小学生になると、子どもだけで鍵を持って留守番をさせる機会が出てくることもあるかと思います。
共働き家庭はもちろんのこと、臨時で留守番をすることもありますよね。
そこで、子どもに鍵っこデビューをさせるときの目安や、鍵を持たせるときの約束、留守番のときに気をつけたいことを、NPO法人体験型安全教育支援機構代表 理事長の清永奈穂さんにうかがいました。
お話/清永奈穂(NPO法人体験型安全教育支援機構代表 理事長)
子どもだけでお留守番するタイミングにはどんなものがあるの?
お留守番といっても、毎日のことから、臨時であったり突発的だったり、さまざまです。
日常的なもの
毎日鍵を持っていたり、曜日によって留守番したりする、いわゆる「鍵っこ」と聞いて想像することが多いパターンです。
- 共働きなどで、子どもの帰宅時間に保護者が家庭にいないとき
- きょうだいの習いごとの送り迎えなどで保護者が出かけ、特定の曜日だけ留守番をするとき など
臨時的なもの
日常的ではなく、あらかじめ子どもが一人で留守番をする予定があり、鍵を持たせるパターンです。
- 保護者会などの行事で子どもが先に帰るとき
- 家族の入院 など
予定外のもの
念のために子どもに鍵を持たせていて、急に使うタイミングが来るパターンがこれに当たります。
- 天候の変化で下校時間が早まったとき
- 思いがけず保護者の予定が押して、子どもが先に帰宅したとき など
「ちょい留守」
「ちょっとだけの留守番」を指します。在宅していた保護者が家から出かけて戻ってくるまでの短い時間のみ、子どもが鍵を持たずに一人で留守番するパターンが多いです。
- 保護者が買い物に行く間
- ゴミを捨てに行く間
- 雨が降ってきたので、きょうだいを急に迎えに行くことになったとき など
子どもだけで留守番をするようになる可能性がある場合、いきなり長時間の留守番は難しいため、時間や予定のわかりやすい「ちょい留守」を、あえて留守番の練習として取り入れ、少しずつ時間を延ばしていくのもオススメです。
鍵っこデビューの判断材料
鍵を持たせて子どもだけで留守番させるのに、年齢や学年で「いつからなら大丈夫」と一概にはいえません。
ただ、全体を見ると、学童を卒業する子が多い小学4年生、次いで、小学校に入学した1年生のタイミングで鍵を持たせる家庭が多いそうです。
家庭環境や状況によって、やむを得ず子どもに留守番させることもあるでしょう。
ここでは、ひとつの指標として、子どもに鍵を持たせられるかどうかの判断材料を紹介します。
子どもに対しての判断材料
●火の怖さを知っている、使ってはいけないという約束を守れる
●知らない人を家に入れてはいけないのはなぜか、その怖さを知っている
●暑いときや寒いときにどうしたらよいか、安全な冷やし方、暖め方を知っている
●友だちを呼んでよいとき・呼んではいけないときを理解できる
●タブレットなどインターネットの使い方の約束を守れる
●困ったときにパニックにならずに、すぐに保護者や信頼できる大人(祖父母、親戚、事前に決めておいた近所の人など)に聞いたり、助けてと言ったりできる
⇒保護者の電話、110番、119番などに助けを求められる
これらを、自分である程度判断して行動できることがポイントです。
保護者自身の判断材料
また、保護者自身も、
●留守番できる体制・対策づくりができる
●帰宅してから子どもに話を聞く余裕がもてる
といった、子どもの留守番に対して、気持ちの余裕をもてる状況が大切です。
そうは言っても、上記すべてができてから留守番を始めるのは非現実的。
少しずつ時間を延ばして、少しずつ約束を増やしていく、という方法がよいでしょう。
保護者も少しずつ経験しながら、留守番の作法を覚えていくことができます。
最初から完璧な留守番はできないという心づもりでチャレンジしていきましょう。
鍵の扱いと開け閉めで注意したいこと
とくに防犯・安全面から、子どもに鍵を持たせるときには、次のようなことを約束・確認しておきましょう。
鍵の扱い方の約束
●鍵をしまう場所を決めて、きちんとしまう
⇒ランドセルやカバンのどこにしまうか、家ではどこに置いておくか など
●鍵っこであることを見せびらかさない
⇒友だちや知り合いでも、鍵をどこにしまっているかを見せない、保護者が何時に帰ってくるかをしゃべらない
●鍵を使ったらすぐにしまう
鍵カバーがついているランドセルや、あとから取りつけられる鍵カバーも売っています。
そういったものを活用して、鍵を出し入れしやすく、隠すとよいでしょう。
ひと昔前のように首から下げるのは、鍵を持ち歩いていることを公言しているようなもの。
また、鍵に書かれているキーナンバーから鍵の情報がわかってしまう場合も。
ランドセルやカバンのポケットに直接入れる場合は、リールつきキーホルダーや、コイル型のキーチェーンをつけるなど、とにかく玄関前で鍵の出し入れがスムーズになるよう対策しましょう。
落としてなくすことも防げます。
鍵の開け閉めの約束
●鍵を開ける前に、前後左右を見渡して確認する
●家に入ったらすぐにドアを閉めて、そのまま鍵をかける
子どもだけで留守番するときに約束しておきたいこと
子どもだけで留守番するにあたり、家庭や子どもの様子によってどのような選択をするかは異なりますが、下のようなことを確認・約束しておきましょう。
●チャイムが鳴ったときに出るのか出ないのか
●第三者(友だちや顔見知りのご近所さん)を入れるのか入れないのか
●電話に出るのか出ないのか
⇒最初はすべて対応しないことにして、年齢や慣れによって、対応を変えていってもよいでしょう。家族からの電話は、留守電に入れるのを聞いてから出るなどにすると安心です
●もしも、出ない約束のもの(チャイムや電話)に出てしまったときに、「今お母さん・お父さんが忙しいので」と言えるように練習しておく
⇒子どもは素直なもので、約束していても「今いません」と答えてしまいがちです。実際に保護者が外からチャイムや電話を鳴らして、練習しましょう
●火は使わない
●電子レンジ、オーブントースターは使わない。もし使う場合には、事前に温め対応の皿などを確認しておく
●アレルギーがある場合は、用意したおやつ以外は口に入れない
●タブレット、スマートフォン、PC、ゲーム機などの、使う場所・時間・使用内容を決めておく
●ベランダ、洗濯機、お風呂場、キッチンの火の近くなど、危ないところで遊ばない
●冷蔵庫は開けたら閉める
●困ったことがあったら、すぐに保護者や、保護者が相談するよう決めてある連絡先(祖父母や親しい大人など)に連絡する
⇒電話番号のリストや、約束ごとをまとめて書いておいてもよいでしょう
子どもからよくあるヘルプ連絡
留守番をしている子どもから、保護者宛てによくある電話やメッセージアプリなどの連絡内容をご紹介します。
外的要因の困りごと
- チャイムが鳴りやまない
- 大雨で雨漏りや停電したなどの緊急事態 など
子どもの体調にかかわる困りごと
- 体調が悪くなった
- おなかがすいた、のどが渇いたといった体の変化
- 暑い、寒いなど室内の管理 など
子どもが判断できないこと
- テレビを見たい。ゲームをしたい
- (予定をしていなかったけれど)遊びに行きたい など
大人にとっては「好きにしていいよ」「そんなことで?」と思うことで連絡がくる場合もあるかもしれませんが、子どもにとっては判断できなかったり困ったりしていること。
たとえば雨が降りそうな日は、洗濯物はあらかじめ入れてから出かける(子どもがベランダに出なくてよいように)、おやつや飲み物を用意しておくなど、保護者が少し先を見通して準備しておくと安心です。
保護者も初めは慣れないことで、どのような準備をしておくとよいかわからないこともあるでしょう。
徐々にわかっていくこともありますが、子どもから連絡がくることを前提として、さまざまな予測を立てておくと、気持ちの余裕にもつながります。
子どもの鍵っこ・お留守番デビューにあたって、保護者が気をつけておきたいこと
子どもの留守番のときの約束と重なる部分もありますが、子どもに鍵を持たせて留守番させるにあたり、保護者が気をつけておきたいことも確認しておきましょう。
●子どもに鍵を持たせている・留守番することを、学校や学童の先生など、信頼できる大人に伝えておく
●場合によっては、鍵の形状を最新のものにすることも検討する
●窓を戸締りしておく
⇒勝手口やキッチン、トイレ、お風呂など、もしかしたら人が出入りできそうな窓、ドアも施錠する
●熱中症などにならないように室温を管理する
⇒とくに窓を閉めきることが基本になるため、エアコンのタイマーを活用するのもオススメです
●おやつやごはんを子どもだけで食べる場合、熱湯や火の扱いに注意する。電子レンジを使うときは、入れてよいものと入れられないものを区別できるようにする
⇒電子レンジ用の皿を決めるか、使わないものはすべて片づけておきましょう
●薬、化粧品は目に触れないところに置く
●携帯電話、スマートフォン、タブレット、ゲーム機の取り扱いを決めておく
⇒保護者が使用しなくなったスマートフォンでゲームをしてトラブルが起こった事例もあります。デジタル機器以外に本やボードゲームなど、子どもの好きな、家で遊べるコンテンツを用意しておくとよいでしょう。
●ベランダや窓際などの子どもがけがをしそうなところ、落下しそうなところに絶対に足台になるようなものを置かない
●洗濯機、お風呂場など水場に行かないように伝え、危険性を教えておく
●鋭利なもの(ナイフやカッター、包丁)を、子どもの目につくところに置かない
●地震が起きたときに潜り込める安全な場所を家の中につくっておく
●地震や火事などの災害、不審者からの電話や来訪など、何かあったときに逃げられる場所や人を決めておく
⇒祖父母、親戚、親しい友だち、特定のご近所さん、近所のコンビニ・郵便局(こども110番になっていることが多い) など
●こまめに地域や天候などの情報をチェックしておく
●保護者の帰宅後、少しの時間であっても、子どもにその日の話を聞き、様子を見る
⇒保護者が忙しいことを察したり、心配をかけたくなかったりして、何かあっても子どもからは言わないこともあります
子どもにとっても保護者にとっても、とくに慣れないうちは不安や心配がつきものです。
多くの点を挙げましたが、初めからすべて完璧を目指すのではなく、何より子どもの安全を守ることを第一に考えていきましょう。
子どもだけで過ごす時間は、「生きていく力をつける」ことでもあります。
親子で少しずつ慣れていき、生きる力が身につく経験ととら えて取り組んでいきましょう!
この記事の監修・執筆者
日本女子大学学術研究員、(株)ステップ総合研究所長、博士(教育学)。犯罪、災害、いじめ等から命を守るための研究と実践を行い、政府、自治体などの委員会委員なども務める。現在こども家庭庁こども家庭審議会基本政策部会臨時委員。『ぼうはん』(監修、学研)、『おおじしん、さがして、はしって、まもるんだ』(単著、岩崎書店)等。
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