「一生懸命作ったごはんを子どもが食べてくれない!」と嘆く保護者はSNS上にもたくさんいます。子どものために心を込めて作ったごはんを、たくさん残されたときのショックを考えると、無理もありませんよね…。
そこで今回は、1歳から6歳の子どもをもつ、保護者204人にアンケートを実施し、管理栄養士の太田百合子先生にアドバイスを頂きました! 2回に分けてご紹介します。
※アンケート調査:モニプラファンブログ「学研の幼児ワーク」編集部調べ(2020年2月実施/204名回答)
お話:太田 百合子(管理栄養士)
子どもの少食にイライラ! そんなときの対処法は?
アンケートでは、ほとんどの保護者が子どもの食べ残しを気にしているという結果に。人間にとって、「食べる」ことは「生きる」ことにつながるわけですから、食事をしっかり食べてくれない子どもを心配するのも当然ですよね。
「遊び食べ」は食べ物への好奇心がある証拠
「遊びながら食べるので、時間がかかって結局残す」と、子どもの「遊び食べ」に悩む保護者が多いようです。しかし、子どもの成長過程では、ごく自然なことです。
3歳くらいまでは、興味がある物が近くにあれば気が散るのも当然です。好奇心が育つ時期なので、食べ物に対して “あれなんだろう?”“これおもしろそう!”と気になり、指先で固さを確かめてみたり、“つぶしてみたらどうかな”と思ってみたりすることは、興味をもっている証拠。一時のことなので、“少しくらいやってもいいよ”という気持ちで見守ってみてはいかがでしょう。
また、おなかが満たされたというサインでもあるので、残したとしても無理強いせずに潔く片づけることも大切です。
「食べムラ」は一週間単位で見れば大丈夫
「食べるときと食べないときの差が激しい」といった「食べムラ」も子どもの発達上のひとつです。そのため、3歳ごろまでは食べ過ぎたり、少ししか食べられなかったりするのも当然です。
毎日一定量食べたかどうかを気にするよりも、一週間単位で食べられていて、体重は成長曲線に沿っているなら、全く気にしなくて大丈夫。
子どもの食欲に一喜一憂するよりも、食事の時間が楽しく、幸せな時間になるように心がけることを大切にしてくださいね。
食事のリズムを作るには、食事の時間を決め、間隔をあけることが大切
アンケートでは「“おなかがいっぱい”と言うから片付けたら、すぐに“おなかがすいた” と言われて困る」という声もたくさん。食事のリズムを作るにはどうしたらよいでしょうか。
3歳から5歳ごろの食事回数は、朝昼晩の3食の他に、10時と3時を加えた一日5回と考えます。食事の時間を決めておくことで、成長とともに満腹感や空腹感がわかってきて、だんだんと食事のリズムもできてくるようになります。
もし、朝食が少ししか食べられなかったら、10時のおやつにおにぎりや蒸しパンなど少しボリュームのある物を用意するなど工夫をすれば大丈夫。食事の量が少なかったときは、間食に栄養のある物を選んであげましょう。
「だらだら」食べにならないような注意は必要
ごちそうさまをしたら、食事の時間は終わり、というけじめは大切にしましょう。すぐ後に食べたがるようなら「あっちでブロック遊びする?」などと他の遊びに誘い、食べ物から気をそらすのも一案です。
少食で悩むアンケートの声に、専門家がアドバイス!
「子どもがごはんを残す」と、保護者の方はどんなことに困ったり悩んだりするのでしょうか。アンケートをもとに、アドバイスをいただきました。
お悩み:デザートが増えてしまうのは、どうしたらいいの?
「食事の途中で気が散って、“もういらない”と言うのに、アイスを欲しがります」「外食時、デザートがついてくると、それを早く食べたくて、少し食べただけで“お腹いっぱい”と言います」など、食事を飛び越してデザートを食べたがる場合はどうすればよいでしょう?
太田先生のアドバイス:「デザートはごはんの後に」の習慣づけを徹底して
「このお皿がピカピカになったらアイス食べようか」などと話すことで、子どもも自然と食事に気が向くようになります。外食でデザートがはじめからついてくるようなメニューは、できれば頼まないのが一番。ごはんの後に改めてデザートを注文したほうがスムーズですね。
デザートが目の前にあるのに、野菜の方が大切だから、今はがまんして食べよう、とはなかなか思えないもの。デザート問題は、根気よく向き合っていくことが大切です。すぐにあたえてしまうと、子どもは「ごねればアイスが食べられる」と学んでしまいます。
お悩み:食べるのに時間がかかりすぎて、結果残してしまう。どうしたらいいの?
「一時間以上かけてゆっくり食べるので、結果的に残すことに。途中で私がイライラして独断で切り上げてしまいます」など、時間がかかることを気にする声も多数ありました。
太田先生のアドバイス:子どもの発達段階にあったメニューを意識して
子どもの発達にあったメニューを見直してみるのも一案です。発達とともにかむ力がついてくるものの、かむ力は大人に比べてまだ弱いです。
肉や野菜類などを、食べにくそうにしていたら、食べやすい形に切ったり、柔らかく煮込んだりして調理法を工夫してみるとよいでしょう。肉類はシチューに、焼き魚はあんかけにするなど、のどごしよくするのも大切です。
お悩み:おしゃべりばかりで、いつまでたっても食べ終わらない…
「いつもおしゃべりばかりで、ぜんぜん食が進みません。給食を食べるようになる時期が心配」などと、就園、就学後を心配する声も。
太田先生のアドバイス:食事に気が向くような声かけを
食事に時間がかかる場合は、「にんじんさんが食べてねって言ってるよ」「これ、おいしいよ」などと、食事に気が向くような声かけをしましょう。
子どもは、語彙が増えたり、言葉によるコミュニケーションがとれるようになると、食事中はパーティー気分になりがちです。楽しい食事の時間を過ごしているという意味では、悪いことではありません。
反対に、「おしゃべりしないで、早く食べて!」と怒るばかりでは、むしろだらだら食べて時間がかかることがあります。
お悩み:とにかく少食で心配…
「少食で、他の子に比べて体が小さいのが心配」「5歳児なのに赤ちゃん用のお茶碗を使っている」など、とにかく少食に悩む声もありました。
太田先生のアドバイス:子ども自身が成長していれば大丈夫
5歳で赤ちゃん用のお茶碗を使っていて少量でも、おかずとの調和がとれていれば大丈夫です。他の子に比べて小さくても、身長と体重が成長曲線のラインに沿っているなら気にしすぎる必要はありません。
少量を盛り付けて、全部食べられた達成感を味わわせてあげましょう。
好き嫌いの理由を知って対策しよう
「子どもの好き嫌い」も、保護者にとっては悩みの種ですよね。健康に育ってほしいからこそ、なんでもバランスよく食べてほしいと思うのが親心。
しかし、初めからなんでもバランスよく食べてくれる子は、そう多くはありません。
アンケートでも「初めて食べるものは絶対に口に入れてくれない」「ふりかけがないとごはんを食べない」など、食材の偏りを気にする声が少なくありませんでした。
味のないごはんが苦手な場合は、ごまや鰹節をふりかけて
大人は、おかずを一口食べたらごはん、味噌汁…といった具合に、さまざまな味を順番に食べて口の中で味の広がりを楽しむことができます。これを「口中調味」と言います。
しかし、1~2歳の子には難しいことです。子ども自身で複数の味を口の中で楽しむことができないため、白いごはんだけでは味気ないと思えてしまうことも。ふりかけの塩分が気になる場合は、ごまや鰹節などをふりかけて食べるとよいでしょう。
調理のお手伝いで、食材に対する抵抗感をなくす
子どもは、初めて見るもの、食べるものに警戒心を抱きます。これを「新奇性恐怖」といって、子どもによっては、「新奇性恐怖」が強い子もいます。そう考えると、初めて見るもの、食べる物を絶対に口に入れないのも無理はありませんね。
食卓に乗ったものを、おいしく、バランスよく食べるだけが食育ではありません。収穫の時期に畑に行ってもよいし、スーパーに行って魚や肉が売られているところを見るのも、警戒心を少なくするよい経験。
たとえば、ミニトマトを洗ったり、ほうれん草を保護者といっしょに切ってみたりして、調理のお手伝いをすると、食材に対する抵抗感がなくなっていきます。
見せる、触らせるといった経験があると、新しい食べ物も挑戦しようという気持ちがわくこともあります。
偏食で悩むアンケートの声に、専門家がアドバイス!
「子どもの偏食」について、保護者の方はどんなことに困ったり悩んだりするのでしょうか。アンケートでの質問に、アドバイスをいただきました。
お悩み:園だとなんでも食べるのに、家だと偏食でバランスの良い食事がとれない…
保育園だとなんでも食べてくれるのに、家だと好き嫌いが激しくて…どうしてなのでしょう?
太田先生のアドバイス:外食に行くなど、雰囲気を変えてみるのがおすすめ
保育園で食べるのは、外と内の使い分けができるという社会性が身についている表れともいえます。外食や公園で食べるなど、雰囲気を変えると、案外あっさり食べてくれるかもしれません。
大人だって、仲の良い人とレストランで食事をすると、たくさん食べられませんか? 子どもも同じで、友だちの存在が刺激になったり、みんなと楽しい雰囲気で食事を楽しんでいるうちに、苦手な物も食べられるようになることもあります。
お悩み:野菜嫌いはどう克服したらいいの?
「野菜系は生だと食べないので、ハンバーグやカレーに入れています」「野菜が嫌いなのでグミやゼリーなどは、少しでも野菜が入ったものを買うようにしています」など、苦手な野菜を食べさせるために四苦八苦。克服するコツはありますか?
太田先生のアドバイス:子どもが食材に興味をもつ働きかけを
たとえば、にんじんが苦手だったら、星の型抜きをしてみるなど、子どもの興味をひくような工夫をしてみてはどうでしょう。
本来、生で食べる野菜は生で食べたほうがよいし、野菜味の嗜好品で野菜の栄養を取ろうと思っても野菜の代わりにはなりません。
また、苦手な物を細かく切ってわからないようにするよりも、食材を認識して食べる経験を重ねたほうが好き嫌いの克服につながります。
子どもの少食や好き嫌いは、食事を作る保護者にとっては、大きな悩みの一つです。しかし、必要以上に神経質にならず「成長すれば、自然と改善する」とおおらかに構えておくことが子どもにとっても保護者にとっても得策なのかもしれません。
次回は「嫌いな食べ物も食べられるようになる工夫」についてご紹介します。
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