【それ、子どもには見えていない?】子どもの見え方を知って、子どもへの理解を深めよう!

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成長段階の子どもたちにとって、大人と同じように注意をはらっても失敗せずに生活するのは難しいことです。
予測を立てて行動するのが難しいことに加え、大人よりも低い視力や狭い視野で過ごしていることも挙げられます
そこで今回は、子どもが普段どのようにこの世界を見ているか、また、その世界の体験方法を紹介します。

お話/岡 真裕美(大阪大学大学院人間科学研究科 特任研究員)

目次

1 大人と同程度の視力になるのは3~6歳ごろ

生まれたばかりの赤ちゃんの目の発達は未熟で、物はぼんやりと見えている状態です。

1歳になると0.2、2歳で0.4~0.5程度、早いと3歳には1.0くらい見えている子もいますが、平均として、小学校就学のころにかけて1.0になるといわれています。

https://www.obara-megane.jp/child-megane/
出典:オバラメガネ

視力0.2は色と輪郭が判別できる程度で、0.5程度でおおよそ5mの距離の人の顔がわかるイメージです。

これは、おおよそ12畳のリビングの端と端にいるときや、1人がキッチンなどに移動したときに、相手の表情が見えづらくなる計算です。

2 子どもの視野をチャイルドビジョンで知ろう!

子どもの視野は狭くて危険がいっぱい

大人の視野は、平均で左右はおおよそ150°、上下120°が見えています。

正面のパソコン画面を見ていても、横に誰かが座っていることや、テーブルの上に載っている物が何となく視界に入るのではないでしょうか。

一方、幼児期の視野は、左右がおおよそ90°、上下が70°といわれています。

これは、大人からはよく見えるところに熱い汁物が置いてあっても見えていなかったり、子どもの背丈ほどの高さの家具や、幼児用の鉄棒などが頭をぶつける位置にあっても見えないような視野であり、日常の中に危険がひそんでいます。

チャイルドビジョンを活用しよう

そんな子どもの視野の狭さを体験できるアイテムがあるのを知っていますか?

紙などで組み立てて、VR機器のように目に当てて使う、立体的なメガネのようなものです。ここでは、東京都チャイルドビジョン(幼児視界体験メガネ)を紹介します。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/child_vision.files/childvision.pdf

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/child_vision.html
出典:東京都福祉保健局

〈作り方〉

型紙を印刷したら切り抜き、組み立てます。コピー用紙のような薄い紙に印刷すると装着した際に形が崩れてうまく使えない場合があるため、厚紙等に貼って補強することをオススメします。

〈使い方〉

のぞくだけで「こんな感じね」とわかったつもりになってしまうのは、とてももったいない使い方です。

必ず子どもの目線と同じ高さまで下がって使用します。中腰か膝立ちがよいでしょう。

まずは家の中の安全なところからスタートし、階段やトイレ、テーブルの近くなどを動き回ってみましょう。棚の上の物は、どうしたら見えるでしょうか?

また、安全を確保した上で、子どもの通園路・通学路で使ってみるのもオススメです。

隣に人が立ったときや、横断歩道の左右確認をするときは、思った以上に首や体を左右に動かさないと見えません。

目線より高い位置にある信号機や工事現場の上のほうの足場、足元の溝なども、首をしっかりと動かさないと見えません。目を動かすだけでは視界に入らないのです。

普段から子どもが落ち着きがなくキョロキョロすることが多いと思う保護者の方がいらっしゃるかもしれませんが、実は、大人と同じ情報を得るために、周りを見回しているのかもしれません。

3 「見えていない」子どもへの伝え方

子どもに「気をつけて!」と声をかけても転んだり人や物とぶつかったりするのは、「見えていない」がために、そこに対象物があることを把握していないからでもあるのです。

見えない物は、気をつけようがありませんよね。

それに加えて、子どもには、興味のある物を見つけるとそれに集中して視野が狭くなることや、2つのことを同時に行うのはまだ難しいといった特性もあります。

大人は簡単にできることでも、子どもには具体的に言葉にしたり、お手本を見せたり、子どもが理解できる声かけややり方で教えることを心がけましょう。

例1)

左右確認のときには「あの木が見えるまでこっちを向いて(反対側も見て)車が来ていなければ、渡っていいよ」と伝える。

例2)

「自分でコップにお茶を入れたい!」と子どもが言ったら、子どもがコップとお茶を見て安定して注げるところでチャレンジさせる。


具体的に伝えることで、子どもが「ああ、こういうふうに見ればいいのか」と理解できると、だんだんと自分で考えてできるようになっていきます。

一度伝えてすぐにできるようになるわけではないので、「前も言ったでしょう」「できないからダメ」と、つい言ってしまうこともあるかもしれません。

でも、保護者が根気強く伝え、子ども自身が何度もチャレンジすることによって、一つひとつできることが増えていきます。


ぜひ、子どもの視野を体験して「うちの子、幼いなりにがんばっているんだな」「そりゃできなくてもしかたないね」と、肩の力を抜いて関わってみてください。

この記事の監修・執筆者

大阪大学大学院人間科学研究科 特任研究員 岡 真裕美

大学卒業後、電機メーカーへ就職、結婚・出産を経て中学高校教員として勤務。2012年、ジョギング中に子どもの水難に遭遇し救助に入った夫が深みにはまり死亡。事故予防対策を行政に訴えるも、大きな改善につながらなかったことから、シングルで2児の子育てをしながら大学院に進学。現在子どもの事故予防の研究・啓発と情報発信を精力的に展開する。

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