「将来、何になりたいの?」「大学では何を学びたいの?」「何に興味があるの?」
家族や先生からそう聞かれるたびに、胸がギュッとなる。やりたいことが見つからない自分は、どこか出遅れているんじゃないか――。そんな焦りを感じていませんか。
でも、安心してください。進路を決めるために、必ずしも最初から「やりたいこと」や「将来の夢」がある必要はありません。本当に大切なのは、正解を探すことではなく、納得できる「決め方」を知っているかどうかです。
もやもやとした「悩み」を、前向きな「迷い」に変えていく。そんな進路選択のヒントをご紹介します。
※『どうする進路選択 やりたいことがない君も後悔しない進路は選べる』(Gakken)より、一部内容を抜粋してご紹介します。
悩むことと迷うこと

本書では「悩むこと」と「迷うこと」を違うこととして扱います。
「悩む」は、まだ形になった選択肢がなく、苦しさだけが先に立っている状態です。
それに対して「迷う」は、すでにいくつかの道が見えています。どこに進むかをじっくりと比較し、吟味することで、よりよい選択ができる状態とも言えるでしょう。
迷いは、決断への入口
進路を「決める」という視点から見ると、「悩み」と「迷い」の違いは、よりはっきりします。「まだ考えていない」状態は、整理がされていない「悩み」です。
一方で、「もう決まっている」状態は、結論が出ている「確定」の状態です。
そのどちらでもない、「まだ決まっていないけれど、あれこれ考え始めている」「もう決めたつもりだけど、どこかで考え続けている」――この状態が、「迷い」です。
悩んでいるときは、選択肢がまだ言葉にできていなかったり、そもそも見えていなかったりします。決まっているときは、選択肢が1つに絞られています。そして、迷っているときには、2つ以上の選択肢があり、その中からどれを選ぶか考えているのです。
言い換えるなら、「悩む」と「迷う」の違いは、「選択肢が見えているかどうか」。
進路選択で大切なのは、まず「悩み」を「迷い」に変えることです。そこから、決めるための思考が始まります。
「決め方」を知れば、「悩み」は「迷い」に変えられる
もやもやした「悩み」を選択肢のある「迷い」へと進めるために必要なのが、「決め方」です。
悩んでいる人の多くは、この「決め方」をまだ持っていません。そのため、集めた情報をうまく整理できずに、頭の中で考えがぐるぐると回り続けてしまいます。
周囲から見ると、「よく考えている人」に見えるかもしれません。しかし本人としては、時間をかけたわりに、最後は時間切れで「エイヤー」と決めてしまったり、結局いつもと同じ答えに落ち着いてしまったり、根拠のはっきりしない直感に頼ることになりがちです。
では、「決め方」とは何でしょうか。それは、次の5つの手順から成り立っています。
決め方の5つの手順
①何を決めるかを決める
②2つ以上の選択肢を準備する
③判断基準(自分のこだわり)を明らかにする
④判断基準をもとに選択肢を比べる
⑤納得できるものを選び取る(決める)
この順番を知っているだけで、「悩み」は「迷い」へと姿を変えます。
※本書『どうする進路選択 やりたいことがない君も後悔しない進路は選べる』(Gakken)では、「決め方」について具体例を挙げて詳しく解説しています。
賢い人は「決め方」を使って迷っている
賢い人はこの5つの手順の中で、しっかりと迷っています。
それは、いつまでも決められずに立ち止まることではありません。むしろ、前に進むための迷いです。
選択肢を比べる中で、新しい判断基準が見えてくることがあります。 逆に、判断基準を考え直すことで、これまで思いつかなかった選択肢が浮かぶこともあります。
選択肢と判断基準を行き来しながら、両方を磨いていく。これが、「しっかり迷う」ということです。
そうして考え抜いた結果、「これだ」と思える結論にたどり着いたものを、最後に選び取る。これが「決める」という作業です。
よい決め方、よくない決め方
これらの一連の道すじがクリアであればあるほど、「よい決め方」といえます。
逆に道すじがあいまいなほど「よくない決め方」ということになります。
「よい決め方」の真価は、不測の事態にこそ発揮されます。
受験に限らず、人生では予定どおりにいかないことが必ず起こります。そんなときに支えになるのが、「何を基準に、どうやって決めたのか」という記録です。
決めるまでの道すじが整理されていれば、状況が変わっても、冷静に考え直すことができます。 だからこそ、賢い人は「決める前」に、しっかり迷うのです。
もし「まだ決まっていない」がゆえに悩んでいる状態ならば、まずは選択肢を探し、自分のこだわりを言葉にしていきましょう。 場合によっては、「何を決める必要があるのか」から考え直してもかまいません。そして、時間が許す限り、ぜひとも決断までしっかり迷ってください。
「探しやすさ」のワナから抜け出そう
私たちは、自分の頭で考える前に、保護者の考え、先生やクラスメイトの意見などに引っ張られがちです。
「みんなが納得しそうな答えは何だろう」
「普通って、どんな選択だろう」
ついつい、進路についてもそんなふうに探してばかりいないでしょうか。
これは、「街灯の下で鍵かぎを探す」ことに似ています。街灯の下は明るく、探しやすい。けれど、必ずしもそこに鍵が落ちているとは限りません。学校や大人から勧められた進路、これまで見聞きした情報だけを頼りにするのは、この状態です。その情報だけを頼りにして、求めている進路が見つかるとは限りません。
専門的な言葉では「ドミナント・ストーリー(支配的な物語)」と言います。
「いい大学に行けばいい会社に入れる」
「いい資格が安定につながる」
「夢を追う人生はすばらしい」
これらは、多くの人が信じているため、疑うことが難しい物語です。
それに対して、こぼれ落ちてしまう別の可能性を「オルタナティブ・ストーリー(もうひとつの物語)」と言います。大谷選手の二刀流も、当時は常識はずれだと考えられていました。本人ですら選択肢に入れていなかったほどです。
常識の外にある道は、思っている以上にたくさんあります。同じプロ野球選手でも、引退後に農家になる人。定年まで会社員を続けたのち起業し、大学の学長になる人。海外の大学に進学後に休学し、日本の大学で研究に取り組む学生。
さあ、あなたも「探しやすさ」のワナから抜け出しましょう。
迷いながら決めた経験は「自信」になる
大学では、学び方が大きく変わります。
高校までは、担任の先生があなたを常に見てくれていました。授業には教科書がありました。しかし大学に入るとあなたのことを毎日気にしてくれる先生はいません。教科書のない授業もどんどん増えてきます。そもそも受ける授業を決めるのもあなた自身です。
大学入学直後から、「あなた自身が選び、判断して決めていく」という生活がスタートするのです。だからこそ、誰かに決められた道で手に入れる「大学合格」に、私たちは危うさを感じています。
一方で、あなた自身がうんうん唸って、迷いながら決めた「意思決定」の経験は、誰にも奪われないあなただけの「自信」になります 。そしてそれによって得られた「大学合格」であれば、たとえあなたの第一志望ではなかったとしても、納得のいく進学になるはずです。
一度決めても、変えていい
古代ポリネシア人は、GPSも地図も持たずに、広大な太平洋を自由に往来していました。彼らは星の位置、風、腹で感じる波の揺れを頼りに自分の位置を把握し、数千キロ先の島へ辿り着く。
この伝統航海術は「ウェイファインディング(Wayfinding)」とも呼ばれます。文字の通り、「道を見つける」という意味です。
私たち人間には本来、地図や羅針盤がなくても、全身で変化を感じ取り、進むべき方向を見出すポテンシャルが備わっているのかもしれません。
一度決めた進路を変えることは、失敗ではありません。実際に動いてみたことで新しい自分に出会えた、前向きな方向転換です。
さあ、恐れずに決めて、漕ぎ出してください。この広い海に、あらかじめ決められた正解のルートなんてないのですから。
どうする進路選択 やりたいことがない君も後悔しない進路は選べる
この本を手に取り、自分の頭で迷い始めたあなたたちはラッキーです。
そして、この本を「答え」としてではなく、「考える道具」として手渡してくれた大人がいたなら、その人に、少しだけ感謝してあげてください。
なぜなら、その人はあなたの未来を信じて、あえて「決める権利」をあなたに委ねてくれたのですから。
「決め方」は、情報の海に溺れないためのライフジャケットです。
それを身につけて迷っていると、いつしかあなた自身の中にある方位磁石が、進むべき方向を指し示してくれるようになります。
これこそが、「あなたらしい進路」にほかなりません。
さあ、この本を通して、あなただけの航海図を描いていきましょう!
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