最近、テレビなどで環境問題についてよく取り上げられていますね。CО2(二酸化炭素)やプラスチックをはじめとするゴミ問題や水、電気などの消費量問題など、地球を守るための取り組みが本格的になりつつあります。そこで、今年の夏休みを利用して家庭でも環境に配慮した生活を実践してみませんか。千葉経済大学短期大学部こども学科教授の横山洋子先生にお話を伺いました。
「もったいない」にあふれている生活を見直そう
お金を出せばなんでも手に入る時代だから、ついつい無駄が多くなってしまう私たちの生活。横山先生によると、世界194か国で毎年20億トン前後のゴミが出ているそうです。そのうちリサイクルされるのは約16%。また、ゴミを燃やすとCO2が排出され、地球温暖化に影響を及ぼすことはご承知のとおりですが、ゴミを燃やす国は世界のなかでも日本がダントツ1位なのだとか。さらに日本では、ゴミの最終処分場の残余年数は約20年。つまり今後20年ほどで埋め立てる場所がなくなってしまうといわれています。同様にプラスチックのゴミも日本はアメリカに次いで多く、かなり深刻な状況です。
ゴミ問題の改善や、節電、節水を実践するためには、子どものころから無駄をなくす意識をもつことが大切です。たとえば、ゴミの日に子どもといっしょにゴミを出しに行くことで、自分の家のゴミの量を知り、ゴミ集積所に捨てられるゴミの量も確かめることができます。スーパーに行けば、発泡トレー、ラップ、ペットボトル飲料など、プラスチック製品がたくさん使われていることにも気づくでしょう。実際に身の回りにある「もったいない」を確認することで、主体的に「もったいない」を省く活動に取り組むことができるでしょう。
キッチンでできる「もったいない」対策
もっともポピュラーなのが「リボべジ」。再生栽培のことです。ニンジンのヘタやキャベツの芯、小松菜や長ネギの根(5㎝程度の長さ)などを少なめの水に浸し、毎日水を替えると2週間程度で再び収穫して食べられるようになります。「野菜の切れ端でも、生きているんだね」などと子どもに話しながら、リボべジに挑戦してみるのも一案です。
また、ダイコンやニンジンなどの皮は捨てずにきんぴらにするのもオススメ。「皮にも栄養があるんだよ」などと話しながら、おかずの一品として食卓に出してください。
どうしても出る生ゴミは、コンポストを利用して堆肥にし、土に返したいものです。植物栽培の肥料として有効です。生ゴミが土になる様子は、子どもにとって不思議な現象。「微生物の働きで土になるんだよ」などと話し、植物を栽培する際の栄養分として再利用するとよいでしょう。
そもそも生ゴミを出さないようにするには、料理を作り過ぎない、好き嫌いなく食べる、おなかをすかせてから食事をするなどを実践し、食べ残しをなくすことも重要。完食できた際には「残さず食べられたね」とことばにし、達成感と喜びを感じられるようにすると次につながります。
水回りの「もったいない」対策
朝の洗顔や歯磨きで水を出しっぱなしにしていませんか? 「水がもったいないから止めておこうね」と子どもと水意識を共有しつつ、保護者が率先して蛇口を閉めるようにしましょう。
大量に水を使うお風呂は特に節水を意識したいもの。浴槽にためるお湯を6割程度にする、シャワーヘッドに節水アダプターを取りつけるなどの対策が有効です。また、シャワーを使う際に、水温が上がるまで出る水を流しっぱなしにせず、浴槽や洗い桶にためて利用したいもの。「ここにためておこうね」などと子どもにも話しましょう。
また夏は、プール遊びが楽しい季節ですね。プールの水はそのまま捨てず、「空気が涼しくなるよ」と話して打ち水に使ったり、バケツに入れ替えて掃除に使ったりして、上手に再利用しましょう。
トイレの水は、用を足したときにのみ流す、「小」と「大」を使い分けるなどの提案をし、子どもといっしょに取り組みましょう。
電気周りの「もったいない」対策
LED電球を積極的に利用する、使っていない電気製品のコードのプラグはコンセントから抜いておく、誰もいない部屋の電灯を消すなどは基本の対策として実践したいものです。そのほか、夏の外出時にはカーテンを閉めるなど、室内の気温が上がらないようにするのも有効。「部屋に太陽の光が入らないようにすると、温度が上がりにくいんだよ」などと子どもに話すとよいでしょう。
おもちゃのなかには電池を使うものもありますが、カードゲーム、ブロック、パズルなど、電池を使わなくても楽しい遊びがたくさんあります。夏休みこそ、子どもといっしょに遊べるものを選びましょう。
子どもの生活の「もったいない」対策
鉛筆や消しゴムなどの文房具は、子ども自身で管理できるようにし、大切に使う習慣をつけましょう。たとえば鉛筆は、決まった数だけを筆箱に入れ、1本を使い切ったら新しい1本を出して削るようにします。コンパスや定規なども含め、一つひとつに名前を書いておけば、なくしたときに再び手元に戻る可能性が高まります。
いただきものの文房具も、使わずにストックしておき、前のものを使い切ってから出しましょう。ちなみに横山先生の息子さんは、小学校入学時に購入した青い箱型の筆箱を、小学校を卒業するまで大切に使ったのだとか。上手にていねいに使った例ですね。
使わなくなったおもちゃや小さくなった服なども、子どもと相談して使ってくれる人に譲ったり、リサイクルショップに持ち込んだりして、再利用できるよう工夫しましょう。
楽しく「もったいない」を省くには
物を大切にすることが苦痛になるような取り組みは、長続きしません。「もったいない」が悲観的であってはいけないのです。物にも命があって、それを全うさせることで得られる満足感を味わえるといいですね。
たとえば、鉛筆を補助軸をつけて使い切ったあとは「ありがとう」と言ってゴミ箱に捨てる習慣をつけてはいかがでしょうか。「鉛筆も喜んでいるね」と話し、子どもといっしょに最後まで使い切ったことを喜びあえたら、もったいない対策はきっと楽しいものになるでしょう。今年の夏、ぜひ取り組んでみてください。
この記事の監修・執筆者
富山大学教育学部附属幼稚園・教諭、富山市立古里小学校、富山市立鵜坂小学校・教諭を経て、現在は千葉経済大学短期大学部こども学科の教授を務める。著書には、『保育者のためのお仕事マナーBOOK』、『保育に生かせる!年中行事・園行事ことばかけの本』、『毎日のちょこっとあそび』(学研)などがある。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪