年が明ければ、いよいよ入試本番。
Gakkenが首都圏の私立・国公立中学校にアンケートを取ったところ、計158校(83%)の学校が、昨年時事問題を出題したと回答しました。
そこで今回は、「2025年入試用重大ニュース 時事問題に強くなる本」(Gakken)から、首都圏私立・国公立中学の入試担当の先生方にお願いしたアンケート調査をもとに集計した、2024年重大ニュースの“トップ3”を、抜粋してご紹介します。
各ニュースについての詳しい解説もあります。ぜひ、受験対策にご活用ください。
画像出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/)
◉見出しの横にある「注目度」は、該当するニュースを選んだ学校数を、調査対象の学校数で割って100を掛けた数字です。
第3位:新紙幣発行【47%が注目!】
2024年7月3日、日本銀行は20年ぶりに新しいデザインの1万円札、5千円札、千円札の発行を始めました。
この日、日本銀行から各金融機関へ新紙幣が引き渡され、初日に金融機関に並び、新紙幣を手にする人もいました。日本銀行は2025年3 月末までに、74億8000万枚の新紙幣を発行するとしています。
新紙幣発行に最先端技術の3Dホログラムやユニバーサルデザインが導入されたこと、日本のキャッシュレス決済の普及率を確認しておきましょう。
新紙幣の発行は20年ぶり!
新紙幣が発行されるのは、2004年以来20年ぶりのことです。
表面の肖像は、1万円札が福沢諭吉から渋沢栄一に、5千円札が樋口一葉から津田梅子に、千円札が野口英世から北里柴三郎にかわることになり、裏面のデザインもそれぞれ、一新されました。
新紙幣発行に伴い、銀行のA T Mや公共交通機関の券売機、コンビニのレジなどが、新紙幣に対応した機器に入れ替えられましたが、入れ替えが遅れている飲食店の発券機や飲料の自動販売機などでは、キャッシュレス決済 に切り替える動きも出ています。
▲紙幣の写真は「国立印刷局ホームページ」(https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/index.html)
―ものしり情報―
日本の紙幣は正式には日本銀行券といい、日本銀行が発行し、実際の製造は独立行政法人の国立印刷局が担当する。硬貨(コイン)は政府が発行し、独立行政法人の造幣局が製造する。
なぜ、デザインを新しくするの?
今回、紙幣を新しくする主な理由は、偽造を防ぐことです。紙幣はこれまでも偽造を防ぐために20年に1 度くらいのペースで新しくされてきました。近年はパソコンとその周辺機器の発達によって、容易に偽札がつくられるようになりました。
このため、新紙幣には最先端の「 3Dディーホログラム」が紙幣としては世界で初めて導入されたほか、すかしを細かくする工夫もほどこされています。また、だれにでも使いやすくするために、ユニバーサルデザインも用いられています。
キャッシュレス決済の普及が進む
新紙幣が発行される一方で、最近はキャッシュレス決済の普及が進んでいます。
キャッシュレス決済は、ものやサービスを購入する際に現金を使わずに支払う方法で、クレジットカード、電子マネー(現金ではなく、電子化されたお金。交通系ICカードなど)、デビ ットカードなどがあります。
消費者にとっては現金をもつ必要がないことや支払いが素早いこと、ポイントをためていろいろな商品を手に入れられることなどの利点があります。導入する店舗にとっては、キ ャッシュレス決済を利用する客を呼び込むことができるほか、事務手 続きを効率化することができるなどの利点があります。
日本は世界の国々と比べてキャッシュレス決済の普及が遅れていますが、政府が2025年までにキャッシュレス決済の比率 を40%程度にすることを目標とし、さまざまな取り組みを進めてきました。これらマイナポイントをはじめとするポイント還元などの効果もあってこの5年間で15%以上上昇しました。
―ここをくわしく―
政府がキャッシュレス決済を進める目的としては、紙幣や硬貨を製造する費用やATMの維持管理費・人件費など社会全体でコストを下げ、生産性を向上させることがある。また、キャッシュレスに慣れている訪日外国人の消費を拡大することも目的のひとつ。
第2位:能登半島地震【49%が注目!】
2024年1月1日午後 4 時10分、石川県の能登半島先端を震源とするマグニチュ ード(M)7.6の大地震 が発生しました。
石川県志賀町と輪島市で震度 7 の激しいゆれが観測されたほか、珠洲市、七尾市、穴水町で震度 6 強のゆれが観測されました。
この地震による家屋の倒壊や火災などで240人以上が亡くなり、多くの人が避難所や宿泊 施設などに避難しました。
今回の地震の原因とされる活断層のずれが起こるしくみと、ハザードマップの確認、自助・共助・公助などの災害への備えについておさえておきましょう。
どんな被害が出たの?
2011年の東日本大震災以来となる大津波警報が一時発表され、珠洲市や能登町では多数の家屋が流されました。気象庁は今回の地震を「令和6年能登半島地震」と命名しました。
今回被害が大きかった奥能登は高齢化が進んでいる地域で、亡くなった人の多くは高齢者 でした。また、耐震基準を満たさない古い家屋が多かったため、死者の8割以上が圧死など家屋の倒壊にるものでした。
電気・ガス・水道・道路などのインフラも大きな被害を受け、 断水や停電が広い範囲に及びました。もともと海と山に囲まれて道路が少なかったうえ、土砂崩れなどによって道路が寸断されたため、救援に時間がかかりました。
―ここをくわしく―
奥能登で耐震化が遅れていた大きな要因としては、お金と手間のかかる耐震化をためらう高齢者が多かったことがあげられる。
どんなしくみで地震が起こったの?
地震は、地下にある岩盤がずれて発生する現象です。地球の表面は 「プレート」と呼ばれる10数枚の板状のかたい岩盤で覆われていて、それぞれがほんの少しずつ動いています。このためプレートにはさまざまな力が加わり、ひずみが生じています。このひずみに耐えきれなくなると岩盤がずれ、地震が起こります。
能登半島の北部には地震を起こすとされる活断層がいくつもあります。今回の地震は、これらの活断層がずれて起こったと考えられています。この地域では2020年12 月ごろから最大震度6強クラスの群発地震(ある地域で集中的に地震が起こる現象)が発生していました。
自然災害に対する備え
日本は首都直下地震や南海トラフ地震のような大地震がいつ起きてもおかしくない状態 です。最近は集中豪雨による洪水や土砂災害なども増えています。
国や市(区)町村は建物の耐震強化、堤防の建設などの防災・減災(災害による被害を最小限に抑える)の取り組みを行い、防災教育にも力を入れています。私たちも防災セットを常備し、ハザードマップ(防災マップ:自然災害発生時に被害が発生しそうな場所や避難場所などを示した地図)で被害を受けやすい場所や避難場所を確認しておくことが大切です。
最近は災害への備えとして、自助・共助・公助の重要性が指摘されています。
―ここをくわしく―
能登半島地震によって、この地域の主要な産業である農林水産業や観光業、伝統産業が大きな打撃を受けた。輪島市では、地震と火災によって「日本三大朝市」のひとつとして知られる輪島朝市が壊滅的な被害を受けた。朝市通りには、国の伝統的工芸品に指定されている輪 島塗の工房も多くあったが、ほとんどの工房が被災した。
第1位:止まらない物価高【51%が注目!】
2024年8月23日、総務省は7月の消費者物価指数が前年の同月よりも2.7%上昇したこと を発表しました。
物価上昇に合わせて、大企業を中心に賃金を引き上げる企業が増えており、2024年の春の賃上げ交渉(春闘)の賃上げ率は平均5.10%と、33年ぶりに5%を超える高水準に達しました。しかし、物価変動の影響を除いた実質賃金はマイナス傾向で、家計にとっては厳しい状況が続いています。
商品の価格が需要量と供給量の関係で決まること、日本銀行の金融政策で物価が調整されることを確認しておきましょう。
なぜ、物価が上昇しているの?
物価の上昇は2022年の初めごろから続いています。その大きな要因として、円安とウクラ イナ情勢があげられます。
円安になると輸入品を買う場合に円での支払い額が多くなるので、 輸入品全般が高くなります。また、2022年にロシアがウクライナへ侵攻すると、原油や天然ガス、穀物(小麦やとうもろこし)などの供給が減少 、あるいは滞るとの不安から国際価格が上昇しました。これに伴い、 それらを原材料、燃料とする食料品・ ガソリンの価格 、電気・ガスなどの料金も上昇しました。さらに世界的な不作も食料品の価格を引き上げています。
物価の上昇は家計には大きな負担となります。また、企業にとって家庭や個人といった消費生活を営む単位は原材料や燃料 、エネルギーの価格の上昇によって生産費が増加し、その経営を圧迫しています。経済産業省は家計と企業の負担を軽減するために、電気料金とガス料金の負担軽減措置(電気料金とガス料金を一時的に安くする)やガソリン補助金の支給を実施しました。
―ここをくわしく―
ロシアは石炭・原油(石油)・天然ガスなどの資源や小麦の世界的な輸出国で、ウクライナは小麦・とうもろこしの世界的な輸出国。
商品の価格はどうやって決まるの?
現在 、世界のほとんどの国が市場経済を導入しています。市場経済ざいのもとでは商品(ものやサービス)の価格は、需要量と供給量の関係によって決まります。
需要量が供給量を上回れば価格は上がり、供給量が需要量を上回れば価格が下がります。今回のように原油や天然ガス、穀物など原材料費や電気・ガス料金が上がると生産にかかる費用(コスト)が上がります。この場合、生産者は商品価格が上がらないよう努力しますが、それが難しくなるとコストを商品の価格に転嫁(上乗せ)するため、価格が高くなります。
物価と賃金の関係は?
物価が上がってもそれ以上に賃金が上がれば実質賃金(賃金から物価変動の影響を除いたもの)は上がったことになり、消費が増えて商品が売れるようになります。すると企業の業績が上がり、景気がよくなります。
2023年から政府が企業に対して物価の上昇に合わせて賃金を引き上げるよう要請しています。また、 大企業を中心に人材確保のために賃金を引き上げる企業も増えました。しかし、全体的には実質賃金はマイナス向で、賃金の上昇が物価の上昇に追いついていない状況です。
―ここをくわしく―
インフレには、良いインフレ、悪いインフレとよばれるものがある。良いインフレとは、物価が上昇していても需要が高い状態をいい、悪いインフレとは、景気が停滞しているのに物価が上昇する状態をいう。
ちなみに、第4位から第10位は…?
いかがでしたでしょうか? 2024年注目の重大ニュースは、まだまだ他にもたくさんあります。ちなみに、第4位から第10位は…
第4位 アメリカ大統領選挙
第5位 南海トラフ臨時情報が発表される
第6位 パリオリンピック・パラリンピック開催
第7位 急がれる地球温暖化対策
第8位 円相場のゆくえ
第9位 イスラエル軍がガザ地区に侵攻
第10位 自民党総裁選挙
となっています。
「2025年入試用重大ニュース 時事問題に強くなる本」(Gakken)では、この他にもたくさんの2024年重大ニュースを紹介しており、詳しい解説だけではなく、予想問題も充実しています。
1年間におこった事件やニュースの中から、入試に出題されそうな17テーマを厳選し、5つのジャンルに分けています。それぞれのジャンルのはじめには「ニュースのあらまし」のページがありますので、まずは読んで各ニュースの概要をつかみましょう。 各ニュースは4ページずつで構成しています。最初に解説ページを読みニュースの重要点をつかんだあと、予想問題に挑戦してみましょう。
巻末の解答と解説ページにはミシン目が入っていますので,切り取って使うことができます。
また、時事問題を用語や地図・年表・統計などでまとめた「時事問題パワーアップ講座」では、総合力も身につきます。最後には時事ニュースを切り口に理科の力を見る「理科予想テスト」、社会科の力を見る「総合予想テスト」がありますので、ぜひ挑戦してみましょう。
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