習慣であり、訓練です。

子ども時代は、親と子が向き合える貴重な期間。小学生になったら、ひどい言葉も使うでしょうし、思春期になったら、なかなかたくさん話してくれなくなってしまうかもしれません。

ここまでたくさんのヒントや、アドバイス、解決方法をお伝えしてきましたが、一つだけはっきりとわかっているのは、「子育ての答えは、ママ・パパの中にしかない」ということです。

子どもの親は、あなただけだからです。

ぜひたくさん親子でおしゃべりして、本当の気持ちを伝え合ってみてくださいね。

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