「そういうところがダメなのよ」「みんなできるのに、○○だけだよ、できないの」
そんなわが子の“短所いじり”をしてしまっていませんか?
「苦手分野を克服してほしい」と願うあまり、知らず知らずのうちに、子どもの短所に目が行きがちなのが親。でもその言動が、子どもたちの可能性をつぶしてしまっているかもしれません。
今回は『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』の著者・石田勝紀先生に「わが子の長所をぐんぐん伸ばす方法」についてうかがい、2回にわたって紹介していきます。
第1回は、ついやってしまいがちな“短所いじりの危険性”についてお話していきましょう。
お話/石田勝紀(教育専門家、一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事)
“短所いじり”は、わが子の「自己肯定感」を下げる
子どもは、短所を指摘されてばかりいると、「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまい、自分を肯定することができなくなってしまう危険性があります。
そして、それが積み重なっていくと、どんな場面や言葉でも、すべてをマイナスに捉えるようになってしまうのです。
「自分を肯定する気持ち」=「自己肯定感」とは、
自分のことを好きだと感じ、今の自分を肯定できるポジティブな気持ちのこと。
この気持ちが高まっていると、自分のなかに余裕ができ、
● もっと勉強してみよう
● 自分の意見を伝えてみよう
● 簡単には傷つかないぞ
● 人にも自分にも優しくしてみよう
● 失敗しても大丈夫
といった、前向きな思考で行動を起こすようになっていきます。
しかし、社会に出ると、自己肯定感を上げる場面や言葉に出会うのは難しいもの。
わが子の自己肯定感を上げられるのは、他でもない「親」しかいないのです。
ですから、無意識に発してしまった短所いじりで、わが子の自己肯定感を下げてしまうのは、どうしても避けたいですよね。
どうして短所いじりが起きてしまうの?
“親の心が疲れている”と、短所いじりが起こりやすい
まずは、想像してみてください。
“買い物から帰宅すると、子どもがゲームばかりで宿題をしていません。部屋を見渡すと散らかり放題。これからごはんを作ろうと思っていたけれど、その姿を見てうんざり”。
あなたならどんな言葉をかけますか?
多くの人は、「いつまでゲームしてるの⁉」「宿題はやったの⁉」「片づけなさい!」といった指摘をしてしまうのではないでしょうか。
“では、その日、宝くじで1億円が当たったとします”。
同じ状況に遭遇したら、あなたはなんと言いますか?
「もうすぐごはんだからね~」「ほら、○○もお片づけ始めようね~」なんて言うかもしれません。
同じ状況なのに、かける言葉が違うのはなぜでしょう?
ーそれは、ママパパの心にゆとりが生まれたから。
つまり、子どもの短所ばかりが目についてしまうのは、親の心がネガティブな状態にあるため。人間には、心が満たされていない状態だと、ネガティブな状態のものを探してしまい、逆に、心が満たされていると、ポジティブなものを見つけるといった心理があるのです。
だからといって、常にポジティブな心で過ごしましょう、というのはとても難しいもの。なぜなら、日常的に家事、育児、仕事に追われるママパパの心は、どうしたってゆとりがなくネガティブになりがちだからです。
だからこそ、意識をして“自分の気持ちを上げるツール”を持っておくことがキーポイントになるのです。
短所いじりは、“自分の気持ちを上げてくれるツール”を使いこなして、防ごう!
大切なのは、「自分の気持ちが動く」「自分に合った」ものを意識的にいくつかもっておくということ。
たとえば、「部屋に好きな音楽を流す」「好きなアロマを置く」といった空間を整えることでもよいのです。
そのほかにも、
● 好きな物を食べる
● 好きなアイドルを見る
● 好きな本を読む
● 好きな場所に行く
● 好きな人と話す
などでもよいでしょう。
しかし、これらは意識的に行わないと、いつしか、ママパパの気持ちは下がり、心の余裕を失いかねません。つい後回しにしてしまう自分の時間を、ほんの少しだけでも大切にしてみてください。ほんの少しの意識の変化で、ママパパの心に余裕ができ、発する言葉や行動も変わっていくでしょう。
「子どもを変えなきゃ!」ではなくて、「まずは自分が変わっていこう」という視点が大切です。そうすれば、自然と子どももポジティブに変わっていくでしょう。
そもそも「短所」「長所」ってなんだろう?
短所とは「自覚していること」、長所とは「自然とできてしまうこと」
もう少し、「短所」「長所」について掘り下げてみましょう。
短所とは?
そもそも短所とは、「劣っているところ」や「よくない面」という意味がありますが、どうしても、他人と比べて劣っているところ、といった相対的な評価で考えてしまう人が多いのではないでしょうか。
ここでは、「自覚しているところ」と捉えてみましょう。
短所に対して、本人は、つまずきを感じたり、苦手意識をもったり、やり方がわからないと疑問を抱いたりなど、なかなかうまくいかないことを、おのずと実感しているはずだからです。
本人が「自覚している」うえ、さらに「短所いじり」をされると、ことさら苦手を意識させられる、ということになってしまうので、それは避けたいものですよね。
長所とは?
長所とは、「自然とできてしまうこと」と言うこともできます。
たとえば、困っている人がいたら、いつも進んでお手伝いができる子がいたとします。本人はそれを苦と思わず、やりたいと思ってやっていることでも、周りからは「すごい」と思われている場合、それは「気が利く」「働きもの」といった「長所」であると言えます。
このように、つまずきを感じないので、長所とは、自覚なく自然とできてしまうこと、と言えるのです。
長所が伸びていくと、自然と短所をなんとかしようと行動を起こす法則がある!
長所をたくさんほめ、本人が自覚し、「自分ってすごいかも?」と自分を認めることができると、心に余裕ができ、自己肯定感が生まれます。
そしてそれが高まっていくと、自覚している「短所」をなんとかしようと行動を起こそうとする、という人間の法則があります。
この法則は、人材育成のプロにも使われています。
“たとえば、どの科目も苦手だけど、比較的、理科が得意な子がいたとします”。
その場合、まずは理科ができることをたくさんほめて伸ばすのです。
「理科がよくできているね!すごいね!」
といった声かけを続けることで、自信がつき、心に余裕ができていきます。
そして、理科が伸びてくると、今度は「ほかの科目も得意になりたい」と思い努力し、ほかの科目も伸びていく、というパターンもよくあることなのです。つまり、「短所いじり」は必要ないのです。
どうしても気になる「短所」がある場合は?
上記のように、長所を伸ばしていくと、短所も改善されていくパターンもありますが、どうしても声を上げてしまう場合もありますよね。
とくに、まわりに迷惑がかかってしまう状況で、よくやってしまいがちなのが、しかる、怒る。
しかし、幼い子どもは、「怒っている」という親の感情しか受けとることができません。ママパパが「伝えたいこと」ではなく、「怒られた」「ママが怒ってる」という事実しか残らないのです。
これは、親が感情に捉われ、“教える”ことを忘れてしまっている状態と言えます。
では、どのようにして伝えればよいのでしょう。
うまく教えるコツ⇒「わが子を他人の子だと思う」
よその子に対して、いきなりしかる・怒ることはあるでしょうか?
きっと、まずは“教えて”あげるはずです。
“たとえば、おっちょこちょいな子どもがいたとします。テーブルの端に水があったので、「こぼすから、水をこっちに置いてね」と言っても、直しません。案の定、水をひっくり返してしまいました”。
この場合、自分の子どもではなく、「子どもの友だち」だったらどうでしょう?
「水をこぼしちゃったね、大丈夫? ここに置いておけばこぼさないね」
など、伝えたい内容をわかりやすく声かけできるのではないでしょうか。
わが子だからこそ感情が先に出てしまうのは当然のこと。これは、親が悪いのではなく、そういうものです。しかし、しかるばだけでは親のイライラが募るばかりで、子どもには伝わりません。
「他人の子だったらどうする?」と考えてみると、うまく行動を起こせるはずです。
次回は、長所をぐんぐん伸ばすコツ!
今回は、短所への向き合い方について、詳しくお話ししました。
次回は、長所をぐんぐん伸ばしていくコツをご紹介します。
長所と短所、双方からのアプローチを知っていれば、子どもはさらに伸びていきます。ぜひ、4月26日(火)の更新も楽しみにしていてくださいね。
この記事の監修・執筆者
20歳で起業し、学習塾を創業。これまで4000人以上の子どもたちに対し直接指導するかたわら、講演会やセミナーなども実施。また、2003年35歳で都内の私立の中高一貫校の常任理事に就任。2016年からは「カフェスタイル勉強会~Mama Café」というママ対象の子育て・教育の学びの会を全国で主宰。『子どもの自己肯定感を高める 10の魔法のことば』(集英社)、『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
公式サイト
http://www.ishida.online/
音声配信Voicy
https://voicy.jp/channel/1270
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