【専門家に聞く】子どもの「泣く」を大解剖! 後編  子どもの「泣く」の受け止め方

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子どもにとって「泣く」ことはとても大切なことだとわかりました。後編となる今回は、年齢による泣く理由の違いや親の受けとめ方を、東京家政大学教授・岩立京子先生に教えていただきます。

お話/岩立京子(東京家政大学教授) イラスト/北村友紀

目次

年齢によって泣く理由は違う

子どもが泣く理由は年齢や発達段階によって異なります。前編でも書きましたが、個人差はあれ、0~3歳はおおむね感情のままに泣いていたのが、4歳を境に、相手の反応を見てコントロールしながら泣くようになります。

子どもの主な「泣く」理由を、年齢別に見てみましょう。

また、その対処法についてもご紹介します。

0歳児  生理的、心理的な不快感で泣く

暑い、おむつが濡れた、おなかがすいた、眠いなどの、不快感や生理的欲求が満たされないことが原因で泣くことが多い時期です。

生後1年間は、愛着形成の期間でもあるので、人見知りをして泣いたりもします。

1歳児  自分がしたいことが満たされないと泣く

立って歩くことや言葉を話すことができるようになる時期。自分が行きたい場所に行ってやりたいことをしたり、指さしや短い言葉を使って相手に伝えることができたりするようになります。自分の欲求が満たされないとき、言葉ではまだ十分に表現できないので、大きな声で泣いたり、地団駄をふんで泣いたり、ひっくり返って泣いたりします。

2歳児  意思が伝わらない、表現がうまくできないときに泣く

自分のしたいことがはっきりしてきて、「これはイヤ」「これがいい」など主張します。自分の意思が伝わらないときや、表現がうまくできずに保護者が理解できないときに泣く時期です。

この時期の「泣く」はおおかた怒りからきているので、地団駄をふんだり、床に寝転がったりして激しく泣くこともあります。

また、譲り合う、順番を守るなどはまだ難しいため、きょうだいや友だちとのトラブルから泣くことも。

3歳児  要求が通らないと泣く

これまでの経験の積み重ねによるところが大きく、泣く理由も個人差が大きくなります。個性が出てきて「公園でもっと遊びたい」「おもちゃを買ってほしい」など、特定の欲求から泣くことも多くなります。

また、物の貸し借りができるようになる年齢になるため、早くから保育園で集団生活を経験してきた子は、感情のコントロールができるようになってきます。

4歳児  いろいろなことに心が揺れ動くから泣く

相手の気持ちが少しくみ取れるようになる時期。その分「泣く」理由は複雑になってきます。たとえば、「ママを怒らせたかもしれない」と気づいたり、「まわりの子ができることが自分にできない」ことがわかったりしても、その不安や苦しい気持ちを親には言えず、何を聞いても首を横に振って泣き続けることもあります

5歳児 失敗や嫉妬などの複雑な思いから泣く

兄弟や友だちといっしょに遊んだり、物事を自ら進めていったりする時期。感情が育ってくるので、失敗や葛藤、嫉妬、羞恥心など、泣く理由はとても複雑になります。たとえば、思ったとおりに物事が進まなかったり、人を自分の思いどおりに動かそうとしてけんかになったりするなど、人間関係の中で抱くさまざまな思いから泣くことが増えます。

泣く理由がわかってもイライラ! どうしたらいい?

理由がある程度わかっても、いつまでも泣かれているとママもパパもストレスがたまります。

忙しいと、すぐに泣いてしまう子に対して、「また泣いて」「すぐに泣かないの」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ」などと言って放置してしまうかもしれません。

また、「うるさい」「いい加減にして!」などとイライラして怒ってしまう人もいるでしょう。

子どもは、そうやって怒られてしまうと、外に出して受けとめてもらうはずの感情が意に反して抑え込まれてしまいます。それが続くと、感情を爆発させるか、やがて感情を表に出さなくなってしまうこともあるので、なるべく「泣く」ことに寄り添うことが大切です。

0歳児 

よい対処法 欲求を満たしてあげる

おむつがぬれて泣いていれば「気持ち悪かったね」と言って替え、おなかがすいて泣いていれば「おなかがすいたのね」と声かけをしてミルクや離乳食をあげるなど、欲求を満たしてあげましょう。

悪い対処法

なかなか欲求に応えなかったり、声かけをしない。

1歳児

よい対処法  泣く理由を探り、共感する

なぜ泣いているのかを探りましょう。

たとえば、遊んだ直後の食事のときに泣き出したら、「まだ遊びたかったのかな」と声をかけて共感し、そばで少し遊ばせてもよいでしょう。ママやパパがおいしそうにごはんを食べていたら、素直にすぐ食べてくれるかもしれません。

悪い対処法

泣いているのに、「早く食べちゃって」と無理に食べさせようとする(逆効果になることも)。

2歳児 

よい対処法 共感して、理由を聞く

わざと泣いているように見えることもありますが、そこにも必ず理由があります。「なぜ泣いているのか」「何を訴えようとしているのか」を理解するようにつとめ、共感しながら理由を聞いてみましょう。

悪い対処法

一方的に叱る(子どもも引っ込みがつかなくなる場合も)。

3歳児

よい対処法 先回りをしないで見守る声かけを

自分でやろうとすることが多い時期なので、ママが先回りをしてやってしまったとき、「ぼくがやりたかったのに!」と泣くかもしれません。そんなときは「ごめんね」と素直に謝り、納得してもらいましょう。どうしてもできないことに直面したときは、本人の了解を得てから手伝いましょう。

悪い対処法

よかれと思って本人に許可なく先回りして手を出してしまう。

人間関係のトラブルで、一方からの聞き取りで子どもを責める。

4歳児

よい対処法 見守ってポジティブな声かけを

何にでもチャレンジするけれど、うまくいかなくて悔し涙を流すこともある時期。上手にできなくても、その意欲や積み上げてきた自信を失わずに再チャレンジできるよう、ママやパパがポジティブな言葉をかけてあげましょう。

悪い対処法

「また失敗しちゃったか」などと、傷口に塩をぬるような言葉かけをする。

5歳児

よい対処 向き合って話を聞く

自分でいろいろできるようになり、おしゃべりもだいぶ上手になる時期。多くの子は幼稚園・保育園に通うように。園の送り迎えのときの様子や、生活で気になる点、遊び変化など、子どもの普段の様子にいつも目を向けて急に泣きだすなど、いつもと様子が違ったら、向き合って話を聞き、受けとめましょう

悪い対処法 

「男の子なんだから泣かないよ」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ」などと言わないようにしましょう。男の子だって泣きたいときもあるし、上の子は普段はがまんしているかもしれません。

子どもの「泣く」はとても奥が深くいことがわかりましたね。

発達するにつれて、泣きの原因はより複雑になってきます。大人の思い込みで、慰めたり、叱ったりせず、子どもをよくみて、「泣く」理由を探り、受けとめ、気持ちに寄り添うことを心がけましょう。原因がわからないときもあるので、わけがわからないと突き放してしまうのではなく、「なんか悲しいんだね」とありのままを理解し、受け止められればいいですね。

そして、保育園・幼稚園の先生にもそのときのエピソードなどを話し、気軽に相談してみましょう。原因についていっしょに考えてくれたり、いろいろな対応のアイデアを出してくれたりするでしょう。

この記事の監修・執筆者

東京家政大学子ども学部子ども支援学科 教授 岩立京子

臨床発達心理士。東京学芸大学教育学部を卒業後、同大学大学院修士課程、筑波大学心理学系技官などを経て、

東京学芸大学教育学部、子ども学部教授を長年務め、現職。

発達心理学、幼児教育が専門。乳幼児の発達などを主に研究している。2児の母。

著書に「子どものしつけがわかる本」などがある。

 

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