シングルマザーで2人の息子さんを難関私立中高一貫校、そして公立大学医学部現役合格へと導いた藤田敦子さん。現在は一般社団法人日本ぺたほめアカデミー協会代表理事として、主に小学3年生までのお子さんのいるご家庭を対象に、“受験子育て”にまつわる相談を多く受けていらっしゃいます。
ここでは小学3年生までのお子さんがいらっしゃるご家庭向けに、親子関係や家庭学習、中学受験に関することなど、さまざまな視点から藤田さん流の“幸せな子育て&賢い子を育てる”ためのアドバイスを発信していきます!
取材・文/細川 麻衣子 写真提供/日本ぺたほめアカデミー協会
≪第9回(毎月1回公開/全12回)≫
新しい年の始まりは、親子でゆっくり過ごせる特別なとき。実はこの「お正月の過ごし方」が、子どもを賢く育てる時間になります。季節の行事を大切にしながら親子の絆を深め、子どもの❝できた!❞を育む、藤田敦子さん流の家庭での過ごし方をご紹介します。
冬休みは親子が自然に寄り添える特別な季節
一年間を通して長期休みは、夏休み・ゴールデンウィーク・春休みなど何度かありますが、冬休みはほかの長期休みとは少し違います。まさに年末年始、❝お正月❞という日本の行事が主となる冬休みは、学校や習い事はもちろんお休み。朝から夜まで家族と過ごし、この一年を振り返りながら新年を迎えるという、特別な時間です。
また、子どもにとっては学校や習い事などがある忙しい日常とは過ごし方も変わり、遊べる時間も増えるのではないでしょうか。冬休みは❝行事×親子時間×遊び❞が実現できるからこそ❝最高の学びの時間❞を作ることができるのです。
とはいえ「せっかくだから何かしなくちゃ!」と肩に力を入れる必要はありません。「今日はどうしようか?」と、子どもといっしょに考えながら過ごす、くらいの気持ちでいてください。子どもは、親といっしょに考える時間を持つことで、好奇心や集中力を高めます。❝親子でいっしょに→子どもの意見を尊重する❞このプロセスを大切にすることが、自己肯定感の安定や、自信を持つ力にもつながります。
年末年始は、親子の絆を深められて子どもを賢く育てられる絶好の時期なんです。
小学生のうちに伝えたい❝お正月のこと❞
小学生になると、意味を知る力がぐっと伸びます。「〇〇ってなに?」「どうして〇〇なの?」という疑問に今一度、しっかり向き合って伝えてあげると、行事への理解が深まるでしょう。
まずはいくつか、お正月にまつわるものの説明をまとめておきます。
●お正月って?
新しい年の始まりをお祝いする日本の大切な行事です。しめ飾りや門松を飾って、年神様を迎え、大みそかには年越しそばを食べます。また、初詣に行き、家族でおせち料理を食べたりお年玉をもらったりして、一年の安全と元気と健康を願います。
●門松って?
年神様が迷わずに来てくださるように立てる、玄関のサイン・道しるべ。松は一年中葉が落ちにくいので「長生き」「丈夫」「めでたい」という意味があり、日本では昔からお祝いごとに使われてきました。「家族がこの一年、元気で過ごせますように」という願いをこめたものです。
●除夜の鐘って?
大みそかの夜にお寺で108回つく大きな鐘のこと。❝108回❞には、人の心にある108の悩みや欲(煩悩)を静かにおさめ、新しい年を気持ちよく迎えられるようにという願いがこめられています。(除夜の鐘は「お寺」でつくもので、神社では行いません)
●初詣って?
「一年を元気に過ごせますように」と、神社にあいさつに行くこと。日本では山や海、木や風などさまざまなところに「神様がいる」と昔から考えられていて、その神様に「今年もよろしくお願いします」と、あいさつする場所が神社です。
神社は“お願いごとをする場所”というより“感謝とご報告を伝える場所”だと伝えると、礼儀やものの考え方としても良い学びになるでしょう。
●おせち料理って?
昔の習慣で、お正月や端午の節句などの節目に神様へお供えする「御節供(おせちく)料理」が由来。神様と共に食事をすることで縁を深め、一年の幸せや健康を願う、という願いが込められています。黒豆は健康、数の子は子孫繁栄、栗きんとんは蓄財など、料理ひとつひとつに意味があります。重箱に詰めるのも、福を重ねる縁起かつぎです。
●鏡もちって?
鏡もちは、お正月に神様へお供えする縁起物。❝鏡❞は、昔の円形の鏡が神聖なものとされていたことに由来します。大小二つのもちを重ねるのは、福が重なる・円満が続くなどの願いが込められています。上にのっているみかんは、本来❝橙(だいだい)❞で、木から落ちずに実ることから、子孫繁栄を願う意味があります。
●鏡開きって?
お正月に飾っていた鏡もちを食べる日。「一年の健康を願う日」で縁起のいい行事。鏡開きで、もちを包丁で切らないのは“縁を切らない”という願いがあるからです。「開く」という言葉には「運を開く」「道が開ける」 など前向きな意味がたくさん込められています。だから「鏡開き」なのです。
※行事の意味や由来には諸説あります
このように、お正月ならではの物事について親子で会話をすることで、学べることがたくさんあるでしょう。もし、子どもに聞かれたときに答えられなくても焦らなくて大丈夫。「ママも詳しくは知らないから、いっしょに調べてみよう」と、辞書や本に触れてみてください。現在はスマホでパっと調べてみるだけでも、多くの情報が出てきますので、その中から信用できる情報だと判断できるものがあれば、それでも良いかもしれません。
親が常に正解を教えるよりも、“親子で同じテーマを共有する時間”のほうが、子どもの理解を深めてくれるものです。子どもからの質問は、学びに繋げる絶好の機会。❝親への宝物❞だと私は思っています。
このように「お正月」を、親子で学べる良い機会にしてみましょう。
≪関連記事≫[お正月○×クイズ*10問]知ってびっくり! 新年を祝うための豆知識
「年末年始に賢く育つ」おすすめの取り組み
実際にお正月、我が家が取り組んできたことをご紹介します。どれも楽しくできて、準備は簡単、費用もほとんどかかりません。子どもの脳の発達や創造性を刺激でき、なにより親子の絆をしっかり深められるのでおすすめです♪
作りながら「理科脳を刺激!」──手作りたこ作り

年始におすすめなのは、なんといっても「たこ作り」。作って、走って、失敗して、また調整して……。この一連の工程は、子どもの脳を刺激します。「どうしてたこが飛ぶの?」――その疑問から始まり、実際に作って飛ばしてみると、風の抵抗や素材の軽さ、たこ糸の位置など、考えることは「理科の要素」のかたまりなんです。完成までにたくさんの“試行錯誤”が必要ですから、自然と創造力や論理的思考が鍛えられます。
年始の食育にピッタリ!──❝料理❞で七草がゆ体験

年始の食育として、わが家で毎年いっしょに作ってきたのが七草がゆ。七草がゆは、1月7日の「人日(じんじつ)の節句」に、七種の若草を入れたおかゆを食べて無病息災を祈るという行事で、平安時代の宮中で行われていたものです。この風習が今も受け継がれていて、昔から続く健康祈願の行事食、となっています。
「七草って知ってる?」とクイズ形式で聞くと、子どもの好奇心が一気に動きます。ただの行事ではなく、「冬に弱くなった体をいたわる料理なんだよ」と伝えると、子どもも“食べる意味”を感じてくれます。七草がゆをいっしょに作るという体験は食育にぴったり。子どもの記憶にも深く残ることでしょう。


料理=五感を使う経験は、脳の働きを豊かにすることはもちろん、料理そのものにも興味を持ちやすくなるので一石二鳥! 大きくなってからも「ごはん作ってあげるよ」「自分で作れるよ」と言える、優しく自立した大人に成長することも期待できますよ♪
≪関連記事≫【鏡餅は切ってはいけない⁉】正月を迎える前に知っておきたい鏡開きに関する豆知識とは?
アイデア脳がぐんぐん育つ──手作り“羽子板”

羽子板は、小学生にとって最高の❝ものづくり×運動❞遊びです。まず板に自由に絵を描いて、世界に一つだけのマイ羽子板を作る。そこから打ち合いで集中力・俊敏性が鍛えられます。描くときの「どんなデザインにしよう?」という思考は、アイデア脳(発想力)を大きく刺激します。あえて正解を用意せず、自由に描かせるのがポイントです。
小学生は「自分の世界」を表現したい時期。羽子板の板は、その気持ちを受け止めてくれる真っ白なキャンバスです。好きなキャラクター風でも、模様でも、文字でもOK。完成したら、家族で打ち合い開始! 最初はぜんぜん続かなくても、「どうやったら続くかな?」と体の動きを工夫し始めるのがおもしろいところ! バランス感覚や空間認知も自然と育ちます。勝ち負けより、「続いた!」「今のすごかった!」という瞬間をいっしょに喜ぶことを大切にしてみてください。お家の中でするときは、風船を使うと危なくなくて、ラリーが続くので楽しいですよ。
お正月は親子で“ゆっくり同じことをする時間”を大切に
年末年始は豪華なレジャーをしなくても、親子で“ゆっくり同じことをする時間”があれば十分です。前述にもある通り、
たこ作りで試行錯誤する力――
七草がゆで季節や文化に触れ、自分で手を動かす経験――
羽子板で体と心をつかいながら工夫を重ねる時間――
どれも子どもの脳と心を育て、親子の距離をやさしく近づけてくれる取り組みです。
取り組み・経験、という形で上記は紹介しましたが、もうひとつ!
我が家では大切にしていた❝楽しい学びの時間❞があります。それは……
家族でいっしょにゲームをする! 楽しむ! ということです。
近年はスマホやオンラインゲームなどが子どもたちの日常に浸透していることもあり、いっけん同じ家の中にいても❝みんな別のことをしている❞というご家庭も多々あるようです。
もちろんこれがNGではありませんが、お正月は、家族水入らずで過ごせる時だからこそ、❝いっしょに遊ぶ!❞という時間をぜひとってみてください。
我が家はトランプやUNOなどのカードゲーム、モノポリー、人生ゲーム(ボードゲーム)! たくさんしていました。家族で同じ遊びをして、「やったー!」「悔しい! もう一回!」とコミュニケーションをとる時間は、本当に貴重なものです。
そんなことよりも……と、思われる保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、カードゲーム、ボードゲームは、頭を使いますよ! 小学生の❝知育❞にぴったり! お正月から楽しく知育! 子どもの脳を楽しい時間と共に育ててみてはいかがでしょうか?
≪関連記事≫【おせち料理を食べる理由は?】懐かしのお正月遊びにも意味がある? お正月の料理と遊びに関するQ&A[専門家監修]
年末年始に親子で過ごすこうした時間は決して“特別な教育”ではありません。でも私は長年、数えきれないほどの子どもたちを見てきて、いつも同じことを感じます。
「賢い子」は、特別な勉強をしている子ではなく、❝家庭での小さな経験を丁寧に積んできた子❞だということです。これらはすべて教科書や塾の勉強だけでは育たない力です。
そして、小学生のうちにこうした力を積み重ねている子は、のちの「学習」や「中学受験」の壁にぶつかったときに、かならず強さを発揮します。なぜなら、自分で考える力・やり抜く力・気持ちを整える力が育っているからです。
今年の年末年始、ぜひ無理なく楽しめるものから取り入れてみてください。
きっとその経験は、これから先の長い学びの道のりで、子どもをそっと支える大きな力になると、私は信じています。
次回1月は『冬も体を動かしながら賢い子を育てる方法』をお届けします。お楽しみに♪
この記事の監修・執筆者
一般社団法人日本ぺたほめ®アカデミー協会代表理事。ぺたほめ®医専アカデミー代表。日本心理学会認定心理士・日本心理学会正会員。同志社大学文学部心理学専攻卒業。
息子二人を洛星中学校・高等学校卒業後、京都府立医科大学医学部医学科現役合格(現在は二人とも現役医師)に導いたシングルマザー。現在は、ご自身の子育てで培った「ぺたほめ®教育法」で多くの保護者から教育・育児相談を受けている。
子どものやる気と自信を育てる「ぺたほめ7日間無料メール講座」
著書『受験も人生も楽しめる! 3~9歳 理系脳・運動脳が育つぺたほめ親子あそび』1,650円(税込)/小学館
著書『母親が変わればうまくいく第一志望校に合格させた母親がやっている子育て39』1,650円(税込み)/講談社
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪
あわせて読みたい
-
【10歳の壁】どう接すればいい? 中間反抗期の子どもの心を育てる親の対応術/藤田敦子さんの“賢い子”を育てるポジティブ教育法
- 悩み
- 教育
-
【睡眠×運動が大切!】学習に良い影響を与える❝勉強・睡眠・運動❞のバランスとは⁉/藤田敦子さんの“賢い子”を育てるポジティブ教育法
- 教育
- 運動
-
【食育は賢さの土台になる!】脳の成長をサポート&学習効率を上げる食べ物とは⁉/藤田敦子さんの“賢い子”を育てるポジティブ教育法
- 教育
- 食育
-
【中学受験を考えたとき】大切にしたいこと&低学年から始めておくとよいこと/藤田敦子さんの“賢い子”を育てるポジティブ教育法
- 悩み
- 教育
-
【自ら勉強する子に育つ!】魔法の「ぺたほめ」子育て術とは⁉/藤田敦子さんの“賢い子”を育てるポジティブ教育法
- 子育て
- 教育