【デジタル時代を生き抜く子を育てるには?】新時代にはSTEAM教育が重要!

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【デジタル時代を生き抜く子を育てるには?】新時代にはSTEAM教育が重要!

AIや5Gといったテクノロジーの進化が進み、情報技術の発展でわたしたちの生活はますます豊かになりました。一方で「将来は多くの仕事がAIに奪われる」ともいわれており、子どもの未来に不安を抱く保護者もいるのではないでしょうか。

新たな時代を生きる子どもへの教育方法として「STEAM教育」が注目されています。アメリカでは国家戦略とされるほど重要な「STEAM教育」とはどのような教育方法なのでしょうか? STEAM教育が生まれた背景や詳しい教育内容についてご紹介します。

文/マムズラボ

目次

新時代に求められるSTEAM教育とは?

新しい時代に求められるSTEAM教育とは?

STEAM教育とは何か、注目されている背景や理由についてご紹介していきます。

AIに代替されにくいスキルを伸ばすことを目的とした教育

STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つのことばの頭文字を組み合わせた造語です。STEAM教育は、これら5つの分野を重視した教育の新しい考え方であり、論理的思考力や問題解決力といったAIに代替されにくいスキルを伸ばすことを目的とした教育方針のことを指します

問題解決能力や創造力を育む

まだ耳慣れないSTEAM教育ですが、元々はSTEAMからA(アート)を除いた「STEM教育」が主流でした。STEM教育とは、2000年代にアメリカが始めた教育方針で、技術分野で世界との競争に勝ち残るために、ロボット研究やAI・システム開発といった理系人材の育成を目的としていました。

STEM教育に「A(アート)」が加わった理由は、研究開発を行うには理数系に強いだけでは不十分であると考えられたからです。ここでいうA(アート)とは、演劇や絵画といった単なる「芸術」という意味にとどまらず、人間の歴史、哲学、心理などあらゆる側面に対する知識や教養を示すリベラルアーツ(※)も含みます。
(※)リベラルアーツとは、人が自由に生きるための知識のこと。

理系分野の知識に加えて教養を複合的に学ぶことで、問題解決能力や創造力も育成するねらいがあるのです

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なぜSTEAM教育が必要とされている?

なぜSTEAM教育が必要とされている?

STEAM教育が注目されている背景には、テクノロジーの進化があります。AIの発達やスマートフォンの普及、生体認証など、ほんの10年の間にわたしたちの暮らしはどんどん豊かになりました。刻々と変化する社会の中で、仕事の仕方や求められる人材も変化しています。

オックスフォード大学のオズボーン准教授およびフレイ博士と株式会社野村総合研究所の共同研究によると、10~20年内に、日本では現在の労働人口の約半数が就いている職業において、AIやロボットに代替可能と推計されています(※1)。たとえば、ロボットに代替される可能性があると予測されている仕事の例は下記のとおりです。

・事務員
・警備員
・タクシー運転者
・電車運転士
・バイク便配達員
など(※2)

これらの仕事がなくなると予測される未来で、AI時代と共存し、AIを使うだけでなく自発的にものを生み出す人材を育成するために、子どもの教育にも変化が必要とされているのです。

日本のSTEAM教育の方針とは?

日本のSTEAM教育の方針とは?

日本では2020年ごろから取り入れられ始めたSTEAM教育。日本でのSTEAM教育の方針はどのようなものなのでしょうか。

ITやAIが発達しても活躍できる人材を育成する

日本がめざすべき未来の社会の姿として、日本政府は2016年に「Society 5.0」を発表しました。

「Society 5.0」とは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く5番目の社会システムであり、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されています(※3)。

わかりやすくいうと、AIやドローン、自動走行車、無人ロボットといった最新のテクノロジーを使って、少子高齢化や貧富の差、地域格差といった今抱える問題を解決していく社会です

実際にレストランでのロボット配膳、オンラインを活用した遠隔診療など、すでに生活のあらゆる場面で技術が活用され、課題解決のための取り組みが進んでいます。そのため、今後はAIやドローンなどの機械と共存していくことが予想されます。ITやAIが発達しても活躍できる人材を育てるためにも、STEAM教育は重要なのです。

日本のSTEAM教育の取り組みは?

日本のSTEAM教育の取り組みは?

続いては日本のSTEAM教育の実際の取り組みや今後の取り組みについてご紹介していきます。

「思考力」「判断力」「表現力」を育むことをねらいとした、プログラミング学習の必修化

日本では、STEAM教育の一環として2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されました。STEAM教育でプログラミングを学ぶ上で重要なポイントは、コードを打てるようになることではなく「プログラミング的思考」を身につけることです

プログラミング的思考とは、簡単にいうと「問題をいちばん効率よく解決できる方法を考えるよう試行錯誤すること」です。

文部科学省が、2015年に発表した「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」においても、「プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない」とされています(※4)。

プログラミング学習はプログラマーを育てるための学習ではなく、「思考力」「判断力」「表現力」を育むことをねらいとしているのです

教科を横断する学びを実現することで、変化を生み出せる能力を持つ人材を育成することが今後の目標

日本がめざす「Society 5.0」を実現させるためには、新しいIT社会に適応できる人材育成が非常に重要です。そのための手段として文部科学省では「教科等横断的な学習」を推進しています。

「教科等横断的な学習」とは、それぞれの教科をバラバラに学ぶのではなく、枠にとらわれず科目を組み合わせて進める授業のことです(※5)。たとえば、二等辺三角形の作図を学ぶ際に、二等辺三角形を正しく製図するための命令をいっしょに考えるといったように学習科目を掛けあわせることで「算数×テクノロジー」の複合的な学びに繋がります。多様化する問題に対し、実社会での問題発見・解決に繋げるためには文系・理系にとらわれず、それぞれの分野を融合させて考える力が必要なのです

日本の教育は学びが縦割りの枠にとどまりがちですが、STEAM教育を通してそれぞれの分野を横断的に習得することで、変化を生み出せる能力を持つ人材の育成に繋がります

「一斉一律の授業」ではなく、学びの在り方の変革が必要となる

文科省が提案する「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる〜」では、Society 5.0に向けた人材育成ためには以下の「3つの力」が必要であると指摘されています(※6)。

必要な3つの力
1.文章や情報を正確に読み解き対話する力
2.科学的に思考・吟味し活用する力
3.価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力

これらの力を身につけるために、具体的にはこれまでどおりの「一斉一律の授業」だけでなく、個人の進度や能力などに応じてタブレットや学習管理システムを用いた学びの場を提供すること、同一学年集団の学習に加えて異年齢・異学年集団での協働学習が拡大していくことなど、「学びの在り方の変革」を打ち出しています。

海外のSTEAM教育の取り組みは?

海外のSTEAM教育の取り組みは?

日本のSTEAM教育は、教育者の欠如やICT環境整備の不足から、世界に比べてかなり遅れているといわれています。最後に、海外ではどのような取り組みが行われているのか、STEAM先進国といわれるアメリカとシンガポールを例にご紹介します。

アメリカの場合

世界に先駆けてSTEAM教育の重要性を訴えたのはアメリカです。科学技術関連職の人材不足により国としての競争力が低くなるという懸念をうけて、早いうちからカリキュラムが整備され、オバマ前大統領が2009年に演説で述べたことで世界に知られるようになりました。

2015年にはSTEM教育法(現STEAM教育法)が制定されており、STEM教育の定義を拡張し、初等・中等教育のSTEM分野の教師を10万人養成、STEM分野の大学卒業生を100万人増加させるなどの目標を示し、国家戦略と位置づけられるほどSTEAM教育を重要視しています

シンガポールの場合

IT先進国といわれ、世界的にもトップクラスの学力を誇るシンガポールは、STEAM教育にも国をあげて力を入れています。シンガポール最大の科学館である「サイエンスセンター」は、「学びに終わりはない」というコンセプトのもとに設立され、1,000を超えるSTEAMを体験できるアクティビティがある施設です。

STEAM教育普及のために立ち上げられた「ステムインク」という組織には、STEAM関連領域で修士号・博士号を持つスペシャリストやSTEAM講師が多数所属しており、派遣先の学校では子どもたちの好奇心を刺激するさまざまな授業が展開されています

新型コロナウイルス感染拡大のさなかでは、多くの学校が閉鎖され大きな混乱を招きました。しかし、シンガポールでは非常時の対応が事前に想定されていたため、オンライン学習にすぐに切り替えることで、学習に支障をきたすことがありませんでした。こういった事例からも、ICT環境整備が充実していることや、教育に対する意識の高さをうかがい知ることができます。

STEAM教育で新しい時代にワクワクする学びを

STEAM教育で新しい時代にワクワクする学びを

わたしたちがこれまで歩んできた時代とは違い、AIやロボットが台頭し変化の激しい社会を生き抜いていかなければならない子どもたち。デジタル時代に自ら道を切り開いていくためには、これまでのような暗記重視の詰め込み教育ではなく、一人ひとりの「創造性」や「独創性」を育てる教育が必要となってくるのではないでしょうか。

【引用】
(※1)総務省「平成30年版 情報通信白書 職業の変化」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd145210.html
(※2)野村総合研究所「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf
(※3)内閣府「Society 5.0」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
(※4)文部科学省「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm(※5)文部科学省「4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1364319.htm#:~:text=%E5%90%84%E6%95%99%E7%A7%91%E7%AD%89%E3%81%AE%E6%95%99%E8%82%B2,%E9%85%8D%E5%88%97%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8F%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82
(※6)文部科学省「行政説明資料2」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/11/19/1411060_02_1.pdf


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