【子どもは大人を真似する】「ありがとう」が自然に言える子とは

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あいさつがしっかりとできる子に育てたい、と親なら誰しも考えますね。強制するのではなく、自然と言えるようになるには何か秘訣があるのでしょうか?
教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。

目次

叱りつけながら、「ありがとう」という素敵な言葉を教えることはできない

保護者 「『ありがとう』は? なんで『ありがとう』が言えないの!」
子ども 「…」
保護者  「『ありがとう』が言えないなら、これ返しなさい」
子ども「イヤイヤ…」
保護者 「じゃあ、ちゃんと『ありがとう』って言いなさい」
子ども「あ・り・が・と」
保護者 「もっと大きい声で心を込めてちゃんと言いなさい!」

保護者と年少くらいの男の子のやりとりです。
お友だちから、あるいは保護者の知り合いから何かをもらったのだと思います。

この保護者は、「ありがとう」が気持ちよく言える子にしたいのだと思います。
でも、このように叱りつけながら、「ありがとう」のような素敵な言葉を教えることができるのでしょうか?

見本によってモデリング効果を

もちろん、「どうぞ」「ありがとう」「ごめん」「いいよ」などの言葉は、よい人間関係をつくる上でとても大切な言葉です。
「おはよう」「こんにちは」「さようなら」などの言葉もそうです。

親はみんな、こういう言葉を子どもが言えるようにしたいと思っています。
では、そのためにはどうしたらいいのでしょうか?

まずは、親が自らこういう言葉を日頃から使っていることが必要です。
しかも、心から喜んで気持ちよく、です。

よい見本があれば、モデリング効果が働いて、子どもが真似するようになります。

ほめたり価値づけたり

そして、子どもが使えたら「言えたね」「いい言葉が使えたね」とほめてあげることも大切です。

また、「『ありがとう』って言ってくれると、こっちもうれしくなるよ」「こういうときは『ごめん』て言おうね」「気持ちよく謝ってくれてうれしいわ」など、その言葉の価値を教えてあげることも大切です。

つまり、価値づけであり啓発です。

そして、こういう話をするときは、子どもと目の高さを合わせて、穏やかな言葉で言って聞かせることが大事です。

穏やかに言って聞かせる

もちろん、なかなか言えるようにならない子もいます。
でも、そこで感情的に叱りつける必要はありません。

その度に同じことを繰り返し言ってあげて、後はできるようになるまで待つことが大事です。

「何度言ったらできるの!」などと言わず、同じことを何度でも繰り返し穏やかに言ってあげてください。

何ごとにおいても言えることですが、時期が来ればそれなりにできるようになります。

果物が熟すのと同じで、子どもの内側で機が熟す時というものがあるのです。
それを待ってあげてください。

何ごとにおいても、子どもの内側で熟していないものは、決して本物にはなりません。

合理的な工夫も大事

こういったことは、あいさつだけでなく、朝起き、身支度、片づけなど、万事に言えることです。

大切なことを繰り返し言ってあげると同時に、合理的な工夫も大事です。

片づけができないなら、ワンタッチ収納、ラベリング、片づけタイムなどの工夫です。

食後の歯磨きを忘れるなら、お箸と一緒にはじめから歯ブラシも出しておくようにします。

「『ありがとう』『ごめんね』はうれしい言葉」という手作りポスターを貼るのもいいでしょう。

叱りながらやると逆効果

叱りつけながらやっていると、その本当の価値はわからないまま、「叱られるからやる」という他律的なものになります。

すると、当然、保護者がいないときはやらないということになります。

しかも、叱られた物事は「すっぱいブドウ効果」によって価値が下がり、本当の価値がわかるまでに却って余分な時間がかかることになります。

あきらめて手伝う。やってあげる

ですから、言って聞かせたり工夫したりしても、それでもできない物事はあきらめてください。

具体的に言えば、手伝って一緒にやってあげるということです。
それも大変なら、全部やってあげてもいいです。

「やってあげるといつまでも自分でできない。自立ができない」などと言って脅す人もいますが、決してそんなことはありません。

「やってあげるといつまでも自分でできない。自立ができない」などと言って脅されて、焦って子どもを叱りつけるというパターンが一番よくないです。

「やってあげるといつまでも自分でできない」という思い込み

叱られてばかりの子は、「すっぱいブドウ効果」の犠牲になります。

自己肯定感もボロボロになり、「ぼくはダメだ。どうせできない」と思い込み、ますますできなくなります。

保護者に対する反発もわいてきて、言うことを受け入れられなくなります。

ですから、「やってあげるといつまでも自分でできない。自立ができない」などと思い込まないで、やってあげてください。

自己肯定感を育てながら待っていれば、機が熟したときにできるようになります。
今はまだ無理だというだけです。

「やってあげるといつまでも自分でできない。自立ができない」などという思い込みが、どれだけ世の中の保護者を苦しめ、子どもたちを苦しめているかわかりません。

こういった思い込みは本当に罪深いと思います。

待てる気持ちを持ちましょう

どの子もオリジナルなペースで成長しますので、保護者ができることをしてあげつつ、後は待つことが大事です。

待てないと、冒頭の保護者のように叱りつけてしまい、却って子どもの成長をさまたげることになります。
ぜひ、待てる気持ちを持ちましょう。

これが「しつけの7か条」

最後に大切なことを「しつけの7か条」としてまとめます。

  1. よい見本になる
  2. ほめる
  3. 価値づけ・啓発をする
  4. できないからと言って叱らない
  5. 叱らないで穏やかに言って聞かせる
  6. 叱らないで手伝う。やってあげる
  7. 後は時期が来るのを待つだけ

この親野智可等の「しつけの7か条」で、保護者も子も楽になり幸せになります。

世の中に広がるといいなと思います。

読んでくださった方が身近なふたりに伝えてくだされば、広まりますので、よろしくお願いいたします。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 親野 智可等

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。

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