【医師監修】日本の子どもの睡眠時間は世界一短い

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心身の健康にとって欠かせない睡眠。2021年に株式会社ブレインスリープが行った調査によると、日本人の子どもの睡眠時間は、年齢別の推奨睡眠時間より最大2時間近く短いそうです。また、睡眠習慣が乱れているほど、小学校や幼稚園の欠席頻度、風邪の罹患、頭痛などの不調の発生頻度も高くなることが報告されています。
子どもの睡眠の重要性を大人がしっかりと認識し、良い眠りに家族ぐるみで取り組む必要性が高まっています。

監修/西野 精治(スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長) 文/マムズラボ

目次

日本の子どもの睡眠時間は世界一短い

日本人の睡眠時間は大人も子どもも世界で最も短い、と以前より報告されています。日本人の子ども3歳~9歳を対象に、株式会社ブレインスリープが行った調査結果(2021年)によると、子どもの年齢別に推奨される睡眠時間と実際の睡眠時間が最大で2時間近く短く、日本の子どもの睡眠時間はすべての年齢で推奨される睡眠時間に足りていない、ということがわかりました。

※A

さらに、日本の子どもの睡眠時間が世界で最も短いという事実を知らない人は68.7%、「事実を含め、詳細を知っている」と答えた人はわずか5%でした。

※1 National Sleep Fonundation2015参照。図の中では平均値をベースに算出
※2 睡眠時間に関して適切な回答が得られていない方を除外して算出

※B

ぜひお子さんの年齢に当てはめて、睡眠時間が足りているかどうかチェックしてみてください。例えば5歳のお子さんが毎朝7時に起きるとしたら、11時間30分の睡眠を確保するためには、前日の夜7時半には眠っていなければなりません。6~9歳のお子さんが10時間の睡眠をとって朝の7時に起きるには、前日の夜9時が就寝時間です。こうして見てみると、思った以上に推奨される睡眠時間が確保できていないお子さんも多いのではないでしょうか。

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睡眠不足が、子どもの成長にさまざまな悪影響を及ぼしている

子どもの体調と睡眠の関係を調べた結果によると、睡眠習慣が乱れている子どもほど体調不良の頻度が高くなる傾向がみられます。

※4 子供の睡眠習慣のスコアはCSHQ(Children’s Sleep Habits Questionnaire、子供の睡眠習慣質問票)をベースに、ブレインスリープで独自に点数化。点数が高いほど子供の睡眠習慣が乱れているとの判定。評価を行ったすべての項目で、睡眠習慣が乱れていればいるほど症状が頻回に現れていることが判明。

※C

子どもの睡眠は、成長の面においてさまざまな発達と密接な関係があることが明らかになっています。子どもの脳は、内外からいろいろな刺激を受けて新しい神経回路を形成しています。さらに、不必要な回路を除去するサイクルを繰り返し、発達していきます。そうした働きは眠っている間に起こるため、睡眠という行為は欠かせない役割を担っているのです。
特にレム睡眠(夢を見ている時の睡眠で、脳は起きていて体が眠っている状態)のときには、新しい神経回路が形成されるため、レム睡眠の多い乳児期から12歳くらいまでの間には、年齢ごとに推奨される睡眠時間が確保できないと、脳の発達にも悪影響を及ぼすことになるということです。
他にも、睡眠不足による体調不良が倦怠感や自尊感情の低下につながり、不登校となってしまうケースもあるのだとか。また、体調不良が新型コロナウイルス感染症などの感染症にかかるリスクを高める可能性もあるのです。

子どもにも起こりうる睡眠障害って?

寝付きが悪い、深く眠れない、睡眠不足など睡眠障害は大人だけの問題だと思われがちですが、子どもにも睡眠障害があります。
そのひとつである「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)は、大人の睡眠障害として広く知られていますが、子どもにも起こる症状です。子どもの場合の主な原因は扁桃肥大で、夜間のいびきや無呼吸、起床時の不機嫌などが見られます。睡眠の質が悪くなると成長ホルモンの分泌が少なくなるため、低身長になるなどの悪影響が表れます。

睡眠障害が起こり、眠りの質が悪い状態が続くことにより、イライラしたり怒りっぽかったりするなど、ADHD(注意欠陥・多動性障害)のような症状が表れることも多くあります。そのため、ADHDとして誤った受け止め方をされ、適切な対処につなげられないケースも起こるのです。イライラや怒りっぽさなどの原因が睡眠障害である場合は、適切な対処で改善へとつながるので、正しい診断、そして質の良い睡眠が必要となります。

※5 子供の情緒や問題行動はStrength and Difficulties Questionnaire(子供の強さと困難さアンケート)をベースに、ブレインスリープで独自に点数化。点数が高いほど子供の情緒や行動に問題があるとの判定。有意差はt検定によりp<0.01

※D

キーワードは「早起き、早寝」

これまで見てきたように、子どもの成長に睡眠は欠かせません。睡眠時間を適切に確保するためには、おうちのかたと一緒に取り組むことが大切です。親の睡眠負債と子どもの睡眠負債は相関関係にある、というデータがあり、家庭内の生活リズムは少なからず子どもの睡眠にも影響していると考えられています。

※3 毎日わずかずつ積み重なる睡眠不足のこと。 “睡眠の借金”とも表現される。

※E

最近ではコロナ禍で在宅ワークだったり出勤だったりと働き方が一定しないため、大人の生活リズムに乱れが生じ、それが子どもにも影響してしまうケースも多いのではないでしょうか。
昔から「早寝、早起き」を心がけましょうと言われていますが、一度乱れてしまった生活リズムを戻すのは簡単ではありません。まずは「早起き、早寝」を心がけてみてください。少し無理をしてでもお子さんを朝早く起こし、昼間しっかり活動させましょう。そうすれば夜には自然に眠くなるので、結果的には早寝につながります。それを数日繰り返すうち、「早寝、早起き」のリズムが整ってきます。また、朝食を取ることで体温上昇や、腸の働きが活発になり生活リズムが整いやすくなるので、朝ごはんをきちんと食べるように心がけることも大切です。

寝つきが良くなり、ぐっすり眠るためには、次のような工夫もしてみましょう。

・寝る前のスマホやタブレットを避ける
・食事は寝る3時間前くらいまでに終わらせる
・38度くらいのぬるめのお風呂にゆっくりつかってリラックスする
・眠る前には白湯で体を内側から温めつつ水分補給

大切なお子さんの心と体を育むための睡眠。まずは大人が子どもにとっての睡眠の重要性をきちんと認識して、おうちの中で眠りについて考えてみましょう。

〈出典・参考資料〉
※A~F
データ提供:株式会社ブレインスリープ
睡眠偏差値 調査結果報告 2021Kids
https://brain-sleep.com/service/sleepdeviationvalue/research2021kids/

この記事の監修・執筆者

スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長 西野 精治

株式会社ブレインスリープ 創業者 兼 最高研究顧問
認定資格 精神保健指定医、日本睡眠学会専門医、産業医、医師、医学博士

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