【朝ゲーム、朝スマホで睡眠習慣を改善?】子どもの脳を育てる「正しい睡眠」を始めよう[小児科専門医監修]

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【朝ゲーム、朝スマホで睡眠習慣を改善?】子どもの脳を育てる「正しい睡眠」を始めよう[小児科専門医監修]

夏休みの間、「遅寝遅起き」の生活をしていると、新学期になって睡眠のリズムを戻せずに体の不調が出てしまったり、不登校に陥ってしまったりするケースも。他にも、成績不振、肥満、うつ症状など、睡眠不足にはさまざまなリスクがあるのです。子どもの脳の発達に欠かせない「正しい睡眠習慣」を確立する方法について、文教大学教授で「⼦育て科学アクシス」代表の成田奈緒子先生に伺いました。


文/こそだてまっぷ編集部

目次

睡眠不足はリスクだらけ!学習以外にも影響が

長期休み明けや連休明けには、睡眠不足の子どもが多く見られます。夜更かしなどによる生活リズムの乱れが原因と考えられますが、睡眠不足は子どもの発育に大きな影響を及ぼすものなので、改善が必要です。

睡眠不足による子どもの不調

睡眠不足の子どもの不調には、さまざまなものがあります。
•居眠り
•あくびが多い
•疲れやすい
•食欲の低下
•元気がない
•集中力がなく多動になる
•記憶力が落ちる
•イライラ、不安感など情緒が不安定

このように、睡眠不足になると、授業に集中できず成績低下を招くばかりか、食べすぎによる肥満など、日常の生活がうまくいかなくなります。 また、イライラするなど情緒不安定になって友だち関係のトラブルを起こしてしまう危険性もあります。 こうしたリスクを避けるためには、できるだけ早いうちに睡眠習慣を立て直すことが大切です。

小学生の睡眠時間は最低9時間以上

「早い時間にきちんと寝て、起きる」のは、子どもの脳の発達においてとても大事なこと。
成長ホルモンやセロトニンなど、体内環境を整える重要な物質が分泌されることで体内時計は正常に動きます。セロトニンの分泌のピークである朝5時から7時ごろに太陽の光を浴びるのは、子どもの脳にとってとても大切なことなのです。
小学生の場合、理想的な1日の睡眠時間は10時間程度。セロトニンの分泌や朝食・排便の時間を考慮して起床時刻を「登校時刻の1時間半前」とすると、朝6時頃の起床が望ましいです。
しかし、朝6時に起きるためには夜8時に就寝する必要があり、現代の子どもの生活においてはなかなかハードルが高いと思います。そこで私は、保護者の方には「最低9時間は睡眠時間を確保していただきたい」とお伝えしています。

小学生のうちに「夜9時に就寝して朝6時に起きる」という「正しい睡眠」を意識した生活をしていくことで、論理的思考力や感情の安定を担うセロトニン神経が育ちます。
また、日中に学んだ知識や情報や経験は、しっかり眠ることで記憶として定着するものです。記憶が定着するからこそ、さらに新たな知識や情報や経験を積み上げることができます。 正しい睡眠の習慣をしっかり作ることで、感情を制御できて学習能力の高い子どもに育てていくことができるのです。

睡眠に関してのNG行動

先に述べたように、小学生は夜9時までには寝るのがベストです。では、ベッドに入ったらすぐ眠りにつき、朝までぐっすり寝てすっきり目覚める、そんな「質のよい睡眠」は、どうしたら保てるのでしょうか。
次に、子どもの睡眠に関して間違ったことをしていないか確認してみましょう。

➀夕方からの昼寝

夕方4時以降に昼寝や夕寝をしてしまうと、入眠困難や夜間睡眠の質の低下を引き起こす可能性があります。小学生以上であれば、昼寝は必要ありません。どうしても疲れて眠いときに昼寝するなら、午後2~3時ごろに15分から30分程度に留め、それ以上長時間の昼寝は避けたほうがよいでしょう。

②寝る直前の入浴

寝る直前に入浴をしてしまうと、交感神経が活発になり、体温が上がっている状態で寝つきが悪くなります。人は入浴後に体温が上がり、その後体温が下がるころに眠くなるものだからです。
そこで、可能な限り夕食前に入浴するのを習慣にするとよいでしょう。暑い時期に汗ばんでしまった場合、寝る前にぬるいシャワーを浴びるのであればよいと思います。

③寝る直前のTVやゲーム、スマホ

夕方から夜になって目に入る光の量が減り、メラトニンという物質が分泌されると、人は自然に眠くなっていきます。ですから、寝る前にはできるだけ部屋の明かりを落として、強い光を目に入れないことが安眠のコツです。
TVやゲーム、スマホなどの強い光は、メラトニンの分泌量を減らしてしまうことがわかっているので、こうしたメディアとの接触は寝る前の1時間前までとしましょう。
寝る前の時間の過ごし方としては、家族でリラックスしておしゃべりをしたり、カードゲームなどをしたり、ストレッチや読書、読み聞かせなどがおすすめです。

④夕食の食べ過ぎ

食べたものが消化されるには、約40分から1時間程度かかるので、夕食は就寝時刻の2時間前までに終えていることが理想です。また、消化のためにも食べ過ぎはよくありません。夕食時に肉類や糖質を大量に摂取すると体に負担がかかるため、朝食や昼食をしっかり摂って、夕食はできるだけ消化のよいものにすることを心がけましょう。
夕食の時間も「夜7時」より遅くならないようにしましょう。

⑤朝ぎりぎりまで寝かせておく

前日寝るのが遅くなった場合には、出かける時間ぎりぎりまで寝かせてやりたい親心は理解できます。しかし、「起床してすぐに登校」となると、朝食や排便の時間がきちんと取れず、体によい影響はありません。
たとえ睡眠時間が少なめだったとしても、心を鬼にして朝は決まった時刻に起こすようにしましょう。そうすることで、夜は自然と遅くまで起きていられなくなります。 まずは朝日をしっかり浴びて体を動かし、朝食をきちんととることを1週間続けてみてください。
親もブレずに「休日でも決まった時刻に起こす」ことが、睡眠習慣を保つために大切なことなのです。

子どもの睡眠を守るために家庭でできること

「早起きの特典」を設ける

朝、子どもに何度声をかけても起きられない……そんな状態が続くときは、「早起きの特典」を用意するとよいでしょう。 例えば、「自分で起きられたら、朝の30分間はゲームやスマホなど自分のやりたいことをしてよい」など、家庭内でルールを決めて、その時間は何をしていても親は口出ししないようにするのです。

このように、早起きをすることにメリットがあれば、お子さんのほうから自主的に起きようとするので、おすすめです。こうして早起きが習慣化されていくことで、いずれ目的ができて勉強やスポーツのトレーニングなどをしなければならなくなったときに、自分で考えて効率的な時間の使い方ができるようになるので、本当に役立ちます。
保護者のサポートとしては、「夕食は夜7時」「夜は9時に寝る」の2点だけ守ることに集中することが大切です。

家族全員で早めに寝る

お子さんが保護者の方と一緒でないと寝られないような場合は、同じ時間にベッドに入って「親も早く寝てしまう」という方法もあります。
大人は9時間も寝る必要がありませんので、夜9時に寝て朝3時か4時頃に起きるとすると、睡眠時間は足りていることになります。
保護者の方は早朝のうちに家事を片付けたり、仕事や運動をしたり、自分の趣味の時間にしたりすれば、効率的に時間を使えることになります。
さらに、保護者の方の睡眠が足りていると、気持ちに余裕が生まれて子どもに余計な口出しをしなくなるなど、親子関係にもよい影響が及ぶことになります。
このように家族全員で「正しい睡眠」について意識し、朝方の生活に変えていくことで、プラスの循環が生まれます。

睡眠習慣はいつからでも立て直すことができますが、できるだけ早い時期からしっかりと睡眠時間を確保することで親子関係もよくなるなど、子どもだけでなく保護者の方にもさまざまなメリットがあるのです。

この記事の監修・執筆者

⽂教⼤学教育学部教授・⽇本専⾨医機構認定⼩児科専⾨医・公認⼼理師・発達脳科学者 成田奈緒子

1987年神⼾⼤学医学部卒業、2009年より⽂教⼤学教育学部特別⽀援教育専修教授。2014年から医学・⼼理・教育・福祉を包括した専⾨家集団による新たな親⼦⽀援事業「⼦育て科学アクシス 」を開設、代表に就任。また、⽂部科学省 や東京都教育委員会などで⼦どもの⽣活習慣を科学的に考える育児教育への提⾔・社会活動を⾏っている。

著書:「その⼀⾔が⼦どもの脳をダメにする」(SB新書・成⽥奈緒⼦共著) 「『発達障害』と間違われる⼦どもたち」(⻘春出版) 「⾼学歴親という病」(講談社) 「⼭中教授、同級⽣の⼩児脳科学者と⼦育てを語る」(講談社)他多数

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